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ポトチャリポラパ/コミック/2007年
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2007年/1月
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2007年/1月/23日
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「名探偵なんせす」 沼礼一(サニー出版)

・よくわからない。
・タイトルの上に「大人のためのユーモアミステリー」とあります。表紙には裸の女性と、その後ろから棒みたいな足とくわえたパイプにハンチングといういかにもな探偵スタイルの男。

[画像: 名探偵なんせす: 沼 礼一]

・しかもなんだかCG処理。なおかつ、買って知ったけど、カバーの裏表紙にはナツカシの3Dアート。ただし、おれにはなにがあるかみえないわ。

・よくわからないから買ってみました。シュリンクされていたので中身を伺えなかったし、まあ、650円+税というダメでもまあいいかと思う値段でしたし。まあ、結論は激しく損でしたが。

・名探偵なんせすが助手のワープちゃんといっしょに毎回難事件に挑むユーモア探偵マンガ。「大人の癒し系ミステリー」なんてカバー見返しに書いてありましたけど。

・1話目。水の都ベニスが舞台です。ゴンドラの底に穴を開けて客から金品を奪う泥棒が出没してます。彼は水中を自転車で移動してますので、なんせすも助手のワープちゃんと2人乗りで自転車で追いかけます。もちろん、アクアラングをつけてます。
・なんせすの自転車に魚が突っ込み、前輪のスポークをべきべきに折ってしまい、追跡が不可能になりました。そのときたまたま通りかかったクラゲを気絶させて、タイヤにはめ込むと、クラゲの足がスポークの役割を果たして再び追いかけられるようになります。そして、たくさん撃った銃のおかげで泥棒は浮かび上がりました。そう、なんせすはコルクの弾を泥棒に撃っていたのです。だから、泥棒は浮かび上がらずにはいられなかったのです。



・ホテルで強盗殺人が起こってます。なんせすたちも見張っており、泥棒に出くわしました。ワープちゃんが拳銃を撃つと当たりました。そして血痕を追っていくと、博士の研究室にたどりつきます。彼は細菌の研究をしていました。でかい水槽の拡大鏡をみると4匹の細菌が泳いでました。でも、実は博士が強盗団の首謀者で、泥棒は水槽の中に隠れていたのです。拡大鏡じゃなくて縮小鏡だったので4人の強盗団が細菌のようにみえたってわけです。



・と、かようによくわからない状況をよくわからないキャラがよくわからないトリックを暴いてよくわからない事件を解決するというわからないことづくめの、どこにツッコミを入れていいのかよくわからないマンガなのです。

・毎回、1コマ、「ワープ」と叫ぶ助手のワープちゃんは、叫ぶときに裸になります。なぜなるの? なぜ叫ぶの? いや、よくわからないのです。オドロキを表わしてるそうですが。

・この感覚は、小学生のときに大人用の週刊誌を読んでいたときに似ている。なにがなんだかわからないけど「大人」のニオイがすると。

・逆にここまでノビノビとテキトーにデタラメに描かれてると、裏があるんじゃないか?とか、深遠なる意味があるのではないか?と読者のほうで勘ぐってしまう効果もありますね。いや、そこの点でもよくわからない。だからつまりなんだろう? このマンガでなにを世に問うているのだろう。よくわからない。

・それを上回るくらいテキトーに描かれている画。内容と絵のマッチ具合でいうとピッタリかと思います。中はトーンレスのフリーハンドの絵です。ちゃんとコマを定規で描いているところをみると、すべてフリーハンドだったり、ワープちゃんほかの身体つきが毎コマちがうのも狙いなのかもしれないけど結論を急ぐ気にはなれません。

・つまりすべての点で「よくわからない」という評価がこれほど似合うマンガはないのです。キングオブ「よくわからない」です。

・そんなこんなでとても不思議な感触はあります。唯一無二といっていいマンガだと思います。ただ、なんだろ。モーレツにソンした感じはあります。

・あ、そうか。そういうことでソンしたって目くじらたてない「大人」が読むユーモアミステリーなのか。そうかそうか。
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「大阪ハムレット」 2巻 森下裕美(双葉社)

・大阪弁の人情オムニバスマンガ。
・1巻はとにもかくにも素晴らしかった。それを受けての2巻はどうかというと「深化」したなと思った。

・たとえば、音楽にたとえるとわかりやすいと思うのですが、アーティストがファーストアルバムを評価されました。それを受けてのセカンドアルバムをどうするか?ってことで、いろいろなパターンがありますが、本作の1巻と2巻でいうと、より掘り進めた感じのモノになったのです。
・不倫している姉を横目でみながら「ああいう風にはならんぞ」と、世の中をナナメにみているコの「十三の心」
・バレエ教室の先生の話「大阪踊り」
・再婚しそうな母。なにひとつ欠点がない父親候補だがコドモたちは気にいらない「オードリーの家」
・パチンコ屋の店員と、喫茶店のウエイトレスの同棲物語「カトレアモーニング」
・母親に捨てられた父娘。そして父も前の仕事でどうしても一旗あげると祖父の家に娘を残して蒸発する「この世界の女王」

・こう、オビの裏に「喜怒哀楽てんこ盛り」なんてコピーがあるんですが、2巻では哀の配合がトクに多かったのですね。各話の登場人物はそれぞれに「哀」を抱えて生きてます。

