あれから一週間が経った。
次の日にそれぞれの現場に行ってみると、そこは何事もなかったかのように修復されていた。おそらく先生達の仕業だろう。
そしてクリーオウはというと、同じ様に、何事もなかったかのように登校している。普通に友達と話し、授業を受け、普通に下校する。
しかし明らかにクリーオウは俺を避けていた。
その証拠に、体育館裏には姿を見せることはなかった。まあレキがいなくなってしまったのだから、クリーオウにとってここに来る必要は何もなくなってしまったのだが。
事件の次の日、心配になってクリーオウの様子を見に行って、普段と何ら変わりなく過ごしている姿に安堵を覚えた。
だが話し掛けることはできなかった。何故といわれるとうまく答えられないが……
話し掛けづらい雰囲気を纏っていたというか……話し掛けた瞬間に、彼女が必死で保っている何かが瞬時に崩れ去るような。
そんな妙な感じを覚えたのだ。そしてそれは、図らずとも当たっていたようである。
その日はクリーオウが普通に過ごしている姿を見れたのでそのまま帰ったのだが、数日後に廊下でばったりクリーオウと会ったことがあった。
「よお」
と、何事もなかったかのように挨拶をする。
が、クリーオウはこちらを確認した瞬間、わずかであるが顔を強張らせた。それはほんの一瞬であったし、本当にわずかな変化であったが――俺は気付いた。
「おはよ、オーフェン。……わたし、先生に呼ばれてるから。またね」
にっこりと笑顔で小さく手を振り、小走りで走り去る少女を引き止めることは俺にはできなかった。
走り去った彼女がどういった表情をしているのか。
それを考えるだけでも胸の奥が痛む気がした。
結局、俺には何もできなかったのだ。クリーオウの力になることも、そして、助ける事も。
(むしろ、助けられたのは俺だ……あの時クリーオウがレキの前に出なかったら、俺はここにはいなかった)
そしてクリーオウとまともに話すこともできないまま、時間ばかりが過ぎていった――