「うずのしゅげ通信」

 2015年10月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
今月の特集

朗読劇(一人芝居)「竃猫にも被爆手帳を」改訂

フェイスブックより

俳句

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2015.10.1
朗読劇(一人芝居)「竃猫にも被爆手帳を」改訂

朗読劇(一人芝居)「竃猫にも被爆手帳を」を改訂しました。

つぎのような「あらすじ」になりました。

「宮沢賢治の童話『猫の事務所』に登場する竃猫(かまねこ)が、広島で被爆します。 竈(かまど)の中で寝ていたおかげで一命は取りとめますが、 何が起こったのかわからないまま家をとびだした竃猫は、 ひそかに好意を寄せている 臨時職員の玉さんが心配で、 事務所に駆けつけます。 途中の焼け野原で、彼が何を見て、何を考えたか。 そうして、 ようやくたどり着いた事務所に猫影はなし。 早出していた玉さんは、どうなったのか。 裏庭では、ピカ・ドンを生きのびた蜘蛛があたらしい巣をかけています。 事務所に戻った彼に電信が届きます。 発信人は竃猫の生みの親、宮沢賢治先生。 銀河鉄道の駅で望遠鏡を覗いていて、地球がピカッとひかるのを見たというのです。 何ごとが起こったのかと訊いてきたのです。 竃猫は賢治先生にどんな報告をしたのか。 また、彼らの運命はそれからどうなったのでしょうか?」

改良箇所の主なところは、「ひそかに好意を寄せている 臨時職員の玉さんが心配で、 事務所に駆けつけます。」というところです。
元の脚本では、竈猫の飼い主である原民喜の家族を探すというかたちになっていたのですが、 猫の性格からして、やはり恋人を探してという形にした方が説得力があると書き換えました。
全体の流れはわかりやすくなったと思います。
この脚本の根底にあるのは、原子爆弾を絶対悪ととらえる考え方です。だから、当時の戦況も、 アメリカも出てきません。加害被害といった相対的な見方、あるいは命の数量化から 距離を取りたかったからです。
劇の中にも出てきますが、山川草木悉有仏性という言葉があるように、 生きとし生けるものはすべて仏性をもっているという考え方があります。原爆というのは、 それらすべてのものを傷つけ、滅ぼす悪以外の何者でもないと思うからです。

興味を持っていただいた方は、一度覗いてみてください。
入口はこちらです。

朗読劇(一人芝居)「竃猫にも被爆手帳を」 (高・大)
        「猫の事務所」の竃猫の被爆手記 [50分]


どうして、改訂する気になったかといいますが、実は、今年の1月に、この作品を上演したいといいう申し入れがあったのですが、途中で取りやめになったのです。
それがショックで、読み返してみると、確かに整理されていないところが目に付きます。 これはならじと書き直すことにしたのです。 上演が実現しなくて残念ではあったのですが、そのおかげで脚本をより分かりやすく改訂することが できてむしろ幸いでした。

ということで、今年に入ってからの、「賢治先生がやってきた」に掲載されている脚本の上演は、 現在までのところ五作品ということになりました。
「3・11宮沢賢治にインタビュー」(千葉県立野田中央高校演劇部)
「ぼくたちはざしきぼっこ」 (愛知県知多市立岡田小学校)
「パンプキンが降ってきた」 (岩手県二戸市立金田一小学校)
「賢治先生がやってきた」 (富山県砺波市立鷹栖小学校)
「風船爆弾」 (備前市立日生中学校)

上演の申込みをお待ちしています。


2015.10.1
フェイスブックより

以下、9月18日にフェイスブックに投稿した文章です。

「今日の拙句です。

九条のはぶりましろきまんじゅしゃげ
漱石にデモの賛あり秋入梅


一句目、「はぶり」は「葬り」。今日散歩で小学校の前を通ったら、 フェンスの中に白い曼珠沙華が咲いていました。
二句目、秋入梅は「あきついり」で「秋梅雨入り」の略、秋黴雨とも。
デモの記述は、「私の個人主義」の中、英国人を評した箇所に見られます。

「彼らは不平があると能く示威運動を遣ります。然し政府は決して干渉がましい事をしません。 黙つて放つて置くのです。其代り示威運動をやる方でもちやんと心得てゐて、 無暗に政府の迷惑になるやうな乱暴は働かないのです。」
今回の国会前のデモ、「無暗に政府の迷惑になるやうな乱暴は働かない」 性格のものだと思われます。(「政府の迷惑」かもしれませんが、 「無暗に…乱暴は働かない」ということです。)それなのに、なぜあんなふうに誰が見ても過剰な「干渉がましい事」をするのでしょうか。遠巻きにして放っておく、 という度量を示すことで、デモする側も政府の側も、 ともに一段階成長するきっかけになった可能性もあったのではないかと思うのですが。

ということで、今日の名句は「秋黴雨(あきついり)」、

秋黴雨まろべば机のうら寒し  草村素子

「机のうら」という視点を入れることによって、この句が生きています。 しかし、何ともわびしい。」


2015.10.1
俳句

先月の俳句

秋彼岸寝どろと聞きし母の声
      「寝どろ」というのは、こちらの方言で、
      おそらく「寝泥」と書いて、
      赤ちゃんが寝るまえにぐずりもがくこと。

月のデモ玻璃越しに打つ外の火蛾
鞦韆の尻押すだけの齢かな
秋茄子を素揚げにしをり酢の旨し
水溜り蜻蛉の目して覗きをり
亡き人と気づかぬ夢や曼珠沙華
蟷螂と刺し違えむとしばしをり
蟷螂と刺し違えむとわが構へ
代官所跡の小家や唐辛子
虫の声消えし外闇誰が謀反
秋女郎払へば雄蜘蛛ふためけり
蟷螂の若葉のごときうすみどり
葛の花零る杣道兵の墓
栗割ると青毬踏めど身の軽き
蝦夷塚古き木の実の積もりたる
女郎蜘蛛払えば雄のふためけり
憲法の官報号外鉦叩
月白にぬすびとはぎの抽んでて
九条のはぶりましろきまんじゅしゃげ
漱石にデモの賛あり秋入梅
毒茸の術にはまりてホ句一つ
逃げもせで構へるばかり蟷螂は
たまゆらに蝶浮びゐし曼珠沙華
九年の忌金木犀のふふみをり
忌日過ぎて金木犀の匂ひ立ち
むかごめし椀つたふゆげ九年の忌
精進のずいきの紅(こう)が酢に淡し
菊焚きし匂ひ一日を身のほとり
彼岸花腰折れ(こしょれ)地蔵の古狐
狐火のとんと聞かずも狐花
四品五品と数へて妻の月祀り
月の影しまひ忘れし句集にも
十六夜の月を柚子坊横切れり
  (柚子坊はアゲハチョウの幼虫のこと)
うつ多き村のおなごや十七夜
なり代り供華の礼状居待月


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