「十三の心」の主人公は、自分に「文学」を教えてくれた先生に淡い恋心を抱きかけてましたが、不倫してるしょうもない姉にフラれたことを知ります。そして、不倫した姉は心中しようと消息不明になりますが、ケロッとした顔して帰ってくるのです。姉は平気そうにしてましたが、内心抱えた「哀」はすごいものがあるんだろうなあと。

・前後編の大作である「大阪踊り」も、ちょっと映画の「フラガール」か、「シャルウイダンス」みたいな、ワケありのバレエ教室の先生を軸に様々な人物が「哀」を抱えています。

・いやね、ぶっちゃけ、ドラマなんかはどう考えても2巻のほうが深いしおもしろいのです。絵もますます冴え渡っております。だからなにも問題なく「ますますおもしろくなった」とすればいいんですが、どうもねえ。

・1巻は、4コマの登場人物のような方々が大阪弁を駆使して人情ドラマをやってるという、なんていうかレゴで作ったスターウォーズのようなパロディ感覚といいますか、ちょっとした違和感が絶妙のアクセントをかもし出していたんですね。

・あと、哀が過多だった。本当、考えられてはいますが、基本的にトーンは深く暗くなった。そして重くなった。それに今はちょっとキツさを覚えたのです。
・ただ、これはかなりひねくれた見方だと自覚はしてます。シンプルに評価するならますますおもしろくなった2巻です。

参照:[LEGO STAR WARS TRILOGY]

(19:20:36)amazon

2007年/1月/20日
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「山猫山だより」 ひのもとはじめ(少年画報社)

・遺稿集です。その事実に驚く。死してからはじまった企画のようであちこちで追悼ムードがトゥーマッチなくらいあります。
・その年表によると2006年4月30日に胆管癌により47歳で逝去されております。
・軽く振り返る一生によると、1959年に京都に生まれ、1981年より4コママンガ家として活動されました。
・おれがひのもと氏を知ったのはまさにその4コママンガ時期です。秋田書店でスケ番が主人公の4コマ。ぶんか社でホラーを題材とした4コマを連載され、何冊かのコミックになっております。たぶん、おれは「ひのもとはじめ」名義の商業誌コミック(で、絵本的なものをのぞいたもの)はみんな持ってると思います。

・ある時期より、マンガには見切りをつけて猫人形作家になられたそうで、そんな中で、「ヤングキング別冊キングダム」で連載されていたエッセイコミックが本作のようです。

・おれがひのもと氏にひかれた理由は絵です。トーンレスのフリーハンドの似ている人があまりいなくなお人懐っこい絵。独自の美意識があり、絵を眺めているだけでも楽しかった。まあ、正直、1980年代はいしいひさいち〜植田まさし〜いがらしみきおと4コマの天才がそそり立ってるころでして、それらと比較するなら4コマの完成度でいうとそんなに高くはないですが、絵は図抜けてよかった。そして、本作を読む限り、最初から最後までよかったと思われます。絵本なども描かれていたそうですしね。洗練されたシンプルな線画ではあります。

・ネコと住むようになり、流れ流れてド田舎のログハウスに住むことになった筆者と家族たち(猫犬その他も含む)の日常マンガですね。ネコ観察がメインになるんかな。

・引越しのときに15匹いたそうで、その後どういう入れ替わりがあったのかはよくわかりませんがたくさんのネコがいた模様です。

・最初のほうは、田舎暮らしとして、山菜を採ったら全部毒草だったり、カンでキノコを食べたり、チェンソーで薪ストーブ用の薪を切りながら、ホラー映画のようにチェンソーで美女をメッタ斬りにするのは大変だろうなと思いを馳せたり(チェーンがすぐ外れるそうで)と、田舎ライフを描いたり、行方不明になるネコを大捜索したり、目が見えてないネコなどの、飼っているネコの話だったりします。
・ああ、つまり、マンガ読みにわかりやすい表現をすると「御緩漫玉日記 / 桜玉吉」なんですね。

・そして、いきなり予定が変わり話が変わるのも漫玉日記っぽいか。

・8話目から12話目まで入院するのですね。で、闘病記に入るわけです。これがなにげにすさまじいほどの大病だったりするのです。脳の病気ですからね。

・前記のとおり、これは死因じゃないんですね。カムバックしますから。治りますから。だからこそ闘病記として描くことができるわけですしね。


なんせ
生きている本人が元気に
これを描いている
わけだから
どんでん返し
のような
ハラハラ感が
あるはずもなし


・と、まあ、エッセイコミックのネタバラシのようなモトもコもないようなことを作者が他界したあとに読む複雑さよ。そうなんだよ「どんでん返し」はないわけですよ。「山猫山だより」のつづきはもう読むことができないわけです。そう思うと、この闘病記がまたイヤな意味を帯びたりもしてくるんですよねえ。

・それはそれとして作者や同居人(奥さん)もそうだけど、本書でのネコのカワイサは特筆すべきものがあります。

・そいでもって、この病気が影響し、作者の心境が変わったのか、そういう「よりぬき」編集なのかはよくわかりませんが(後者っぽい)、ネコもその「死」をよく描くようになっていくんですよ。これがかなりズーンときたりする。とくにモモタロウ(って名前のネコ)の話はねえ。

・全体的に明るいトーンの絵なのでその内容とのギャップがあれなんですが、このすべての手法が1980年代というのに全然古くないって感じがとても不思議。あ、SF好きならご存知でしょうかね。横山えいじ氏に通じるものがあるかもしれない。テンポや絵の感じというか効果が似ている気がする。そういわれれば横山氏も秋田書店デビューだよな。

