第2話「新しい仲間」 前編 |
ここは、いわずと知れた、しあわせ町児童公民館。シルクファイブの秘密基地が、地下に隠されている。新たな必殺技を身に付け、強敵デストラーを倒した5人の戦士が、帰ってきた。エレベーターで、地下へと向かう5人。 「これで、ネットの平和は守れたなぁ。」 「しかし、手強い魔神獣だったな。」 「更に技を磨かないと、今後の闘いは、厳しくなっていくんじゃないかしら。」 「破壊されたアクセスポイントの再建も急がなければ。」 「協力はするけど、5人揃って動くわけにはいかないだろ。」 「それぞれ、自分の得意分野で貢献すればいいのよ。」 「ますます、忙しくなるな、みんな、がんばろう!!」 エレベーターの扉が開き、基地へと5人は入った。 「鈴木博士、任務終了しました!・・・あれ・・?」 そこには、いつもはいるはずの博士の姿がなかった。 「おかしいなぁ、俺たちが、闘いから帰ってきたときは、必ず、ここで待っているのに、今日に限って、どうしたんだろう。」 「ねえ、そこに、何かいるわよ!」 鈴木博士がいつも座っている椅子の上に、白い、ムクムクした毛並みの犬がちょこんと座っていた。 「・・・・、これ、犬だよな。」 「んな、見たままの事言わないでよ。」 「捨て犬でしょうか、迷い犬でしょうか?」 「首輪をしてるから、野良ではなさそうだな。」 「・・・・普通の犬ではない・・・。」 「え、ま、まさか、敵が、鈴木博士を犬に変身させちゃったってんじゃないでしょうね!!」 驚いている5人を無視して、犬はのんびりと毛づくろいをしている。最後に、後ろ足で耳を掻き、あくびをすると、5人を見回して、こう言った。 「やあ、初めまして、シルクファイブ。」 あまりのことに、声も出ない5人。 「そんなに驚かないでよ。ボクの名前はコットン。見てのとおりのロボット犬。鈴木博士がボクを造ってくれたんだ。博士は、公民館に集まった子供たちと野外観察に行っちゃった。これ、博士からのメッセージ。」 白犬は、前足でキーボードをちょこんと押した。画面に鈴木博士の像が現れる。 「やあ、諸君。このコットンは、諸君の活動を助けるために、わしが造ったロボットじゃ。なかなか、かわいいじゃろ。新しい仲間じゃ。よろしくな。」 画面から、博士の姿が消え、コットンが振り向いた。 「てことさ。ボクの優秀さは、おいおいわかってもらえると思うよ。もちろん、ネットにアクセスだってできるからね。これ、ボクのID。」 コットンは、皆に、IDを印刷したカードを渡す。 「・・・・犬がID持つ時代になったのかよぉ。」 「ロボット犬だからだろ。」 「ハンドルネームは、そのまま、コットンですのね。」 「でも、かっわいい!本物の犬みたい。」 「じゃ、シルクファイブ、よろしくね。さっそくだけど、敵が破壊したアクセスポイントの中で、異常な電波を発しているとこがあるんだ。調べに行ってね。」 コットンは前足を、バイバイと振って、5人を送り出した。やや不満気な表情ではあるが、シルクファイブは、出動した。 * * * * * * * * * *
時間は少しさかのぼり、シルクファイブがデストラーをやっつけた直後の、敵の総指令本部。モニターを見つめる総帥。5色の煙をあげてバラバラになったデストラーの姿をじっと見ている。 その背後に、突然現れた一人の男。はっ、と振り向く総帥。 「きさま、何者だ、この指令本部に張り巡らせたバリアが役に立たぬとは。」 「ふ、このような子供だましの装置、何程のこともない。だから、いつまでたってもシルクネットを占領できぬのよ。」 「・・・・。まずは、名乗るのが礼儀であろう。」 「ダークスターと呼んでもらおう。情けないお前を助けるために、魔神が俺を呼び寄せたのだ。」 「魔神様が、きさまを?」 「そうだ。あの死んだ女よりは、よっぽど役に立つはずだ。」 「・・・・。魔神様の命とあれば、仕方がない。ただし、これだけは言っておく。あの女のことは、私の前では口にするな!」 「ああそうかい。じゃ、俺は、シルクファイブとやらの顔でも拝みにいってくるぜ。」 そう言うと、ダークスターは、一瞬で消え去った。 (づづく) |
