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ポトチャリポラパ/コミック/2005年
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2005年/8月
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2005年/8月/31日
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「続性本能と水爆戦」道満晴明(ワニマガジン社)

・おもしろいなあ。ぼくはおもしろい短編集を読むと、おもしろい短編を描くマンガ家はえらいと思うんだ。だから、本作はえらいし、本作を描いた道満さんはとてもえらいなあと思うんだよ。

・1回4pから8pくらいの短編がもりだくさんの作品集です。「続」とタイトルがついてますがほぼ関係ないです。毎回読みきりのシリーズの続編だと思っていただければOKかと。もしかしたら密接な関係があるかもしれませんが、おれにはわかりませんでしたし、おもしろさにそうかわりはないと確信しております。

・掲載されてる雑誌がエッチなマンガを載せるマンガが多いので全体的にエッチです。もしくは、古きよき時代の産物「ノルマ」入りでございます。

・叙情、不条理、ギャグ、エロ、スラップスティック、抒情、涙、愛、夢、SF、ホラー、などなど、本当になんでもありな引き出しぶちまけ気味な内容をそのベテランの手法でキリリとまとめあげてなおかつ「道満晴明」の刻印入りでみなさまのお手元にお届けというカタチになっております。

・たとえば、同級生がファミレスにつとめていてドジっコで、お冷とお盆をぶつけたおわびにパイズリからフェラがはじまる米軍風味(ここがミソ)の「ハンバーグヒル」

・ヤクザ同士の抗争。「タマ」をとるを文字通り、タマをとり射精させるために「チャカ」のかわりに女性を仕向けるというヤクザもの「レンコン」

・インドからの留学生で、頭脳明晰の天才少女で、先生と愛人関係の「プージャさん」。学食のカレーを辛がっている顔がキュート。

「よくできてる」としかいいようのない完璧なショートショートストーリー。予知夢をみる少女の話「運命のひと」

・不条理とエロだけで構成されてる「U.F.O」

・基本的に、ギャグめかしたもの(G=ヒコロウ風味か。トモダチだそうだし)や不条理なものも多いけど、それにまぎれて不意をつくかのように「運命のひと」とか「プージャさん」が挿入されていたり、不条理だと思っていた「一活ロマンポルノ」みたいにものすげえオチが決まるのもあるし、まったくもって油断できないスリリングな短編がぎっしりつまってるのです。

・いうことなしですがあえていわせてもらえば作者はもっと仕事をして単行本をたくさん出すべきだと思う。同人誌じゃなくて商業誌のほうで。

オススメ
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「サーティーガール」1巻 岩崎つばさ&カワイシンゴ(白泉社)

・前に双葉社で出ていたのはなんだったんだ?
・という疑問をシカトするかのイキオイで白泉社から描きおろし多数で1,2巻同時発売ですよ。

・30歳人妻でダンナと別居してるリリコさんと喋る猫ジョーズとのコンビでお届けする、「サザエさん」で「あたしンち」なほのぼのホームコメディ。
・もともとが、日立空調システムのキャラクターから派生したマンガで、現在もサイト上で多数展開されてます。

・だから、サイト上でタダでみればいいものです。そこでわきでる疑問、「なぜおまえはそれを買う?」ってのには、「だってかわいいじゃん」と応えることにします。

・各キャラの立ち方と、画面での前に出てくる感じがたまらない。最初おれは「3DGIRL」かと思ったくらいさね。

・ホームコメディと軽はずみに書きましたけど、そのわりにスポーツ万能のリリコさんがひったくりを捕まえたり、ジョーズが猫仲間に襲われるのを助けたりと、企業のキャラとは思えないくらい暴力と密接な関係にあり、なおかつ、複雑な環境にいます(ダンナの実家に住んでいる。ダンナがいなくて小姑がいて義母がいて、なぜか実の弟がちょいちょい家にいたりする)。

・という、けっこう暗くなりがちな要素が満載の設定なのに、これ以上ないってくらい明るくパワフルに展開するのはすごいですよね。基本的に和気藹々だし。

・そういうほがらかマンガです。
(11:59:15)amazon


「サーティーガール」2巻 岩崎つばさ&カワイシンゴ(白泉社)

・1巻2巻同時発売の2巻目。

・2巻では双葉社版で読んだことのない話が混ざってきてますね。サイト上では2巻に収録されていない話もありますので、このペースでどんどん巻を重ねていくのでしょうか。それは楽しみなことです。

・ふと、このマンガはものすごい人を選ぶのではと思い立ちました。そうなんだよ、少なくとも企業のキャラクターにしてはアクが強すぎるんですよね。いわゆるマンガとか物語の記号的な意味での「いいひと」って1人も登場しませんしね。

・でもって、2巻では、カボチャ切っててせーだいに指を切って血まみれになったり、ドッジボールで鼻血を出すわ、スワンボートで漂流してしまうわで、まあ、30歳とか妙齢の女子が行うにはちょっとアレですわなあ。2巻ではナースのコスプレまで披露してるしねえ。もともと湯沸かし器のキャラだからシャワーシーン、入浴シーンは多いんですけどね。ただし、リリコで劣情を催すのは森三中の村上の乳で劣情を催すくらいの難易度があると思われるが。

・おお、設定のみでいうならばリリコさんのほうがサザエさんより年上なんだね(たしか、サザエさん28歳だったような)。

・で、双葉社版のときにも描いたけど、おれがもっとも萌えるのは喋る猫のジョーズですね。かわいい猫だわ。

・WEBコミックを紙に印刷するのは、資源の無駄かとも思いますが、こういうパッケージとして手にとって持っていたいとおれは強く思うのでとてもありがたいです。なんとなればフィギュアを収集する感覚に近いかもしれません。

・だからこの「おもしろい」は、この絵や話やノリが好きという大前提のもとなりたってるものかと思われるので、オススメはしませんよ。
(12:24:35)amazon


「うりポッ」1巻 有馬啓太郎(マッグガーデン)

・好きなのに縁がなかった人なんですね。「月詠」が有名作なんでしょうが、それに乗りそびれたんですよね。だから、とても久しぶりです。

・ファザコンの少女が実は宇宙人でして、相棒のうり坊と活躍する魔女っコ風コメディ。と、あまり深く考えずに楽しむ柔軟性が必要ですが、それさえクリアすれば楽しい楽しい世界が広がっています。

・主人公のファザコンっぷりと大ボケぶり、うり坊の関西弁+ときおりマッチョだったりして、主人公にツッコミ。このかけあい漫才をベースに物語が進行します。前半は学園ほのぼのドラマで、後半はもうちょっといろいろある感じ。

・最大のポイントは主人公を筆頭とする女子のかわいさですね。繊細なんですよね。線がやわらかくてほそくてかわいらしい。それでいてエロさ控えめで清純なんですよね。これらを全部ひっくるめると「気品」ですか。それでいて少女マンガにありがちなゴージャスな感じが少ないんですよね。
・あとがきにもあったように担当もそら女の子を描けと指示するわけだわ。
・ぼちぼちですかね。
(14:41:05)amazon

「すずめすずなり」1巻 秋山はる(マッグガーデン)