・謹んで氏のご冥福をお祈りさせていただきます。

オススメ
(18:59:21)amazon

「愛ある暮らし」 耕野裕子(宙出版)

・先日発売されたダンナさんであるところの榎本俊二氏の子育てコミックエッセイ「カリスマ育児」が超おもしろかったので、奥さんのソレを読んでみようと思うのは自然なことじゃないか。

参照:
「榎本俊二のカリスマ育児」 榎本俊二(秋田書店)

・ということで奥さんの「漫画家夫婦のおもしろハイパーGAGエッセイ!!」です。

・ということでもうしわけありませんが奥さんのことはなにも知りません。ノリとしては「アナザーサイドオブ」な「カリスマ育児」というか、奥さん視点バージョンというかそういうつもりで買ったし読んだし語るので、耕野裕子氏およびファンの方にはすみませんととりあえず書いておきます。

・お互いに配偶者の方をよく描いてるのがすばらしい夫婦であることをうかがわせます。まあ、双方、粉砂糖のような毒はあり、ややピリリとしますが基本は敬愛されてるのが描画からも伺えます。

・もちろん、コドモにも。

・こう同業者ということで同じ現象を同じタイミングで目にされることがありますが、ミゴトなくらいみているところがちがうのもおもしろいですね。
・つーか、耕野氏はかなりムードメーカーのようで、耕野氏が怒ってる描写は榎本氏の方にありますし、耕野氏のほうにもあるようです。どちらでも榎本氏がおろおろされてます。

・男女差ってのはあるんでしょうかね。榎本氏は、「榎本家Vs外の方々」って図式が多いかも。保育所さがし、病院さがし、PTA役員会、役所などの、渉外をけっこう書いておられるし、生まれるというイベントでのゴタゴタもよく書いてます。

・一方、本作での舞台は家の中が多いですね。榎本氏が何度いわれて便座を下げないとか、長女の世にも変わったバースデープレゼントとか、DNAに騙されて身内はよくみえるとかね。

・本作では長女が3才からはじまり、長男が1歳5ヶ月のあたりまでの、榎本家(もしくは耕野家)の日常エッセイです。あまり子育てワンポイントネタなどはありません。

・全体的なノリはいわゆる少女マンガ家のエッセイコミックに準じてますが、ときおりある間と緩急はやはりダンナゆずりなんでしょうか、様々なギャグテクニックを駆使されてもいます。器用な方なんですね。

・榎本氏も対談や描き下ろし作(カリスマ育児に収録)のほかに結婚式に配ったプライベート原稿を披露されてますし、榎本ファンのおれもかなり楽しむことができましたし、当然のことながら耕野氏のファンにもなってしまいました。

・愛のある家庭だなという最終的な感想です。
(19:58:39)amazon

2007年/1月/18日
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「ハローバイバイ 関暁夫の都市伝説」 VA.(竹書房)

・最近はいわゆる「コンビニコミック」でも独自企画のものがいろいろとあっておもしろいですね。400円のわら半紙(ジャンプとかの紙)でできたコミックです。ただし、「ALL新作で描き下ろし」です。

・芸人ハローバイバイの関氏がテレビ番組「やりすぎコージー」で紹介していた都市伝説をまとめたものを本にしたもののコミカライズという企画モノに企画モノを載せたようなテコンVのようなマンガです。([テコンV - Wikipedia])

・くわしくはしりません。雨上がり決死隊のラジオに関氏がゲスト出演されたのを聞いたことで、本が売れていること、都市伝説ネタ自体は昔からライブで行われていることなどを知りました。

・本作が最大におもしろいのは、全7話で、7人のマンガ家に描いてもらってるんですが、すべての話がつながっているところですね。設定が統一されてますし、設定の更新がちゃんと受け継がれているんですよ。それで、「ALL新作で描き下ろし」ってのがとても変な感じがします。

・あらすじに意味があるのかわかりませんが、たけ書房の受付だったみゆきさんがいつの間にかたけ書房内に設立された都市伝説調査班に入り、謎の調査班室長のスティーブンセキルバーグ氏とほかの仲間といっしょに都市伝説を調査する「てい」で、セキルバーグからの都市伝説を「へー」と感心するって内容。

・んまあ、「MナニR?」ってことなんです。あとセキルバーグ氏のキャップにサングラスといういでたちは超常現象大将のあすかあきお先生をホーフツとさせますし。

[都市伝説 - Google 検索]

・内容は、ネットで拾うことができそうなネタが多いです。
・たとえば、「18」「カシマさん」「スタルパックス」「ワクドナルド」「夢の国」などを上記の「都市伝説」に付け足して検索すると拾いやすいかもしれません。当然のことですが、「スタルパックス」とかはちゃんとした名前のほうが好ましいです。
・まあ、それはそれとしておもしろくはありましたし、「へー」と思うものも多かったです。そして、「知ってるよ」って話もマンガになる等の演出が加えられておりおもしろくなってます。

・まさにコンビニコミックのための企画!といえる面白さと「安さ」です。

・おれが好きだったのは、「企業戦略」の回で、いろいろな有名メーカーとか場所の「実は…」的な話。たとえば、ティラミスがブームになった真相とか、自動販売機のネタがおもしろかったですね。あと、1回分まるまるネタになった「夢の国」の話とか。

