私の名前は水島。

悪いが、下の名前は聞かないで欲しい。


私は、呪われている女難の女。


そのせいで・・・。


そのせいで・・・。


好かれたくもない人間に好かれて、見たくも無いものが見えて・・・ややこしい出来事に関わらざるを得なくなって・・・。




『・・・・・・本当に、ごめんなさい・・・水島さん・・・。』




頭に浮かぶのは、赤い紐が切れる光景、そして、忍さんの弱々しい声に・・・紐の切れる音。


・・・忍さんとの・・・縁が切れる音。


彼女が、私の女難だったなんて・・・知らなかった。

忍さんは、私の話を聞いてくれて、理解もしてくれて・・・時々、意見が合わない時もあったけれど・・・。


(・・・いい人、だったよね・・・)


変に迫ってこなかったし。

ストーキングもしなかったし。


・・・いや、そもそも、それが”普通の人”のはずなんだが。


特に、被害も無く、迷惑でもなかったのに。

私は、忍さんが私と縁の紐で繋がっているから・・・”女難だ”って思って・・・



『うわあああああああああああああ!!!!』



いや、それよりも・・・ショックだったのは・・・。


あの忍さんが、私の事を・・・好・・・




・・・・・・・・・・・・。



(・・・ああ、もうッ!)



私は、机に額を付けて、思考を止める。

胸の辺りは、あれからずっと重いまま。



会社のパソコンのディスプレイの光をぼうっと見たまま、私は仕事をする手を動かすのを忘れていた。




『・・・そうよ、私達は・・・”友達”。』



その言葉は、嘘だった・・・のか・・・。



『だから、もっと・・・もっと私に頼って。水島さん。』



・・・その言葉は・・・どんな思いを込めて・・・。



(・・・ああ、だから!考えるなって!)



私は、すっかり動揺して、その場の感情に振り回されて・・・忍さんとの縁を切ってしまった。


友達でいたいって思える人だったのに。

でも、忍さんは・・・私を友達だとは思っていないんだよね・・・。

女性から好意を寄せられるのには、(悲しきかな)もう慣れちゃったけれど・・・今回ばっかりは・・・ちょっとショックだったかも・・・。


だって・・・あの忍さんだぞ・・・。

全然、そんな風(女難)に見えなかったじゃないか。


あー・・・変な紐が見えるようになったせいで、見えなくてもいいモノが見えてしまうなんて、なんてややこしい能力を身につけてしまったんだ、私は。


ややこしい人間関係が見えて、切ったり、結んだり、干渉出来るややこしい力。


そういえば・・・こんな能力、強くして火鳥は何をするんだろう?

忍さんが調べてくれる筈だったけれど、それももう期待できないだろう。


火鳥は言っていた。私は悪くない、と。


そして・・・


『友達、友達とは言うけれど・・・

友達である忍の気持ちを知って、忍の友達であるアンタは

忍の気持ちを真正面から受け止めることもなく・・・紐ブチ切って、ただ”逃げた”訳よね?いつも通り。』


そう、私は・・・逃げた。

忍さんの本当の気持ちを知って、ただ逃げた。


『勝手にアンタの事を想って、勝手に隠して、状況を今みたいに悪化させるよう選択をしたのは、忍の方よ。

アンタが、そこまで動揺する必要はないのよ。アンタは、いつも通り、女難に対処しただけ。そうでしょ?』



そう”いつも通り”の私だ。

いつも通り、女難に対処しただけ。


いつも通り、逃げるという選択をした私は・・・ちっとも成長してないし、前にも進めていない。

むしろ、後退したんじゃないかと思う。



『・・・ただ、もしも、逃げた事を後悔してるんなら、最初から、逃げなきゃ良いだけじゃない?まったく、馬鹿じゃないの?』



まったく、火鳥の言うとおりだ。


正直・・・後悔、している。

忍さんから、あんな風に逃げてしまった事。


でも・・・だったら、あの時、私はどうしたら良かったんだろう?


人の気持ちを受け止めるって、一体どうすればいいのだろう?


忍さんの気持ちには、私は応えられないのに。


忍さんが、私なんかにそんな想いを抱いていたのは、元はといえば私の呪いのせいだ。

だから、私は・・・私は、彼女を解放してやらなければならない。

あの日、忍さんとの縁を切ったのは、彼女を私から解放するという意味では正しかった・・・のかもしれない。


・・・そういう、もっともらしい言い訳を私は頭に浮かべる。



でも、私にとって、忍さんは・・・。



(・・・あー・・・もう、いいや・・・。)



