第6話「シルククイーンは君だ!」

 とある都市の市民会館を会場に、「シルククイーン・コンテスト」が開催されていた。シルクの女性会員の中から、「知性と教養あふれる魅力的な女性」を選び出そうという企画に、参加者はもちろん、審査員、応援者、見学者など、多くの会員が集まっていた。その中に、あおばと緑雨堂の姿もあった。絶対優勝する!と言うあおばに、引っ張られて、緑雨堂もしぶしぶ参加したのである。
「え〜!こんなに大勢が来るなんて。私、自信なくしそう・・・。」
「あおばちゃん、じゃあ、あきらめて帰りましょうよ。」
「いやよ!優勝賞品欲しいんだもん。豪華賞品貰えるんでしょ。たぶん、最新鋭パソコンに違いない!!」
 ため息をついている緑雨堂に、とある女性が声をかけた。
「こんにちは。おひさしぶりね。」
「こんにちは。あら、あなたも出場なさるんですか?」
「ええ。ライバルってわけね。そちらのかわいらしい方は?」
「あの、私、あおばです。私も出ます。よろしく!」
「ま、そうなの?私は『有閑マダム』。お互い、頑張りましょう。じゃぁね。」
 有閑マダムの去って行く後ろ姿を見ながら、
「マダムはきっと、優勝候補ね。でも、あたしだって負けないわ!!」
 と、ますます闘志を燃やすあおばであった。

* * * * * * * * * *

 審査は着々と進行し、最終審査となった。残った10人の中に、あおばと緑雨堂、そして有閑マダムの姿もあった。
 いよいよ、結果発表。
「多くの関門をくぐり抜けてきた、この素晴らしい10人の女性の中から、選ばれたのは・・・・・、有閑マダムです!!」
 会場中から湧き起こる拍手の中、マダムは、スポットライトを浴び、王冠とローブを身にまとう。
「シルククイーン・有閑マダムには、優勝賞品として、豪華な・・・・。」
 ガシャン!突然、場内の灯りが消え、舞台に大きな檻が落ちてきて、マダムと、その側にいた緑雨堂が閉じ込められた。
 緑雨堂とあおばは、檻を破ろうとするが、檻にはバリアが張られており、弾き飛ばされてしまった。
「シルククイーンは、我々が貰う!」
 再びライトが灯ると、舞台は、敵の戦闘員に取り囲まれ、司会者は倒れ、魔神獣イケニエザウラーがマイクを握っていた。
「我らが偉大な魔神への生け贄にしてやる。ありがたいと思え!魔神様は美しいものを所望しておられるのだ。おや、2人も罠にかかっておるな。」
 あおばは、イケニエザウラーに歯向かおうとしたが、戦闘員に捕らえられ、羽交い締めにされてしまった。客席からも、助けに駆け寄ろうとする人もいるが、あっさり、戦闘員にのされてしまう。
「みなさん。やめて下さい!!」
 有閑マダムは檻の中から、毅然とした態度で、訴えた。
「わたくしが、魔神の生け贄となりましょう。その代わり、他の皆さんには、一切危害を加えないでください。」
「いいえ、私を連れて行って下さい!そしてマダムをここから出しなさい!」
 緑雨堂も、イケニエザウラーに叫ぶ。しかし、マダムは、
「それはいけません。緑雨堂さんを危険な目には、会わせられないわ。さあ、魔神獣、私がシルククイーンです。皆を解放しなさい!!」
 と、後には引かない。
「ええい、面倒だ。2人共連れて行って、総帥に選んでもらおう。」
 檻に近付くイケニエザウラー。衆人の中で、変身できない緑雨堂とあおば。

* * * * * * * * * *

「待て!我々が相手だ!!」
 シルクレッド、ブラック、ホワイトが現れた!
「ぐ・・・、いいところで出てきおって!!ふん、3人しかおらぬではないか。シルクスリーにでもなったのか?ぐははは・・・・。」
「善良な会員を、お前等の邪悪な儀式の犠牲にさせるものか!ええい!これでもくらえ!レッドアダプターレーザー!!」
 レッドは、イケニエザウラーにレーザー光線を浴びせかけた。
「さあ、みんな早く、逃げてください!」
 魔神獣が、体を麻痺させ、苦しんでいる間に、3人は、戦闘員と闘い、会員達を会館の外へと避難させる。あおばは、倒れた戦闘員から奪った武器で、檻の柵を焼き切った。
「さあ、マダム早く逃げて!」
「ありがとう、でも、あなたたちは?」
「全員避難させてから、私たちも逃げますから、心配しないで!」
 シルクネット会員が、皆、無事に避難したのを確認し、緑雨堂とあおばは、急いで物陰に隠れて変身し、戦闘員との戦いに加わった。
「く・くそぉ〜〜!皆、やられておるではないか!」
 ようやく体が動くようになった魔神獣は、倒された戦闘員を見て、怒りに燃え、シルクファイブに向かってきた。
 だが、イケニエザウラーは、前回パワーアップしたシルクファイブの敵ではなく、あっさり倒されてしまった。

* * * * * * * * * *

「ねえ、どうして、連絡もしないうちに、あの場に現れたわけ?」
 変身を解き、秘密基地へと帰ろうとすると、あおばが、3人に質問した。
「・・・・、いやあ、僕達、会場にいたんだ。」
 紅の疾風が、口ごもりながら、答える。
「あの・・・ほら、有閑マダムが出場するって、噂があったから・・・・。僕、マダムのファンなんだ。で、2人を誘ったら、一緒に来てくれて・・・。」
「何よ!私が応援頼んだら、無視したくせに。でも、豪華賞品、欲しかったなぁ。」
「え?知らなかったの?参加賞は、テレカ一枚。優勝者は、金箔貼ったテレカ3枚セットだぜ。それも、シルクネットの宣伝用の。」
「え、えぇ〜〜!そんなぁ・・・・。でも、シルクネットらしいわね。」
「そうさ、それが、シルクネットさ。」
 明るく笑い合う5人の若者であった。
(第6話おわり)




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