・当然のことながら「ムー」的な大きい世界的なニュース、たとえば、911とか、アインシュタインとかまで発展します。

・いずれにせよ、軽く楽しむことができます。

・マンガのほうは無名な方が多いですがそれなりの地力があるのでそれぞれの作画のちがいを気軽に楽しまれるといいですし、ネタバレしませんが、最後の大オチのあと、もう1回読み返す楽しみが増えます。この大オチが1番おもしろかったかな。

・こういう気軽に読むことができ、なおかつ描き下ろしってのは、大昔の貸本時代(知らない。水木しげる氏とか描いていたころですよ)の新しいカタチのようであります。
・今後は1人1冊で長編新作読みきりとかやらないかなと漠然と思ってたり。それだと採算が合わなすぎるから、今回のようなリレー形式で原作モノを何人かで1作として描き継ぐってのもおもしろそうでありますね。

・いうてもコンビニコミックですんで、手に入れるならお早めに。
(19:39:05)amazon

2007年/1月/16日
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「榎本俊二のカリスマ育児」 榎本俊二(秋田書店)

・いきなり引用。


「攻撃的なのか防御的なのか判断不能のギャグを育児エッセイマンガで味わいたいな〜」


・まさにこれ。おれ的にはちょっと前にでた「ムーたち」よりよほど革新的で、比較にならないくらいおもしろかった。どっちかというとおれが榎本マンガに求めてるものは本作のほうに多量に入ってる。

・奥さんの耕野裕子氏も同じマンガ家で、その間に生まれた姉弟の育児を中心とした育児エッセイマンガですね。
・このマンガはダンナ側からの視点としてとってもリアルだと思います。ギャグめかしてますが、これまでのマンガ家が出産時のドタバタで意図的に隠してきたり、忙しさの徒然に忘れかけていることをけっこうバシっと書いてます。

・出産と育児における夫の役割というのは実に微妙。夫の感情のふり幅も実に微妙。当事者であり傍観者であり関係者でありパートナーでありアシスタントであり下僕であり奴隷であり錯乱者であり疲労困憊で臨死体験者であるわけです。

・時間軸がいったりきたりしててわりとまとまりがないのですが、それが逆に、「どの段階においてもコドモの出産および育児ってのは大変。それはダンナも同様」ってことがわかるようになってます。

・1話目は1人目の女の子が生まれてから学校までのドタバタを超ダイジェストで。そして2話目ではコドモが小学校にあがった段階で2人目の妊娠が発覚します。
・そのときに、奥さんはじっとダンナ(榎本氏)をみつめます。すると榎本氏はいいたいことがすべてわかるのですね。
「家事育児学校行事役員腰もみ」と、文字がふきだしからあふれてきてます。

わー考えてるコトが全てわかる!
テレパシーなんて出来なきゃよかった


・そいで実際、たいへんな目に遭うわけです。
・これ、描き下ろし「あとがき」で書いておられましたが、実際、ガキができたとたん、役所と学校と病院には頻繁に出向く運命になってしまうのです。そしてびっくりするくらい楽しくないのです。かなりな確率で不快なものをいただくのです。個人的に、昨今の育児放棄の親が増えたのは、この手の「どうでもいい(けど本当はどうでもよくないしやらないと困るけどどうしてもやることに意味を見出せない書類ワーク他のモロモロ)」ことをたくさんやらなければならないからじゃないかと思ったりもします。

・そこいらのドタバタをわりに男性側からの視点で、なおかつ「エノモト間」とでもいう、独特のテンポで描いておられます。このスピード感は「ムーたち」にはあまりないところですね。そしておれはこのスピード感が大好物ということを「思い出しました」。

・これ、「えの素」にはふんだんにあったんですよね。でも、不思議なことに、こないだの「えの素トリビュート」 榎本俊二とゆかいな人びと(講談社)にはあまり感じられませんでした。やはり連続してるのが大事なんでしょうかね。

・そして、最大に感動というか感心というかグッときたのは、榎本氏のコドモと妻描写の美しいことです。にじみでる愛情が伝わりっぱなしです。それらが内容(怒りや不快やメンドーなど)を完璧に包んでいる状態です。愛の力は偉大ですね。何千回転もして素直にこう書くことができるくらいの感動ですよ。

・あるいは、おれが一応曲がりなりにも育児体験者だからかもしれないです。そういった意味では本書を損してます。
・結婚前、結婚後、妊娠前、妊娠後、出産前、出産後、育児中、育児終了など、いくつもの段階のときに本書はちがった顔をみせると思われるのです。だから、結婚前に読むのが1番ラッキー。その後、状況が変わるたびにちがった感触があるから。何回も楽しむことができます。おれは今度孫ができたときに読み直そうかな。

・ま、それにつけても榎本氏は育児方面でよく働いてると思われます。おれもよく(寝ない子に)「ドライブ攻撃」や「BGM攻撃」をしてみたものです。
・そして、それはそれとして本業のほうもたのみたいとは思うのです。

・あと「お姉ちゃんの日」など、育児に役に立つところも少しはあるので、まえがきで心配されているような、本当の育児書を求めてる方も少しだけはモトを取れるのでいいんじゃないでしょうか。「お姉ちゃんの日」はおれもやっておくべきだったなと思います。

[Amazon.co.jp: 愛ある暮らし: 本: 耕野 裕子]

[Amazon.co.jp: 祝ご出産!―まるごと体験コミック: 本: 宇仁田 ゆみ,佐々江 典子,パンチョ,かわかみ じゅんこ,ひなた みわ,おかざき 真里,亀屋 ちひろ,大倉 かおり,一重 夕子,耕野 裕子]

