「……何だってんだ、一体……」
身体を動かすことに支障がないことを確認しながら、ゆっくりと身体を起こす。目の前の光景に何ら変わりはなかった。
が、完全に雰囲気というものが違っていた。何というか……目に見えない圧倒的なプレッシャーとでもいうのか。無言の力の圧力。まるで大気全てが自分を押し潰そうとしていると錯覚させるような。
いつのまにか空には暗雲が広がっている。
俺の本能は告げていた。
すぐにここから離れろ、と。
だが――
(離れるわけには、いかねえみたいだな)
あの時と同じ感覚が自分を支配していた。
そう……あの夜、あの黒い悪魔と対峙した時と、全く同じ感覚が。
(あっちからか……)
舌打ちをして、俺は走り出した。
その雰囲気が発されている大元である場所――高等部のグラウンドへと。