集団の対外的な側面から集団の内部に視点を移してみますと、戦略系の自己保存の他にも、人間が集団で生活する利点があります。それは、共通の財源がある場合に、それを構成員全般の生活の向上に役立てることです。 それは、原始の時代には単なる採取物の山分けであったり、また、ある時には全ての構成員に恩恵がもたらされるような公共の施設などを作ることであったかもしれません。人類は、一人の能力を超えるような大規模な事業を行うようになって、古今東西を問わず、様々な文明を発展させてきたとも言えるのです。 しかしながら、人間の集団とは、外部に対しては結束して戦略的に行動するものの、集団の内部にあって深刻な分裂が発生してしまう場合もあります。これもまた、自己消滅の危機を招く結果となります。集団にとって必要な事業は何であり、それが誰がどのような基準で負担し、そうして、誰がどのような形で利益を受けるのか、という問題は、常に集団の内部に対立を起こす原因となるのです。そこで、財源の使途、負担、受益などについて、集団内部の下部集団や個々人の多様な意見や利益を、合意に達せるように調整することが必要となります。ここでは、このような集団内部の多様な意見や利益を調整することを、内部調整と表現することにします。 第1章へ戻る 次のページへ |