・妻の耕野氏のほうのホームエッセイコミックも俄然興味がわいてきました。母からも父からもマンガとして描かれるなんて世界中探してもめったにない恵まれたお子様ですよね。

オススメ
(15:00:32)amazon

2007年/1月/13日
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「フライングガール」 2巻 笠辺哲(小学館)

・完結巻。終ってみればちょうどいい感じではあったのかね。
・マッドサイエンティストの博士と、その助手のボインちゃんと、彼女に恋焦がれてるノビ太と他のユカイな仲間が繰り広げられる、「F」な物語。この場合のFは「SF」で「すこしふしぎ」で「藤子F不二雄」のFなどを兼用しております。

・1巻ではいろいろな転び様があったと思われましたが、2巻で終るとのことで、助手とヘタレの恋模様にフォーカスを絞りながら展開していった感じですね。そして、結果としてそれは正解かと。

・本作でけっこうポイントなのは、「実はエロい」ということではないかと。シンプルな描画で、そのもの描写はまったくないのですが、エロいんだよなあ。おれのエロ感受装置にけっこう反応があるよ。へたな「快楽天」掲載のマンガよりエロいような気がする。
・それは磯貝さん(あ、ボインの助手ね)のボインをメインとした描写もそうだけど、山田(ヘタレ)の気持いいくらいのやられっぷり(毎話ケガしてるし、そのケガは話が変わっても継続されている)もエロかったりするんですよね。あらゆる動物にかまれたり、頭をつぶされたり、耳を切り落とされたりね。

・最後の意表をつき、かつ、脱力するオチを全部のオチとするってあたりとてもよかったし、小ネタとして磯貝さんのボインをゆすると「ボイーンボイーン」と音がするってのもよかった。でも、白眉は磯貝さんに一世一代の求愛をする山田のシーンですね。そこらへんから最終回までの構成は本当にすばらしい。

・ということで、作者の次回作も超期待。ただ、本作はほんのちょっと「抜け」がよくなかったような。なんだろう、もうちょっとすっきりしてたほうがよかったのかしら。だからこそ、次回作に超期待ということで。
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「もえちり!」 2巻 堂高しげる(講談社)

・堂々打ち切り完結巻。
・48都道府県の代表の女の子が、次の首都の座をかけて競い合うってテイのギャグマンガですね。

・とにかくたくさんだしておけってギャルゲーのパロディというか、メタファーというか、皮肉というか、そういうので48都道府県を描くという連載1回目で「出オチ」のようなギャグマンガだったので、2巻まで続いたってあたり連載誌の「シリウス」で巻数のつかないギャグマンガコミックがボチボチ発売されている中、健闘されていたのではないかと思うのです。

・48人を取りまわしていたあたりもベテランだなと思いました。結局モブシーンばかりになるのですが、うまく中部とか東北とかのブロックでザックリ分けたり、シチュエーションでトクイなキャラをメインで使ったりのバランス。ソレとは別の見開きでの力技とかも効果的です。ま、おれと感性がちがうのでゲラゲラと笑った箇所はないんですが。

・あと、「妹選手権」ばりの細かいオタクネタも徐々に展開しはじめてきましたね。ま、その矢先に打ち切りなんですが。

・郷土愛というものを思いました。1巻のとき、郷土の富山県代表の「富山茄子」さんというナース服のお方が活躍されてるのがとてもうれしかったんです。なにげに2回も勝ってるし。
・で、サラリと書いてあり知ったのですが、作者は富山県出身なのですね。知らなかった。そうなると、またちがった目でみたり応援したくなるってのが郷土愛なんでしょうかね。

・郷土出身の有名人にはもれなくコナをかける富山のメディアに取り上げられるようにガンバレ!といいたくなったりね。

・あと、イマサラながら、富山という劣悪な環境において「妹選手権」のような濃い内容を展開できたのはすげえなあと。富山は潜在オタクはかなり多い気がするけど、絶望的に環境が悪いですからね。民放3局だし。雑誌とか1日遅れだし。近くに都会ないし。

・次回作も応援したいです。応援できるといいなあと思いつつ。
(19:17:49)amazon

「わにとかげぎす」 2巻 古谷実(講談社)

・あっちゃー。
・と、2巻ではダークサイドが全開になってしまいました。

・32歳警備員。波風立たぬつもりの人生がマンガがはじまったあたりから波風立ちまくりで、2巻ではすでに暴風雨になってしまいました。
・後輩がひそかに恋焦がれていた女から、ヤクザの金庫を奪う計画を持ちかけられる。主人公は受けなかったが、金にめがくらんだ後輩Bはいっしょに受けてしまう。すんなりと金庫は盗めたが…。

・1巻におれはいたく感動して(主人公にかなり感情移入できたから)、奥さんにもみせたのよ。ほんのちょっとの歯車のちがいで、この主人公になっていたにちがいないから。だから、一応2巻読んだあともみせたの。

「読まなければよかった」

・とてもイヤな気持になったそうです。ということはこのマンガ大成功なのです。読まなければよかったけど、読んでしまうだけの力があるってことですしね。

・3巻がどうなる?って興味より、2巻でかきたてられまくった不安を取り除いてもらうためには読むほかの選択肢がないんですね。「地獄に落ちるよ」といわれた細木センセイから墓石を買うようなもんですよ。
・そして、墓石に比べると3巻は少なくとも600円でお釣がきそうなのでとても助かるのです。