・本作が「アフタヌーン」に連載されてるというのが変な感じ。かなりしばらく購読してないけど、いかなる変化があったのでしょうかね。

・アパート賃貸コメディですか。というか、下宿の形態になってるのか。「コーポ白百合」の入居条件は、毎朝6時半からの朝食に参加することです。
・サラリーマン1年生の主人公とクセのある面々が織り成す「一つ屋根の下」ストーリーですか。

・また、エピソードがいい意味でも悪い意味でもたいしたことがないんですよね。あるいは、現実のそれより他愛もないエピソードが多いですねえ。

・大家の娘が主人公の洗濯して落ちたトランクスをどうやって返そうか煩悶する話。
・大家の娘と店子の女性が好きな少女マンガでもりあがってるからって立ち読みしてたら会社の人に「オタク」扱いされたり。
・アパートから女のあえぎ声が聞こえて「犯人」さがししたり。
・定食屋で毎回同じメニューをたのむからって「保守的な男」扱いされて悩んだり。

・基本的に主人公の男がひどい目に遭う展開が多いですか。

・もうひとアクセントほしい気がしますが、雑誌の中の1品だといい感じなんでしょうかね。

・あと、大家の娘のメガネ女子中学生の純情が味わいですね。リアルな女子中学生のかわいさが美味く描かれてます。ここがブレイクスルーになるかって感じかしら。
・ちょっと主人公のサラリーマンが気になるんですよね。だから、ややギクシャクしたりするの。そこがいい感じ。ちなみにサラリーマンのほうは同じ会社のOLさんにホレてるんですね。

・普通かなあ。
(19:20:10)amazon


「身から出た鯖」6巻 中崎タツヤ(少年画報社)

・以前、中崎タツヤ氏の作品を「コミック」で取り上げたときに、おれにとっての相田みつをだと書いた。トイレにある相田みつをカレンダー同様、おれは中崎タツヤ氏をトイレでよく読んだりします。そういった意味でいったのですが、たとえば相田みつをに感動するオバチャンと同じで中崎タツヤ氏に感動するようになってるなあ。
・この割合や度合いは作品を出すたびに大きくなっているなあ。

・6巻32〜33ページの「一瞬」という作品。パッと目からウロコが落ちてきて、ジーンとしました。最近の流れと同じでエッセイめいた話です。「人生で一番うれしかった瞬間」というテーマです。別にげらげらと笑うわけではありません。そもそも、おれは中崎氏の作品で声を出してゲラゲラ笑った記憶がありません。それでいて大好きというのは、おれにとってはかなり異例です。そもそも、笑うより感心したりする度合いのが高いわ。

・そして、その感心度合いが高くなるのと反比例して、女性が登場しなくなり、絵がものすごいことになっている。ここいらの割り切りは、逆に以前はムリしてたんだろうなあと思ったりもするし、男は年齢を重ねることに、枯れていくというのを如実に感じる。とくに「美人」という設定のぞんざいな描き方は、突き抜けてるね。

・あまり、他のマンガを読まない中崎氏の独自性はさらに磨きがかかってます。その絵柄も併せて、世界でここにしかないマンガになってるのはまちがいないんですよね。
・たとえば、ダンゴムシの死体が伸びた状態だということから、ダンゴムシのメスをむりやり手篭めにするのは難しいだろうなあってあたりまで延々ダンゴムシの話だけのマンガってのも他にないでしょうよ。

・そして、その独自性をも上回るのが「事実」だったりもします。食堂屋の息子の話なんか、そりゃあフィクションじゃあ書けない話だよなあと思ったりします。

・価値があるのかないのか正直わかりません。おれが中崎タツヤがいいと思ったのは30過ぎてからかもしれないし。だから、一応、アタマの片隅にいれておいて、ブックオフとかでみかけたとき「そういや」と手にとってみてください。 (20:26:13)amazon


2005年/8月/21日
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「ヤング田中K一」田中圭一(日本文芸社)

・ここしばらくの田中圭一作品にハズレなしだなあ。
「死ぬかと思ったH」「鬼堂龍太郎・その生き様」に引き続き、本作もバッチリだ。

・以前、「下品」がきてると書いたが、もしかして、下品がきてるのではなく、田中圭一がきてるのかもしれないなあ。時代は今田中圭一か。

・本作はエッセイコミックです。玩具メーカー(たぶん、タカラ?)でのバカ話とヤングのころのエロ話など、田中圭一の過去の体験コミックという体裁になっております。

・玩具メーカーのバカ話が好きだなあ。扱ってる人形の(販促用の)着ぐるみで、玩具問屋のオッサンたちとセクハラ接待したりね(リカちゃんとバーチャルセックスできるわけですよ)。同僚の結婚式のお祝いスピーチで、モスラの糸が出てくる(樹脂の糸)スプレーを股間につけて、ずっと糸を出しながらクスリとも笑わずにお祝いスピーチしたりね。

・それを例の手塚治虫タッチでやってるんだもんな。追随を許さないためにあらゆる下品方面の「手塚」を極めようとしてらっしゃるのかもしれないなあ。

・ほかにもいろいろなエピソードが多方面にテンコ盛り。やっぱり実話は強いわ。あと、微妙に歪んだ女性観も垣間みることができますね。その境地に至ってることはそれだけ女性経験が豊富ってことでうらやましいような気もしますが。

・あとがきにあったように、手塚治虫氏の墓参りはいったほうがいいと思われますがね。ご霊前に、上記3冊を奉納されるってのも手かもしれませんね。もし、手塚氏がご存命だったら、「負けるもんか」とばかりにもっとすごい下ネタマンガを描いた気がします。それが読みたかった。

・今度は赤塚不二夫氏のタッチが狙い目じゃないかい? あるいは、横山光輝氏。

ともあれ、グミプロペラかあと読んだ人には「やっぱそこだよね!」って思われるワードを押さえつつ。
オススメ
(13:56:24)amazon

「自慰道指南書 オナ人 100の伝説」山いもとろとろ(オークラ出版)

・1996年の本です。ブックオフ100円コーナーでみつけました。

・オナニーしてたらチンポから魔人が現れて、以下、オナニーの指南をするというマンガです。ああ、ギャグマンガですか。

・で、エッチシーンがなくて、笑えるオナニー体験とか、実践のくわしい方法。オナホールの使い方やら、はてはダッチワイフの使用法まで描いてあるという、冷静に考えると「そんなん教えてもらわんでもええわ」となりそうですが、そう思うくらいだから、完全にニッチをついた、以前も以後もない独特なマンガとして10年くらいたった今も輝いてるわけですよ。

・そういわれてみると、これほど正面から、ギャグやエロをやや犠牲にしてまでオナニーに向かってるサマに感動を覚えてきたりもするってもんですよ。

・いやまあ、オナニー魔人を女性にすればエロはかなりまかなえたんじゃないかと思うのですが、アメリカンコミックなマッチョな男だしなあ。それにくわえられたり、こすられたりしてるからなあ。

・これほど詳細なダッチワイフの使用法マンガってのもみたことはないわな。このダッチワイフは主人公の少年の妹をモデルとしてますが、ここにもあまりエロはないですし、あくまで実用本位ですよ。この場合の「実用」は文字通りです。ダッチワイフにオナホールを取り付けるのにビニール袋にホールを包んでおくとドール本体を汚さずに済むって感じの実用性です。

