● 純米酒は美味いか?

   「で、つまるところ純米ならうまいの?」という質問には「はい!」とは言い切れない し、強硬に主張する気にもなれない。まじめに造ったものの方が仮においしくなる確率は高くなったとしても 全部が全部おいしくなるわけではない。とてつもなく不味い純米もあれば、それに比べてほんの少しアル添 したうまい酒もあろう。また純米はアルコールと水(及びその他)で薄めないから濃厚な味が 造りやすいが、濃厚なことが万人においしいわけでもない。
   しかし、「純米は味が濃くて甘いから嫌い」という意見があるが、これはあまりの偏見で ある。純米でものすごい辛い酒(エキス分(主に糖分)がよりアルコールに変化している)も造ることは 可能であり、そういう酒もある。辛いワインでアルコールを添加するなんてきいたこともないし、私に 言わせればアルコールと水で薄めておいて辛いも何もないだろう、というところだが、まあそれは個人の 好みとしよう。

   つまり何を言いたいかというと、私はアルコール添加は技術の一つと認めたとしても、 それを添加してないものと比較することに全く意味を感じない、ということである。今まで純米であるか 否かをうんぬんするたびに、しばしばナンセンスであるという抵抗をうけた。「日本酒は日本酒でいーじゃん」 「本人がうまけりゃいーじゃん」・・・・・・ここは非常に重要だが、この日本人的「どうでもいい」感覚が これまでの主に大手の偽物造り(現在でも清酒全体の7割が普通酒だ)を支えているのだと思う。 ちょっと話がそれたが、この辺りの話は他のところ(日本酒について 思うこと日本酒の種類など)でもっとたくさん語っているので これぐらいにする。

   純米酒はうまいか、つまり日本酒はうまいか?うまいのもあれば不味いのもある。 それは自然の力を借りた言わば半農業産物であるから、同じ酒でも年によって味が変わるし、ワインより 傷みやすいので、いい加減な保存をすれば不味くもなる。飲食するもの全てに自然と言えることだ。

   でもそれでは何も言ってないのと同じだ、と言われる向きもあろうか。私個人の好みを述べて おこう。
   私はアル添酒の 不自然なアルコールの広がり方がきらいである。純米酒と偽る(と私が判断する)ものもこの感覚でだいたい わかる。でもほんの少しのアル添まで判断できるか?と意地悪試験をされても多分できないだろう。でも 私は純米酒の味の方が断然好きである。個性も純米の方が出やすいし、個人的に濃くて強力な味を好むのもある。 甘い酒も好きである。別に辛いのが嫌いなわけではないが、ただ薄いのを辛いと評価する傾向にはもう飽きた。 純米の原酒18〜20°とか聞くと小躍りしてしまう。そういう酒は濃くて甘いと思われるであろうが、しっかり した造りの酒は原酒のような状態でも切れよく、しつこくない。辛党も満足することと思う。純米だと個性が 強調されるのもいい点である。同じような味のものばかりじゃつまらない。どうせいろいろ飲むのだから。 バランスが良くなるのも純米ならではと思う。まさに準自然の産物というか。(“純”ではない。人の手が かかっていますからね)アル添のよく言われる理由に“調整のため”というよくわからない理由があるが、 滞りなくしっかり造られた純米には味・香りなどバランスは絶対かなわないと思う。( <過度のアル添による 吟醸香残し+ヤコマン=とても飲み物とは思えない香り> なんて冗談みたいな酒も吟醸ブームの頃には 多分あったでしょうからねえ・・・。)

   良く出来た純米吟醸とかを口に含んだ時のあの幸せな感じは他では味わうことのできない。 世の中楽しいことばかりじゃないが、生きててよかったと思う。(というのはオーバーか・・・)ああ、日本酒って すばらしい!!


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