私の名前は水島。

悪いが、下の名前は聞かないで欲しい。


性別は女、年齢25歳。

ごく普通の、出世願望も、結婚願望もない、本当に普通のOL。

人とつかず離れずの独りを楽しく過ごす生活を、ごく普通に送っていた。

これからもそうでありたい、そんな私の願いは、突然、神様の華麗なるボレーシュートで遥か空の彼方に飛んで行ったようなものだ。


色々あって…現在、私は…呪われている。


”縁切り”という名の呪いのせいで、私は”ややこしい女性”に好かれやすい傾向にあり・・・

ややこしいトラブルに巻き込まれやすい体質になって、日常をヒイヒイ言いながら過ごす羽目になってしまった。







季節は、もうすぐ冬の到来を告げるような寒さを含んだ風が吹く。

しかし、私は・・・いや、今の私達には、季節もへったくれも関係ない。


場所は、とある駅の端っこにある女子トイレ。

決して清潔とは呼べない和式2組と洋式が1組設置された、芳香剤の匂いもするかしないか微妙な臭いが漂う、狭く薄暗い一般的な公衆便所である。

そんな一般的な公衆便所からは聞こえるはずのない鎖の音が、ジャラジャラと鳴る。

・・・それは、私が右手を動かす度に、いや、誰かが動く度に音がするんだから、しょうがない。



額から汗が滲み出てくる。

私はペンチを握る手の震えを抑えながら、目の前のセーラー服の少女に聞いた。


「・・・貴女の、好きな色は?」

「私の・・・す、好きな色・・・?」


彼女もまた鎖に繋がれ、問題の”ソレ”を持つ手も恐怖で震えている位だ。

・・・もう、彼女の精神力は、限界かもしれない。

声も震えて、目からは、先程からいくつもの涙が零れて頬を伝っている。



「・・・そんなもんどうだっていいわよ!どっちか早く切りなさいッ!水島ッ!」


火鳥は火鳥で、顔を強張らせながら”そんな馬鹿馬鹿しい質問している暇等ない!”とばかりに私を睨んで一喝した。


そんな事言ったって、事は簡単に決められない。

命がかかっているんだから。


”いつも通りに逃げればいいだろう”って?


それが出来たら、とっくにそうしている。


・・・私は・・・いや”私達”は、今動けないからだ。


私達、女難の女は、そういうトラブルから共に逃れられない・・・そういう運命だから・・・



で、片付けてたまるか!何よ!この状況!映画でも無いわ!こんな状況!



”カチカチカチ・・・”


「・・・ご、5分きった!・・・もう、もう時間がないわ・・・!」


少女がタイマーを見て声を上げた。

私はハッとした。心の中で逆ギレを起こしている場合じゃない。


「水島!早く切りなさい!何をグズグズしてるのよッ!これで死んだらアンタのせいよ!」

火鳥は自分の鎖を引っ張りながら、私に向かって叫んだ。


「・・・2人共、黙ってて下さい・・・。」

冷静を装って私は二人にそう言った。


本音を言えば、私だって何もかも放り投げて、無茶苦茶逃げ出したい。


でも、出来ない。


何故かというと・・・。


只今、私達の目の前には『爆弾』を持った『女子高生』がいる、という女難の女にとってのアンハッピーセットがあって

なおかつ・・・火鳥の右手と私の左手が手錠で繋がれ、私達の足もそれぞれご丁寧に鎖で配管に繋がれている状態だからだ。

女子高生は両手両足を手錠で繋がれ、爆弾を持たされ立っている状態。

彼女が両手に持っている箱を傾けたり、落としたりすれば爆弾が爆発する。


火鳥は、さっきから自分だけ逃げようと必死に鎖を解こうと引っ張ったりしているだけだ。・・・無駄なのに。


唯一、私が自分の意思で自由に動かす事が出来るのは、私の右手(利き手)だけ。


状況は、強引かつ史上最悪もいい所だ。


・・・突然の展開と作者の文章能力の無さのせいで、何がどうなっているのか訳が解らない読者もいると思う。


私だってそうだ。こんなの信じられやしない。


”女難か”と思えば、まさか、こんな”爆弾を解体しなきゃいけないトラブル”に発展するなんて、一体どこの大馬鹿野郎が考えるんだろうか。


 ※注 ・・・そいつは、悪かったな。考えたのも書いたのも私だ。



・・・つべこべ頭の中で呟いている場合じゃない・・・今は一刻を争う時だ・・・!


(・・・だけど・・・!)


