「さて、もう少しで街に着くが、この街に入る前に言っておく事がある」
「ん、な~に?」
既にクリーオウの心は街に向かっているのか、直ぐにでも走って街を見物しに行きたいようだ。
「いーから聞け」
クリーオウは未だ不満そうだが一応聞く気にはなったようだ。
「いいか、まずこの街は昔――何百年昔かは知らないがドラゴン種族に滅ぼされた事があるらしい」
「滅ぼされたって……レキのお母さん達に?」
自分の胸に抱いているレキを見ながらクリーオウはオーフェンに問い掛ける。
「いや、どのドラゴン種族かは知られていない。まあ、どのドラゴン種族でも街ぐらいは簡単に滅ぼせるだろうからな。でだ、そう言う経緯があってな……この町にはドラゴン種族を根絶やしにする事を夢見ている狂信者達が居る」
「ふーん、暇な人達もいるものね~」
クリーオウはそんなの関係無いとばかりにレキの頭を撫でている。
「はあ~、まあそう言う事だから街の中ではレキの力は使うなよ」
盛大に溜息をつきながらクリーオウを見る。
「解ったなクリーオウ……」
「マジク! わたしの半径10メートルに近づくなって言ったでしょ!?」
何時の間にか追い付いて来たマジクを見つけたクリーオウが叫ぶ。
「と言う訳で、レキ! やっちゃいなっむぐっ」
「それをやるなと言っとろーがぁ!!」
片手でクリーオウの口を塞ぎつつレキを取り上げる。
マジクはクリーオウが叫んだ”レキ”の時点で気を失っていた。
そんなこんなで結局、オーフェンがマジクを引きずって街に入っていった。
「いいか? 絶対に街中でレキの力を使うなよ!?」
「分かってま~す! その代わり買い物に付き合ってね♪」
そう言いながらクリーオウはオーフェンの腕に抱きつき笑顔を浮かべた
「へいへい、御付き合い致しますよお姫様」
と言いつつ腕に当るクリーオウの胸の所為か、オーフェンは頬を紅くして自分に言い聞かせていた。
(意識するな、意識するな…………結構、あるな……って、違う!)
そんなオーフェンの苦悩を知ってか知らずかクリーオウは嬉しそうに笑っている。
「ふふ、オーフェンと買い物~♪ 何かって貰おうかな~♪」
オーフェン達はマジクを引きずりながら、最初に目に入った宿に入っていった。
後の物陰に潜む影には気付かずに……