ボストンの想い出 その2

 タングルウッドには桐朋学園から2人参加され、一人は安田カルテットのバイオリンを弾いていらっしゃる安田明子さん、もう一人はコンセルト・ヘボウでビオラを弾いていらっしゃる波木井氏とご結婚なさって今日本にはいらっしゃらないですが、波木井ひろみさんでした。指揮の学生には高関健さん、セミナーの参加だけが、大友直人さん。ボストン交響楽団を初めて振りにいらしたのが若杉弘氏で、小澤さんが皆を日本食に招待して下さった時の写真です。

2週間目位にバーンスタイン氏の演奏会がありました。いつも月曜から練習が始まりますが、シートが発表されるのは土曜日です。でも見に行くのは当日でもいいかな、と思っていたら、クラリネットで参加していたジョンが(名字は忘れてしまいました)来週はコンサート・ミストレスだね、と声を掛けてくれたのです。あわてて楽譜を借りにいきました。前半がバーンスタイン氏の指揮、後半が学生の指揮者2人が1曲づつ振ります。プログラムは前半にモーツァルトのピアノコンチェルト17番(バーンスタインの弾き振り)、ヒンデミットの金管と弦楽器のためのコンチェルト、後半がコープランドのアパラチアン・スプリング、ラヴェルのラ・ヴァルスでした。ドアを開け放しての演奏会で、アパラチアの春の時には小鳥の鳴き声が聞こえて来て、あたかも譜面に書いてあるがごとくでした。

 バーンスタイン氏はラ・ヴァルスの練習の時には、いきなり振り出して、結局 最後まで通してしまった時には本当に感動しました。「3拍子がわかってしまった!」気がしました。バーンスタイン氏の身体の中には、血でなくて音楽が流れているのではないかと感じました。また練習の後、寮にいらしゃったので、皆で取り囲みお話を伺いました。特に覚えているのは、「ヒンデミットは天才だ。素晴らしい作曲家だ。」と何回もおしゃった事です。ヒンデミットについて随分熱心に話されました。他に「学生を教えるのがとても楽しい」とか「初めて会った時のオザワは今の君たちよりもっと英語が話せなかった」と真似をして皆を笑わせていました。チェーンスモーカーで、練習の時でも たばこの匂いで後ろに来たとわかりました。

 亡くなる半年程前と10ヶ月前にもミュンヘンでバーンスタイン氏指揮でバイエルン放送響の演奏会がありましたが、素晴らしい演奏でした。これはミュンヘンの想い出に書きたいと思います。 

他にはもちろん小澤征爾氏、クルト・マズア、マルケヴィッチ、ジョン・ウィリアムス(その当時ボストン・ポップス音楽監督)等、今でも忘れられない指揮者の方々と共演できました。

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