(2001年1月〜4月)
Sorry,Japanese Only



4月


「こどもはおもしろい」
<著者>河合隼雄 <発行所>講談社 ¥1600

 子供の個性を引き出す個性的な教育を実践している個性的な先生たちと、高校の教師の経験がある臨床心理学者の著者との対談集である。
 日本の教育は、「個性を育てよう」と言いながら、少しでも人と違う行動をとると、「皆と同じにしろ」と強制する。他人と同じでなかったり、少しでも目立つといじめられたり…。おかしな国である。個性を殺し、子供の不思議な・自由な力を押さえ込んでいるのは、一体、誰なのか?
 この本に登場する先生は、皆、個性的である。個性的な先生だから子供の個性を伸ばせるようだ。そして、子供に一方的に教えるのではなく、「教えたがる」をやめ、先生も知らない事がいっぱいあるから、一緒に学ぼうと考えている。子供に自由にやらせているように見えるが、子供がつまづいた時に、さりげなくアドバイスをしたり、子供に子供自身の力を信じ、すばらしさに気づかせる。子供をよく見て知っていなければできないことだ。見えない努力をしている先生もいる。しかし、先生の努力が強く出ると、子供が主役でなくなり、子供はしらけるのだから、難しい。
 私は、安野光雅さんと著者の対談が、一番おもしろかった。


「忘れてはならない 現代死語事典」
<著者>大泉志郎・大塚栄寿・永沢道雄 <発行所>朝日ソノラマ ¥1900

 平成の今、使われなくなった言葉や生活用具など561語を収録してあります。たとえば、「タケノコ生活」「幽霊人口」「羅宇屋(らおや)」「破鏡(はきょう)」、などなど。
 火鉢、七輪、五徳などは、今でも私は使っているものですが、見たことない人だっているわけですよね。「あっぱっぱ、知ってる?」と、十代の女の子に聞いたら「何ですか?服ですか。峰さんも着ているんですか?」と言われてしまった。(おいおい、あたしゃ〜、あっぱっぱなんて着たことないよ!)
 差別感がある言葉も載っていています。そんな言葉を使っていたその頃は、差別意識などなかったのでしょう。おおらかと言えばおおらか。無神経と言えば無神経。この本を読むと、日本という国が見えてきそうです。


「みやぎの地酒の旅」
<取材編集>「みやぎの地酒の旅」編集部 <発行所>河北新報社 ¥850+税

 昭和61年、宮城県酒造組合は、「みやぎ・純米酒の県」を宣言した。以来、宮城の特定名称酒(吟醸、純米、本醸造)の比率は、全国でトップクラスを維持している。
 この本には、宮城県内の37の酒蔵が紹介されている。酒造りのこだわりやロマンや願いが込められている1冊である。
 興味深かったのは、利き酒日本一になったことがある「目黒敬章」氏のエッセイである。宮城県代表代表になってから全国利き酒選手権大会に出場するまでの想像を絶するプレッシャー。毎日の利き酒練習・訓練。軽い気持ちで全国大会出場のための宮城県大会予選に出場したことがある私だが、こんなに辛いんだから、落ちて良かった〜と痛感した(代表になるほどの実力もないんですけどね)。そして、目黒氏も書いているが、日本酒を知れば知るほど、日本酒が好きになる。日本酒は奥が深い。不思議なものだ。それが、日本酒の魅力でもある。
 地酒の販売店や地酒が飲める店も載っています。宮城の地酒に興味があるかたは、ぜひ!



3月


「うまい酒は、なぜうまい さらば悪酔い・二日酔いの科学」
<著者>朝倉俊博 <発行所>光文社 ¥850

 酒は、振ればうまくなる。本当にうまくなる。振った酒は、悪酔い、二日酔いしない。それはなぜか。
 著者が、物理、化学、生物学の専門家を動かした。実験を重ね、証明したのが、この本。研究論文は、学術雑誌にも掲載された。
 3〜5分も酒瓶を振るのは疲れるし、せっかくの効果が長持ちしないので、超低出力超音波熟成器も開発し、発売もしている。
 さあ、世の中の酒飲み諸君。この本を読めば、大手を振って酒が飲めるぞ。
 私は、振ればうまくなるとデータを見せられても、振ろうとは思わないな〜。ごめんね。ま、そのうち、振ってみましょう。と、消極的なのであった。


