<photo & diary> 9/4朝 フェリー
昨夜お願いしておいたとおり7時にタクシーが迎えに来て、10分少々でフヴァルタウンの港に着いた(80kn)。今日は到着時のスタリー・グラード港ではなく、ここからスプリット行きフェリーに乗る。乗船券は一昨日、港に面したヤドロリニアのオフィスで購入済み(32kn)。出航は7時55分、到着は9時35分の予定だ。

私が一番乗りだった。ヒーリングカフェ前にあったベンチに座って待つことにしたが、日陰なうえに風が強くてジャケットを羽織っていても肌寒い。目の前にはまだ小さなボートが係留されていて、フェリーが着けられる余地などない。開店前でヒマなのか、カフェのお兄さんが陽気に話しかけてきた。でも英語じゃないからチンプンカンプン。

  ちょっと来るのが早すぎたなぁ・・・。
10分くらい経ったろうか。まずはカップル、そしてすぐ女の子2人組がやってくる。ここがフェリー乗り場?とか、寒いですね〜、と会話を交わしてからは、みな言葉少なに身を縮めていた。
7:30ごろになってようやく続々と乗客が集まりはじめて雰囲気は明るくなったが、いぜんとして気温は上がらないし、フェリーの影もない。そのとき、タンクトップに短パン姿の若い男の子たちが4〜5人、ドドーッと私のいるベンチめがけて走ってきた。座るやいなやビーチタオルを毛布代わりにガバッとかぶったかとおもうと、全員に行きわたらず引っ張り合いを始める。ベンチが揺れるんですけど・・・だが楽しそうで微笑ましい。
そんなことを逐一覚えているほどヒマをもてあましていた。そのあいだに前のボートが1艘、また1艘と移動して、空きスペースはできてきたが、とうとう出航予定時刻も過ぎてしまった。
そして8時をまわったころ、ついにドーンとフェリーが
横付けする。・・・そう、車を積み込む側が接岸したのではなくて、横付けだった。

   うっそーーーっ!!!!! もしかして、その階段を上れっていうことぉ〜!?!?!? スーツケースを持ってぇ?????
写真は航海中なので階段は
短くたたまれているが・・・
横の階段をつかって大型客船に乗り込むシーンは、TVや映画でしか見たことがない。それだからといって、たかだか10回に満たないくらいの経験をもとに大きな車両用入口から乗船するものと信じて疑わなかったのは、考えてみれば浅はかというものだった。
とにかく上らないわけにはいかない。もたついて迷惑をかけるかもしれないと、列の最後尾についた。列はあとからどんどん延びてしまったので結局それは無意味だったが、並んでいる間は、 "頑張って運び上げるんだぞ!" と自分に気合いを入れることに専念していた。
まあ、かつてミラノ中央駅の階段なんかを友人のスーツケースまで持って (もちろん2回にわけてだが) 上り下りしていた私だから、なんとかなるでしょ・・・。

そしてそろそろ私の順番というころ。すぐ後ろにいた大学生風の男性が 「持ちましょうか?」 と言ってくださった。なのにすっかり覚悟を決めていたせいか、こんな親切なお申し出に対して口をついて出た言葉は
「ありがとう、でも自分でマネージできますから」 だった。
「ホントに?」 「ええ、ホントに」
まるで心のなかの天使(悪魔か?)が、力仕事の担当じゃないくせに勝手に答えちゃったみたいで、本人もビックリである。
実際に上り始めると、半分ぐらいまでは辛くなかった。しかし、さすがに後半はジリジリと手がしびれてくる。ステップは幅も奥行きも狭く、前にも後ろにも人、人、人・・・。もちろんちょっと置いて休むどころか、手を持ちかえるスペースもヒマもない。
こういうときは頭の中を悪いシナリオが駆けめぐるもの。今ここで力尽きて手を離したらどうなるのか。後ろの人たちにスーツケースが襲いかかり、「日本人旅行客が落とした荷物が原因で死者○名、重軽傷者○名・・・」 なんてニュースが世界中に配信されるんだろうな。あるいはバランスを崩して足を踏み外したらどうだ。自分もその死者や重軽傷者のなかに入るに違いない。
ああ、中のワインや、集めてきた観光局のパンフや、ついつい買ってしまった写真満載のガイドブックを捨ててしまいたい。いつもながら私のスーツケースは重すぎだ!
かろうじて前の人に水をあけられることもなく最上段に立ったときには、ほんとうに
ほんとうに、心の底から安堵した。
入口にいたオジサンにチケットの半券を切り取られて、船内に入る。
すでにイスや床など、座れそうな場所は埋まっていた。とりあえずスーツケースを邪魔にならない通路の端に残し、私は最上デッキのベンチへ。
そして、船は静かに港を離れた。
写真は遠くなっていくフヴァル島→
やはり外は風が強くて寒かった。でも室内にはもう座るスペースはない。そこで、風が遮られる壁ぎわの日だまりを探しだし、壁に寄りかかるようにして地べたに座った。そうやってしばらく本を読んでいた。予定では1時間40分の航海だ。

そういえば宿は大丈夫かな。宮殿内にある手頃なホテルに泊まろうとは思っていたが、予約はしていない。行ってから満室だったりしたら、またザグレブの二の舞になるかもしれない。
ふと、携帯で空きを確認しておけばいいじゃないか!と思いついた。そして近くに人がいないのを良いことに、地べたに座ったまま電話をかけ、シングル一部屋を予約。「今どちらですか?」 と聞かれ、「フヴァル島からのフェリー上です。あと1時間以内にそちらに着きます」 と言っておく。
ああ、これで町をうろつかなくて済みそうだわ。

スプリット港に近づいたのを見て、荷物のところに戻った。
時刻は忘れてしまったが、出航が遅れたこともあって予定から1時間近く遅れての到着だったように記憶している。降り口に人が集まり始めた。下船も同じ階段を使うのか〜。今度は本当に最後にゆっくり出たいから、少し離れて待とう。
なんとなく降り口あたりを見ていると乗客に声をかけているオジサン2、3人の姿があった。そうか!港から船内に上がってきたポーターたちだ! 一人が私にも声をかけてくれた。プロなら遠慮なく頼めるので、お願いすることにした。
ここでは車用の口も開いていた。ということは、
こちらから自力で下船できたのかも・・・(ーー;)
自分で荷物を運ぶとしたら、下りは上りより危険だったに違いない。良かった良かった♪ そう思いながらどんどん先に行ってしまうオジサンの後ろを追って埠頭に降り立った。
では、お支払い。ちょっと重いし10kn(\180弱)かな?と、札を1枚渡した。するとオジサン、
「10kn?この荷物で10knだとよ!そりゃないだろう!」 たぶんそんなことを大声でまくしたて、お札をひらひらさせながら周囲のポーター仲間に触れ回る。そんな言い方しなくても・・・だったら料金書いて首からぶら下げておいてよ。そもそも階段を数十段おりただけじゃん(自分じゃムリなわりに強気な考え(^^ゞ)。しかし、乗客もポーターも大勢いる中で叫ぶってことは不当なものだったのか?
「じゃあ幾ら欲しいの?」
「20だ、20kn!」 しぶしぶ10kn追加。ホテル以外のポーターって初めて利用したけど、いずれにしても、最初に料金を確認しそびれた私がいけないのは確かだね・・・。
気を取りなおし、ホテル目指して歩き出した。そう遠くないところに宮殿の城壁が見えてきた。
 

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