考えてはみたが、上手くまとまらない。

今はもう・・・なんか、なにもかも、もうどうでもいい、と思ってしまった。



『だから、人と付き合うと、こういう面倒な事になるから嫌なんだよ』



心の中のもう一人の私が、吐き捨てるように呟いた。

だけど、そんな事を思う自分が、自分でもとても嫌な奴だと思ってしまう。


「はあ・・・。」


溜息をついた所で何が変わる訳でもない。仕事が進む訳でもない。

・・・何もやる気が起きない。

机の上の仕事がまったく片付かないまま、私はまだ、ぼうっとしていた。


会社のスピーカーからお昼のチャイムが鳴り響く。

もう、そんな時間か・・・と机の上を見ると、いつもの3分の1も仕事が進んでいない。



(・・・あーあ・・・こりゃ、残業確定か・・・。)



とにかくお昼休みで、少し休憩を入れようと私は、ゆっくり立ち上がった。

弁当は一応持っては来ているが・・・なんだか、食欲が無い。


ただ、社内をフラフラと歩く。

白い壁と天井のライトがやけに白く眩しく思える。

頭が少し痛みだした。ああ、例の女難かな、とは思っても、もうどうにでもなれ、という思いからか走る気も起きない。


社内の壁をぼうっと見ながら、ただ歩いていると、急に私は後ろから何かに捕まれた。

背中に伝わる人の体温と柔らかい感触。



「・・・あら?どうしたの?いつもの貴女らしくもない。こんなにもあっさり簡単に私に捕まるなんて。」

私を白昼堂々、社内の廊下で、後ろから抱きしめてきたのは、秘書課の阪野詩織だった。

上品なスーツ姿だが、全身から隠しきれない色香が感じられる。ふわりとした長い髪からは、女性らしい匂いがする。


「・・・・・・ああ・・・阪野さん、ですか・・・。」

振り向いた私の顔を見るなり、阪野さんから笑みが消えた。


「・・・何か、あった?」

「・・・いつも通り、ですけど。」


そう、私はいつも通りのただの水島だ。


「そんな筈、ない。」


ところが、私でもない赤の他人が即否定。


「・・・根拠は・・・」

「女の勘。」


なんという曖昧な根拠か・・・。

大体、ドラマぐらいでしか通用しない。そんな根拠・・・


「ちょっと、こっちに。」

「え・・・え?え?ええ!?」


それまでゆったりと余裕をぶちかましていた阪野さんが、急に口調と態度を変えて、私の腕を力いっぱい引っ張った。

ぼうっとしている私は、彼女にぐいぐい引っ張られて、廊下を歩かされる。


「ど、どこに行くんですか?」

「いいから。」


阪野さんは、私の質問に、それだけしか答えなかった。


廊下で何人かのスーツ姿の社員とすれ違う。皆、少し驚いたような顔をしている。

確かに、秘書課の阪野さんとこんな地味なOLが一緒に歩いていれば、そうなるだろう。

エレベーターに映っている私と阪野さんを見比べても、私自身、不自然な組み合わせだと思う。

妙な組み合わせというか、私とこんなにも対極的な・・・こんな華やかな美人と歩いているなんて、以前の私ならあり得なかったのだから。


(・・・これも、呪いのせい・・・。)


阪野さんが私に関わってくるのは、私の呪いのせい。

私の前を歩き、更に階段を上がる阪野さんの左手には、くっきりと赤い紐が見える。


(・・・切って、やろうか・・・。)


私は、半ば自棄になっていた。忍さんとの縁も切る事が出来たのだ。阪野さんとの縁だって、今の私なら切れるかもしれない。

こうなったら、と私は阪野さんの左手に手を伸ばす。


阪野さんを、私から解放するんだ。


扉を勢いよく開け放つ音と共に、急に腕を引っ張る手の力が強くなったかと思うと、私は手を離され、阪野さんを追い越し、2,3歩前に出た。


「ここは・・・。」


外の冷たい風が頬を撫でる。

ここは、ヒートアイランド対策企画で作られたという、一般社員は立ち入り禁止の緑の庭。

今は、まだ冬だから、緑もなく、寒々とした光景しか見えない。

・・・なんか、ここへ来ると嫌な事を思い出すからあんまり来たくなかったんだけど・・・。

 ※注 この場所での出来事は『水島さんは説得中。』をご参照下さい。 


阪野さんは副社長の秘書だから、立ち入る事が出来るのだろうが、私は・・・違う。


「阪野さん、こんな所に私を連れてきて、一体何の・・・」


振り向くと同時に、私は阪野さんに突き飛ばされ、押し倒された。

うっすら雪の残っている、冷たい地面が私の背中から急激に体温を奪っていく。


「冷たッ!?・・・近ッ!?」


いや、そんな事よりも・・・この、状態!阪野さんが、強引に私を押し倒している、この状態!

ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待てッ!!早い!展開が早い!


「・・・何があったの?」


そんなの、いの一番に貴女に聞きたいわッ!


