……無敵戦隊グレートセインツ再見参!
司会: | よっ、今日もグレートセインツショーに来てくれて嬉しいぜ。よい子のみんなも、元よい子のみんなも、楽しんでいってくれよな。じゃ、はじまるぜ。さぁて、お約束だ。おっきな声で呼んでくれよな。せーのー、グレートセインツ! |
アイラムの声: | ふふふ・・・。グレートセインツなど呼んでも無駄です。 |
司会: | だ、誰だ? てめーは。 |
アイラムの声: | 私はアイラム。トルヴィク帝王の参謀、といった方がわかりいいかもしれませんね。 |
司会: | そ、その参謀が何の用だ! |
アイラムの声: | 用というのはひとつしかありません。この地球をいただきに参りました。誰にも邪魔はさせません。誰にも、ね。 |
司会: | うわーーーーーーーーっ!!! |
暗転。 仄かな薄明かりの下、ひとりの男が椅子に腰掛け、疲れたようにこめかみを押さえている。 その前に跪き、男を気遣うように見上げているのは水色の髪の男性。 |
トルヴィク帝王: | アイラムよ、やはりワシは間違っているのではないだろうか。 |
アイラム: | 何を仰います、帝王。我が臣民を地球へ移住させる計画は着々と進んでおります。 |
トルヴィク帝王: | そのことだ。先住民を追い出して地球を乗っ取り、我が臣民を住まわせるなどと言うことは許されることなのか? ワシにはもうわからん。 |
アイラム: | 帝王。お悩みになることはありません。我が臣民のため、もはやこの方法しか残されていないのです。どうぞこのアイラムにすべてをお預けください。グレートセインツなどという輩など見事蹴散らして参りましょう。私に出撃命令をお出しください。 |
トルヴィク帝王: | ・・・うむ、わかった。お前がそう言うならワシはもう悩まん。お前に全権を与える。グレートセインツを蹴散らしてこい! |
アイラム: | はっ、必ずや。 |
暗転。 |
司会: | はぁ。何だったんだ、今のは? みんなぁ、大丈夫かぁ? よーし、んじゃ、もいっぺんグレートセインツを呼ぶぜ。せーのー! グレートセインツー! |
グレートセインツのテーマソングが流れ、幕が開く。 陽光差し込む豪奢な邸宅の一室。金髪の男が白いローブを身に纏い、優雅にお茶の時間を楽しんでいる。 そこに栗色の髪にブルーの瞳の快活な青年が飛び込んでくる。 |
ブルー: | たいへんだーっ! |
ホワイト: | 騒々しいぞ。何事だ? |
ブルー: | 落ち着いている場合じゃないですよ! トレヴィク帝国の奴らが現れたんです! |
ホワイト: | 何? |
ブルー: | 最近おとなしいと思ってたら何か企んでたんですよ、あいつら。 |
ホワイト: | わかった。グレートセインツを召集する。 |
金髪の男が壁の隠しボタンを押すと、壁の一面が巨大ディスプレイとなり、茶器がのっていたロココ調のテーブルはコントロールパネルへと変貌する。 作戦本部となった部屋に飛び込んでくるグレートセインツの面々。 |
レッド: | セイントレッド参上しました。事件ですか? |
ホワイト: | うむ。 |
ブルー: | トレヴィク帝国のやつらです! |
レッド: | そうか、やはり身を潜めていただけだったんだな。 |
ピンク: | すみませ〜ん、遅れちゃいました? |
ホワイト: | いや、ブラックがまだだ。 |
ブラック: | 私ならここにいる。 |
ホワイト: | そなた・・・。まあいい、これで全員揃ったな。よし、グレートセインツ出動! |
幕。 派手な衣装の男と頭にターバンを巻いた男が話しながら舞台中央へ進む。 |
レヴィオ: | なーんか今回はアイラムの独り舞台ってカンジだねー。私達の出番って無いじゃない。 |
ヴァルー: | いやー、いいじゃありませんか。要は作戦が上手く行けばいいんですからねー。 |
レヴィオ: | そっかぁ、ま、そーよね。ほんっと、地球ってキレイでいいトコロじゃない。スッゴク気にいっちゃったからココに住めるんだったら、アイラム様々ってトコかな。 |