「ねこぢる純粋理性批判」
<編集>ねこぢる研究会 <発行所>祥伝社 ¥1200+税

 興味本位で読んだ。
 ねこぢるのファンでもないし、ねこぢるマンガを読んだことない私だが、この本は途中まで読めた。ファンなら共感できる本であろうが、文章に意味も中味もなく、飽きてしまった。
 ねこぢるマンガには、山田花子のマンガに通じる部分あり。病気マンガとでも言うのかな?猫が単純化され、かわいく見えるだけに、マンガの内容が、より残酷に感じる。美人はとことん美人に、ブスは徹底的にブスに描かれている。極端な絵柄がウケているのかなー?私には、わからない。


「刺青絵師」
<著者>毛利清二 <発行所>古川書房 ¥2000+税

 彫師の本(刺青デザイン集)かと思って図書館から借りたら、俳優や女優の素肌に刺青を描いている人でした。作品のカラー写真もあり、とてもキレイです。色は、舞台化粧料を何色も調合して作るそうです。
 映画などの名場面と共に、苦労話や大スターとの交流が描かれてあります。たとえば、「遠山の金さん」の桜吹雪は、役者の身体の特徴や個性によって、微妙に描き分けているそうです。刺青絵師30年の彼なりの映画へのこだわりが感じられました。
 刺青を描くのには、どんなスターも美人女優も、彼の前では、身も心も裸にならないといけないそうです。著者近影を見ると、なかなかダンディです。



2月


「ナスカ 砂の王国」
<著者>楠田枝里子(くすだえりこ) <発行所>文藝春秋 ¥430

「ナスカの地上絵」
 誰でも1度は聞いた事があるだろう。
 私も中学生の頃に、地上絵の写真を見て、いつ誰が描いたのだろうと不思議に思いながら、いつかこの目で見てみたいな〜と思っていた。だが、ナスカが南米ペルーにあるのを知ったのは、つい最近であった。お恥ずかしい。
 著者は、雑誌のナスカの特集の「地上絵の測量をしているドクター・マリア・ライヘ」の小さな写真の前に釘付けとなり、いつかきっとこの人に会いに行くと直感したのである。そして、ナスカまでマリアに会いに行き、少女の頃のマリアを追って、統一前の激動の東ドイツへ飛ぶ。マリアと地上絵の謎の旅が始まるのである。ナスカの地上絵の解明に生涯を賭けた数学者マリアの軌跡。ノンフィクションである。
 地上絵は、地をはうクモ、トカゲ、木、9本指の小妖精、カモメ、アオサギ、イグアナ、グンカンチョウ、ハチドリ、クジラ、ネコ、サル、その他幾何学的な図形がある。整理されているものだけで200にもなるという。
 読み終わると、地上絵を見に行きたくなる。TVでオーストラリアの白鯨の放送があれば見に行きたくなるし、チベット特集があればチベットも良いなー。お金に都合がつくのならば、どこまででも行ってみたい。月旅行ツアーができたら、ぜったい行くな。きっと。
 ところで、「ミスター・イトウのバターサブレ」の模様だが、私には「アンデス地方の民族衣装を着た親子」に見えるのだ。本当は?


「台所でつくるシャンパン風ドブロク 30分で仕込んで3日で飲める」
<著者>山田陽一(やまだよういち) <発行所>農山漁村文化協会 ¥1300

「ドブロク作ったから飲みにこない?」
「ドブロク?ドブロクじゃなくて甘酒だろ?」
 そして私が作ったドブロクを口に含くんだ瞬間、「ん!これは、ドブロクだ!うまい!」と、驚く私の父。

 作り方はすごく簡単。本当に3日でできちゃう。用意するのは、米と水と米麹とドライイーストとヨーグルト種菌だけ。約100円で1500mlのドブロクができた。味は、もちろん素人が作ったドブロクだからそれなりの味。かなりアバウトに作っても大丈夫。仕込んだ後、容器を置く場所の温度によって、アルコール度数や発砲のしかたが違うようだ。作りながら自分の好みを見つければ良い。しぼりたてより、瓶詰後2〜3日間冷蔵庫で寝かせたほうが味にまるみがでるような気がする。
 自分でドブロクを作ってみて、杜氏さん達の技術の高さや苦労を知ることができた。今まで以上に日本酒に興味がもてて、違った味わいかたができると思う。
 日本には、自家醸造を禁じた酒税法がある。これは現行犯逮捕のようだから、ドブロクが見つかったら、その場で捨ててしまうしかない。ドブロクの作り方の本が堂々と書店で売られていて、まだ著者が捕まっていないようだから大丈夫だと思うけど、気をつけうるように。


