オーフェンのつぶやきが聞こえたのか、暗殺者達が飛びかかって来た。
 それを見据えたままオーフェンは不敵に笑う。
「へっ、不用意に近づきすぎだぜ! 我は流す天使の息吹!!」
 叫び声を上げつつ後に居た仲間を巻き込み飛んで行く暗殺者。それを見ても顔色を変えずに間合いを詰めてくる彼らを見てオーフェンは呟く。
「ちっ、思った以上に厄介だな……」
「そんなのどうでも良いじゃない。要はみんな倒せばそれで終わりでしょ?」
 クリーオウの言葉を聞きオーフェンは、やっぱりお前は凄いよと苦笑した。
「そうだな。じゃあ、徹底的にやるぞ相棒!!」
「任せて!」


 2人の会話が終わるのを待っていたと言う事は無いだろうが――オーフェンの視界の外に居た暗殺者の一人が、オーフェンにナイフを投げる。
 示し合わせたようにオーフェンの正面からも一人、襲いかかって来る。
 自分の視界の外のナイフを意識したまま、しかし気にせずにオーフェンは正面へ右手を向け叫ぶ。
「我は放つ光の白刃!!」
 ナイフの方を対処すると思っていたのか、驚愕の表情で吹き飛ぶ暗殺者。
 このままではオーフェンに当ると思われたナイフはクリーオウが手に持ったクワの棒で弾き、そのまま別の方向から向ってきた暗殺者の方に向いた。
「レキ!あっちの方をやっちゃって!!」
 クリーオウが叫んだ瞬間、彼女が示した場所に居た暗殺者は吹き飛んでいた。


 さすがに迂闊に飛びこめないのかジリジリと間合いをはかる暗殺者達。
 しかし、間合いが開くと言う事はどういう事になるか……
「我が左手に冥府の像!!!」
「レキやっちゃえぇ!!!」
 オーフェンが放った黒球は暗殺者達には当たりはしないが、地面と接触した瞬間に暗殺者を巻き込み大爆発を起こした。
 クリーオウの叫びの後は、レキの視界内に居た全ての暗殺者達が吹き飛び立っている者は誰も居なかった。


 残った者達は五人程で、ヤケになったのか全員で突っ込んでくる。
 オーフェンはそのうちの一人へ、足元にあったナイフ――暗殺者の物だ――を投げる。流石に素直に受けるわけもなく、暗殺者の一人はナイフを弾いた。が、その反動で体勢を崩す。
 その瞬間にクリーオウが飛び込み、手にしている棒を突き出した。まともに受けてしまったそいつは、棒を掴んだまま吹き飛び意識を失った。――残り4人。
 武器を失ったのを好機と見たのか、近くに居た暗殺者がクリーオウに向かう。
 しかしクリーオウは笑っている。
「残念でした♪ レキ、吹き飛ばして!!」
 あまりにも迂闊な暗殺者が最後に見たのは、クリーオウの輝くばかりの笑顔だった。――残り3人。


 残った3人がオーフェンに向かっていく。彼らからしてみれば、せめて一人でも考えたのだろう。
 オーフェンは3人の内一人に向かって行く。それに合わせ暗殺者がナイフを突き出して来たが、それをそらし相手の鳩尾に肘を入れると、残った二人の方へと投げ飛ばした。
 飛んで来た者を避け左右に分れた残り2人の1人にオーフェンは意識を向け唱える。
「我は放つ光の白刃!!」
 暗殺者が光の渦に巻き込まれたのを視界の端で確認しつつ、最後の1人に向う。
「我掲げるは降魔の剣!」
 相手がナイフで切り付けてくるが、オーフェンは見えざる剣で弾く。そのまま相手の膝を蹴り抜き、落ちて来た顔面に膝蹴りを叩き込む。
「これで残りはゼロだ……」


 周りに立っている暗殺者が居ないのを確認し、クリーオウの所へ駆け寄る。
「クリーオウ、大丈夫か?」
「大丈夫よ。それよりも来たわよ」
 そう言ってクリーオウが指し示す方を見ると、こちらへと近づいてくる者が居る。数刻前に出会った女性だった。
「流石に言うだけの事はあるわね。で、どう? まだ渡す気にならない?」
 先程と同じ笑みを浮かべ余裕の態度を崩さずに言う。
「当たり前だ、欲しけりゃ俺達を倒すんだな」
「あなたなんかにレキを渡すもんですか!」
 2人は当たり前の事を聞くなとばかりにカタルシアを睨む。
「ふふふ、早くお別れを済ます事ね……今度は手加減しないわ」
 そう言うとカタルシアは腰の刀を抜き、ゆっくりと構えた。


 緊張感が高まる中、雨はその強さを増し始めていた…………