「い、いきなりなんなんですかっ!?」

「水島さん、最近、何かあったでしょ。私は、それを知りたいの。」


何か、あった・・・のは、確かにあった。あったには、あったが。

だけど・・・。


「・・・貴女が知って、どうなるっていうんですか・・・。」


貴女には、関係ない。そういう意味を含んだ言葉を、私が言うと、阪野さんはとても悲しそうな顔をした。

それは、いつも余裕でエロい笑みを浮かべている阪野さんの・・・初めて、見る表情で・・・。


私は少しだけ、ドキッとした。

この人、こんな表情もするんだと思って。


人間は・・・こうしてみると、実に色々な側面を持っているのだ。

私は、それをすっかり、忘れていた。



「貴女って、いつもそう・・・なんでも、自分で自己完結、自己解決しようとする。そうやって、人を遠ざける。

貴女が人嫌いなのは、よくわかってる。だけど・・・私は、貴女が好きなの。だから、放ってはおけないの。知りたいの。

貴女が今、そんな辛そうにしている理由が。」


不思議な事を言う人だ。


「・・・私は、いつも通りですけど。」


私は、いつも通り、無表情の筈だ。


「いいえ、違う。貴女は普段通りのつもりでも、私達・・・いえ、私には解る。」


私でもないのに、他人の阪野さんはハッキリと否定した。

しかも、私達って言いかけて、私に言い直している。

つまり、私がどこかおかしい、私になにかあったと思っているのは、阪野さん以外にもいる、という事だ。


既にバレバレ。全然ダメじゃないか、私・・・。


「ははは・・・。」


私は、力なく笑うしかなかった。


「水島さん・・・」


私の名を呼びながら、阪野さんは私を抱きしめた。肩が震えている。


「一体、貴女に何があったの?私は、貴女の力には、なれないの?ただの、迷惑な人間?」


泣いて、る・・・?

阪野さんが泣く所を見るのは、これが二度目だ。


だが、今度は・・・


「泣いてるんですか?・・・どうして?」


私はただ、素朴な疑問をぶつけてみる。

すると、阪野さんは起き上がって、私を悲しそうに、睨むように、色々な表情が混じり合ったような表情で私を見た。



「どうして、ですって?・・・貴女が辛い時に何も出来ないからに決まってるじゃない!!」




阪野さんは・・・私の為に、泣いているのか?



でも、それは・・・その感情が湧く理由は・・・解っているんだ。


(・・・”呪い”のせい・・・)