第2話「新しい仲間」 後編 |
シルクファイブの5人は、シルクバギーに乗り、秘密基地から出動した。 「なあ、あの白い犬、どう思う?」 「コットンよ。ちゃんと名前呼びなさいよ。かわいいじゃない。ぬいぐるみみたいで。」 「そういう意味じゃなくて。」 「グリーンは、コットンの製作には、携わってなかったのか?」 「ええ。でも、以前、博士から、犬型ロボットの設計図を見せられたことがあります。2、3のアドバイスはしましたが、まさか、本当に作るとは思わなかったわ。」 「じゃあ、あいつの能力とかは、わかってるってわけだ。」 「基地のコンピュータと、自在にデータのやりとりができるんです。ただし、小型犬のサイズですから、処理能力が小さくて。」 「能力を犠牲にして、小型犬にするところが、鈴木博士らしいけどな。」 「目的地に着いたぞ。」 5人は、異常な電波を発信しているアクセスポイントへと到着した。 * * * * * * * * * *
アクセスポイントに到着したが、見た目では、何の異常も見られない。あたりを捜索していると、ブレスレットを通じて、コットンが連絡を入れた。 「みんな、そこ、なんかいるよ。気を付けてね。」 突然、何十人もの敵の戦闘員が、姿を現した。 「やはり、貴様らか!シルクネット会員のかけ橋のアクセスポイントで、何を企んでいる。我々が相手だ!!」 5人は、横一列に並び、名乗りをあげた。 「シルクレッド!」 「シルクブラック!」 「シルクブルー!」 「シルクグリーン!」 「シルクホワイト!」 「5人揃って、我ら通信戦隊シルクファイブ!!」 襲いかかる戦闘員。 5人は、次々に倒していくが、1人倒せば、1人戦闘員が新たに現れ、闘いはいつまでも続く。 「くそ!これじゃきりがないぜ。」 「いくら雑魚とはいっても、こっちのエネルギーには限界がある。」 「パワーが落ちたところを狙って、魔神獣が出てくるのかしら。」 そこに、戦闘員ではない者が、現れた。 「皆のもの、そこまでだ。」 ふっ、と、戦闘員が全て消え去った。 「何物だ!?魔神獣か!」 「ふん、あんな獣と一緒にしてもらっては困るな。俺の名は、ダークスター。」 「ダークスター?」 「そうだ。貴様らを倒すため、魔神が、この次元に俺を呼び寄せたのだ。」 「それでは、お前もシルクネットを狙っているのだな。」 「ああ、それが、魔神の目的とあれば、ネットだろうが何だろうが、手中に収めるつもりだ。」 「そんなこと、させるものか!!」 「ふふ、どうだろうな。今の闘いで、きさまらの能力は、とくと観察させてもらったが、俺には勝てないぞ。」 「闘ってみなければわからない!!」 と、またもや、コットンが通信してきた。 「みんな、そいつ、かなり強いよ。今の、君達の力じゃ、負けるかもしれないね。」 「ほう、きさまらのお仲間も、わかってるようだな。今のきさまらに勝っても、面白くもなんともないからな。ま、今度、俺と闘う時まで、せいぜい技でも磨いておけよ。」 そう言い残し、ダークスターは、かき消すように、姿を消した。 * * * * * * * * * *
「うん。それで、大丈夫だね。みんな、帰ってきていいよ。」 敵が消え去った後、5人は、アクセスポイントの異常を直した。基地へと連絡を入れると、まだ、博士は戻ってきていない。 「あ〜あ、犬に帰還命令もらうとはね。」 「ボクは、普通の犬じゃないよ。覚えといてね。」 「じゃ、帰るか。」 「それにしても、ダークスターって、一体何者なのかしら。」 「奴の正体はわからないが、手強い敵が増えたのだけは確かだな。」 「でも、あたしたちだって、新しい技を磨いて闘うんだから!!」 「それが我々の使命だからな。」 「そうそう。僕達にも、仲間が増えたしね。」 正体不明のダークスター。敵は新たな手で、シルクネットを襲ってくるであろう。だが、シルクファイブは、闘う。シルクネットに真の平和が訪れるその日まで。 がんばれシルクファイブ。頼むぞ、通信戦隊シルクファイブ!! (おわり) |