「うずのしゅげ通信」

 2015年12月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
今月の特集

コント「宮沢賢治のクリスマス」

私俳句

俳句

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2015.12.1
コント「宮沢賢治のクリスマス」

いよいよクリスマスの月、「うずのしゅげ通信」では、 毎年12月号にクリスマス特集(ちょっと大げさですが)を組んでいます。
今年は、俳句にのめりこんでいて、新しい作品ができませんでした。
昨年は、「宮沢賢治のクリスマス」というコントを掲載したのですが、 読み返してみると、(自分で言うのも変ですが)そんなに悪くないように思われますので、 今年、もう一度掲載することにしました。
もしよろしければ、お読みください。

コント「宮沢賢治のクリスマス」 (高・大)
        −なまはげのサンタクロース− 〈十数名〉[20分]


2015.12.1
私俳句

この一年間、一日一句を超えるペースで俳句を作り続けてきました。
そのために脚本は、一本も書けませんでした。
俳句にのめりこんだ理由は、私小説を書くように、俳句で一つの出来事を詠みたかったからです。
私小説になぞらえて私俳句(わたくしはいく)と考えています。

私俳句「ブラジルの月」
九年前の2006年の九月に大切な家族を、ブラジルのマセイオで亡くしました。事故でした。 たまたま宮沢賢治の忌日と同じ日でした。ここで、宮沢賢治を持ち出したのは、遺品の 中に文庫本の「銀河鉄道の夜」があったからです。
今年で九年の忌を迎え、ようやく事件のことを少しは冷静に思い出すことができるような 気がしています。
そこで、私小説を書くように、俳句で事件のことを詠んでみようと考えたのです。
といって、狎れたということではなく、(狎れるはずがありませんが、)詠むのは今しかない という焦りが萌してきたからです。いまだにアルバムを開くことはできませんから、 心の傷はまだまだ休眠の状態です。でも、待ちすぎると大切な思い出がボケるかもしれません。 俳句の技量も少しは身についてきつつあります。 そういった理由から、今しかないと考えたのです。小説で詳細に書くにはまだまだ 傷が癒えていないし、詩にも適していないように思います。しかし、俳句でなら詠めるような気がしたのです。
私が俳句を始めたのは、五、六年前からです。最初の頃は、技量も未熟でしたし、 平静に見ることができる状態ではありませんでした。
今年になって、やっとその時期が来たと思い定め、「私俳句」に手を染めはじめたのです。
以下、その成果というか、作った句です。

ブラジルのこと(すべて2015年に詠んだものです。)

          (マセイオにて)

月白の汀(みぎわ)に花束うち返し

弟も従(つ)きて魂呼ぶ月二つ

月明に遺品の指輪のイニシアル

妻の声電話に遠し十字星


          (サンパウロにて)

サンパウロに線香求む月の岐路

月の客に線香賜(た)ばるサンパウロ

鳥の鳴く墓苑に遺灰撒かれけり

ラテン風骨箱の鳴る昼の月

ポルトガル語の遺灰証明賢治の忌

地の日矢が機上にまぶし名残月(なごりづき)


          (帰路、ニューヨークにて)

遺灰バッグに遠き摩天楼眉の月
   


その後のこと

三年くらい経って、句会に入ったこともあり、少しずつ詠み始めてはいたのです。


2009.

賢治の忌賢治の母の嘆きはや

春愁やいつまで続く悲しみぞ

処暑の夕幽明へだつ雨の幕

2010.

春障子光の隔つ遺影かな

百合の香や四周忌すぎて愁思なほ

短日やはつかに早巻く正信偈

2011.

春暁や夢のなぞなぞ解けぬまま

2012.

「惜し つくづく」と遠蝉鳴くも七回忌

桃の肌指跡ほのかに七回忌

2013.

桜蕊に色を遺して逝きしかな

朱き実を添へて仏に室の花

2014.

遺骨未だよう納めずに竹の秋

懐かしくも声なき夢かちちろ聞く

水澄みていのちの淵や子の忌日

金木犀の花降らすときほとりせん

時雨して遺影の翳り移ろひぬ

ひとつこと共に耐へにし妻の胼(ひび)

2015.

一生(ひとよ)ものの負い目おぐらき寒の雨

寒の香煙ショートケーキを離し置く

遺影移し不意に見らるる冬灯

蕗味噌や追悼句にも己が味

バレンタイン遺影に映る赤リボン

夫婦してチョコのお下がり春障子

一輪を供華の水仙とりわくる

過ぎしまま遺影の前の二月チョコ

しばらくは供華のミモザの零るらん

黄水仙立て持つ妻は片手添へ

人の世に死ぬるは独りまくわ瓜

供華たわわ曲がり癖あるチューリップ

なきひとの名もかかれゐてころもがへ

人の亡き九年藻の上の水澄し

老いの死にいつしか淡し花うつ木

梅雨寒や十年を聞かぬ人の声

明易や死ぬこと淡くなりしかな

遠国(おんごく)に子を逝かしめて鮎にがし

鬼やんま虫籠かさと骨(こつ)の音

遠国の悲しみごとや夏花挿す

吾に子の、弟に兄の盆の月

表札に指押し当てて嗚咽冷ゆ

底冷えに早回しする美僧かな

をろがみて己が異形や仏手柑

子の数を訊かれることも秋の蝿

亡き人と気づかぬ夢や曼珠沙華

論文がすなはち遺稿月の旧友(とも)

九秋や狎るることなく九年の忌

九秋を忌日真中に過しけり

むかごめし椀つたふゆげ九年の忌

忌日過ぎて金木犀の匂ひ立ち

なり代り供華の礼状居待月

忌を過ぎて金木犀の遅れ花

木犀もつつしみ匂ふ忌の朝

冬の息遺影しばらく曇りけり

不貞寝する子が夢にゐて冬の雨

変更線に忌日移ろふ臥待月

破れ芭蕉子を悼む句の百足らず

子を詠む句まとめて小春日和かな




2015.12.1
俳句

今月は、俳句ばかりになるのでお休みにさせていただきます。


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