複雑な心境だ。

呪いのせいだって解っているのに・・・。


ここまで他人に心配されて、私は迷惑だなんて思えないのだ。


「阪野さん・・・私の事、好きなんですよね?」

「ええ。」


真実を告げよう。

私は呪われていて、それで妙な縁が出来ているだけなんだ、と。


私は、口を開いた。


「でも、それは・・・」

「呪いのせい、だなんて言わせないわよ?」


阪野さんも、知っているのか・・・?私が呪われている事を・・・。

海お嬢様から、聞いたのか・・・。

 ※ 彼女達が呪いを知った経緯は『水島さんは逃走中。』にチラッと書いてます。もしくは、スピンオフで書こうかな、と思ってます。


「え・・・?」

「いい加減にして。」


阪野さんは涙声で私を一喝した。


「私はね・・・真剣なの。そりゃ、同性に好かれ・・・そうね、貴女の場合、人に好かれるのが嫌なのだとしてもよ・・・

私は、貴女を愛してる。この気持ちに嘘は無い。」

「だから、それは・・・」


私が呪われているからだって、言おうとしたのだが・・・阪野さんがそれを遮った。


「呪いだなんて言わせない。私は・・・貴女を、真剣に愛してる。だから、真剣に心配するわ。

貴女に、何があったのか・・・何が起きているのか・・・ただ、知りたいの・・・お願い・・・水島さん・・・」


阪野さんの涙がポタポタと私の顔に落ちる。

それは温かくて、私は自分の頬に落ちた温かい雫を指で拭う。


私なんかの為に、こうして一人の人間が泣いてくれている。

呪われる前は・・・こんな事無かったし、あり得ないって思っていた。

私は、黙って阪野さんの頬を伝う涙を掌で拭った。


「阪野さん・・・私は、貴女に好かれる資格なんか、無いんです・・・。」


だって、ただ、人嫌いが呪われただけなのだから。

阪野さんだって、被害者なんだ。

忍さんだって、そうだったんだから。


元々、私が他人に好かれるはずがない。それは、自分がよくわかっている。

私が、自分を嫌いだから。


「資格云々関係ないわッ!私は貴女が好き!それだけなの!・・・本当に、それだけ、なの・・・!」


搾り出すような声で阪野さんはそう言って、私の肩を掴んだ。少し、痛い。

だけど、こんなに取り乱す彼女を見るのは、初めてだった。

呪いのせい、という土台があったとしても、こんなに私を想ってくれる彼女を見て、私は心が痛んだ。


そして、心が痛むと同時に、少しだけ嬉しかった・・・。


「阪野さんは・・・いい人ですよね・・・。」


私は、ふとそんな言葉を口にしていた。


以前、あのオバサンに『アンタは…人間の”そういう一面”を、見過ぎたんだねぇ…。』と言われた事があるが・・・

果たして、私は、人間の別の一面・・・”良い所”を見ようとしただろうか。


・・・阪野さんは、優しい人だ。他人の為に、私なんかの為に泣ける人なんだから。心の底から、そう思えた。


「ふ・・・ふざけないで!私はね!貴女にそんな事を言われたくて、こんな事してるんじゃないの!!」

「ご、ごめんなさい・・・。」


阪野さんが泣きながら怒鳴ったので、私は思わず、阪野さんから顔を背けて、謝った。

泣きながら押し倒されてるのにも関わらず・・・私は思わず、苦笑いしながら謝ってしまった。


私の反応を見た阪野さんはハッとして、表情を一気に暗くした。


「怒鳴って・・・ごめん、なさい・・・今・・・落ち着くから・・・ごめんなさい・・・。」


そう言って、私の胸に顔を埋める阪野さん。

いつもの余裕やエロさはどこへやら。


「いや・・・いいです・・・」


・・・そんな事で落ち着くなら、黙ってこうしていよう。私はそう思った。




だけど、私は・・・今、阪野さんに・・・一体何をされているんだ・・・?





  [ 水島さんは説教中。 ]



曇った空をしばらく見つめていた。そういえば、ここ数日、青空を見ていないなと思う。


「・・・そろそろ、落ち着きました?」

私が阪野さんにそう言うと、阪野さんはこくりと頷いた。

「・・・ええ・・・。」


それは良かった。そろそろ起き上がらないと、背中が冷たくなってゾクゾクしてきている。

阪野さんが離れたので、私を起き上がった。お尻についた草木を払っていると、再び阪野さんは後ろから私を抱きしめた。


「いっ!?」

「・・・体、冷えちゃったわね・・・」


「・・・・・・・・・・・。」


一体、誰のせいだ、誰の。と私は心の中でツッコんだ。

・・・でも、こうやって抱きしめられると、心なしか冷えた背中が温かい・・・。



・・・・・・・・・・・・・・。



・・・ハッ!!

馬鹿か、私は!!女性に抱きしめられたまま、何を和んでいるんだ!?


「い、いつまで、こうしてるつもりなんですか!は、離して下さいッ!」


慌てて振りほどこうとすると、阪野さんはきつく締め上げるように抱きしめた。


「んぐっ・・・!?」


苦しい・・・背中に柔らかい感触があるけど、同性なんだし、それは今は関係ない!とにかく苦しい・・・ッ!!


「私はまだ、貴女に何があったのか聞いてないわ。」

「だからそれは・・・!」


「・・・言わないと、今、ここで・・・貴女を襲うわ。」

「・・・・・!!(ひいぃ・・・!)」



阪野さん・・・ここで、犯罪宣言!!



まずい。この人なら、やりかねない・・・!

いや、ここは発想の転換!

いっそこのまま阪野さんに儀式25回ほど、ヤッていただく・・・訳ねーだろ!!

会社の屋上の・・・野外で25回ってどんだけ変態プレイにチャレンジする気だよ!しっかりしろ!自棄になるな!!