・あと、安全にエロ本を買うノウハウとかね。エロ本買う少年を女性店員は「何たのまれたような顔してスカしてエロ本もってきやがるんだあ毎月きてれば顔も覚えるってもんだ」と思ってるとか。

・と、独特の絵柄もあいまってとても特異な本になっておりますので取り上げた次第です。

・思えば、そういうのを赤裸々にマンガにした最初って相原コージ氏かもしれんなあ。いわゆる類型的なオナニーシーンってのは誰しも描いてました。それはたとえば電話が鳴るとき、受話器が飛び上がってるのと同じ「記号」でした。そこに、横向きに寝て、チンポのそばにティッシュをしいて、片手で乳首をいじってってくわしい方法を描いたんですよ。

・本作にも作者の苦い実話っぽい話やリサーチした体験談が豊富につまってます。結果、どことなく偏ってる気がします(AVよりブルセラとか)。それがまたいいんですよ。100人いれば100通りですから。

・そう、100人いれば100通りのオナテクってのはあると思われるので、どんな人でも「へー」があるんじゃないかと。あと、女性にもそれなりに応用できるところがあるので(家人にナイショでAVみる方法等)参考にしてみては如何でしょうか。
(14:48:30)amazon

「ハンニャハラミタ」駕籠真太郎(集英社)

・SF短編集とのことです。かなり広範囲にわたって収録してる、なんていうかな、「ヨセアツメッティー」な感じがします。レアトラックスというか。そいでもって、レアトラックスらしく、最新作と描き下ろし(=スタジオ新録)を目玉として初期の作品を中心に形成電鉄です。これは京成電鉄ともじった沿線上に住んでいる人か鉄ちゃんにしかわからないギャグです。

・集英社と懇意ってのは考えるにおかしいんですが、氏はマメに持ち込みにいってらっしゃるようです。本作にはかなり詳細な作品解説がありますからね。それで知りました。マンガ家を目指すなら持込みが1番だそうですよ。

・永遠につづく小学生活から脱出する「仰ゲバ尊シ」
・寄生人間との戦いを描く「DEMON SEED -悪魔の種子-」
・菩薩という麻薬「生物」がある世界「ハンニャハラミタ」

・などなど、以後のコットンコミックでの展開、サブカル方面に「なんだこりゃ?」と取り上げられる以前の作品に関しては、こういう表現も微妙ですが、かなり真っ当な作品が多いですし、実は、そこからちゃんと派生して、「駅前」シリーズや「大東亜共栄圏」シリーズへと「ちゃんと」向かっているんですよね。ああ、難しい言葉。「以降の遍歴がうかがえる出来栄え」

・ということで、駕籠真太郎は1日にしてならずというか、作者はものすごい首尾一貫してることがわかります。絵も内容もちゃんと変化のサマに矛盾や破綻や突然変異がないんですよね。それが本作の1番の収穫かもしれません。

・いや内容もいいですね。とくに感心したのは、後半の「飛んで目に入る夏の虫」や描き下ろしの「尻尾考」のような、最近、描かれたショートコミックです。独自の味もあるし、グロはともかくエロは抑え目なので、文藝春秋に連載されていてもおかしくない感じで、使い勝手がいいし、新たな魅力を見出した気さえします。おれが文藝春秋やアニメージュやMOEや鳩よ!の編集スタッフならプッシュしてみるかもしれません。

・でもまあマニア向けですか。
(15:32:15)amazon

「殴るぞ」7巻 吉田戦車(小学館)

・地味な感じもするのですが、作者の最長連載マンガでその記録を着実に伸ばし続けてますね。7巻ですよ。
・非常に手堅いデキです。既刊を読んでいる人にとっては「いつもどおり」の「殴るぞ」です。
・表紙になってる虫、流血さん、泥雄、菌スーツなどの、新キャラを交えて、いつものワカコさんやら気配り犬もレギュラーの活躍をされてます。毎巻恒例です。

・たぶんですが、本作を100%、スミからスミまでおもしろいって人は、実は作者も含めていないんじゃないかな(作者の方がアレは気に入らないってのが多い気がする)。その中で「これが好き」ってのを見出して楽しんでいくのが吉田戦車をはじめ、不条理系ギャグを味わう作法かと思う。「好き」が多い作者にファンとなるわけです。

・ということで、おれは「手切れポエム」の話と、「ぺろっ」を5秒かける話が好きかな。あと、おれの店にも「売れ筋」を彫っていただきたいものだと思った。

・かように読んだ人同士での感想レベルの話になってしまいがちですね。それくらい安定してるデキです。
(15:52:27)amazon

「風雲児たち 幕末編」7巻 みなもと太郎(リイド社)

・大河歴史ギャグ7巻目です。
・さすがに幕末だけあってかなり世界とリンクしはじめてきてます。黒船来航以来の空気が変わった感じってのはなんとなく劇的なんだろうなあと思ったりもしますし、それを描写してるところがスゴイと。

・7巻では、ペリーが来て去って、イギリスやらロシアがきて、坂本龍馬が立つって感じで過ぎていきます。

・ペリーより、ロシアのプチャーチンが日本に来たときのほうがいろいろあったんですね。悲喜劇満載です。こういうことは中学にざっと習っただけの日本歴史ではとうてい知る由もないです。竹島は日本の領土です。

・すでにこのころから日の丸問題、北方領土問題、地震問題など、さまざまなものがあったのねえ。

・で、選挙で大統領を選ぶアメリカに竜馬が大ショックを受けるシーンなんかがいいですねえ。

・それと、7巻オビのいしいひさいち氏のコメントがまた正鵠を射抜いてましてねえ。ああ、そのとおりだよなあ。

・ということで、登場人物を応援しつつ(実在の歴史上の人物の行く末とかほとんど知らんしね。だからこれは無知ゆえの楽しみ)元気をちょうだいすると、まあ、そういう蜜月はまだまだ続くようで幸せですよ。
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「鋼の錬金術師」11巻 荒川弘(スクウエアエニックス)

・考えてみると不思議な位置にいるマンガではありますよね。とくにミーハーが好きな、「メジャー」「マイナー」という2元論で語るとおもしろい。

・売れてます。大成功の部類にある超メジャーなマンガですが、あちこちにプンプンとマイナーな香りが漂ってるんですよね。その相反する要素が同居してるんですよね。

・この「メジャー感」ってのは、今の大多数を占めるそれとおれのはちがう可能性が大ですが、いわゆる売れてそうなマンガ、おれの場合、「ONE PEACE」やら「金色のガッシュ!」やらと比較すると、納得できないところが多数存在するんですよね。

・たとえば、敵味方のあいまいさ。だれが敵でだれが味方でって決め付けが弱い。それぞれに感情移入しうる余地を与えて、それをして「人物描写の幅」としてる点。以前も書きましたが。