ヴァルー: | ええ。私達は作戦の成功を祈っていればいいんですから今回は楽ですよねー。 ・・・・・。?? い、今のって? |
レヴィオ: | グレートセインツ、みたい、だね・・・。 |
ヴァルー: | ということは・・・。 |
レヴィオ: | あーあ、仕方ないねぇ。じゃ、マザーシップに帰るとしよっか。 |
ヴァルー: | ええっ?! 帰っちゃうんですかー? |
レヴィオ: | だって、どーせグレートセインツにやられちゃうんでしょ? だったらムダじゃん。 |
ヴァルー: | でも、私達も一緒に戦えば、ひょっとしたら・・・。 |
レヴィオ: | ひょっとしないってば。いい? この作戦は隠密行動がバレたトコロでお終いなの。わかる? |
ヴァルー: | あー、でも、アイラムを見捨てて帰っちゃったりしたら・・・。あのー、レヴィオ? 聞いてます? |
レヴィオ: | 大丈夫だってば。アイラムなら無事に帰ってくるよ。いよいよ危なくなったら強制転送ってコトもできるんだからさ。 |
ヴァルー: | そ、それはそうですけど・・・。 |
レヴィオ: | わかったら帰るよ。 |
ヴァルー: | あー、待って下さい。 |
幕が開く。 どこかの工場跡地。 金髪に菫色の目の手下を連れた水色の髪の男が何かを運び込もうとしている。 そこに現れたグレートセインツ。 |
ホワイト: | そこまでだ、アイラム。 |
アイラム: | グレートセインツ?! |
ブルー: | 何を企んでいるんだ? 持っているものを降ろせ! |
アイラム: | マレック、これを早く! |
マレック: | は、はい! |
レッド: | おっと、そっちへは行かせないぜ。 |
アイラム: | アクアウォール! |
アイラムが念を込めた両手を上げると、アイラム達とグレートセインツの間に突如として水の壁が現れる。 |
アイラム: | さ、早く! |
マレック: | はいっ! |
ブルー: | させるか! ウィンドクロー! |
ブルーの放ったウィンドクローが水の壁を切り裂く。 しかし、マレックの姿は無い。 |
アイラム: | ふふふ、一歩遅かったようですね。あれが最後の増幅器だったのです。さて、仕上げをさせていただくことにしましょう。 |
ホワイト: | 何を仕掛けたのだ? |
アイラム: | 知りたいのですか? いいでしょう。このボタンを押せば我らがマザーシップより強力な磁力線が発せられます。それを各地に設置した増幅器が何倍にも増幅して地球全体に超磁力線が降り注ぐという訳です。 |
レッド: | 貴様! |
ブルー: | あのー、磁力線が降るとどうなるんですか? |
ホワイト: | 磁気が狂う。地軸まで狂うことは無かろうが、コンピュータ制御されているものは全てダウンだ。 |
ブルー: | ええっ?! それってすっごく困るんじゃないんですか? |
アイラム: | ふふっ、ええ、困るでしょうね。 |
ブラック: | そうかな? |
黒髪で長身の男がマレックを突き飛ばす。 |
マレック: | ア、アイラム様! |
アイラム: | マレック! |
マレック: | すみません。僕、捕まっちゃって・・・。 |
ピンク: | ダメですよぉ。こんなの置いていっちゃ。ねっ。 |
アイラム: | そ、それは?! |
ホワイト: | 増幅器とやらだな。 |
アイラム: | くっ・・・。 |
ホワイト: | 良くやった。ピンク、それをこちらに・・・。 |
アイラムの姿がふっと消え、ピンクの傍らに現れる。 |
アイラム: | それは大事なものなのです。返していただけますよね? |
ピンク: | えっ? で、でも・・・。 |
ブラック: | こっちだ。 |
ピンク: | あ、はい。 |
アイラム: | ・・・セイントピンク、ご自分の所有物でもないのに人に渡すというのは感心しませんよ。 仕方ありませんね。あれを返していただくまではあなたを帰すわけにはいけなくなってしまいました。 |