「失礼しました」
ドアを閉めて、小さく嘆息する。
クリーオウはここにもいなかった。
もちろん、先生がかくまっているのではないかという可能性も考慮し、色々と尋問まがいのことまでしてみたのだが成果はゼロだった。
尋問まがい、と言っても誤解してもらっては困る。単なる誘導尋問の類だ。
世間話から入り、徐々に確信をつくような話題へと摩り替えていく。
さらに、そこからちょっとした弱みとかを握るとなお良し。そこから新たな情報が手に入ることも少なくない。
……って、何の話をしてるんだ俺は。
ともかく、ここにクリーオウはいない。
ちなみに、大学と院の方では既に奴らに対しての措置が取られ始めており、クリーオウとレキを見つけたら即連絡が入ることになっている。
(おそらく、大学と院の方には行かないだろうな、あいつは)
もし、あの時の先生の話を聞いていてレキを連れ出したのだとしたら、魔術士の巣窟ともいえる大学だの院だのにむざむざ近づいたりはしないだろう。
レキを捕らえようとしているのは紛れもなく魔術士なのだから。
(例えそれが、学生会執行部であったとしても、先生であったとしても……クリーオウには何ら変わりなく映るだろうしな)
職員室を離れ、昇降口に向かって歩き出す。
(後は、ハーティアだけが頼みか……)
そして深く嘆息をして、駆け出そうとした時だった。
どぉぉぉん……!!
反響してくぐもったような音と、軽い揺れ。
紛れもなく爆発である。しかもこの高等部の校舎内で。
(クリーオウ!!)
俺は一気に方向転換をすると、音のした方――上階の、それも奥の方――へと全力で駆け出していった。