ラパス

(バハ・カリフォルニア)

ダイビング・ログ前編


DSは「バハ・クエスト」
ラパスで唯一である日本人オーナー伊藤玄さんのショップ。
ガロタ号、ドンカノ号、マスカリーノ号など大小6隻のボートを保有、なかでも2日目に乗ったクルーズ船は超快適!
そして何よりも私が好きなのは、アイスボックスの中の、キューンと冷えたセルベッサ(ビール)!!
ラパスでの1日は船旅に始まり、船旅に終わる。
ポイントまで、2時間から3時間の少々長いクルーズとなるんだけど、その帰り道、照り付ける低緯度の太陽と乾燥した潮風に当たりながらのビールはサイコー!!
小さく船足の速いボートに追い抜かれても、全然悔しくない、快適度。


それでは!
バハ・カリフォルニア全11本のログを大公開。

9月3日
#1 サルバティエラ
[52分/最大水深18.9b/透明度10b/水温29℃]
#2 スワニーリーフ
[50分/最大水深10.3b/透明度10b/水温30℃]


しっかし遅ぇ船だなぁ・・
これが第1印象。
他サービスの船や、大型のクルーズ船にすら抜かれまくる。
30分経過しても港を出きれない。
と、先ほどの「超快適」とはまったく違うことをいってますが、この日の船はホントに遅すぎ。
それもそのはず、エンジンが1個イカれてて、片方のスクリューしか回ってないらしい。
そのため、真っ直ぐ進まないので、蛇行しながらエル・バホへと向かう。
「エル・バホは無理ですね。すいませんけど、今日は近場で潜ります」
やっぱり・・

というわけで初日からトラブルに見舞われ、空がいまいち晴れていない、8月半ばに降った大雨のせいで今年は透明度が悪い、といったことも「ああ、今回もダイビング雑誌の記事に躍らされた・・」なんて思ったりして。

サルバティエラは沈船スポットだが、一風変わってる。
スワニーリーフ(2本目に潜るポイント)で座礁した全長約60mの巨大な船は原形をとどめていない。
白い砂地に、沈船の残骸と、積み荷だったトラックの車輪や鉄骨が2つのポイントにわたって、めちゃくちゃに散らばっている。
これが、漁礁となり、多くの固有種を育てているわけだ。
で、多くの固有種より更に多かったのがクラゲやプランクトンの類。
眼の焦点をすぐ近くに合わせると、いろんな形のがウヨウヨ。
これが「豊穣」な海の正体だったのね…
考えてみればマンタもジンベエもこれ食ってんだもんなー
と、自分を納得させ、手足や顔面のチクチクを我慢する。

しかしサカナがでかい。
ガーデンイールは蒲焼きにする鰻ぐらい、カエルウオなんかも子供の腕くらい(黒人のチ●●くらい…?)はある。
コルテスエンジェルフィッシュやキングエンジェルフィッシュも日本の一般的な家庭のまな板からはみ出すくらいはあるだろう。
食べる気しないけど。

  

↑左から極太ガーデンイール、コルテスエジェルフィッシュ、キングエンジェルフィッシュ。


コルテス海にはジャイアントホークフィッシュといって、世界最大のゴンベがいる。
これに限らずゴンベ類は豊富で、ロングノーズホークフィッシュ(クダゴンベ)なんかもウジャウジャしてた。
クダゴンベには忌まわしい思い出があって(モルディブの沈船スポット「クダ・ギリ」参照)、思わずビデオの動作確認をしたくらいだ。
しかし日本ではゴンベってイモ臭い名前で呼ばれて、こっちではホーク(鷹)フィッシュって呼ばれんだから、彼等的にはこっちに住みたいんだろうなー、やっぱし。
それをいうなら、ヤッコかエンジェルフィッシュっていったら、天使の方が間違いなくいい。
でも、ちょっと天使って呼ばれんのはウザイからって気概のある奴だけが日本に流れ着く、ということだなきっと。
ああ、くだらない。
でも、チョウチョウウオとバタフライフィッシュはおんなじだね。
何でかな?

あと固有種で目に付いたのは、メキシカンフォグフィッシュ。
このメスがブラックバスそっくり。

 ブラックバス発見!


