Volume 12

アテンションプリーズ!!

私は海外旅行に出かけるのが好きである。大学のときに初めて行った環太平洋国際交流事業からもう?年。飛行機嫌いはそのときからなのだが、でもそれを差し引いても出かけてみたいと思うのはなぜだろう。あんなこともあったのに・・・(笑)。

平成〇年8月

以前働いていた会社は夏休みがあった。といっても学生時代の二ヶ月とは比べものにならないほどの短い一週間の休み。それでも私は非常に楽しみであった。なぜなら、

「一週間あれば海外旅行に行けるから!」

であった。二ヶ月も三ヶ月も前からいろいろ計画をたててみるのだが、なぜか?日程の合う友人が一人もいない。「友人がいない」とは認めたくないので「気ままに過ごしてみたいから」という理由にして一人、ロンドン行きを決めてしまうのであった。ここで私のイカス!ロンドン生活などを詳しく紹介できればいいのだが(二階建てバスに喜んで乗ったら全然違う方向に行って泣きそうになったとか、スーツケースの旅行客に混じってどこ行くねん状態の普通のドラムバックで行ったとか)ここでは涙を飲んで割愛する。

さて。会社がまるまる休みなので、ヘンに有給休暇などを使わなくてもすむ=特にどこへ出かけると言わなくてもすむ、ということで会社の人には内緒でロンドンに行くことにした。そもそもここが間違いのはじまりだった。おみやげを買うのが面倒で黙っていただけではない。普通のドラムバックで出かけるので荷物を入れる余地がないだろうと思ったからだ。

しかも旅行好きにはありがちなことであるが、往々にして強行日程をとることが多い(爆笑)。私の場合も土曜日に出かけて、次の週の日曜日の夜9時関空着、次の日から会社、という後先考えない!日程だったのである。

〜ここまでが予備知識〜

そしてあっという間に!帰国日。

いつものドラムバック一つを抱えて私はヒースロー空港に到着。帰りも行きと同じくキャセイパシフィック社の飛行機で香港経由関空行きである。

ニャ(・・・もうあっという間に帰る日やわ。おみやげは買わなくてすんだけど、月曜日から仕事だと思うとなんか、こう、気分滅入るなぁ)」

そしてロビーで小一時間ほどたった。

ニャ「(そろそろ搭乗案内があってもいい頃なんだけど・・・)」

そのとき私の不安をあざ笑うかのような?アナウンスが流れた。

放送"Attention please・・・ Cathay Pacific CX250・・・flight is canceled."

ニャ「???・・・あれ、今確かキャセイ?? ワンモアプリーズゥ??」

放送"flight is canceled!!"

ニャえ!? キャンセル!? 私はキャンセルしたないで〜なんていってる場合と違うわ(オロオロ)、どうしたらいいんでしょ・・・」

すると視界の隅に猛ダッシュしている人を発見。

ニャ「あれや〜!!走れぃ」

走っている人の先にはキャセイのカウンターがあった。しかし、すでに前には50人くらいはいるかと思われるほどの長蛇の列。とりあえずキャンセルということはわかったけど、「だからなんなんだ?」と言われてもわからないので周りにいる同じく不幸な人々に聞いてみることにした。

ニャ「あのぉ・・・結局私たちはどうなるんでしょうねぇ」

不幸な人その一「飛行機が飛ばないから、きっと次の便とかになるんでしょうね」

ニャ「はぁはぁ。月曜日には会社に行けますかねぇ」

不幸な人その二「まず、ムリでしょうね〜」

ニャ「うげ!?」

しまった。会社の人にはロンドンに旅行に行ってることは秘密であった。秘密がバレてしまうじゃないか。

それからどれほど時間がたっただろうか。フライトの時刻はとうに過ぎ、ようやくカウンターの前にきた。

キャセイの人"I'm sorry・・・flight is canceled because of bird's attack. Next flight is Sunday afternoon. Please stay at the hotel we arranged tonight."

ニャ「アノォ・・・アイ・ハーフ・トゥ・ワーク・オン・マンディ!(月曜には働きに行くのだ!)何とかしろ!!

キャセイの人"I'm sorry・・・no plane is here."

