1月24日(木)  18:30     高等部グラウンド

 

 

「我は放つ光の白刃!!」

 描いていた構成を何のためらいもなく放出する。しかし、ぐんぐんと加速しながら標的へと突っ走る光の奔流は、たった一睨みで跡形もなく霧散する。

 地獄絵図というのはこんな感じなのだろうか――

 そんなことをぼんやりと思いながら、俺はぎりぎりまで構成を編む。例えそれが無駄なことであるとわかっていても、何もしないよりはマシである。

(とはいえ……何かした所で結果が変わるとは思えないけどな)

 胸中でひとりごちる。構成はほぼ編み終わっていたが、それを今開放した所で先ほどの二の舞であることはわかっている。けれど、やらねばならない。

 ――何のために?

(……無駄だってのはわかってる。このまま、ここにいる人間が全滅するのも時間の問題だ。……先生だって何もかもが万能ってわけじゃない――現に)

 チャイルドマン先生が苦戦している。それなりにダメージは与えているようだが、けして致命傷というわけではない。

(あの、先生が、だ。……一体俺に何ができる? 何をしても無駄だというのなら、逃げてしまえばいい――)

 この論理は大方の人間に当てはまったらしく、一目散に校門の方へと走り去った者も少なくない。正しい判断だと言えるだろう。

(そうだ。俺は別に間違ったことを考えているわけじゃない……逃げたところで、誰が俺を責められる? 誰だって自分の命がかわいいんだ。命あってのモノダネだろう? 俺は……こんなところで、死にたくない)

 そう考えた瞬間、編み上げた構成が崩れかける――が、何とか持ち直す。このまま霧散させてしまうくらいなら、早いところ開放してしまった方が良さそうだった。

「我は――」

(……何で、死にたくないんだ……?)

 唐突に、ぽっかりと浮かんだ一つの疑問が物凄い勢いで頭の中を支配していく。まるで、それに対する答えを、ごちゃごちゃの頭の中からまさぐり出そうとするかのように。

(それは……死にたくない、理由は――)

「放つ――」

 本当はわかっていた。全てわかっていた。

 それはあまりに単純すぎて、自分の中では当たり前のことすぎて、まさぐらなくてもすぐ目の前にあったというのに、目の前すぎて気付かないほどの――たった一つの思い。

(俺は、あいつに……まだ、何も言ってない!)

「光の――」

(そして、ここで逃げたら――あいつに、何て顔して会えばいい? こうなってしまったのには俺にも責任がある。全ての責任を放棄して、のうのうとどの面下げて会えってんだ? せめて一言でいい。俺は、あいつに――)

 伝えなきゃならないことがある。

「はくじ――」

 最大限に構成を開放しようと集中する。瞬間的に身体中が総毛立つような感覚に襲われる。

 その、瞬間だった。

「やめてェっ!!!」

 甲高い、金切り声がグラウンドにこだましたのは。

 

同じ表現を多用するのはよろしくないですね。マジ申し訳無い……。ぐっすん。うるうる。(こら)