グラウンドの中心に近づくにつれて、うすぼんやりとした結界に包まれたレキが身体を動かそうとしているのがわかった。もう結界の限界が近いのだ。
「先生!」
俺とクリーオウはチャイルドマン先生の下へと駆け寄る。先生は俺たちを横目でちらりと確認し、そしてクリーオウに改めて視線を合わせる。こくり、と至極真面目な顔をしたクリーオウが頷いた。
「キリランシェロ、やばいぞ! もうもたない!!」
ハーティアが切羽詰った声で現状を伝えてくる。レキの周囲の光がわずかに振動を始め、少しずつ闇へと溶けていく。もう、時間はない。
「クリーオウ」
俺の呼びかけに力強く頷くと、揺るぎない光を湛えた瞳がこちらを見返してきた。直視するには眩しすぎるような、そんな感覚を抱かせる強き意志の光。にっ、と笑って、クリーオウが言った。
「行ってくるね、オーフェン」
「ああ、行ってこい。……お前ならやれる」
一瞬、クリーオウの顔が呆けたようになり、くしゃりと歪みかける――が、すぐににっこりと笑い、
「……うん!」
そしてクリーオウが駆け出したのと、ハーティアの叫びはほぼ同時だった。
「ダメだっ! 動き出すぞ!!」