私は恐怖に震え、残された単純な作業である”それ”が、出来ずにいた。



私はペンチを持つ手の汗を服で拭い、再びペンチを握る。残された時間は少ない。


私達は・・・爆発して死ぬのか、それとも助かるのか・・・


全ては・・・この決断にかかっているのだ・・・。



「・・・水島ッ!いいから、とっとと切りなさいよ!!」

「叫ばないで!だったら、自分で切ればいいでしょうが!!」


「それが出来たら叫ばないわよ!アタシは動けないし、届かないんだから!やりなさい水島ッ!!」

「だったら、私に向かって叫ぶなッ!気が散るッ!!」


「早く助けてぇーッ!」

「お前も泣き叫ぶなッ!気が散るッ!」






一体全体、何故・・・私と火鳥と彼女が、こうなったのかは、これから語ろうと思う。







[ 水島さんは解体作業中。 ]







その日、私は病院にいた。



「あ、水島さんだ!ねえねえ、点滴打っていきませぇん?」

「ど、どういう誘い方なんですか!?それ!・・・い、いいです・・・遠慮します・・・!」



明るい白衣の悪魔・・・看護師Aさんとこんな不毛な会話をかわしながら、私はK病院の待合室で、診察を待っていただけだった。


あのね、言っておきますけど待合室って待つ場所だから。看護師さんに変なアプローチ受ける場所じゃないから!一体なんなの!?この病院はっ!

・・・とか心の中で呟いていた。(小心者だから)



「そういう可愛いリアクションしているから、逆にちょっかいをかけられるんじゃないの?」

「別にそんな事は・・・あ、烏丸先生。」


診察室から顔だけ出して、烏丸女医は相も変わらず、何がそんなに面白いのかわからないがこちらを見てクスクス笑っている。

烏丸女医が現れると同時に、看護師さんは”マズイ!”という顔をして慌てて業務に戻ってくれた。


(・・・やれやれ、助かった・・・。)


「さ、どうぞ?点滴は、また後でね?」

「あ、はい・・・。(・・・本当に点滴やるんだ・・・。)」


私は、仕事の合間を見計らって課長に許可を貰い、会社を抜け出しては、K病院にまだ通院していた。

というのも、盲腸、階段から転落して頭強打等・・・まあ、病と怪我のオンパレード女だから、という理由が一つ。


「・・・はい、終わり。・・・術後の経過も良いみたいだし、大丈夫ね。痛み止めは、もう飲まなくても平気?」

「はい。痛みもないです。」


触診を終えて、烏丸女医はカルテに記入しながら、私に質問をする。


「じゃあ、お薬は今回無しという事で。」

「はい。」


(はー・・・)


服を整えながら、心の中で私は安堵の溜息をつく。

こういう淡々とした会話のやり取りが、ごく自然と当たり前のように”女性”と出来る事に私は今更ながら感動を覚えていたりする。


・・・烏丸女医は、私の女難生活の中で貴重な人間だ・・・。


私の縁の呪いなんか通用しない人も、探せばこうやっているのだ。

人は皆、患者に見えてしまい、それ以外の人に興味は無い、というのが烏丸女医だが、人嫌いの私にとっては実に親切で良い先生だ。


「・・・大分、疲れてるわね・・・やっぱり、例のアレ?」

「・・・ソレです。」


もう一つ、通院していて良かったかもと思う理由の一つ。

女難で疲れた身体のメンテナンスは、このやるせない事情を知っていて、なおかつ治療のプロに任せるべき・・・私は、そう思う。


・・・事実、私は疲れてる、と実感していた。


足、もう4本くらい生えても良いよ!と思う所まで、女難から逃走する為に酷使された身体は、烏丸女医の診断通り”大分お疲れ”状態なのだ。



それもこれも・・・あの女、火鳥莉里羅のせいだ・・・!


こうしている間にも、あの女が私になりすまし、女性をひっかけまくって、そのツケを全部私に回そうとしているのだ・・・!


・・・もう勘弁ならん、謝っても許してやらんぞ・・・!!

私だって、火鳥の女難の一人の電話番号を知っているんだから・・・何かやろうと思えば、女難の一つや二つ、奴に仕掛けてやる事くらい出来るんだ・・・!