・それでいて、かなり大胆に人は死んでいきますね。ヒューズ中佐が死んだタイミングと、その「死」を「死」の象徴としていつまでも効果的に使用してるし、その「死」を各キャラにそれぞれの意味をこめて提示してる。これはアタリマエのことですが、実際にやるのはむずかしいことですよね。
・たとえば、母親が死ぬとします。自分にとっては育ててくれた母親ですが、父親にとってみれば妻だし、母親の親にとってみれば子供だったりするし、父親の親にとってみれば息子をうばった憎い奴だったりするかもしれません。つまり、そういうこと。意外と物語において、あるキャラの死は統一見解として「悲しいもの」等と位置付けられてそのままってことが多いです。
・だけど、5巻以降、ロイマスタングには同僚で親友で、仇討ちされなければならない死として存在しており、妻は悲しい死として、娘は知らないものとして、そして、主人公のエルリック兄弟には10巻だか9巻だかではじめて知らされる驚愕の事実として、彼の死があるわけですよ。やや不自然と思われるくらい先延ばししてますよ。

・そして11巻にして1巻の伏線が生き、本作のテーマが思わず始動してしまいますよ。
・11巻はだからややこしい巻ではあります。独自の錬金術理論(本当にそうなのかもしれませんが知りません)でもってグイグイと進行していきます。

「(本作での)錬金術は等価交換というところがミソ」

・たしか、「BS漫画夜話」で、伊集院光氏に似ておられる岡田氏(一発で変換できない名前は書かない)がおっしゃってた記憶があります。

・それで自分の四肢やら身体と引き換えに真理を得ようとしていたために起こった悲劇というのが本作のキーポイントであり、テーマでもあるわけですよ。こういうのは、「ひとつつながりの財宝」「魔界で最強」くらい形骸化するものですが、本作ではそういう風に、なにひとつエピソードやキャラの動向をないがしろにしないでつきすすんでいるんですよね。これはスゴイっちゃあスゴイことですが、メジャーではやらない手法ですよね。だって煩雑になるじゃん。

・と、あと、このシーンでこんな軽いギャグ描写にする?ってハズしワザも多用されてますね。

・たぶん、おれがガキのころから今までもそうだったし、それ以前も、それ以後もきっとそうでしょうが、「知ったかぶる」には、メジャーをけなしてマイナーをホメるって要素があると思うのですよ。基本ですよね。
・だけど、本作は、いわゆる「通好み」が気に入る要素がたっぷり入っていて、なおかつメジャー展開してるという、これまでの「マイナー」>「メジャー」な気持ちの人は戸惑ってしまうんですよ。

・たとえば、エルリック兄弟でホモは萌えるとか、そういう人もいるとは思いますし、錬金術のシーンかっこええ!って手をムダに叩いてるチビッコもいると思う。でも、そういった人も含めて、「物語」に酔いしれてしまうマンガではあると思われるんですよ。

・その理由は結局のところひとつですよ。「上手いから」

・つまり、「知ったかぶり」のおれとしては戸惑いながらも酔いしれて、まんまとハマったまま話がいよいよ盛り上がってきたということなんですね。飽きたころにアクションを入れたりのバランスのよさも相変わらずです。

・もしかして未読の方がいらっしゃるのならマンガ喫茶とかにはたいていあると思われるので、ヒマなときにでも読んでみてください。ややクセを感じるかもしれませんが、基本は「メジャー」なのですよ。ここが最大のミラクルなんでしょうね。
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2005年/8月/17日
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「耳かきお蝶」1巻 湯浅ヒトシ(双葉社)

・懐かしい名前と手に取りました。
「モーニング」出身かと思います(厳密なデビューとか知りませんが)。福本伸行氏なんかもそうですね。
・たしか、ヒゲを生やした刑事のマンガをやっていたりして、そのうちフェイドアウトしてったかな。で、竹書房でみたりという、案外と、モーニング出身の2軍コースみたいなところを歩んでいたような。これが1軍だと、江川達也とか土田世紀みたいに小学館にいくんですよね。

・で、久しぶりにみたそれは当時の劇画タッチからけっこう脂がぬけたようなスッキリしたものになっていて興味を持ったのです。そうだ、当時は「湯浅ひとし」名義だったか。

・江戸時代末期が舞台。もう明治維新の偉人たちが生まれてきそうな時期。長屋の一角に「耳かき屋」を営むお蝶のお話です。
・お蝶の膝枕で耳かきをしてもらうと極楽気分になれるってことで、いろいろな問題を解決すると。そういった感じの江戸コメディでござるよ。

・お蝶自体、耳かきのプロで、バキッとした美人っていうんじゃなくて、ホレっぽくて、おきゃんな感じ。で、弟子の少女おつるをツッコミ役として、ときにはボケたり、仕事をキメたりとするわけです。

・キャラがひょうひょうとしてるのは、前記のモーニングのときからそうで、たぶん、それが湯浅キャラの持ち味なんだろうなと思われますが、それに合わせるかのように脂の抜けた絵がとても魅力的。

・線がシンプルになり、頭身も縮まって、どことなく滝田ゆう風味になりました。そのくせ、趣味も入ってそうな、時代考証がしっかりして、まわりの小物とか、背景はあくまでリアルなんですね。そして美しい。

・ふと、わかりましたが、マンガにおいて頭身を縮めるってのは、必然なのですね。1ページを細かく区切ったコマにおいて、動きを出したり、縮尺を表し、なおかつ、表情を描写するということになると、どうしても、そうなってしまうのですね。それでたとえば子供っぽくみえてしまうなんて弊害も生まれるんですけどね。
・本作はそれも込みでとてもいい絵です。

・話もムリなく考証をすべりこませながらも、ガチガチのリアルにこだわってるわけでもなく、あくまでユルユルと進行していきます。それがとてもいい。
・ずっとお見限りではありましたが、いいマンガ家でいらっしゃるんですねえ。おみそれしました。

・ゆったりと緩和しつつ読むことができます。東京の人にはオビにエステサロンの耳かきの割引クーピンがついてますよ。
オススメ
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「並木橋通りアオバ自転車店」15巻 宮尾岳(少年画報社)

・横綱相撲だよなあ。もうまったく揺るぎがない安定したクオリティで15巻ですよ。

・すごい自転車店「アオバ自転車店」がある街の人々と自転車のあるオムニバス読みきりマンガです。

「最先端はいかが?」から15巻ははじまります。MTBを息子にプレゼントしてやろうとはりきっていた父親に「普通のがいい」とママチャリを求める息子の話から、いきなり意表をつかれる。
・ボケたおじいちゃんと孫娘の話(この話と自転車のからめ具合はなにげにうまい)「ハルノカホリ」

・そして、カバー、カバー裏、表紙、裏表紙、カバー見返し、あとがき、など、15巻はその自転車のために存在してるのではないかと思うくらいの「8インチの巨人」がある。

・本作では何度も折りたたみ自転車のネタが登場します。おれはそれも含めて「変わり自転車」としてとても楽しみにしてます。本作ではそれだけじゃないんですよね。なんていうかな「プロジェクトX」的な感じもあり、感動しますよ。

・あとはレギュラー陣もうまく混ぜ込んで、うまく展開してましたね。泣かせネタが強かったかな。ギャグ編は「モリオとナツキのフツーDEデート」くらいだったからね。これはちょっと弱かったし。

・まあ、考えてみればとても贅沢な話なんですがね。

・15巻巻末には1〜14巻のガイドがありますよ。だから、未読の方はためしに15巻を読んで、巻末のガイドにしたがってさかのぼっていくってのもオツかもしれませんね。別に話を見失うっておそれはないですから。
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「PS羅生門」9巻 矢島正雄&中山昌亮(小学館)

