「三半規管の鍛え方」

 
クラスも顔ぶれが固定してくるようになると、先生は”おいおい、そいつはちょっとヘビイなんでないかい”と思うような高度な振り付けを結構平気で(!)コンビネーションに入れるようになる。特に私が苦手としているのはフルバックとターン。特にターンには毎度毎度苦しめられている。

 脳と運動神経のバイパスがスムーズなら、別段深く考えなくたって出来ると思うが、何しろ私の体ってばほら「断線」してますからね。「体を回せ」ていうのと「ステップを順番通りに踏め」という二つの命令が、脳から神経を伝ってえっちらおっちら筋肉に伝えに行く間にそれこそ「交差点で出会い頭に衝突して渋滞立ち往生」とかいう感じに、ターンの途中で体が固まって止まっちゃう。でも固まっていても出来るようにはならないから、何とか力を振り絞り、
”うおお、これじゃあいかん、無心じゃ無心じゃ修行じゃああああ!”と、調子に乗って何回もくるくる回ってると・・・おいでなさるのです、「ビッグウエイブ」が。

 ターンで目を回さないコツは、正面を向いて立っている状態で回転しながら、出来る限り顔を正面に残せばいい。そうすると視点が動かないから目を回しにくい。でもバレエなどでターンの訓練を積んでいない人間は、体をくるっと一回転させることに一生懸命になるあまりに、”顔を正面に残す”という作業を忘れる。そうすると視点も一緒に回転することとなり、人間の三半規管は”え?私って今真っ直ぐ前見てるんじゃなかったの?え?違う?何々?良く分からないわ”となって、これが目を回している状態な訳だ。故に私はレッスンの合間に幾度となく”うえっ”とリバースモードになって、鏡にへばりついていたずらに指紋を残すことを繰り返すことになる。

 そんなことをやっていたある日のレッスン中におケイコ仲間のYちゃんが、「〜逆にまわっとかないと逆に!!」とか言うのだが、そんなマジなんだかジョーダンなんだかよく分かんないアドバイスをするのだが、私は私でこの何とも言えないキモチワルサから早急に逃れられるのならと、
「おお、そうか!」と思わず逆に回ってみて、結局はますます気持ち悪くなって床にへばりつく羽目になるという、なんとも頭の悪そうなコトをやっているのだった。

 ところで”逆に回る”というのは、果たして科学的根拠はあるんだろうか。特命リサーチとかで特集して解明して欲しいもんだ。まあ、気持ち悪さ倍増してる位だったらまずないとは思うけどね・・・。



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