・どこかのえらい先生が「高度なギャグマンガ」みたいな評価をなさってましたけど、これがギャグマンガならたいていのマンガはギャグマンガだし、アインシュタインの相対性理論とか、マルクスの資本論もギャグマンガじゃないかなと思ったりします。

・まあ、サイアクにタチが悪いのは、その先生のいったギャグマンガってのはかなり近かったりするんですよね。「この期に及んでコミカル?」って感じの描写をはさみこむからこそ、突然はじまって噴出する不安がすごいんですよ。

・で、最初に読み終えた後思ったのは「またか」と。前作「シガテラ」もこうやって主人公が微妙に巻き込まれてワヤになっていきましたよね。突然なにかが口を開いて足元を待ち受けていたって。

・そして、本作は2巻にしてかなり踏み込んだので、3巻以降ほがらかには進行しねえよなあと思ったのでした。

・でも、前記の理由で読まなければいけないのです。

・あとちょっと思ったのは、古谷マンガにわりと共通してる主人公はたいがいホレている女がいるって設定。たいがいというか全部か。
・その反動というかバツというかしっぺ返しというか、女がいる分、不幸になるって、女性が不幸を呼ぶ象徴になってるんかしらね。
「彼女がいる男は、そのヨロコビが大きいほど不幸にしてやる」ってメッセージとか。
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2007年/1月/8日
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「〜萌えろ!杜の宮高校マンガ研究部〜辣菲の皮」 5巻 阿部川キネコ(ワニブックス)

・オタク4コマも5巻になり、かなり大河ドラマの様相を帯びてきている。
・高校のマンガ研究部のメンバーが卒業するにあたっての身の割り振りを考えているサマをじっくりと描写しております。4コマならではのデフォルメはあります。
・5巻では、メガネ+金持ち+ドジっ子+おっとりという、外見上のキャラだけでマンガ研究部に引き入れられたコが耽美小説の才能を認められメジャーデビューすることを軸に、考えている人はその方向に向かい精進します。ヘタレでオタクをカミングアウトすることもままならぬへなへなの主人公はそれにかなりうろたえます。

・ま、まわりに逸材しかいないという点ではいかにもマンガ的でありますが、その身のなりふりや覚悟っぷり、そして努力しているサマはなんだかとてもリアルです。実際問題、「模範的」すぎるんでしょうけど、それでいえば「げんしけん」も同等にファンタジーですし、非リアルですからね。「げんしけん」初回オマケ同人誌で何人かがツッコミいれておられましたけど、あんな「いいひと」ばかりはいないよな。もっと陰湿に足をひっぱりあったりのドロドロのヌトヌトですよね。

・でも、本作はその「いいひと」ぶりや「マジメ」ぶりが、かなりストレートに感動につながるのです。

・たとえば、文芸部のショート+メガネ+SF好きのボク女である塩釜女史は、前記のメジャーデビューをホメつつも自分もSF専門誌のコンテストに応募しては落選している。そのことに静かに落ち込んだりする。
・たとえば、主人公のヘタレはまわりの考えてるぶりに心動かされつつもなにもできてない自分に落ち込みかけますが、そのときに全てのオタクのカガミのような万能オタクの泉センパイに「焦るな」と励まされるのです。

・ストレートにジーンとくるんですよね。妙なことに。

・そんななのに5巻は、いわゆる腐女子ネタがドカドカドカンと満載だったりもする濃密さ。「女子化」とか感心しました。そういやみたことあるなと。

・ということで、すごくいいマンガになってるのは本意なのかどうか。7巻で終るそうですが、「*巻で終る」とかあとがきで予告してるのってすげえオタクくせえなということに気がつきました。

オススメ
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「危機之介御免」 1巻 富沢義彦&海堂博行(講談社)

・加えて、原案は世界のOTOMOこと大友克洋氏です。

・時代劇です。江戸時代。ただし、ネットがあり、ひきこもりがいて、合コンがある、現代の「システム」が江戸風になってるスチームパンクな風情です。

・たとえば「茶塔」というのがあります。部屋の中にいくつもの小さな塔があります。塔にはいくつかの入り口があり、入り口は暗がりになっており誰がいるかわかりません。そして、真ん中にスペースがあり、そこに手元のメモに書いた文章を置くことで、その場にいる顔のみえない何人かと筆談ができるのです。
・そう、「茶塔」「ちゃとう」「チャット」ってことです。

・ほかにも、名前しか書きませんが「つぼ六」「参来巣屋」に、きわめつけば「八報」。

「その危機俺が引き受けた」というコトバとともに危機に顔を出して解決する富士見喜亀之介の活躍を描いたものが本編です。

・もう1巻だからか知らんけど、このスチームパンクなヘンテコな世界描写だけでおなかいっぱいです。デザートにアクションとかカワイイ女子とかあるくらいで。

・主人公のカッコマンっぷり、剣の達人の相方や、絵師を目指す娘などの仲間な感じは「ルパン三世」とか「カウボーイビバップ」を連想し、それの時代劇版って見方もできますし、主人公の歌舞伎っぷりは、高島政宏版の「桃太郎侍」をホーフツとしたりね。

・このムリがあるような原作をシャープな描画でビシっとまとめておられるところも好感。女子がカワイイところも好感。

・ただ、やや話が「モッチャリ」してるのがアレかな。悪人も「殺さない」ってのを信条としてるマンガのようで、絵の迫力は十分だけど、カタルシスがやや足りないのと、前記の「現代→江戸化」の説明に手間取るのが要因かしら。