・最終巻。もう、最新流行語でいうと「なんでだろう」ですよ。
・1話完結の読みきりオムニバスとして、現在流通してるマンガ全部をひっくるめてもかなり上位にランキングされると思われますし、そのクオリティは9巻においても全く下がることはありませんでした。
・ま、裏事情とかはいんですよ。おれんところ、そういうサイトじゃないし。ただ、残念だったと。

「遺族の想い」がとてもヘヴィだった。快楽殺人の犠牲者になった遺族が復讐する話です。

・その後、おまわりさんとして感謝される話などをはさんでいく。ここいらの前後のバランスをとっている感じがすごいね。文字通り「重い」「軽い」のバランスですよ。

・ラストは前中後の大作でしめるわけです。「警察官の仕事」。悪徳警官が悪事がバレて懲戒免職される。そして何者かに襲われる。だけど、上層部はあの手この手で調査を阻止する。なぜか? これ以上の不祥事が発覚するのを恐れて。だけど、主人公の女性刑事は立ち上がるわけですよ。

・そして、ラストシーン。まあ、これをどこにはさんでも「最終回」になるわなという「部品」をはめこんで大団円ですよ。そういうところは職人的でありましたし、やや鼻白みましたが、おれの目からはナミダです。

・本当読んでいて、「うーん」と考え込んでしまったり、妙な後味が残ったり、感動するマンガは少なかったのでとても残念でなりません。ぜひ、同じコンビでの次回作を期待したいものです。
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2005年/8月/10日
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「コーヒーもう一杯」1巻 山川直人(エンターブレイン)

・長生きするもんですね。2005年はプライベートでは最悪なことが大挙して押しよせてますが、マンガがみでは、ミラクルがたくさん起こってる気がします。
・おれが東京における最大の心残りである、「タコシェ」という愛すべき店が中野のブロードウェイにあります。かつての青林堂のアンテナショップとしてできたのですが、いつしか、いかす創作系のミニコミやインディーズCD、グッズなどを数多くおいてあり、いついっても「あ、こんなのあったのか」と発見のあるところです。近くにいる人はおれの分もぜひいってほしいものです。

・そこで、おれ的には有名人の各人が「メジャーデビュー」やブレイクを果たしたのが2005年といえるかもしれません。こうの史代、藤本和也、そして、山川直人。うーん、それぞれの新刊がおれの住んでる片田舎の書店で買える年。すばらしすぎる。

・ということで、エンターブレインから2冊同時に発売になりました。たとえるなら、インディーズで長年活躍されてる方のインディーズ時代のベストと完全新作です。本作は「コミックビーム」で連載している完全新作のほうです。
・考えてみると「1巻」ってのもはじめてかもしれないですね。

・ボブディラン(氏は強度のディランファンらしい)の曲からとったタイトルとおり、コーヒーのあるオムニバス読みきり集です。

・喫茶店で、自宅で、人の家で、淹れられたコーヒーとお話があります。

・ふと、先輩がコーヒーを飲みに部屋に訪れる。「コーヒーもう一杯」
・毎夜歌ってるストリートミュージシャンをみにくるお嬢さんっぽい女性「夜の子供たち」
・離婚して月に一度、父親と会う少年「バビロン再訪」
・コーヒー専門店にある一番高いブルーマウンテンをたのもうとする男「ブルーマウンテンの夢」

・スクリーントーンのきわめて少ない、かけあみを超多用した、書き込みの多い「黒い」絵で、その丁寧な絵に丁寧な話がゆっくりとつむがれていきます。

・本作に限らず、山川作品のいいところのひとつとして、「現在」なんですよね。

・絵も話もそのほかすべてが昭和懐古的なニオイがぷんぷんしてますが、キャラたちが住んでいる場所が「現在」の日本なんですよ。そこがいい。

・福沢諭吉の1万円札だし、古きよき喫茶店の跡地にドコモショップができるし、ハイライトの側面部にはバーコードが描かれてる。
・そして、マッチでタバコに火を灯し、コーヒーメーカーやドリップバックも使わないで、やかんで沸かしたお湯でコーヒーを淹れ、畳の部屋にパソコンがあるという、どうしようもなく21世紀の日本。

・古くていいもの悪いもの、新しくていいもの悪いもの、たぶんそれぞれに基準があるだろうと思う。それは山川氏にもいえるし登場するキャラにもいえる。

「バビロン再訪」では、「お父さんが1人でやってる休日の過ごし方をみたい」と、元妻と暮らしてるわが子に、神保町で古書をあさり、喫茶店でブレンドをすすりながら買ってきた本を読んでいる。そうやって受け継がれるものもある。
「ヒコおじさん」では、幼いころ大人にも子供にも属してなく、こっそりと自分の部屋で、ビートルズを(レコードプレイヤーで)聞かせて、プラモデルコレクションをみせてくれたヒコおじさんと自分は同じになってることに気がついたりね。

・男はだいたい言葉少なく、女も1種類って感じですが、「これを求めてるんでしょ?」という商品としてのニーズにこたえつつも、その枠で本当に描きたいものを描いてる。そういったいい距離感があります。

オススメ。2巻も3巻も読みたいです。
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「口笛小曲集」山川直人(エンターブレイン)

・短編集です。
・同人誌で発表したものが多い、いわば、インディーズ時代のベストセレクションですか。それでいうんなら「5」くらいまでベストセレクションが作れそうな気がするんです。

・すべては知らないですが、「タコシェ」という店で、名前をみかけたら根こそぎ買っていたので、そこそこ山川作品に触れてるほうだと思うのですが、知らない作品が多かったです。そして、知ってる作品も含めて、大好きな作品が多かったです。

・ラストをかざる「金曜日」が好きです。東京の私鉄沿線に住んでるであろう1人暮らしのサラリーマンの金曜日の夜の生活を描いてるものですが、この孤独で幸せで作業で日常で喜びな1人暮らしの微妙な感じを異様に思い出したな。ここでの描写も発表された1997年の描写ですね。

・バラエティに富んでる感じは「コーヒーもう一杯」をしのいでおります。あ、でも、ラブストーリーが多いのか。

「モノクローム」ではカメラを買ったことでどんどん彼女が遠ざかってく苛立ち。
「いちご」はわらしべ長者的に彼女の部屋に高級ウィスキーがあるワケ。

・大好きな「バスタオル」。雨で水没した町を彼女に会いに泳いでいく話。これは本当好きな話だなあ。こういう「ベスト」な作品集に、自分の好きな作品が入るととてもうれしいですよね。

・せつない話では本作でも、おれがコレまで読んだものでも、他の作者の作品を見比べても屈指の「この星の空の下」があるのもうれしいかもしれない。でも、せつなすぎて何回も読めないんだよなあコレ。

・そして、再び描きますがラストに「金曜日」です。さまざまな作品がある中で「金曜日」が最後にくるのがとてもいい。

・本作に限らず、山川作品のいいところのひとつとして、「ひとり」なんですよね。

・坂本九氏の「ひとりぼっちのふたり」という曲のとおり、なぜか、ひとりが似合うマンガなんですよね。少なくとも「サイコー!」とみんなでワイワイと読むようなマンガじゃないし、受けと攻めのマッチングを考えるマンガじゃないです。ひとりでいるのをひとりで「確認」するように読むのかもしれません。ひとりだからさびしいだけじゃないんですよね。さびしいってのもありますけど。