「あ、あの・・・阪野さん・・・お気を確かに・・・!」

「・・・私は、本気、よ。」


目が真剣だ・・・。

いつになく、真剣だ・・・。


話さなければ、本当に襲われる・・・かもしれない・・・いや、本当に襲われる・・・。


「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」


しばらくの沈黙。

阪野さんは私の返事を待っていてくれているようだった。真剣な目はそのままで。

いつまでも自分の中に溜め込んでいても仕方ないか、と私は思った。

私は、溜息をついて、まだ自分の中で整理も出来ていない事を話し始めた。


「あの・・・信じられないとは思うんですが、私には友達だと、思ってた人がいたんです・・・。」

「うん・・・信じる。」


あっさりと、阪野さんは信じると言ってくれた。

・・・そして、やっと私を離してくれた。


「・・・で・・・私にとっては、その人は、私のこういう人嫌いな所や・・・まあ、色々と理解してくれて、あと信用できる・・・本当に、良い人で・・・。」

「・・・そう・・・。」


やっぱり、自分の中で整理出来てないのか、上手く説明出来ない。

私は、ただ思い浮かんだ言葉を吐き出すしか、出来なかった。


「だけど・・・あの、色々あって・・・その人が、私の事を友達だと思ってはないと・・・」

「つまり?」


「えと、つまり・・・彼女は、私に恋愛感情を抱いていて・・・

私、彼女のそういう気持ちが分かってしまってから、友達だと思ってたのに、彼女はそうは思ってなくて・・・

それで・・・どうしていいのか、わからなくなってしまって・・・。」

「・・・うん、それで?」


私の拙い説明を阪野さんは、冷静に聞いてくれた。

思えば、阪野さんとこんな風に落ち着いて会話するのは・・・初めてかもしれない。


「・・・逃げました・・・。何も、言わずに・・・彼女との関係を断ち切ったんです・・・。」

「・・・そう。それで?」


「それで・・・。」


私は、そこで言葉に詰まった。

火鳥の言葉が不意に浮かんできたからだ。


『友達、友達とは言うけれど・・・

友達である忍の気持ちを知って、忍の友達であるアンタは

忍の気持ちを真正面から受け止めることもなく・・・紐ブチ切って、ただ”逃げた”訳よね?いつも通り。』



そうだ。

私は、逃げたんだ。


「・・・今、思えば、ただ逃げるなんて、自分でも最低だなって思ったり・・・

でも・・・だったら・・・どうしたら一番良かったのかなって、今もわからなくて・・・。」


わからない。

どうしたら、いいのかわからない、と私は素直に口に出した。


「そう・・・なるほど。」

「阪野さん・・・。」


私の話を聞き終え、少し考え込む阪野さんの回答を、私は少し緊張しながら待っていた。

やがて、阪野さんは口を開いた。


「私から言える事は・・・まず、過去をどうこう言っても仕方ない。

彼女の気持ちから、逃げてしまった事は事実。貴女は、それを後悔している。

そして、貴女にとって・・・彼女との関係は、とても大切な人間関係の一つだった。・・・それを認める事。」


「・・・・・はい・・・。」


「そして・・・それを踏まえたうえで、貴女は、これからどうしたいかを決めて、行動する事。」

「・・・私が、どうしたい、か・・・。」


それは、火鳥にも言われた。


『・・・で。アンタは、どうしたいのよ?』

『・・・私は、彼女と・・・友達でいたい・・・。彼女を恋愛対象なんかに、出来ない・・・。』


私は、火鳥の問いに対して、その時、精一杯の答えを出した。


「その人とは多分、以前のような・・・全て元通りという関係に戻るのは難しいだろうけれど・・・

もし、貴女が、その人ともう一度関係を築きたいと思うなら、いつまでも悩んでないで行動すべきよ。

だって、貴女がそれだけ悩むくらい、大切に思ってたって事でしょう?」


大切・・・。

そうだ・・・。



『・・・そうよ、私達は・・・”友達”。だから、もっと・・・もっと私に頼って。水島さん。』



あの人は、私にとって大切な友達・・・。

忍さんが、私の事を友達だと思っていなくても、私は彼女を大切な人だと思っているんだ。・・・今だって。


「・・・・・・でも、私に、出来るでしょうか?・・・彼女とは、もう・・・」


忍さんの想いごと・・・私は、彼女との縁を切ってしまったのだ。

今更、どの面下げて、友達になってください、なんて言えるのか・・・。


「ふふ、大丈夫よ。だって、私の水島さんですもの。まずは、行動あるのみよ。」


そう言って、阪野さんは笑いながら肩をぽんっと叩いた。


「は、はあ・・・。」

またしても、根拠がない。

でも・・・根拠がないからっていつまでも、このままって訳にはいかないよな、とも思った。


「そ・れ・に。もしも、良い結果が得られなかったら、全身全霊込めて、私が心も体も慰めてあげる♪」

「あー・・・それは、ちょっと遠慮します・・・。」


・・・いつもの阪野さんが帰って来た・・・もう少しシリアスな阪野さんのままでいて欲しかったな、と思う。


阪野さんは、うんと両腕を空へと伸ばしながら言った。


「・・・あーあ・・・でも、ちょっと悔しいなぁ・・・。貴女に、そういう人がいたなんて。

私、貴女の中では”恋愛対象”じゃなくて、”ただの呪いの産物の女”って、カテゴリーに属しているんでしょう?」


「え?・・・いや・・・あの・・・それは・・・。」


思わず、口篭る。

コメントに困る質問だ。

確かに、自分の中で阪野さんは”女難チーム”という括りの中においているが・・・。


「出来れば、私も”お友達”からスタートさせて欲しいんだけど?」


友達・・・。

ここまで相談しておいて、嫌ですなんて言える訳がない。


「・・・・・・じゃあ・・・あの・・・お願いがあるんですけど・・・」


ここは、条件を出そう。

友達になるのに、条件を出すなんて普通はおかしいんだろうけど。

この人の場合、この条件を出さないと安心できない。


「なあに?」

「いきなり、襲うのは無しって約束してくれたら・・・お友達って事で。」


私の条件を聞くと、阪野さんは難しい顔をした。


「・・・うーん・・・難しいわねぇ・・・」


オイッ!!(水島さん、心の中のツッコミ)


「ふふふっ冗談よ♪解ったわ、それでちゃんと始められるなら、約束しましょう。」


・・・本当だろうか・・・。

と考える私を阪野さんは素早く抱き寄せ、顎をくいっと上に向かせると、これまた素早く口唇を奪った。


「んっ!?」


突然の事に私は動く事を忘れ、軽く口唇をちゅっという音を立てて吸われて、ビクリと私は仰け反る。


「・・・・・・あ。でも、こんな風に無意識に体が動いちゃったら、ごめんなさいね♪」


そして、この満面の笑み・・・。

・・・オイッ!!言った傍からこれかッ!!