「シャブ屋」
<著者>木佐貫亜城(きさぬきあきお) <発行所>ぴいぷる社 ¥1500

 おもしろい本だった。あまりにもおもしろいんで、一気に読むのがもったいなくて、じっくり時間をかけて読んだ。こういう読み方をしたのは初めてだ。
 著者46歳。覚醒剤密売25年。逮捕暦15回。前科10犯。服役年数通産22年6か月。シャブ一筋の人生。今回の刑を終えて娑婆に出ても、覚醒剤からきれいに足を洗うことはできないそうだ。彼は、今までシャブの密売ばかりしているからである。覚醒剤は「白い悪魔のクスリ」であり「究極の媚薬」である。覚醒剤の魔力を知り尽くしている彼は、まさしくシャブを命懸けで売るシャブ屋なのだ。彼の兄もシャブ屋だそうだ。兄弟そろってシャブ屋!
 シャブ屋の彼には、夢と希望と意地と誇りがあるらしい。なんだろう?と思って読んでいたら、出所して家を建てることらしい。もちろんシャブの密売をして…。おいおい、ちょっと違うと思うぞ。でも、これはひょっとして「シャブ御殿」とでも言うのでしょうか?うーむ。
 射つと5分位で、身体が空中に浮いた感じになると同時に強烈な快感が湧いてくる。しかし射ち続けると幻覚症状が出てくる。スイッチの切れたテレビに向かって一晩中しゃべりまくったり、指の先からガスが出ていると真剣に訴えたり…。
 覚醒剤を1回注射すると1年の刑期。100〜200g所持していれば求刑7年、罰金100万円。判決では刑期5年、罰金50万円。
 射つも地獄、売るも地獄である。



1月


「恋愛の基礎」
<著者>キム・ミョンガン(金明觀) <発行所>小学館 ¥1200

 マンガ雑誌「ビッグコミックスピリッツ」に連載したエッセイをまとめた本である。このエッセイがおもしろくてマンガ本を買って読んでいたのだ。
 本には、私が雑誌で読んだと思っていた内容のエッセイが入っていないような気がする。連載した全てを本に載せたわけではないんだね。少し残念。(生まれる子供の性は、精子によって決定される、っつー話。現代でも、「女しか生めない(役立たず)嫁」と理不尽な言われかたをされているが、この発言は間違っているのであるよ)
 恋愛の基礎とは発情である。発情するには成長しなければならない。成長するには食べることが必要である。食べて栄養をつけ、さあ受胎・出産。と簡単にはいかない。もう1つ何か必要なものがある。快楽・快感という魅力である。なぜ発情するのか?発情の正体とは?性欲とは?男と女の違いは?
 文化人類学者のキム氏が恋愛や性を分析した本である。チンパンジーなどの動物の性行動と比較しながら、人間の性行動をわかりやすくユーモアを交えながら真面目に描かれてある。興味深い本なのである。
 この本を読むと、私達は性行動に対して、なにか間違ってインプットされているような、氾濫している情報と解釈が私達の性行動をとりまき、いかに翻弄させられているかがわかる。正しく深い知識があれば、悩んだり傷ついたり相手を悲しませたりすることがなくなるのである。
 著者は「性は本能的なもの」という常識に疑問を投げかけている。衝動によるものと思われがちなレイプは、顔見知りで無防備な弱い女性を狙う計画的な犯行が多いそうである。
 他にも、よく「ケダモノ!まるで動物よ!」と、ののしる台詞があるが、これは動物に対して失礼であるぞ。同性愛もSMもロリコンも動物も人形もジジもババも少年も人妻も夫婦交換も制服倒錯ものぞきも露出症も近親相姦もなんでもありは、人間さまぐらいなもんである。地球上で最も掟破りの行動をするのは、人間だけなのである。
*キム・ミョンガン(金明觀)さんの奥さんは、漫画家の槙村さとるさんです。