・本作品集でも「ひとり」が目立ちますね。「モノクローム」では彼女と別れますし、「いちご」の女の子はひとりで行動してます。「バスタオル」はひとりで彼女のところに泳いでいく話だし、「ひとりあるき」というタイトルはもっとわかりやすいですね。で、「この星の空の下」もそうだ。

・ひとり暮らしをしていたころに買った「赤い他人(秋田書店)」をなんどもなんども読み返していたことを思い出すなあ。

・ということで、ひとりでどうぞ。さみしくて自殺したくなるような人は意外に効くかもしれない。そういう読まれ方は山川氏には不本意だろうけどね。

オススメ
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2005年/8月/7日
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「シガテラ」6巻 古谷実(講談社)

・最終巻。
・前作「ヒミズ」と同等の、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない「終わり」だなと思った。しかも、前作より、タチが悪いと思った。一見ハッピーエンドにみえるもんな。

・いじめられっこの主人公がいろいろあった物語。文字通り「いろいろ」あった末に「終る」んですね。

・物語は最終2話を残し、語る余地がなくなる。そして、なくなったから終る。最終話では主人公は「大人」になる。そして「強く」なってる。
・ここで感じるのは「時間」です。時間というものが持つ強大さと残酷さをまざまざと思い知る。物語は時間がきたから終る。そして、時間がきたから主人公は大人になる。そして、青春を描いた本編も終る。

・つまり、すべてのことは時間が過ぎ行くままにうやむやになってしまう。これをおれはキョーレツに感じてしまったですよ。
・彼は命を捨てる覚悟があったほどの彼女と別れてたし、新しくできた彼女を超愛してるし、なんやかやいうて生き残ってるほかの面々も普通に生きてる。
・それは悪いことばかりでもない。数々あった不安の影も時間は平等に払拭してくれてるからね。主人公のトモダチのトモダチが彼女をレイプしたけど、彼女は大丈夫だったし、彼女の近くに住んでいた崖っぷちの男も彼女を殺さずに自分が死ぬという選択肢を選んだ。そして、それは「そういうこともあった」と過去になってしまう。文字通り過ぎ去る。

・主人公は6巻において苦悩します。それこそタイトルの「シガテラ」のように、自分は毒で、自分に関わるものはすべて毒に侵されて不幸になるのではないかと。だから、超愛してる彼女も不幸にするのではないかと。

・でも、「大人」になりましたから。「強く」なりましたから。つまり、大人になる、強くなるってのは、視点を変えるとニブくなる ってことでもあるわけです。

・そういうことを淡々と描いて、淡々と終るわけです。


僕はつまらない奴になった

・ラストの主人公の独白です。ここに帰結するわけです。なにをもって「おもしろい」「つまらない」と考えるのかはそれぞれですが、そう思うでしょう。ここにいたるのですよ。激しいシンパシーを感じます。

・そして、「え?」と思いますが、その後の展開に感動を覚えるのです。これが「大人」の希望だと思います。そして、「これ」があるとないとではまたいろいろとちがうと思います。女性はどうかわかりませんが、男子にはけっこうこの主人公の「希望」に共感できるものがあると思います。おれは思いました。

・ま、今度も名作をモノにしたワケですよ、古谷実さんは。ただ、「ヒミズ」の最終巻のときにも描いたけど、普通に笑えるマンガってもうムリなんすかね?今回も笑えるところはいろいろあったんだけどさ。

参照:[シガテラ食中毒について]
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「長い道」こうの史代(双葉社)

・本当に本当に「夕凪の街 桜の国」が売れてよかった。話題になってよかった。こうやって別のこうの作品を気軽に読むことができるのですもの。

・ということで、Jour[すてきな主婦たち]に4年間に渡り連載されてた本作です。おれはまちがえても手にとらないタイプの本です。「すてきな」と「主婦たち」の間に「淫乱」とか入ってる場合はやぶさかではないのですが。

・1回3〜4pのショートコミック。親が決めた許婚とうれしはずかし結婚生活をする若い2人の話です。男は浮気性で無職の典型的なダメ人間。女は天真爛漫。で、貧乏で、妙にストイックな日々が続きます。梅酒作りの最中に味見で盛り上がってイキオイSEXってなこともありましたが、普段はキレイなカンケイかな。というより、この梅酒の話も、「肉体関係は?」って疑問に思われるのが面倒だから、「えーい」と挿入した感じがありますね。

・んー、こうの史代氏のメジャー作品をみてる限りでは、描かれる女性は1種類ですよね。よくいえば天真爛漫でダークサイドをけして表に出さないタイプ。悪くいえばやや天然。

・本作に登場する彼女も、かつて大好きだった男性が近くに住んでいるという理由で親の決めた許婚の元に嫁ぐことを決めたんですからね。で、何回か、実際にその男性と遭遇したりってこともあります。でも、基本はほのぼのと通りすぎるのです。ややファンタジー風味が入ってるかな。主人公の女性がふと電車に乗り、海に行き、水着を持ってないから、レンタルのゴムボートを借りたら、潮に流されて漂流してしまい、無人島について、救出されて、真っ黒になって家に帰るって話とか。

・そういったファンタジー風味では「膨張」って話がとても好きだなあ。ふと、宝くじを買ったら1等当たって、以後、なにやっても金が増えていく話。最終的にいつものおんぼろアパートに執事がいて、毛がフサフサの大型犬がいるって話。ちなみに、それは夢オチじゃないです。そして、ちゃんと元のビンボーに戻ります。

・あと、主人公のダメ男がつとめていたお菓子屋が夜逃げして、給料代わりにアホほどのチョコレートをもらう話もいいなあ。

・ちなみに、1回離婚したりもしてるんですよ。おかしな2人ですね。

・そういうお話が54個入ってます。

・伊丹十三監督のメイキングビデオをみたことがあります。

「映画に映し出されるのはウソのことです。だからこそホンモノを使わないとウソがすぐにバレてしまう」

・伊丹監督のインタビューです。だから、伊丹作品はほんのささいな小道具にいたるまでホンモノをスペアも込みでかなりの量をそろえてるそうです。

・マンガにおけるそれは描写力になるのではと思います。とくに背景他のところです。「正しい大きさ」でモノやヒトが描かれているということです。
・実はそんなものがなくてもマンガはナンボでも描くことができます。でも、それを描くことができるから、配送屋の手違いでなぜか置いておくことになったグランドピアノが四畳半の部屋いっぱいいっぱいに入ってたりするってネタが強烈なインパクトを持ったりするわけですよ。
・というか、絵を眺めてるだけで幸せに浸ることができる数少ないマンガ家さんですよ。

・で、幸せになるためにはこういう話じゃないとね。「夕凪の街 桜の国」じゃあね。
「こっこさん」とリンクありです。「あ、チクリンだ!」って。

・ということで、どこにでもある、こうの史代氏にしか描けない、ステキなラブストーリーです。おれも道さん(主人公の女性の名前)に「気合の入った送り出し」をしてもらいたいものです。