とまあ・・・柄にもなく、私は怒りに燃えていた。


そんな私に烏丸女医がこう言った。


「・・・やっぱり、点滴打って少し休んでいきなさい。少し顔色が悪いわ。」

「え・・・そうですか?元からこういう顔色だと思うんですけど・・・。」


私は、両手で”遠慮します”のポーズを取ったが、烏丸女医がそれを遮った。


「つべこべ言わない。・・・私の休憩時間が無くなるでしょ?」


そう言って、白衣のポケットからタバコをチラリと見せ、悪戯っ子のような笑みをこちらに向けた。


「・・・ああ、そういう事ですか・・・。」


(・・・物好きだな、この人も・・・)と思いつつも、その気持ちが解る喫煙者の私は苦笑してしまった。

烏丸女医は、K病院の長女という顔を持ちながらも、患者に喫煙を勧めつつ、自分も休むなんて事をやらかす、不良な部分もある女医さんだ。






通称:Lルームと呼ばれる個室には、今日も人はいない。

烏丸女医がレズビアンだという設定の噂の根源なのに、空室でいいのだろうか。


・・・あ、そうか、なるほど。来患の私とこの部屋にそれなりの時間を過ごせば、その”設定”は、まだ成立するんだろうな。と私は自分の中で納得した。


ま、私は女難の人間嫌いの女だし、この病院内で、誰が何をどう噂しようと関係ないし、気にもしないので、別にどうでも良い事だと割り切っている。

何より、彼女は私の女難では無いのだし。私は安心だ。


「はい、座って腕出して。・・・30分くらいで終わりだから。寝るなり、タバコ吸うなりしてて良いわよ。」


ベッドに座り左腕を出す私に点滴の針を刺した後、烏丸女医は、てっきりタバコを吸うのかと思えば

私の隣に座るとコンビニ弁当を出して、割り箸を割った。


「・・・じゃ、いただきまーす。」


小さなコンビニ弁当は、野菜の煮物と肉団子としらす御飯が入っただけの本当に小さな弁当で

事務課で『あたし、ダイエット中なの〜』が口癖のぽっちゃり系を悲しくも通り越してしまった、どすこい系の先輩が好みそうな弁当だった。

 ※注 水島さんは、相変わらず同じ仕事先の同僚や先輩の名前を覚える気がないらしく、心の中ではその人物の表現も酷い。



「もしかして・・・烏丸先生・・・今、お昼ですか?」


・・・時刻は、2時30分を過ぎた所だ・・・もうお昼って時間じゃない気がする。


「そうよ、医者は本当に忙しいの。言っておくけど、コレは昼と晩兼用。」

「昼と晩兼用って・・・それで、足ります?ていうか、コンビニ弁当って・・・」


(なんか、意外・・・。)

医者って一般OLより稼いでるんだから、お昼も優雅に高級品でも食べてるんじゃないかと私は思っていた。


「まあね。母が作るってよく言ってくるけど、こっちの方が都合が良いのよ。結局忙しくて、食べられない方が多いから。」


「・・・へえ・・・ぇ・・・。」


私は相槌を打ちながら、烏丸女医の箸の動きを見ていた。

見ていたというか、凝視してしまった。


・・・なんというか・・・意外というか・・・


烏丸女医は、食べるスピードが早い。

とにかく早い。無茶苦茶早い。

アメリカのホットドッグ早食い競争ですか?って位、早い。

ほとんど、噛む事無く飲んでいるようにも・・・見えなくも無い・・・いや、それだけ早過ぎるのだ。


・・・烏丸女医は、いつもこんな風に食事を味わう事もなく、飲んで・・・いや、食べてるんだろうか・・・。

一応、お医者さんなのに、消化に悪そうで、なんかこう・・・美味しさの伝わりにくい食べ方を・・・。


「ま、こんな生活だから、他の先生も心配な方はいるけど・・・医者の不養生ってあながち嘘じゃないわね。」


そう言うと、烏丸女医はラストスパートをかけるように、弁当を傾け、箸で残りを口の中にかき込んでいった。

淡々とした表情で、淡々とした食事を終えると、ペットボトルのお茶を彼女はぐいっと飲み、あっという間に食事を終了させた。

それは”食事”というより、単に栄養を摂取する(流し込む)”作業”に近いモノを見せられた気分になった。


「・・・なんか、大変なんですね・・・。」


食事を終えたらしき烏丸女医の横で、私は心の底から思った事を口にした。

食事している人の横でタバコを吸うのは、どうかと遠慮していたが、こうも早く終わるとは思ってなかったので、私はタバコを出すのも忘れていた。


「まあ、日頃の貴女の苦労に比べたら、どうなのかしらね?」


そう言って何事も無かったように微笑む烏丸女医。


(・・・ど、どうなんだろうか・・・?)