「阪野さん・・・。」


私は素早く阪野さんから離れて、恨みがましい目で阪野さんを見てみるが、阪野さんは悪びれる様子も見受けられない。


「生憎、私は気持ちを隠したり、押し殺したりするのが苦手なの。だから、こういう私も含めて、これからも宜しくね♪水島さん。」

「・・・は、はあ・・・。」


なんか・・・なんか納得いかない・・・。

でも・・・私の心の中に燻っていた何かは、霧が晴れたようにスッキリしていた。


阪野さんに話を聞いてもらったおかげだろうか。


「あら、こんな時間・・・じゃ、私は行くわ。もうすぐ副社長の会議なの。」


時計を見て、阪野さんの表情がいつも通り、”完璧なお人形”こと、秘書・阪野詩織に戻る。

真っ直ぐ出口へ向かう彼女を私は呼び止めた。


「あ、阪野さん!」


「ん?」


振り向いた彼女に、私は心の底からの声を口に出した。



「ありがとうございました!」



「・・・ッ!?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



・・・え?・・・あれ?何?この沈黙。





私のお礼の言葉に阪野さんが顔を赤らめたまま、停止している。

な、なんですか?その反応は、と私が聞こうとすると。


「・・・・・・反則。」


ボソッとそんな言葉が聞こえた。


「は?」


一体、何の話だ?


「・・・その笑顔、あまり誰にも見せないでね。破壊力抜群だから。」


だから、一体何の話だ?


「????????」


疑問でいっぱいの私を残して、阪野さんは逃げるようにサッサと立ち去ってしまった。

(わからん・・・。)


 ※注 よくありがちな、主人公の無意識かつ100%の笑顔で、他のキャラが萌えてしまい、主人公は全く気付かず・・・の図です。






昼休みの後、仕事をいつも通り片付けた。

今朝と違って、すっかりいつもの調子が戻って、自分でも驚いている。

とはいえ、溜まりきってしまった仕事の量を片付けるのには、思ったよりも時間がかかってしまった。



(今日は・・・もう無理だな・・・。)



