佐野自然塾

エジプトの政乱

20110131日付

 

エジプトで混乱続く、数千人が広場に集結

 アルジャジーラが詳しく報道している。私自身はあまり熱心な視聴者ではなく、ハッキリと事態を知る立場にはないのだが、こうして持続的に民衆の動きを画像化されたら、人々はあたかも目の前の出来事のような感覚になる。それが増幅装置になって、元々不満がうっ積してるから、火に油を注ぐような形になる。あわててムバラク政権は報道禁止措置に走ったが、どうだろう。ネットを活用できるものたちにはそれ以外に情報伝達する抜け道はあるから、鎮静化は容易でない。内閣退陣、副大統領指名という表紙の書き換えだけで騒乱を押さえることは困難だろう。ムバラク、お前が辞めろ。こう一直線に進みそうだ。
 何といっても発端となったチュニジアでは、エンガリ亡命という先例を残した。エジプトの大衆はそれを求めてくるだろう。ただ問題なのはリーダーなき反乱だ。エルバラダイといった若干民衆から遊離した人物しか代わりが見出だせない弱点がある。そのために今後の動きにもたつきが生じ、軍人政権が続き、いわゆる民主化の実現は霧の彼方かもしれない。
 むしろ世界の関心は別なところに向かっている。エジプトは中東にあってはナセルの時代から指導者然として、キーマン的な役割を果たしてきた。サダト、ムバラクと続いてその立場を保持し、特にイスラエル対パレスチナの抗争にあっては欧米との橋渡しをしてきた。だからここでムバラク体制が瀕死状態となり、政治空白が起きると、中東情勢全体への波及性が大きい。さらに民衆による政権への抗議運動はヨルダンでも起きているから、イスラエルに対峙している中東側の布陣が激しく揺すぶられていると見える。数次に渡って両国は戦闘を交えている関係であり、そこで背後にいる大国シリア、イランとの直接対決にならない緩衝、ガス抜きになっていたとも言えるからだ。
 今回起きている政乱の特性はフェイスブックなどのネット社会が強い働きかけがあった。この影響を受ける人々とはある程度近代化が進んだ地域の生活者だから、彼らの異議申し立てが貧困と圧制を原因とするとしても、それは文句をいえる状況の中で為された。この視点は見落とせない。
 先進国日本は誰もが文句のいい放題だから、国政がふらふらしてしまっている。