そんな事を聞かれても、比べるようなものでもない気がするし、どうなのかは私にも、わからない。

とりあえず、私はタバコを出して一本咥え、ライターを出して火を点けようとしたが


「で・・・うちの従姉妹、何かしてこなかった?」


それより先に烏丸女医が、私にライターの火を向けた。

私は、素直にその火を借りた。


「・・・・・・あぁ・・・どうも・・・。」


私はタバコの煙を吸い、少し視線をずらした。


さて・・・どこまで話そうか・・・いや、話して良いのか?と私は考えた。

火鳥と従姉妹、という関係だというだけで、烏丸女医は私と火鳥の争いには、厳密に言えば無関係なのだ。


「・・・・・・どうやら、何か、やったみたいね?」


私の無言にそれを悟ったのか、烏丸女医の声が低く、目は真剣なものに変わった。


「・・・・・・ええ、まあ・・・。」

「・・・あの子、貴女に・・・一体、何をしたの?」


言おうか、言うまいか迷った。



 『貴女の従姉妹、いい歳して、私のコスプレして、私の女難を勝手に増やしてすっごく困ってます★』



・・・なんて、言って信じてもらえるか・・・いや、信じてもらえたとしても・・・。


「・・・いや、別に・・・。」


・・・なんというか、文章にすると被害者のこちらまで、恥ずかしくなってくるではないか。

烏丸女医に、この現状を報告するのは、少し気が引けた。



「・・・いいのよ、私に遠慮せずに言って。私は貴女の協力者よ。・・・それに、私にも出来る事があるかもしれないわ。」


烏丸女医は窓を開けると、私の方を向き直ってそう言った。



「・・・言って。」


「・・・・・・・・・・・。」



私は、タバコの煙を吐いた。

烏丸女医の無言の圧力が、私にのしかかる。


「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」



「・・・言って。お願い。」


沈黙を破った二度目のその台詞で、彼女の表情が少しだけ変わった。

それは、どこか辛そうにも見える。


「・・・・・・・。」


・・・今はあんな黒乳首でも、一応・・・彼女曰く『昔はいい子だった』らしいし・・・

遂に見境を無くし、私に化けるという行動を取る様になり、どうしようもなくなってしまった従姉妹の行動が気になるのは、仕方のない事だろう。

 ※注 心の中で言いたい放題の小心者・水島さん。


本音を言えば、これは火鳥と私の問題であって、これではまるで烏丸先生に告げ口をするような感じがして、あまり言いたくはなかったのだが・・・

烏丸先生は、火鳥と全くの赤の他人という訳ではない。


(仕方ない、か・・・。)


「・・・・・・実は・・・」


私は、自分で知ってる限りの事実を彼女に話した。

火鳥が私に化け、水島として女性達に声を掛け、女難を増やしている事・・・。

これ以上の女難増加を食い止めたければ、儀式に参加しろと脅迫してきた事。


「・・・そう・・・それは・・・本当に迷惑を、かけたわね・・・。」


本音を言えば『全くその通りですよ!』と言いたかったのだが・・・

烏丸先生は、火鳥と全くの赤の他人という訳ではない。

従姉妹想いのこの人の前で、ましてや"責任を感じてます"という顔をしている烏丸女医に向かってこれ以上、火鳥の悪口はさすがに口には出来ない。



「いえ、そんな事ないですよ。」

「・・・顔に思い切り”怒ってます”って書いてあるわよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」


ど、どうして解ってしまったんだろう・・・私としては、無表情をキープしたつもりだったのだが・・・。

私は黙ってとりあえず煙を吐いた。


「・・・どうするつもり?水島さん。」

「・・・どうするも何も・・・儀式する気は無いですから。」


「でも、これ以上トラブルを増やされるのは・・・」

「ゴメンです。」


私は即答した。


「でも・・・あの子に、今、何を言っても素直に聞くなんて事はないだろうし・・・」


烏丸女医の言うとおり。

『やめて!』と言って、素直にあの女が『はい、止めます』と言う訳が無いのだ。

あの女は、自分の望み通りに事が運ぶまで、あの馬鹿馬鹿しい嫌がらせを続ける気なのだろうか。


もし、そうならば・・・それを止める術は、一つしかない。


「だから・・・目には目を、女難には女難を、です。」

「どういう事?」


烏丸女医は目を丸くして私を見ると、話に耳を傾けた。


「こっちには、火鳥さんの女難の一人の電話番号がありますから。これで、連絡してしまえば、私だって女難をあっちに送り込むくらいは・・・」


そう、こっちには火鳥の女難”高岡 円”の電話番号があるのだ。

 ※注 詳しくは『水島さんは回復中。』をご参照下さい。


火鳥の仕事先の大事な娘さんらしい彼女に連絡を取れば・・・


「でも・・・それ、繋がるかしら・・・。」


烏丸女医が、ふとボソリとそう言った。


「・・・え゛?」



「・・・もしも、私があの子の立場だったら、自分の弱みになりそうな所は、即、潰しておくわ。

その女難の人の電話番号変えさせるとか、貴女の言う事なんか聞く耳持つなって言っておくとか・・・」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」




私は、言葉を失った。烏丸女医も腕組みを解いて、黙って自分のタバコに火を点けた。




「そ・・・それは・・・あり得ますね・・・。」


私はやっとそれだけ言うと、その場ですぐに携帯電話出し、電話をかけてみたが・・・


・・・・・・やはり、烏丸女医の言うとおり、高岡円に電話は繋がらなかった。



「・・・・・・・・・・・・。」




・・・『目には目を、女難には女難を作戦』・・・大失敗!





