ここでしばし堪能したあと、エル・ハズネの向かって右の崖の切れ間からさらに進み、当時のナパタイ人の都市へと向かう。まず、左手にローマ円形劇場。脇の道を上がっていけば犠牲祭壇へと続くらしい。そして右側の山すその岩は多くがくりぬかれていて、この当たりが王家の墓。もう、暑いぐらいになってきて、茶屋で飲み物を求め一休み。さらに進むと柱廊通りに入り、このあたりに往時は市が建ち並び、にぎわったらしい。寺院・教会跡なども並ぶが、もうどれがどれやら分からない。凱旋門をくぐり、アスジャムさんは「ここで博物館が2つあるので見ておいで」。これからエド・ディルに登るに当たって彼はその間、お休みということらしい。博物館のうちのひとつ、岩肌をくりぬいて作ったエル・ハビス博物館(無料)に坂を登って行ってみる。入り口にが小さすぎてわからないほどで、行き過ぎて岩の上でしばし吹かれて涼む。展示自体は、説明文がわかりっこないので何ともいえないが、ああなるほどねえ、という感じ。 もうひとつの、レストラン内にある博物館は後でみることにして、エド・ディルに向けて出発。目ざとく見つけて寄ってくる子供たちがヤギに乗ることを勧めるが、まあ、自分の足で登れる若さがあるのだから、と断る。最初、坂はたいしたことないように思えていたが、曲がりくねってずうっと続くわけだから、次第に息が切れ、暑さも手伝って、途中何度も水が欲しくなってくる。登り初めて15分くらいだったろうか、何度か来ているはずのアスジャムさんもさすがに疲れたか、10分ほど休憩。私もまだバテたというほどではなかったが、ガイドブックを見ると、登るのは約1時間と書いてあったから「ええーっ、この先、このしんどさをあと2度ぐらいは経験しないとたどり着けないのかよ」とちょっとげんなり。
再び出発。ヤギに乗ることのを断ったのを悔い始めたが後の祭り。途中、現地の子供やおばあさんがたむろしているところもあったが、これはヤギが登れる最終地点らしく、飲み物などは売っていなかった。しかししかし休憩から10分もいかぬまま、急に視界が開け、ぐるーっとまわる感じで、なんとエド・ディルの前に出た。ここで終わりかよ、助かったーというのが実感。登り初めておよそ30分。道のり1時間というのは、まあまあ、だれにでも納得してもらえる記述ということかも知れない。
たどりついてしまえば元気百倍。エド・ディル(修道院跡)は高さ45メートルと、エル・ハズネよりもまだ一回り大きい。中はやはり空洞。しかし、エル・ハズネが周りを崖に取り囲まれたところにあるのに比べ、山肌にあるので今ひとつ神秘性にかけるという感じ。岩の色も、それ自体が悪いわけではないのだが、エル・ハズネに比べるとちょっと地味か。それでもエド・ディル前の崖には見事な縞模様の巨石が並び壮観。帰り道で余裕ができて初めて気がついたが、遠くには凱旋門などの都市が見渡せた。
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