「スリ その技術と生活」
<著者>アレクサンダー・アドリオン <訳者>赤根洋子
<発行所>青弓社 ¥2000

 私が小学生の頃、母が「スリに遭った」と教えてくれた。いつもは腕にしている南京時計を、その時だけはハンドバッグに入れて出かけた。バスに空席がなく、母は吊革を手に立っていた。時間を確認するために時計を出し、またバッグに戻した。バスを降りたらバッグの口が開いていて、腕時計だけが消えていた。それほど混んでいないのに妙に接近してくる男性がいたそうだ。
 私はスリの被害に遭ったことがない。ないと思う。ひょっとしたら気がつかないだけで、プロ中のプロのスリに遭っていたのかもしれない?しっかり稼いで死ぬまでお縄にならず、スリの本には名前が出ることなく、目立たぬように暮らしているスリが、スリ業界では本当の成功者なのかもしれない。
 鮮やかに他人のポケットからサイフを探る職人もいれば、ひったくり(暴力的な窃盗犯は本来の意味でのスリではない)や刃物を使う凶悪なものもある。ケチャップなどの小道具を使ったり、わざと倒れてみせ親切心を利用したり。ミニスカートの若い女性が床に落とした物を拾い集めているのを「うへうへ、ええもん見たわ〜」と喜んでいる間にサイフを盗まれている場合もあるようだから、札入れをしっかり押さえてから眺めましょうね。
「スリに注意」の張り紙やアナウンスに、人は本能的にサイフの場所を確認してしまうそうだ。スリに現金のありかを教えているようなものなのだ。
 人込みには必ずスリがいます。お気を付け下さい。


「日本イカイカ雑誌」
<編者>全日本イカした雑誌連絡協議会
<発行所>竹書房 ¥1300

 イカイカ雑誌とは、イカがわしくてイカしている雑誌の事である。
 本書は「平成8年度 全日本イカした雑誌連絡協議会公認雑誌目録」より会員が厳選した44誌が掲載されている。こういう団体があったなんて知らなかった。会員5名が、真面目に協議しているのかと想像すると楽しくないですか?
 私が感動した雑誌をいくつか紹介します。まずは、なんといってもこれでしょう。
・「実話ドキュメント」
 竹書房/月刊/毎月1日発行/定価380円/1983年10月創刊
 任侠の世界を愛する人々の情報誌。カラーグラビアはヘアヌード!でも、他の男性雑誌と違うのは、読者の目はモデルさんの彫り物に注がれる点である。作品名と刺青師と仕事場の電話番号が記されている(あぁ、本物の芸術的な刺青を間近で見てみたいです)。堀の外から塀の中のあの人へのメッセージ「出すに出せない一通の手紙」は、涙なしでは読めましぇん。
・「胃と腸」
 医学書院/月刊/毎月25日発行/定価2060円/1966年6月創刊
 字、そのまんま「胃と腸」の医学専門誌である。カラーグラビアは、なんとヘアヌード!なわけない。胃と腸のカラー写真満載だ。説明には英文が多く、日本語で書かれていたとしても、シロートさんには意味がわかるはずがありません。「コーヒーブレイク」コーナーでも、これでブレイクできるのか?という内容。私は読者の資格なし!とみた。
・「養豚界」
 チクサン出版社/月刊/毎月1日発行/定価880円/1966年7月創刊
 養豚業界人のための情報誌である。豚の病気について、育てかた、経営、そして豚肉料理まで載っている。愛情をそそぎ育てて最後は食う。複雑な心境になってしまうのは私だけか?
・「MY詩集」
 MY詩集社/隔月刊/奇数月10日発売/580円/1970年12月創刊
 うわあ〜!たすけてくれ〜!と叫びたくなるようなハートマークだらけの雑誌である。詩とイラストを融合させた「ポエミー」なるスタイルを開発した。コーナー名・詩のタイトル・ペンネーム・詩の1行読んだだけで、私は逃げます。さらば!

 他に、UFO、ホモ、レズ、ハト、鯉、バス、気、石、刀、虫、住職など、イカめしいことは抜きに、イカす雑誌、イカがですか。




みねがとおります