それから毎日、クリーオウは大学のチャイルドマン先生の教室へと出向いた。レキの様子を見るためと、レキを落ち着かせるためである。
まだ危険性が除去されたわけではないのでレキを結界の中から出すことはできなかったが、時折、大きめの結界を張り、その中でクリーオウとレキが戯れたりしていた。
その後、レキに変調が訪れることはなかった。どうやらあの夜に、レキ自身が向こうからの支配を断絶してしまったらしい。
完全に断ち切ったというわけではないだろうが――、自我を持たないはずのディープ・ドラゴンに自我のようなものが芽生えたということで大学の教授陣の間では論争が絶えない。
つまるところ、懲りもせずレキを実験、観察……そういった研究目的でしかレキを見ない者達が動き始めたのだ。
そんな彼らに対しクリーオウは当然のことながら憤慨し、レキを勝手に結界内から持ち出して教授陣があれやこれやとレキについて画策していた所に乗り込み、勢い余って大学の講義棟ごと吹っ飛ばしかねないという騒ぎを起こしかけた――というのも記憶に新しい。
それ以来、レキは自分にそういった目的で近づこうとする者は敵と見なすよう「学習」してしまったらしく、不貞の輩も大人しくする以外になくなったというわけだが。災い転じて福となす――というのは、こういうことを言うのだろうか?
……いやまぁ、多分、違うのだろうが。
そして、時はあっという間にすぎていった――