オススメ
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「団地ともお」5巻 小田扉(小学館)

・いつもどおりおもしろい。と、軽く片付けたいところですが、5巻はちょっとちがうね。

・小4のシックでメロウなおばか男子ともおが活躍するマンガなんです。

・これまでの「団地ともお」は、なんていうかな、「ともお、カンケイないじゃん」って話も多かったです。つまり、「団地ともお」という舞台で、別の演目がかけられてる感じ? まあ、どこか読みきりでやればいいじゃんと思ったりもしましたけど、毎週、描いてるんだろうし、なかなかそれも難しい話ですわなと。それがつまらなかったら由々しき事態ですが、キッチリおもしろいんだもんね。

・ところが、5巻は、全部の話が「ともお」だったなあと。これがこういう表現しかできないのが歯がゆいのですが、「全部ともお」だったんですよ。
「おもしろさ」の総計でいうと4巻までとそう変わらないですが、たとえば、少女マンガのコミックなんかによくある、読みきりが巻末に収録されてるパターンと同じなんですよね。タイトルは「団地ともお」で、サブタイトルにも「ともお」がついてますが、どうも、これは「ともお」じゃねえなと思わせる作品が1〜3編くらい収録されてました。
・だから、5巻は全部ともおでおもしろいからとてもありがたいものなのです。

・たしか同じ雑誌かと思いますが「美味しんぼ」という有名な作品があります。京極はんが有名です。この作品の中にハンバーガーの話が登場します。某マクドナルドとは比べ物にならないくらい猫肉じゃない上等なミートにパンを使用してるのに某マクドナルドより不味いといわれる。
・答えは、パンとハンバーグの相性が悪かったということです。つまりはマッチングの問題ですね。今回のともおもそのマッチングの問題かと思われます。

・そしてこれらは多分におれの主観が大きいですね。おれが個人的にそう感じたってのが割合として多いです。なおかつ、その「感じ」に担保も根拠もないです。
・あえていえば、その「ともお」度が1番少ない、百科事典のセールスマンの話が、かろうじて「ともお」だったところにその秘密が隠れてるのかもしれないけど、こういうのは分析しすぎるとおもしろくないんだよね。

・おれは、「団地ともお」の5巻は、「小田扉作品」としてじゃなく「団地ともお」として最高傑作の巻だと思うよ。もしかして、以後も最高傑作が続くかもしれない期待もしてますよ。

・個人的にはときおりワガママ少女みたいになるともおのお母さんが主催の変わった旅行の話が好き。あと、ともおが電話で父親に星座を聞いて「便座」と答えたことに大笑いしてる状況も好き(姉と母親が大喧嘩してる最中だったし)。

「美味しんぼ」くらい続いてほしいよな。
(14:55:55)amazon

「赤灯えれじい」4巻 きらたかし(講談社)

・つづくもんだなあってのが4巻を手にとったときの感想。しかも、人気があるみたいだし。
・まあ、読み終わるとその理由はなんとなく理解できるんですよね。

・ヤンキーガールのチーコさんとヘタレフリーターのサトシさんのナニワのラブストーリーです。

・4巻では2人でのスクーターツーリングとついに同棲です。

・なんで、「つづく」のかって思ったわけは、オトコノコ向けのラブストーリーだとあらかたのイベントは終ったわけですよ。もっとぶっちゃけ、やってますからね。

・実際問題、やってからが長いのが恋愛関係ってやつだとは思うのですがね。

・で、本作はその「実際問題」に即して丁寧に描いてるのが人気の秘密じゃないかと。
・そうなんだよなあ。いろいろあるんだよ。そういうことを思い出したり、純粋に「いいなあ」と思ったり。そこいらはきらセンセイの描写力のタマモノですかね。
・たとえば、もうSEXしたとしても、水着姿はみたいとかね。そういうことっすよ。同棲での家事分担とかね(それは経験ないけどさ)。
・で、もうイッコのポイントは、ヤンキーガールのチーコさんは、そのキレやすい性格からあまり「ツレ」がいないって設定が、ヤンキーマンガに染まりきらないって利点もあるかなと。だから、非ヤンキーのヒトもチーコにもサトシにも愛着を持つことができる。

・ま、「電車男」じゃないけど、すなおに「がんばれ」と応援できる2人ってのもいいのかもなあ。
・仲良くしてるのをみてるのがおもしろいんで、あんまりキツすぎる試練は止めてください。完全に別れたりとかな。別れてもつづくマンガあるじゃないですか。ああいうのは本作の場合ダメだろう。
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「猿ロック」7巻 芹沢直樹(講談社)

・なんか安定してますね。こっちは純粋にチーマーやらヤンキーやら向けって感じもします。
・中学生のサバゲチームvs渋谷のチーマーと。かなりいやらしい攻撃をサバゲチームは仕掛けてくるのです。

・ここいらの仕掛けや展開のテンポの速さはとてもいいですよね。本作は、かなりハイテンポのアクションがおもしろさの秘密かもしれません。あまり伏線とか緻密に展開するのより、ワンコソバを食べるみたいに、「ハイ」ポン「ハイ」ポンと、**が起こった、**したと、問題→対処ってのの展開が速い。

・あ、もっといいたとえ。ヒップホップにおけるラップの掛け合いみたいにっていえば、ヤングにもわかりやすいね。

・チーマーのボスが溺愛するラップグループのライブでロックアウトして、なおかつ、チーマーのボスを元ラブホテルの廃墟に誘い込んで拉致監禁。そこからミゴト脱出する主人公の猿ってな展開でしたよ。

・絵のクオリティが落ちてませんね。すばらしい。次はエロい展開を希望します。
(15:39:56)amazon

「あまえないでよっ!!」4巻 宗我部としのり(ワニブックス)

・尼さんで女子高生で同居で複数でってかなりいい感じのハーレムマンガです。テレビアニメも絶賛放映中なワケです。

・3巻から登場された「悪役」で「エロ役」の上野一希さんがとても活躍されてます。「適乳」ってことでね。もしかしたら、「敵乳」ってことでもあるんでしょうか。色仕掛けで主人公さんをとても誘惑してきますよ。エロいよなあ。

・ということで、いろいろなタイプの女性が登場するエロコメですが、今回はその中でもっともマニア向けな、青い髪の毛の阿刀田結子さんがカンチョウ到達されました。カンチョウってのは浣腸じゃないですよ。難しい字なので書きません。ま、解脱みたいなもんですかね。RPG的にいうとレベルアップ。これで2人目?3人目? まあ、おれはオッパイに目がくらみがちなのでわかりません。

・ただ、そう思ってると、突然、ヘヴィな話や、感動編を盛り込んでくるので侮れません。「主がそこにいない葬式」の話なんて考えさせられるものがありますよ。ま、地縛霊になって、その葬儀にはいないんですよ。それは彼女らには見えるわけですよ。

・おそろしい完成度です。おっぱいに目がくらまないように注意して読むとよくわかりますよ。
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「万祝」5巻 望月峯太郎(講談社)

・ものすげえイマサラですが、望月峯太郎のマンガってなんかちがくね?
・この「なんか」は「なんか」としかいいようがないんですが、それこそデビュー作の読みきり(ガムが出てきたマンガと記憶してるが)から、出世作「バタ足金魚」から、ほぼすべて読んでるとは思いますが、なんかちがうんですよね。

