キ――ンコ――ンカ――ンコ――ン……
桜の花が舞い散る学園内に、お見送りとばかりにチャイムが鳴り響く。
『お見送り』というその通り、今日は卒業式だ。牙の塔学園第27期・高等部卒業式はしめやかに行われ、そして卒業生の涙声まじりの歓声と共に終了した。
終了後、昇降口から吐き出された卒業生は輪になって話し込んでいたり、写真を撮ったり、抱き合って泣いたりしている。皆、思い思いにこの学園から去る事を名残惜しんでいるようだった。
とはいえ、高等部の卒業生の約半数がそのままエスカレーター式にここの大学へ入学するのだから、単に春休みの間に会えなくなるのを惜しんでいるようにも見える。そんなもんだろう。
俺は小さな花束――といっても一輪だけだが――を片手に、そんな卒業生達の間をぬって、ゆっくりと歩いていった。
そして、目当ての人物を見つける。
金の髪を揺らして、後方の――友人だろうか?、女生徒二人にぶんぶんと手を振っている少女。後ろ姿ではあるが、見まごうはずもない。
手を振り終わった彼女が、こちらへと歩き出そうと振り向いた所で、声をかける。
「相変わらず、元気だな」
俺の声に顔を上げた少女が、びっくりしたように言った。
「オーフェン! どうしたの、こんなところで」
「どうしたのって……あのな、これが焼肉食いに来たように見えるか?」
「全然見えないけど」
即答してくる彼女に頭を抱えたくなるのを抑えながら、持っていた花束を無造作に差し出す。
「ほれ。卒業祝いだ」
「くれるの?! オーフェンが?!」
「……それはどういう意味だコラ」
半眼になりながらつぶやくが、クリーオウはおかまいなしに花束を受け取り中をのぞきこんだりしている。
「へー、造花じゃないんだ」
「……お前が俺のことをどう思ってるかがそこはかとなく理解できた」
「冗談よ。……ありがと、オーフェン」
花束を大事そうに胸に抱えなおして、笑顔のクリーオウが言った。その笑顔が妙に眩しく感じられ、何となく直視しにくいように感じる。
(……ま、いいけどな……)
「ところで、お前はいいのか、行かなくて」
「行くって、どこに?」
「ほら、友達とか……皆集まってるみたいじゃねえか」
と、俺はそこかしこで輪になっている卒業生達を手で示した。
「いいの。もしオーフェンが来てくれなくても、この後
(? 俺が来てくれなくても?)
「あ、ほら行こ、オーフェン。レキに会いに行かなきゃ」
何となく引っかかるものを感じたが、それを口に出す前にクリーオウに腕を引っ張られる。仕方なく俺はそれに従うことにした。