「・・・・・・・・・・。」


私は、がっくり肩を落とした。

一晩かけて思いついた名案が、ものの数分で水泡に帰したのだ。

 ※注 一応、水島さんなりの持てる知恵を振り絞った結果の作戦だった・・・らしい(笑)


私は力なく、タバコを携帯灰皿に入れ、2本目に火を点けた。


(・・・わ、私・・・こ、こんなんばっかりか・・・。)


そんな私の隣に、烏丸女医は再び座って、メンソールのタバコの煙を吐きながらこう言った。


「・・・でも、水島さん。貴女の考え、あながち間違ってはいないと思うわ。

女難が弱みって点も同意見だけど・・・私が思うに、りりの一番の弱みは、多分・・・貴女だと思うの。」


「・・・私が、火鳥さんの弱み・・・なんですか?」


私は信じられないという表情を浮かべて、烏丸女医を見た。


「そうよ。だって、貴女に変装してまで・・・りりは、貴女を儀式相手にしようといるのよ?

貴女がいつまでも自分に屈しない事に、自分の思い通りにならない事に、あの子はかなり焦っているに違いないわ。」


「それは・・・」


いい迷惑だ。正直、ハッキリ言って、いい迷惑だ。


・・・いや、そうじゃなくて。




烏丸女医の言うとおり、私が儀式を拒んでいる限り、女難に困っている状況は、火鳥も同じなのだ。

女難は私と火鳥の共通の弱点であり、私は儀式の事など頭には無いが、火鳥の狙いは、あくまであの18禁的儀式をする事。

そして、その儀式に必要な”私の身体”が目当てなのだ。


・・・・・・・・・。


こうやって、文章にしてみると、本当に生々しくて嫌だなぁ・・・としみじみ思うが、火鳥があんな手段まで使っている以上

烏丸女医の言うとおり、あの女は焦っている、そして”本気で”私の身体を狙っていると考えて良いだろう。


だから、私が火鳥の元にさえ行かなければ、火鳥は物凄い困る訳で。

だけど、私が何か対抗策を練らねば、火鳥の『私に化けて女難送り込むゾ攻撃』は続く訳で。

で、それへの対抗策が無いので、私は女難が増え続けて非常に困っている訳で。


(ああ、本当にどうしようもないな・・・)


私の考えは、堂堂巡りを繰り返すばかりだ。答えがちっとも出てこない。


「・・・ねえ、水島さん。」

タバコを咥えたまま考え込む私に向かって、烏丸女医が口を開いた。


「はい?」

「・・・何があっても、絶対に、あの子に屈しないで。・・・あの子の為にも。」


そう言われて

(どうして、この人と火鳥は親戚なんだろう・・・)

私は、ふとそう思った。

この性格の違いといい、行動の違いといい・・・本当に、親戚かと疑いたくなる・・・

まあ、育つ家が違ったり、彼女達にも色々あったり、原因は数知れずほどあるのだろうけれど・・・そんな事、赤の他人の私の知るところではない。


「元から、そのつもりですけど・・・私は私なりに、これをどうにかします。ホント、どうにか・・・どうにかします。」


そうは言ったが、私の頭にはまだ具体的な対抗策は思い浮かんではこない。

・・・私は、このまま、火鳥との儀式に『NO』と言い続ける事しか出来ないのだろうか。

烏丸女医の言う通り、私が火鳥の”弱み”なのだとしたら・・・それを逆手に取って何か出来るかもしれない。

だが、その”何か”は相も変わらず浮かばない。今はとりあえず、”NO儀式!”と言い続けるしか無いだろうな・・・。

結局、足掻いて、もがいて、どうにか、この状況を打破するしか、私の望む道は開けないのだ。


・・・ただ・・・やっぱり具体策は、まったく無いんだけどね・・・ッ!本当に情けないんだけどッ!

 ※注 結局、ノープランな水島さん。


「・・・そう・・・貴女は、そういう人だったわね・・・。私に出来る事があれば、手を貸すわ。」


烏丸女医は、そう言って手を私に向けて差し出した。

私は何のつもりかと思って、その手を見ていた。


「・・・握手。一応、全面的に貴女に協力するって協定よ。・・・二度と貴女に迷惑はかけない。」


クスリと笑って烏丸女医は咥えタバコのまま、私に手を差し出した。


「・・・あ、どうも・・・。」


私は、ぎこちなく右手を出した。

烏丸女医の手が軽く私の右手を握り、軽く2,3回振った。


「・・・・・・・。」

「・・・ふふっ。」


握手のまま、烏丸女医が突然笑い出した。


「・・・あの・・・何か?」

「あ、ごめんなさい・・・すっごく複雑そうな顔して握手する人初めて見たから、なんか面白くって・・・くくっ。」


(・・・・・・・・・・なんだ、その理由は・・・。)


