(確かこの時間帯だと、渡り廊下は途中で閉鎖されてるハズだが……)
現場まで来てみると、その問題はあっさりとクリアされていた。
高等部の通常棟と特別棟を隔てるドアが破壊されていた。
いや、それは破壊というより――何かとてつもない力でむりやりこじ開けたように――ドアがひしゃげて無茶苦茶な方向に曲がりくねっていた。
こんなことができるのは魔術以外考えられないし、そして現状でこれ――ここまで爽快に物体をねじまげる行為――を実行できるのは、まさしくレキ以外に考えられない。
ひしゃげたドアをくぐり抜け特別棟へとひた走る。
と、窓の外で何かが動いた気がした。
走りながら目を凝らすと、特別棟の廊下を人影のようなものがよぎるのが見えた。
数は……一つ、二つ……三つ?
先頭を走っていった小柄な影がクリーオウだとすると、奴らの戦力は二人ということになる。
(……二人? 少なすぎる。……伏兵がいるか?)
影が走り去った方向に何があるかを必死で思い出す。
(……待ち伏せにちょうどいい場所があるじゃねぇか!)
絵画広間と呼ばれている、大きな窓がしつらえてあり、幅が通常のそれの3倍ほどもある廊下。
何でも、室内にいながら風景画を描かせるために、とある美術教師が特別棟増築の際に勝手に設計したとかどうとか……
って、そんなことはどうでもいい。
つまり、そこは単にちょっとした教室並の広さを持つ廊下。しかも、どこかに続いているというわけではない(移動目的も兼ねてしまうと、風景画を描いている横を人が通り過ぎ創作の妨げになるとして件の美術教師が塞がせたのだという)。
言うなれば単なる広間みたいなものだ。今の状況から見れば、『袋小路』と言い換えられる。
もし、そこに追い込まれたら……というより、追い込んでいるのだ。奴らは。
(ち……間に合うか?!)
俺はさらにスピードをあげて、特別棟へと突っ込んで行った。
お約束っぽく、使い勝手のいい場所を捏造。