時間が遅すぎる。忍さんに会いに行くのは、また今度にしよう。




・・・そういえば・・・火鳥は、何をするつもりなんだろう。

先日、自称・縁の神様に会いに行くと言っていたが・・・


むやみに、この縁の力を強くしても、なんだか良い事はなさそうな・・・そんな気がする。

今ある力を使って、地道に自分の縁に溜まった邪気を排出していく他、平和的な解決法が無い様に私は思う。

それに、やたらとカップルを別れさせるような力の使い方もどうか、と思うのだ。

だからって、他人の縁結びに一役買って出るのも・・・考え物だ。見ず知らずの他人同士をくっつけるなんて、一回きりでたくさんだし。


・・・他に、この力を使って溜まった邪気を排出する方法は無いのだろうか・・・。


そして、火鳥が何の為に縁の力を強くしようとしているのか・・・自称・縁の神様なら目的を知っているかもしれない。

火鳥が何かやらかさないうちに、何か対策を打たなければ・・・また、あの女死にかけるぞ・・・。







そこで私は、自称・縁の神様に会いにあの古びた神社に寄ってみた。





夜のせいか、更に不気味な雰囲気で、用件でもなければ、あまり近づきたくは無い。

ざわざわと伸びっぱなしで枯れた草木がざわめく。

おまけに冬の夜は、冷える。


こんな人気の無い場所に女一人でいたら、さすがの私でも危ないかも、とは思うのだが・・・。


「おやおや。これはこれは・・・噂の”水島さん”じゃあないですか。」

「・・・・・・は?」


聞き慣れない声に名前を呼ばれて、私は振り返った。

そこにいたのは、着物姿の若い女性だった。

女難か、と一瞬身構えたが・・・なんだか、雰囲気が・・・あの自称・縁の神様と似ている。

そこには確かにいるのに、まったく存在感を感じないのだ。この摩訶不思議な感覚・・・まさか・・・。


「あ、私、縁の神の知り合いです。」

「・・・ああ、そうですか・・・。」


・・・”縁の神様の関係者なら仕方ない。”そんな感じで、私はこの複雑な思いを片付けた。

縁の神様の関係者Aさんは、20代くらいの女性で、長い黒髪を後ろでまとめ、これまた長い前髪を揺らしていた。

そして、割と明るい派手な赤い着物に身を包み、口元には、ほくろがあった。


「どうやら、留守っぽいですよ。まったく、わざわざ『ガラスの○面』を返しに来たのに〜。」


そう言って、着物姿の女性は『ガラ○の仮面』の本を振って見せた。

自称・縁の神様と漫画の貸し借りをするには随分年が離れているような気がするが・・・まあ、『○ラスの仮面』は面白いもんね・・・。


「はあ・・・あの・・・縁の神様の知り合いって・・・貴女、どちら様ですか?」


「私?あ、私は、寿命の神です♪」



・・・自称・縁の神様の次は、自称・寿命の神様ですか・・・。

そうだね、トイレにも綺麗な女神様がいるこの時代、どんな所にも神様はいるんだよね。

・・・もう、ツッコむ気すら起きないよ・・・。


私は、ただ”ああ、そうですか”と受け流すしか出来ない。




「あ、そうそう・・・水島さんには、一つ、お願いがあるんですけどね〜。」

「はい?」


「近々、貴女の周囲で人生の結末を迎える人間がいます。それを邪魔しないでもらいたいんですよー。」

軽い口調で笑いながら、自称・寿命の神様はゆっくり、ひたひたと不気味に私に近づいてくる。

禍々しい雰囲気に圧倒され、私は少しずつ後退する。


「っ・・・それって・・・誰かが死ぬって事ですか・・・?」


私が真顔で聞き返すと、寿命の神様は首を横に傾け、ニッコリと笑いながら言った。


「そうです♪だからって、これ以上、誰かの運命を変えようだなんて考えない事です♪」

「え・・・。」


自称・寿命の神様はどんどん近づいて、私との距離を縮めてくる。


・・・寒気がする・・・!

・・・来るな・・・!


言い知れぬ恐怖が襲ってくる。


「貴女は、人の運命を変えすぎなんです。ハッキリ言って、迷惑です。」

「あ・・・えと・・・。」

後退し続ける私の足が朽ちた神社の階段が当たり、私は止まった。

次の瞬間、私の鼻先まで距離を縮めた寿命の神の見開かれた目が、私の目とぴったりと合った。




全身に悪寒が走る。

恐怖で足がすくむ。



動けない・・・!




「まあ・・・人の運命は、そう簡単には変えられません。

縁の力を得たとしても、今の貴女は所詮、ただの人間だという事を知った方が良い。

貴女は一度、身の程を知った方がいい。」




それは、紛れも無く・・・”警告”だった。

例え、誰かが死ぬ運命だとしても、その運命を変える事はするな、という・・・。



「で、でも・・・!」


目の前で死ぬかもしれない人を見過ごせなんて、出来るわけが・・・!


「だ〜か〜ら〜ぁ、それが身分不相応なんですよぉ。・・・貴女、また、死にたいんですかぁ?」


「・・・また?」



「あ、いけない。口が滑っちゃった・・・ま、いいでしょう。今日は、お説教のみで許して差し上げます♪

いいですね?今度、誰かの命に関わる運命を変えたりしたら・・・容赦しませんからね♪」



その台詞を言い終えると、自称・寿命の神様はゆっくり離れ、笑いながらゆっくり私の前から去っていった。



私は、その後姿が見えなくなった瞬間、その場にへたり込んだ。




「・・・・・・・・・・。」




・・・怖かった。なんだったんだ・・・あの自称・寿命の神様・・・

まるで、本気で、私を殺そうとしてたような・・・






「か・・・帰ろう・・・。」



独り言を口に出して、ゆっくり立ち上がる。


(結局、縁の力の他の使い方も、火鳥の目的もわからなかったな・・・しかも・・・)




初対面の自称・寿命の神様に脅された。

これも自称・縁の神様に相談した方がいいのかな・・・。




いや、それよりも。




(私、本当に、これから一体どうなっちゃうんだろう・・・)




こんな調子で、女難の呪いなんか解けるのかな・・・

歩きながら考え事をしていると・・・




  ”バチッ!!”




そんな音が後ろからしたと同時に・・・体の自由が利かなくなった。


「・・・え・・・?」









『夜道の一人歩きは、改めて危険だな』と思う間も無く、私はその場に倒れこみ、意識を失った。









「・・・ん・・・?」

「・・・やっと、お目覚めのようね。水島さん。」



私は、広いベッドに寝かされていた。

目を開け、天井を見る。・・・ピンク色・・・?



(・・・ここは、どこだ・・・?)



「少し、乱暴だったけれど・・・これも仕方がなかったのよ。ごめんなさいね、水島さん。」



(・・・誰だ・・・?)



そして、私は私の名を軽々しく呼ぶ声のした方に目を向け、その人物を目視した。




「・・・ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



その人物の名を口から出す前に、私は悲鳴をあげた。


「あ・・・そんな声あげなくても・・・。」


優雅に椅子に腰掛けて紅茶を飲んでいた女は、カップを置くと少し困ったように微笑んだ。


「な・・・なんで!?どうして!?ここは!?」


私が慌てているのは、他でもない危険が傍にいるからだ!

紛れも無く、私の視線の先にいる、その人物は・・・影山素都子こと・・・スト子・・・!!!


本日2度目の・・・我が身の危険・・・ッ!!!!