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・江戸時代にネットというアイディアは本作のほうが前ですし、実際に江戸の空に「ネット=網」が張り巡らされてるというビジュアルもこっちのほうが上ですね。

・ま、別モノですけどね。

・2巻も期待してます。
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「バンブーブレード BAMBOO BLADE」 4巻 土塚理弘&五十嵐あぐり(スクウエアエニックス)

・女性ばかりの剣道マンガ。超健全(オビより)。

・4巻にして団体戦のメンバーがコンプ。この5人目もまたスゴイ。こう、各メンバーが革新的ともいえるくらい「お約束」をスカしてるのがわりに真骨頂なのかもしれないな。
・ソレは別に現実に近いとうことではなく、マンガ内のキャラ成分を一端バラバラにほぐして、それを絶妙に組替えてるんですね。なかには相性が悪いものもありますが、それを1人のキャラとして納める手際はすばらしい。

・それらを紹介すること自体がネタバレになるんですが、主人公のタマちゃんは、オタクでオットリしてるのに剣道の達人でチビッコで幼い。そして主人公なのにもうすでに敵が1人もいない。

・そう本作、剣道マンガです。で、4巻では単行本1冊の中で試合シーンが7pしかありません。「アストロ球団」は全20巻で3試合しかしてません。そして内容の9割が試合シーンです。でも、これがどっちかというと正しいスポーツマンガの割合です。

・それでいて、練習シーンが長いということもありません。あらためて思うのです。「不思議なマンガだなあ」と。

・だいたいが、なんで、試合やら練習がないのかというと、そもそも女性がたくさん登場するマンガというのに、剣道だからですよ。面を被ると誰がだれやらわからないじゃないですか。
・で、あらすじを人に説明することがとても難しいのです(というか正確にはあらすじを語る意味がない)。ところが、逆に、各キャラクターを説明するのが楽しくてしょうがないというマンガなのですね。

・ものすごい推測ですが、多分に、原作の方が「今までとちがうことやってやれ」と、読者のイヒョーをつくのが好きな作風なんじゃないかと。それがかなりうまくかみ合って、いうたらなんだけど、原作者も作画者も思った以上のモノになったってかなりミラクルがあったような気がするのですよ。

・わりとポーッとしている主人公のタマちゃんの4巻での飛び切りの笑顔は大好きなアニメ監督の話をしてるところですからねえ。タマちゃんがまた何回転かしてカワイイ。

・そして新キャラが! 上記のイヒョーをつく「お約束」外しの究極のカタチともいえるようなギガモンスターです。この部品の組み上げはただただすごい。かつてみたことないキャラだ。それでいてまだまだ未知数で、活躍してくれそうでさらにすごい。

・ということで、カワイくも画期的な女子が多数登場する変わった学園マンガとして燦然と輝いているのです。
オススメ
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2007年/1月/7日
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「ムーたち」 1巻 榎本俊二(講談社)

・あーこんなんか。
・歴史に残る名作「ゴールデンラッキー」と「えの素」のあとの榎本氏の新作を読んだ最初の感想はこれ。

「難しいギャグマンガ」です。

・少年「ムー」と、その両親やユカイな仲間が織り成すほのぼのはあまりしてないホームギャグマンガです。

・ちょっとわかる人にわかる表現をするなら、エロとグロとバイオレンスを抜いた「えの素」で「ゴールデンラッキー」です。
「ネ暗トピア」の次の「BUGがでる」を書いたいがらしみきお氏のパターンにも近いか。

・ま、ちょっとガマンできずにエロとグロが入るところはご愛嬌ですが、控え目です。「えの素」では大活躍だったウンコは登場しませんしね。

・そして、思った。エロとグロとバイオレンスを抜くとあまり笑えないよなあと。これは本作でも避けて通ることができなかったな。逆を返すと、エロとグロとバイオレンスは笑えるんですね。それを抜いてギャグを成立させようとするとても志が高いマンガであることはわかります。

・ますます絵のキレ味は増し、もはや、1コマ1コマがイラストになりそうなクオリティ。相変わらず動きがある人物。その決定的ストップモーション。ディティール。くわえて多彩な描画法も模索されてます。
「ムーたち」というタイトルのわりにお父さんがメインで活躍されるあたり、講談社ギャグの金字塔である「天才バカボン」っぽかったりもします。

・ということで、「すごい」はたくさんあります。その中からおもしろみやおかしみは汲み取ることができます。上質で難解なマンガです。
・ただ、重要な問題として笑えません。惜しいのはありましたけど笑うまでに至りませんでした。そこが残念なようなナットクなような。

・影響を与えるためのマンガです。影響を受けたい人は読むといいです。たくさんの「!」を手に入れられることでしょう。おれは今は笑うほうが重要です。だから1行目の感想。
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「げんしけん」 9巻 木尾士目(講談社)

・完結。まだ限定版は手に入るようですね。オマケ同人誌の石田敦子氏の「もってり」という歴史に残るかもしれない言葉は要チェック。

・さて、おたくサークルを描いたキャンパスライフは、主人公(というか読者の「眼」担当)の笹原の卒業までで完結となりました。

・本作、途中で2回くらい、そのパラメータというか、軽いシフトチェンジが行われたような気がする。もうしわけない。読み返してないので「気がする」ということにしてください。