・これは「ヘン」ってのとも「下手」ってのともちがいます。「独自の価値基準」ってのが適切な表現かな。その価値基準のままに、あまりヨソのマンガを参考にしてない感じで進行していきます。「独自」ってことでは楳図かずお氏や水木しげる氏もそう感じます。だから、天才肌って書いておけば波風はたちませんね。ただ、「ちがうな」と

・本作は極めてリアルな海洋宝捜しアドベンチャーです。この場合の「リアル」は「ONEPEACE」やら「海皇記」とかに比べてリアルってくらいで、女子高生がモリで海の壁を破って船を脱出するなんてことが起こってますからね。

・そうなんですよ。この「リアル」てのがミソなのかもしれないな。望月氏のマンガの「リアル」ってのはどこからきてそう思うのでしょうか?考えてみると謎。

・ということで、宝がある島へと目指す、高校生グループと、海賊グループ。行く手を阻む数々のワナと、アホみたいに大きくてありえないトビミズチという超巨大なサメが登場してアドベンチャーってます。

・こう、小物やら縮尺などの描写はとてもリアルだけど、それで起こる現象や行動やアクションが非現実的なのが、「ちがう」と思うのかなあ?

・おもしろい。「ちがう」けどおもしろい。それだからなんか余計にひっかかったりもするんだよなあ。いつでも、おれ内のマンガ家ファイルのハシッコのほうにいる作家ではあるなあ。
(17:08:12)amazon

「仕切るの?春日部さん」1巻 竹内元紀(角川書店)

・意外に待望の1巻でした。「Dr.リアンが診てあげる」シリーズで名を馳せた勇者の第2弾です。

・1番残念だったのが、結局、「Dr.リアンが診てあげる」シリーズと同じになっていったところかな。下ネタを中心にボケたりツッコミをいれたり、下ネタなのに劣情を喚起せずにほのぼのほのぼのと展開していってます。

・舞台は生徒会になりました。あとはいっしょかな。

・いっしょってことはハイクオリティの下ネタってことですが、1回目のツカミのときみたいに春日部さんほかのキャラのエッチなシーンってのも期待していたけど、結局、それはやらないみたいですね。

・あと、1回のページ数が長いのが大変みたいですね。基本的に同じってことは、単調になりがちな画面構成ってことで、そこいらを打開するためにかなり試行錯誤されてる感じも見受けられます。だから、後半では、見開きとか、1pぶち抜きとかのワザも使っておられます。なんだか、「いいのかな?」とビビりながら使ってる風なのが微笑ましいですね。

・もともと「そういうもんだ」って割り切っておられるので、「Dr.リアン〜」よりはしっくりいってるところも多く、安心して楽しむことができる下ネタギャグマンガですね。劣情を催さないので「安心」ですし。

・んまあ、キレイドコロがいるんだから、今後はサービスシーンと、あと、準レギュラーの校長がナイスキャラなのでレギュラーにしたほうがいいかもしれない。
(17:33:40)amazon

「はやてxブレード」3巻 林家志弦(メディアワークス)

・おもしろいねー。好調3巻。作者最長巻数だそうです。それもナットクのクオリティ。というか、実は、他のは「ULTRA SWORD」ってエロマンガ以外あまりおもしろいことないと、なにげに批評。


・女子校を舞台としたチャンバラマンガです。当然女子高生がチャンチャンバラバラしてるわけですよ。

・今回はちょっと重い話も入ってましたし、そのまま4巻へと持ち越しました。それに意外に話的にはいいところまでいってそうですよ。次で終わりかな?

・どんな状況でもギャグをはさもうというアグレッシブな姿勢はとても好きです。それこそ「狂四郎2030」をも凌駕するイキオイかもしれません。

・3巻までで特筆すべきは、チャンバラシーンでのバリエーションがでたことでしょうかね。これまではわりと添え物的でしたけどね。

・このテンションの高さとバカさは元気が出ますね。夏こそバカ!って感じですか。
・おもしろいですよ。
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2005年/8月/3日
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「宇宙賃貸サルガッ荘」5巻 TAGRO(スクウエアエニックス)

・はじめて書き込みさせていただきます。
・5巻、最終巻読ませていただきました。
「サルまん/竹熊健太郎&相原コージ」において、マンガで音楽が聞こえる方法というネタがありましたが、最終話「からまわる世界」において、テルのラストの台詞の直後、カーネーションの同名曲の炸裂するドラムのイントロが聞こえてきました。
・おれがジブリのエライ人なら、宮崎クンはもう古いから、若手の誰かに、「チミチミ」とばかりにアニメ化を指示して、その演出をきつくいいふくめるところですよ。というか、テレビアニメ化なら主題歌はカーネーションで決まりでしょう。

・本作はおれの感覚だと、はじめから「終わり」に向けて爆走していってました。かなり最初のほうから終わりへの目的を提示(宇宙の墓場サルガッソーにあるサルガッ荘というアパートから脱出する)しており、それに向けて、個々のキャラが思惑に沿って動いてました。

・そして5巻に「TOO MANY COOKS IN THE KITCHEN」(まさか、コリンのソロをもじるとは「Two Mage Cooks In The Kitchen」)とばかりに、「終わる」ためのキャラが大挙して登場しました。
・一瞬、「収拾つくのかな?」と思いましたけど、このキャラたちは、よくある「にぎやかし」じゃなくて、終わらせるためのキャラでしたからね。(まあ、正直なところ、終わらせるためにキャラを増やすのはどうか?とも思いましたが)

・1巻のカバー見返しの作者のあいさつでの「本棚の邪魔にならない程度で終わります」というのは、果たせましたね。
・SFで、ラブコメで、ファンタジーで、アクションで、「愛」ですよね。最後には愛があふれてますよ。びっくりですよ。

・キレイに終わりました。全5巻の「ひとつの物語」としてかなりいいです。マンガとか、ドラマ、ほかに「ストーリー」と呼ばれるものは、往々にして「ひとつの物語」として終わらないことが多いです。多層的に物語がふくらんで、たくさん足がある巨大イカのようなグロテスクなものが横たわってるなんてのはありがちです。そのほうが断然、金になりますしね。でも、それは美しくないんですよね。多層的複合的なもののほうがおもしろいってことはありますが、それも度ってのがありましてね。なに考えてるんだかよくわからんけど、「ONE PEACE」なんか、トビラでこれまでの登場キャラによるアナザーストーリーを展開したりしてますけど、こういうのは「わけわからん」って展開がとても多くなりがち。

・それより、ひとつの物語としておもしろくて強いものが美しい。そして、「宇宙賃貸サルガッ荘」は美しい。おれはそう思っていたいです。

・美しい物語をありがとう。今はその気持ちでいっぱいです。

***

・などと、TAGRO氏のBBSに書き込もうと思ったのですが、無駄に長いし、ダラダラしてるで、それにふさわしいポトチャリポラパの「コミック」のほうに書くことにしました。

・そのBBSでは「探してるのですがみつかりません」的な書き込みが多かったですが、普通に手に入らないか? 最終巻は重版かかったそうです。

・がんばろう!売れよう! 5巻揃えろ!オススメ
(12:39:35)



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