・・・こっちは、慣れない握手に思わずどういう表情したら良いのか、わからなかっただけだったってのに。

なんでも面白がる、ある意味マイペースな人なんだな・・・この人。と思いながら、私は手を離し、その手でタバコを持つと灰を携帯灰皿に落とした。


「・・・負けないでね?水島さん。」

「・・・勝ち負けの問題じゃないですってば。」


「ああ、それもそうね。ある意味、勝負に勝って試合に負けてるって言うんだっけ?」

「いいえ、どっちにしても、私には”負け続け”ですよ・・・はぁ・・・。」


・・・女難に遭ってる時点で、私は人生そのもの負けてる気がする。

私は、溜息と一緒にタバコの煙を吐く。

その隣で、烏丸女医はのん気にまだ笑っている。


「そうでもないわよ?貴女は・・・なんというか、まあ、勝ちとか負けとかどっちも関係ない人なのよね。ふふっ・・・」

「・・・・・・・・。(だから、どういう意味だ・・・そりゃ・・・。)」


・・・まったく・・・他人事だと思って、よく笑う医者だこと・・・。


その後点滴が終わり、烏丸女医と別れ、K病院を出てから、私は会社に戻り、その日の仕事を終わらせた。



(・・・うむ、よし、終わりだ。)


点滴の御蔭か、今日の仕事はいつもより捗った気がする。

現に定時に仕事が終わるなんて、久々な気がする。


(・・・やっぱり、この頃疲れていたんだな・・・。)


私はさっさと制服を脱ぎ、スーツに着替え、社交辞令の『お疲れ様です』をして会社を出た。

占い師のおばさんを探そうかとも思ったが、今日は彼女が街にいない曜日だ。

今日はまっすぐ帰って、久々に少し手の込んだ夕食でも作ろうか、そんな事を考えながら私は電車を待った。

電車に乗り、私はいつも通りの定位置である一車両目の壁にもたれ、中吊り広告を眺め、窓から見える無機質なコンクリートの建物達を見ていた。


私が一日の内で、2番目に好きな時間・・・。


で、そんな安らぎの一時の最中に。


それをビリビリと引き裂く静かな声が聞こえた。



「・・・水島。」

「・・・・・・・。」



その声の持ち主は揺れる車内で、腕を組み、こちらに不敵な笑みを向けて立っていた。

その人物は、私が会いたくなかった人物・・・。



・・・火鳥 莉里羅(25)だった。


「次で降りてもらうわよ。水島。」

「・・・・・・・。」


私は、無視を決め込み、再び窓の外の風景に目をやった。

その瞬間に”バンッ!”という音を立てて、私の目の前を火鳥の腕が塞いだ。


「・・・よくもまあ、この間は見事に乗り切ってくれたわね。その根性だけは立派なモンだわ。

・・・でもね・・・このアタシに逆らうなんて、10年早いのよ。」


使い古しの敵役みたいな台詞を言うな、と私は心の中で思いながら、横目で火鳥を見てこう言った。


「・・・それじゃあ、35歳になるまで、逆らい続けますよ。・・・莉里羅さん。


具体的に対抗策が無い状態で、私が出来る攻撃は火鳥の恥ずかしい下の名前を呼ぶしかなかった。

・・・なんとも子供じみていて、情けない事だが仕方が無い。


「し、下の名前で呼ばないでよ!気安いわね・・・!とにかく、次で降りて。話があるのよ。」

「・・・私には、ありません。」


私の言葉を聞いた火鳥は怒りの表情を浮かべ、私の腕をガッシリと掴んだ。


『○○駅〜○○駅〜…降り口は右側です。』


「・・・いいから、来なさいよッ!」

「い、嫌ですってば!引っ張らないで下さいッ!」


私は声を上げて、火鳥の腕を振り払った。

乗客の視線が一気に、私と火鳥に注がれるが、私も火鳥もなりふり構っていられない。


「来なさい!」

「嫌です!」


「いいから!」

「よくないから!」


「降りなさいって!」

「降りませんって!」


・・・負けられない。ここだけは譲れない。

普段は小心者の私だが、優先席はお年寄りや妊婦さん等に譲っても、この場面だけは譲っちゃいけない!


「強情な女ね・・・!」


火鳥はギリッと奥歯を噛み締め、私を睨んだ。

私も負けずに睨む・・・・・・あれ?睨むって、どうするんだ・・・?こうか?それとも・・・これか!?

 ※注 小心者で無表情の水島さんは、いちいち表情を作るのがヘタクソである。


「私は絶対、降りな・・・」


私が『絶対降りません宣言』を火鳥に向けてしようとした矢先。




””・・・チクン・・・””



「「・・・!!!」」



頭の奥に響く、この慣れに慣れてしまった痛みは・・・!