・これまたあやふやでもうしわけないですが、木尾士目先生はその作品群において「リアリティ」を重視されているように思われます。「四年生」「五年生」から、「げんしけん」へと、その「リアリティ」の質的変換が行われ、さらに「げんしけん」中でも変化していったような気がするんですよね。

・それまでの作品から「げんしけん」初期のころは、その「リアリティ」が現実っぽいディティールということにあった気がします。「こんな人いそう」とか「こんなこといいそう」「ここが細かい」とか。
・それは「現実」と地続きでのリアルです。わかりづらい文章ですね。つまり、現実にいる**や作者をモデルとしてマンガ化されたマンガといいますかね。そういうどこかちょっといいかた悪いけど「モデル元」を知ってる方が1番楽しむことができるどこか「内輪」な感じがしました。実際、TAGRO氏によると大学描写は「まんま」だそうですが(中央大学だっけか)。

・それが、少しづつ変わってきた。うーん、キャラをマンガ寄りにしたというかね。それも微妙に、かなり計画的というか意図的にズラしてきたような気がしたんだわ。ま、何度も書きますが、ちゃんと読み込んでませんので「気がした」だけなんですけどね。ここいら、当サイトがメジャーになれないところだわな。はは。

・で、微妙な表現ですが、そのマンガ寄りがどんどん加速がついて、「現実」と地続きじゃなくなったのが5巻あたりからじゃないかと思われるんですよね。各登場人物が「キャラ」になっていくのです。

・その証拠として6巻から限定版に「同人誌」がつくようになったのですね。いじることができるキャラとして認知されだしたわけです。

・で、実は、1番の「キャラ」ってのは、笹原の妹じゃないか。彼女はいい意味でも悪い意味でもリアリティがなくて浮いている。各人が背負ってる生きることの業のようなものをまったく感じさせない。完全にモデルがいないような気が。

・ま、重要なのはまちがいなく荻上のほうですけど、彼女も徐々にキャラになっていった気がします。ただ、8巻あたりでもうそうでしたが、いきすぎたし、変わりすぎた気がしないでもないです。作者自身もキャラで遊びはじめたというか。

・最初と最後ではかなりノリがちがったマンガではありますね。極端にたとえるなら、間を90巻くらいとばした「こち亀」みたいな感じかな。
・で、いずれにせよおもしろかったなということでまとめればいいんだなと。

・作者の次回作はどうなるんだろうか。
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2007年/1月/3日
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「昭和の中坊」 2巻 末田雄一郎&吉本浩二(双葉社)

・1978年を舞台としたエロ中学生男子のエログラフティ。
・オビのコピーが秀逸で、「エロなつかしい」ってのは、当初の「エロかっこいい」よりよほど意味のあるような気がします。エロとなつかしいってのは連動しやすいような気がするんですよね。

・2巻での大きなポイント。九州から転校してきた肥後クンというモテない田舎の九州男児と、主人公「ニゴシ」がオジの家である富山に遊びにいく話。つまり、田舎のエロ中学生話があることですね。

・ナンシー関氏と町田広美氏の対談本でもあり、とても印象が深いのでよく覚えているのですが、東京生まれで東京育ちってのはそれだけで人生のシード校なんですよね。どのような立場の人であれ、かなりのアドバンテージを持ってるのですね。それに気づくか気づかないか利用するかしないかというのはありますが、絶対に有利なことは数多くあります。
・それは、1978年のモテない男子中学生もシカリなんですね。
・たとえば、九州からきた肥後クンが高いエロ本を持ってることや、小学生のころまで川では男子も女子も上半身ハダカで遊んでいたりすることを東京の中坊はうらやましがってましたが、どう考えても、東京のほうがエロに接する機会が多いんですよね。そりゃあピンキリではありますが、ピンでもキリでも選択肢が豊富ってことです。富山県はこれまでもこれからもソープランドが0軒の県なんです。

・ということで、まちがいなくその時代を生きてるおれですが、情報が豊富で選択肢が豊富な1978年の東京の中坊話には「へー」と感心することが多いのですよ。

・2巻での最大の感心は、「おかっぱ」ですね。親切なのでネタバレしつつ書いてしまう。
・昔のエロ本のモデルには「オカッパ」が多い。だから、主人公たちは「オカッパの女はエロいんじゃないか?」と、オカッパの同級生をストーキングして不審者扱いされるという話があります。だけど、これにはちゃんとしたワケがあるそうで、当時の(今もか?)エロ本のモデルは身内バレとかを恐れ、カツラをかぶって変装してるそうです。そのさいにはオカッパがかぶるだけで生え際のアラとかバレにくくて都合がいいってことだそうです。

・あと、トラックの基地にエロ本が落ちてる。駅前の「悪書追放」のポストからエロ本を取る。無修正のエロ本をみたいばかりに持ってるやつの奴隷になる等、相変わらずエロに支配されている、カガミをみているかのような中学生ライフが繰り広げられています。

・そういうこととは別に、富山の知ってるところが登場したり、バリバリの「ちゃんとした」富山弁が登場するのはおもしろいのです。なぜならおれは富山県人だからです。そして、あとがきマンガによると、作画の人も富山県人だそうです。こういうことでいきなり親近感が増すのは富山県人の悪いクセです。地方の人はたいがいそうでしょうが。

・1巻同様、いい意味でも悪い意味でも垢抜けない泥臭い画風も内容によくフィットしている。

・ということで、ちょっとひいきの度合いを上げようかと思いました。ますます好調の2巻ということで。
(18:17:24)amazon


・[ケージバン]