ニャ「ぬぉ〜!!!」

飛行機がないと言われてしまうともうどうしようもない。私はすごすごと案内されるがままホテルに行くことにした。

ホテルも人だかりだった。チェックインするのに相当の時間を要しほとほと疲れてきた。

ニャ「私、どうなるんでしょ〜」

しかしよく周りを見渡してみると同じように、かばん一つで一人でぽつんといる人を発見。なんだ、みんな同じじゃないか!というわけで近くにいた人に話し相手になってもらうことにした。

ニャ「やっぱり一人で旅行ですか?」

さい「ええ。こんなことになるなんてね(笑)」

ニャ「私は会社に内緒できちゃったんですよ〜ははは!」

さい「私もです!(きっぱり)」

ニャ「およよ!」

同じ境遇に置かれたというだけでなく、何かと共通点の多かった彼女とはそれから話がはずみ、次の日のフライトまで楽しく過ごした。メールアドレスを交換した後、帰国してからもその関係は続き、今後も事件簿に登場することになるのである(笑)。

ようやく部屋に入った。午後8時。明日の12時のフライトときいてとのことなのでどう考えても日本につくのは早くても月曜日のお昼である。

ニャ「まず連絡しなきゃ!」

と思い立って家に電話する。もちろん電話代もキャセイ持ち。

母「そうか、1日延びてええやんか〜」

・・・相変わらずノー天気である(笑)。

ニャ「それより課長の自宅の番号教えて〜」

秘密にしていたとはいえ、こうなってしまっては事情を説明して月曜日に休みを取るしかない。おみやげは明日空港で買うことにしよう。

ニャ「課長・・・すみません、あのぉ、今、ロンドンなんです。で、飛行機が飛ばなくなってしまってですねぇ・・・(もごもご)」

課長「ロンドン!? ロンドンってあのロンドン!?」

ニャ「そうです、パン屋ではありません」

課長「そうか、ロンドンか」

ニャ「そうです、ロンドンです」

課長「で、飛行機は飛ばないのか・・・台風か?

ニャ「・・・課長〜ここはロンドンです。台風はきません」

課長「あ!(苦笑)すまんすまん! 気にせず休んでくれ」

ニャ「申し訳ないです〜」

これで私の罪悪感も少しは和らぎ?晴れ晴れとした気持ちで次の日の朝を迎えることが出来たのである。

ニャ「今日は帰るぞぉ〜そや、Tさんにも連絡しとかなきゃ」

私は先輩のTさんにも休むことを連絡した。彼もまた驚いたのか、おかしかったのか、ヘンなリアクションであり、しきりに『ロンドン』を連呼していた(笑)。

ニャ「さいちゃん、香港までは一緒だけどそこからは別だねぇ」

さい「そうだね!」

ニャ「無事に帰れるといいね!ほな〜」

彼女と別れ、香港で関空行きと成田行きは別々になった。ところが!である。

キャセイの人「香港から関空の便が満席でとれません」

一同「ぬわにぃ!?!?!?」

そう、フライトキャンセルはロンドン〜香港間であり、香港〜関空間の便は予定通り飛んでいたのである。よく考えてみたらそのとおりである。

キャセイの人「もしかしたら火曜日の帰国になるかも・・・」

一同「あかーん!!!そりゃあかんわ」(全員大阪弁である)

キャセイの人「・・・何とかします」

しばらくしてキャセイの人は戻ってきた、心持ち晴れやかである。

キャセイの人「・・・全日空機がとれました!」

一同「おお〜!!」

ニャ「嬉しい。あの憧れの?全日空に乗れるなんてさぁ!」

そしてようやく帰国の途につくことが出来た。遅れることおよそ20時間。全日空機も私たちが乗り込んだおかげで機内食が間に合わず、それを準備するため結局2時間ほど遅れた。またそれを機内放送で何回も繰り返して言うのだから、あてつけがましいような気もしないではない(笑)。

ニャ「おおお・・・日本に帰ってきた(涙)」

こんなに嬉しいことはなかった。しかし、この時は会社に行ったときに感じるであろう?猛烈な恥ずかしさをまだ実感していなかったのである・・・。

おしまい。

オマケ)関空(大阪弁)チームは何とか夕方帰ることが出来たが、成田(東京弁)チームはそうはいかなかった。フライトが夕方までとれなかったので香港に入国し、ホテルで休憩となったらしい。ここぞとばかり香港観光をする人まで現れて、それはそれで楽しかったようだ。しかし帰国は夜の10時半ごろであった!!

私は月曜日に会社へ行けなかったばかりでなく、当たっていた試写会ハガキ「フェイク」を三枚も無駄にしてしまった。当たっていたこと自体、家に帰るまで知らなかったんですけどね!!