私は思わず、額に手をつけた。そして、火鳥はこめかみ付近を抑えている。


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


互いに顔を見合わせ、確認し合う。

皮肉な事に、私と火鳥では、無言の会話が一番成り立ってしまうらしい。



間違いない!女難の前触れを告げる女難サイレンだ!とお互いがお互いの危険を察知してしまっている。


「・・・次、降りましょう!」と私が提案すると。

「・・・そうね!」と火鳥はあっさりと受け入れた。


今は、争っている場合ではない。足並みを揃えなければ、女難×2の恐れがあるのだ。

とにかく、密室である電車から降りて女難を回避しなければ・・・!


やがて、電車が停車し、ドアが開くと同時に私と火鳥は一斉に飛び出した。

続いて、私と火鳥は背中をつけて、降りたその駅のホームに”女難”が、いないかどうかをチェックする。


周囲の人間は不思議そうにこちらを見ては何も無かったかのように私達の横を通り過ぎ、誰も声を掛けては来ない。



「・・・どう?こっちは大丈夫よ。」

「・・・こっちにも、向かってくる女性はいないみたいです・・・。」



・・・・・・5分が経過したが女難らしき女性は、現れない・・・・・・・。



「どうやら、回避、出来たみたいね・・・」

「・・・のようですね・・・。」



「「・・・はあぁ・・・。」」


一気に緊張が解け、私と火鳥は一緒に息を吐いた。

やれやれ、油断も隙もあったもんじゃない・・・と私はホッと胸を撫で下ろした。


「・・・水島。」

「・・・なんです?」


ホッとしたのも束の間。

火鳥が口を開いて、こう言った。


「・・・もう、こんな生活もう耐えられないでしょう?こんな生活終わりにしましょう・・・アタシ達で儀式を」

「先日、私の女難を増やす嫌がらせしておいて、そんな提案をホイホイ引き受けると思います?」


私はまだ許した訳では無いし、儀式する気は無いと何度も伝えてある筈だ。

だが、火鳥はまだそれが解らないらしい。


「アンタって本当に馬鹿ね!まだ解らないの!?他の方法って何があるのよ!?」

「・・・それは、まだわかりませんけど・・・!とにかく!私は嫌なものは、嫌なんです!!」


私は火鳥から離れ、駅のホームをスタスタ歩き出した。

火鳥がその後をカツカツとハイヒールでついて来て、私の腕を痛いくらいにガッシリと掴んだ。


「・・・嫌だのなんだの、いつまでも子供みたいな事言ってるんじゃないわよ・・・!」

「なッ!?・・・ちょ、ちょっと離して下さいってば!」


今度の火鳥の力は相当のモノだった。


私は振り切る事も出来ず、火鳥はそのまま駅の隅の公衆便所に向かってズンズン歩いていく。

火鳥の表情は、いつにも増して真剣になっていた。



(ま・・・まさか・・・この女・・・よりにもよって、駅のトイレで儀式をヤる気か・・・ッ!?)



「・・・もう、なりふり構ってられないわ・・・アタシは解放されたいのよッ!」

「・・・・・・ちょ、ちょっと・・・!?」


この台詞だけで決定打。


この女は、よりにもよって、みんなの駅の、みんなの公衆便所で・・・25回ヤる気だ・・・ッ!!




「い・・・嫌だーッ!離せーッ!!」


「うるさいッ!」




今回の火鳥は、本気中の本気らしく、私は踏ん張ってもズルズルとそのまま引っ張られていってしまう。


・・・周囲の大人は見て見ぬフリだ。

女同士が便所で何をどうするのかなんて、パッと見て解る筈もないし・・・仕方は無いかもしれない。

でも、そこを察して、なんとか助けて戴きたい!と願う私の思いとは逆に、皆視線を逸らすばかり。


遂に、公衆便所の入り口付近まで私は連れ込まれてしまった。



「もう観念しなさい、すぐ終わらせてあげるわ!タンポン(生理用品。)を出し入れされてると思えば良いのよ!」

「い、嫌だッ!私はナプキン(生理用品。)派だーッ!!」


 ※注 下品な表現で本当にどうもすいません。




私の抵抗空しく、火鳥は公衆便所に強引にその足を踏み入れた。




― しかし、その瞬間。 ―



”バチバチッ”という電気が走るような音がした。



「・・・ぁッ・・・!?」


火鳥が、ゆっくりと前へ崩れるように倒れていく。

そして私は、火鳥を襲った音の方向をゆっくりと顔を向け・・・



”バチバチッ・・・!”



音と共に、身体が力が抜け、膝から崩れていく・・・視界が・・・黒く、なって・・・・・・。




(・・・何・・・なの・・・?)





