12月18日(火)  16:10     大学校舎前

 

 

 あれから一週間が経った。

 

 次の日にそれぞれの現場に行ってみると、そこは何事もなかったかのように修復されていた。おそらく先生達の仕業だろう。

 そしてクリーオウはというと、同じ様に、何事もなかったかのように登校している。普通に友達と話し、授業を受け、普通に下校する。

 しかし明らかにクリーオウは俺を避けていた。

 その証拠に、体育館裏には姿を見せることはなかった。まあレキがいなくなってしまったのだから、クリーオウにとってここに来る必要は何もなくなってしまったのだが。

 

 事件の次の日、心配になってクリーオウの様子を見に行って、普段と何ら変わりなく過ごしている姿に安堵を覚えた。

 だが話し掛けることはできなかった。何故といわれるとうまく答えられないが……

 話し掛けづらい雰囲気を纏っていたというか……話し掛けた瞬間に、彼女が必死で保っている何かが瞬時に崩れ去るような。

 そんな妙な感じを覚えたのだ。そしてそれは、図らずとも当たっていたようである。

 

 その日はクリーオウが普通に過ごしている姿を見れたのでそのまま帰ったのだが、数日後に廊下でばったりクリーオウと会ったことがあった。

「よお」

 と、何事もなかったかのように挨拶をする。

 が、クリーオウはこちらを確認した瞬間、わずかであるが顔を強張らせた。それはほんの一瞬であったし、本当にわずかな変化であったが――俺は気付いた。

「おはよ、オーフェン。……わたし、先生に呼ばれてるから。またね」

 にっこりと笑顔で小さく手を振り、小走りで走り去る少女を引き止めることは俺にはできなかった。

 走り去った彼女がどういった表情をしているのか。

 それを考えるだけでも胸の奥が痛む気がした。

 

 結局、俺には何もできなかったのだ。クリーオウの力になることも、そして、助ける事も。

(むしろ、助けられたのは俺だ……あの時クリーオウがレキの前に出なかったら、俺はここにはいなかった)

 

 そしてクリーオウとまともに話すこともできないまま、時間ばかりが過ぎていった――