「あ・・・だ、大丈夫よ!!水島さん!ここは、神聖な愛の巣こと、ラブホテルだからッ!!」


ますますもって聞き捨てならんわ!!!


「だだだだ、大丈夫じゃない!ちっとも大丈夫じゃない!!ストーカーとラブホテルなんて嫌だあああああああ!!

ちっとも神聖じゃないよーッ!こんな穢れた愛の巣でご休憩なんか出来るかあああああああああ!」




なんで、このタイミングで現れたんだ!?この女―ッ!!!






「大丈夫よ!ココに諏訪湖で手に入れた神聖な『光の石の欠片』があるから。」


そう言ってスト子が私に見せたのは、袋に入った小さな石・・・石って言うか砂利。

いや・・・それ、光の石じゃなくて、冬の○海道とかで、滑り止めに使ってる石の粒だよね?

諏訪湖まで行って、ただの滑り止めの砂利を手に入れてきたのか!?

そんなもん、神聖さゼロだよ!皆無だよ!いや、そもそもラブホテルに神聖さなんて無いわ!欲望の城だよ!


「その石のどこに!どこに大丈夫な部分があるんだっ!?」


「大丈夫よ・・・ちょっと待っててね・・・結界を作るから。」


ただ部屋に石撒いてるよ・・・ただの迷惑な客だよ・・・!


「ちょ、ちょっと待って・・・な、なんのつもりッ!?私をどうする気!?」


石を撒き終わったらしいスト子はこちらに向き直った。


「・・・コレで良し。・・・改めまして・・・私は、影山素都子。」


そして、私に向かって静かに一礼した。

・・・なんだ?この静かなスト子・・・新しいパターンか、設定変わったのかな・・・?


「し・・・知ってます。」


「・・・以前、貴女を拉致監禁したのは、やり過ぎたと少し反省しているわ。」


「”少し”かよ!!!」


・・・ん?反省?

いや、反省してるって言ってる傍から、もうこの時点でまた私拉致されてるよねッ!?


「でも、分かって欲しいの・・・それは、貴女を守りたかったからよ。」


・・・また新しい妄想設定か・・・ややこしいなあ・・・。


「今度こそ、ちゃんと知って欲しいの。貴女は、今・・・とんでもない事に巻き込まれているって事を。」

「・・・貴女に今、ラブホに連れ込まれているって事ですか?」


「いいえ、話を聞いて頂戴。・・・実は、私は、貴女が呪われていると始めから知っていた。知った上で近づいたのよ。」

「な、なんですってー・・・(棒読み)」


「水島さん、貴女は今・・・とんでもないものに取り憑かれているの!貴女の女難の原因は、それのせいよ!」


「・・・・・・。(お前も十分とんでもないものだし、立派な女難だよ!!!)」


「ソイツに気付かれぬように、私は”愛に狂ったストーカー”として、あえて女難として、貴女に接近した。」


わ、ワザとだって言うのか・・・?アレが?



 ― アレ。の回想 ―



「私達の、お家♪」

「…いや、違います。私はもっと狭くて、電気の明るい家に住んでます。それから、初めまして…ですよね?」



「…貴女を一目見た時、前世の記憶が蘇ったの。

現世では、お互い女性として、転生してしまったけど…それはダークネクロマ星人から、身を守る為仕方なかったのよね…」


「……ああ、アレね!美味しいわよね!『もなぐろーす』!」


『愛してるからよっ!貴女を! 私は、貴女を知ってる!前世から知ってるのッ!貴女しかいないの!!』


『そんなもん関係あるかーッ!戻って来い!水島あああああ!裏切りやがってええええ!』

「…ひいいぃっ…!?」


『水島あああああああああああ!!!』


「いやあああああああ!!(泣)」

「うおおおおおおお!!!」「頑張って!おとーさあああん!!」




― アレ。の回想・・・終了。 ―



・・・どーーーーーーーーう考えても、演技とは思えない・・・。




「まあ、貴女を追いかけている内に、貴女への愛も芽生えたわ。貴女を追い回す事が日課にもなった・・・だから、安心して!」


そう言って、親指を立てるスト子。

結局、ストーキングしてるんじゃねえか!そして、安心出来ねえよ!!愛情は無くていいよ!!


「とにかく、私の話を聞いて頂戴。」

「い、嫌で・・・」


「さもなくば、またスタンガンで貴女を眠らせなければならない・・・」

「話を聞きましょう!!もうミニにタコが出来るくらい、聞かせてくださいっ!ははははッ!!(泣)」

 ※注 只今、水島さんの精神状態が著しく荒れております。ご了承ください。



もう自棄だ!トコトンやってやろうじゃないか!どんとこいッ!!




「そうね、この際だから、私の知っている事全部話しましょう。神聖な場所でなら、私はストーカーを演じる必要は無いのだから。」



いや、誇らしげに演じる必要も無いって言ってるけど、アンタは立派なストーカーだよ!!




 → 後編に続く。

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