―― そして、私は意識を失った。 ――






「・・・きて・・・・・・起きて!」

「きなさい・・・この愚図!」


「・・・ん・・・?」


悲鳴に似たような声と聞き慣れた怒声がして、私は目を覚ました。

ハッと気付くと私は、みんなの公衆便所のタイルの上で寝ていた。


「ぅうわあッ!?汚いッ!」


すぐに立ち上がろうとすると、”じゃらっ”という音が鳴って、私の左手と足が何かに引っ張られ、突っ張って上手く立ち上がれない。


「痛ッ!?・・・ちょっと引っ張らないで頂戴!」

火鳥の声に私は左手を見た。


「な・・・何コレ・・・?」


よく見れば、私の左手には手錠がハメられているではないか・・・!

しかも、その片方は火鳥の右手と繋がっている・・・!


右足には鎖が何重にも巻かれ、ご丁寧に南京錠まで掛けられていて配管にも同じように巻きつけられ、南京錠が掛かっている。


「・・・な・・・なんで手錠!?なんでこんなモンが!?・・・な、何コレ・・・!?」


私は座ったまま、自分の状況を把握しようとした。

だが、状況が状況だけに、上手く飲み込めない。


私の隣では、火鳥が静かに言った。


「水島、アンタのせいよ・・・アンタがサッサと儀式をしないから・・・こんな事に・・・!」

「なんで?なんで、これが・・・私のせいなのッ!?」


「状況は最悪よ!」

「だから、その状況を説明して下さいってば!何コレ!?」


女子トイレ内に座り込み不毛な言い争いをする火鳥と私に話しかける第3者の声がした。


「・・・あの・・・すいません・・・」


「え・・・?」


私を見下ろすように立っているのは、黒い箱を持った女子高生だった。


「・・・あの・・・お願いです・・・助けて・・・くれませんか・・・?」


涙声でそう訴えられても、私は何をどうすればいいのかも、現在置かれている状況すらもわからないのだ。


「助けてって・・・一体どういう事です・・・?どうして、私が鎖やら手錠やらで繋がれてるんですか!?」


よくよく見れば立ってこちらを見ている女子高生も鎖に繋がれ、手足を手錠で繋がれているではないか。

そして、両手で大事そうに持っている黒い箱からはカチカチという音がする。


「私・・・駅のトイレに来ただけなんです。それで、いきなりスタンガンのような物で襲われて・・・

気が付いたら・・・こんな事になっていたんです・・・。」


「・・・気が付いたらって・・・一体どうしてこんな事・・・一体誰が・・・?」


私は当たり前の質問を口にした。

それに対し、女子高校生は涙声のまま答えた。


「わかりませんッ!・・・でも、この箱を傾けたり落としたりしたら・・・爆発するって・・・!生きたければ・・・自分で解体しろって・・・」


「ば、爆発・・・?解体・・・!?」


女子トイレに女3人が、手錠と鎖で自由を奪われ動けない上に、爆発するという不吉極まりない箱が、すぐそこにある。


・・・一言で言い表すならば、異常な状況・・・。

ていうか、現実にあり得ないだろう!そんな状況!!



『なんじゃそりゃあ!?』と混乱しそうな私に向かって、火鳥は冷静に言った。



「その子の持ってる箱、本当に時限爆弾ってヤツみたいよ?」


「・・・・ば、爆弾!?」


「今のアタシ達は、どこかの馬鹿テロリストの玩具にされてるのよ・・・!」


そう言うと、私に火鳥は一枚の紙切れを私に見せつけた。



『これはゲームだ。生き残りたければ、爆弾を解体せよ。道具は洋式便所の中に入っている。

キミ達は、せいぜい頑張って解体するといい。制限時間は3時間だ。

ちなみに鍵は箱の中にあり、解体に成功すると手に入る。


健闘は一切祈らない。爆死しろ。 〜ダークネクロマ星人より〜 』



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


私は、紙切れを床にそっと置いた。

これは・・・アレだ・・・夢だ・・・。と思うとしても現実に”カチカチ”というカウントダウンの音が聞こえて、現実逃避すら出来ない。

そして、手紙の最後になんかどこかで聞いたような星人の名前があるような気がするが、もう何がなんだか訳が解らない!解りたいけど解りたくない!



私は普通のOLで、人嫌いで、呪われただけなのに・・・今度は、よりにもよって女子高生と爆弾ですかい!?

一体、どんな組み合わせなんだよッ!?

ていうか、これ女難なのーッ!?どういう女難なのーッ!?

最近、女とトラブル一緒に出してりゃ、なんでも女難成立すると思ってないか!?

なんと言うか、全てが無理矢理で、雑なんだよッ!作者ーッ!!

 ※注 『いや・・・そんな事は、ないかもしれないよ?・・・うん。』



「・・・さあ、この状況・・・どう責任取ってくれるの?”優しい水島サン”?」


嫌味一杯、何かに疲れ果てたような薄ら笑いを浮かべた火鳥の問いに対し、私は・・・



私は・・・



(ど・・・どうするって・・・)





「そ、そんなの私に解る訳ないだろおおおおおおおお―ッ!?それから私の責任じゃねえよ―ッ!!」




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