Volume 28

予感は的中した

今回の事件簿は何の他愛もない独り言である。と言いながらウグイス嬢歴?年の私にとってはいろんなことが思い出される。そしてこの前もやってしまった(笑)、あの一件。

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今年の夏、久しぶりに甲子園を目指す地区大会のウグイス嬢を引き受けることにした。正確にいえば無理やりスケジュールに入れてもらったという感じである。高校野球を離れて久しく、大学野球の中でいろいろ考えるところがあり、ちょっと気分転換したい、新鮮な雰囲気に触れたいというのが本音であった。

試合時間は9時にも関わらず、関係者は朝の早くから集合している。毎回のごとく7時にはお呼びがかかるため、それだけで大変辛い仕事なのである(笑)。

ニャ「こんなに朝早く来る必要ないでしょ〜」

と思っても口に出してはいけない。そんな気持ちを察しているかのように今日もまたH先生は背後から登場するのである(笑)。

H先生「お!忙しいところすまんな!」

ニャ「お、お、おはようございます!(なぜか焦る)」

H先生「放送も久しぶりやろ〜、随分マニュアルも簡素化されて、時間短縮に貢献しているんや。このマニュアルよく読んでおいてな」

ニャ「は!はい」

そういい残して先生は通路の向こうに消えた。いつものことである。しかし!気を抜いてはいけない。いつ背後から現れるかわからないのだ(笑)。

マニュアルを見てみる。以前に放送していたコメントよりも確かに短くなっている。

ニャ「なんかやらかしそうな気がするな〜」

もちろん、その予感は的中する(笑)

***

担当した試合はナントわが母校の試合である。そして今日の審判員の中には高校時代の同級生もいる(ただし母校の試合のときはジャッジできないので、他の試合の担当である)。

ニャ「いや〜こんな日がくるなんてねぇ」

としみじみしながらメンバー表に目を通す。確認事項。

●読みにくい苗字、わかりにくい苗字はないか?
●同姓の選手はいないか?

ニャ「うわっと!さっそく出たやん・・・。岡本君が二人いてます」

もう一人放送を担当する人に確認してもらいながら、最終チェック。この頃から少しマイクの調子がおかしいことに気づく。

ニャ「なんか、たまに入らなかったりするんだけどヤバそう」

H先生「それは!別のマイクと交換して!!必ずちゃんと確認して」

あっという間に背後から現れ、マイクを交換するとまたどこかへ行ってしまった。

ニャ「これで安心なのね〜」

そうこうするうちに試合は始まった。対戦相手はなんとP〇学園である。こんな強敵に我が母校が勝てる・・・はずもなかった。1回こそ得点チャンスがあったものの、逆に得点を奪われ、奪われ、応援席もすっかり沈み込んでいた、らしい。

ニャ「さて。この回でコールドなんだろうな〜」

卒業生、しかも野球部OGとしては複雑な心境ではあったが試合は間違いなくこの回で終了するだろう。

ニャ「7回の表、〇〇高校の攻撃は3番セカンド岡本コウスケくん、岡本コウスケくん!」

マイクの電源を切ってから、ふと不安になった。

ニャ「今、マイクちゃんと入ってた?

結局そのまま我が母校はコールドで敗戦した。

***

試合が終わり、私の携帯にメールが入っていた。そこには、

コウスケくん、先帰るね

という母からのメール。休日だったこともあって両親は久しぶりの娘の晴れ姿??を見に(というか聞きにか)きていたのであった。

ニャ「何、訳のわからんメール送ってるねん?」

そして家に帰ったときに初めて知った驚愕の事実。なんと放送で私は、

ニャ「7回の表、〇〇高校の攻撃は・・・・・・(3番セカンド岡本コウスケくん、岡本)コウスケくん!

とその前の放送部分がすべて入っていなかったのであった。

母「なんでコウスケくんなんやろう?って思った」

ニャ「・・・・・・・・・マジで?」

母「でもよかったよ!」

ニャ「何がやねん(汗)」

母「応援していたみんながどっと笑って、元気になってたよ。今まで沈んでいたけど、『コウスケ、ガンバレ〜!!』って」

ニャ「そ、そうですか(笑)」

こうして私は〇〇高校のコウスケくんと応援していたみんなにちょっと笑える思い出をプレゼントしたのであった!!(うーむ、決まった)

おしまい。

というか続く(本来書こうと思っていた内容とまったく違って普通の事件簿になってしまったやん。違うねん、私の書こうとしたものは実は・・・フェードアウト)。