透明度の悪さ、トラックの残骸、それにブラックバスで沼か湖に潜っている気持ち悪さがだった。(実際、淡水で潜ったことはありませんが…)
というわけで、初日はちょっとがっかりで、チクチクな1日でした。

さて、ダイビングから戻ったらお楽しみがもうひとつ。
意外と口に合うメキシコ料理を食べ歩く。
ラパスは南バハ・カリフォルニア州の州都なので、純粋なリゾートではないけど、ここはメキシコ、異国情緒たっぷり。
「平和」という意味を持つ街の名のとおり、治安はかなりいいらしい。
暗くなってから出歩いても、全然大丈夫。
ただ、日没は20時頃と遅いため、ダイビングから戻ってきてもまだ明るいくらいだ。
疲れと時差寝不足のためか少しのビールで酔いが回り、ラパスの夜は更けていく。



9月4日
#3 ラ・レイーナ
[48分/最大水深16.7b/透明度20b/水温30℃]
#4 ラ・レイーナ
[47分/最大水深13.7b/透明度20b/水温30℃]

船に乗ったらまず、挽肉を炒めたものにサルサソースをたっぷりかけてトルティーヤに包み、ほおばる。
バハ・クエスト流の朝メシだ。

「いつもはクルーズに使う」船でラ・レイーナへむかう。
広いデッキに清潔なキャビン、ダイニング、安定した船足。
どれをとっても快適そのもの。

目に入るのは砂漠と剥き出しの地層、そしてサボテンだけ。
海から見るバハ・カリフォルニアの大地は豪快でワイルドだ。

と、右手に白い島が見えてきた。
近づくと他の島と変わらない赤茶けた岩だが、上が真っ白になっていて、雪化粧したよう。
綺麗だ。
「あれはウンコですね。」
はぁ?
「ウンコですよ、ウンコ。グンカンドリのウンコ。」
……そうか、ウンコまでワイルドだ。

2時間ほどの船旅を経て、潜水艦の艦橋が海に突き出たような小さい島が見えてきた。
白い灯台のあるあの島がラ・レイーナだ。

オウッオウッ。
ん?
オウッオウッ。
オウッオウッ。

あああ・・アシカだ!!!

10頭ばかりのアシカと、2、3羽のカッショクペリカンが島の周りにたむろしている。
上向いて大騒ぎする奴、海に飛び込んで遊ぶ奴、フテ寝を決め込む奴…。
暗い海での道標となる、この小さい灯台島のもうひとつの側面が、ハーレムを追われた若い雄アシカたちの溜まり場だ。


エントリーすると思ったりより流れがあり、透明度も良い。
魚影も濃い。
と、目の前を見たことのない生物が通り過ぎる。
背ビレから尻尾にかけての下半身(?)のないアオヤガラだ。
当然必死に腰を振ってもわずかしか進まない。
後ろ半分はアシカにでも喰いちぎられたのだろうか?
どこかで食べた「ヤガラの刺し身」の淡白で上品な味を思い出す。
アシカ君もいいもん食ってんなぁ。
ちなみにアオヤガラはcornet(管楽器のコルネット)fishで、ヘラヤガラtrumpet(言わずと知れたトランペット)fish。
これは英名の方がカッコよく感じるけど、和名の方が「名は体をあらわ」してる気がする。



  

下半身のないアオヤガラ




しばらく中層を流すと大型生物の気配。
いました!
腹の一部だけが白いセミ・ブラック(?)マンタ!
心臓ポンプが出力最高となり、身体中の血がものすごいスピードで駆け巡っていくのが解る。
真近で見ようとみんなを振り切って接近を試みるも、マンタ様との距離は縮まらない。
ああ、行かないで・・
願いが通じたのか、初めっからそのコースを泳ぐ予定だったのか、セミ・ブラック様は大きな弧を描いてターンをし、我々の方へ向かってきた。


セミ・ブラック(?)マンタ様


上にふたつの「逆さコバンザメ」をくっつけ、ガンキャノン(古い・・)のよう。
憧れのマンタとの超接近に大満足。
我々の周りで2、3回転したのち、また青の彼方へと悠然と消えていく。

ドボン!
おもむろに大きな石を投げ込んだような音がした。
右後方から左斜め下へと、視界の端から端へ茶色い「丸太」然とした物体が通り過ぎる。
アシカだ!
陸上でのそのダラダラした姿とはまったく違う、機敏な動作。
水族館で、水中のアシカを見たことのある人ならわかるはず。
3メート先でクルっと反転して、チラチラこちらを見ながらツーと横移動。
と、眼が合った瞬間、こっちに向かってくる。
きた、きた!
興味はどうやらビデオカメラのよう。
グッとビデオカメラの真ん前まで寄って急にコース変更、通り過ぎていく。

こんな事を繰り返ながらアシカを追ってると、今度は真っ白な物体が視界に入る。
腹の白い大型マンタ様だ。
迷わずレンズをそちらに向けると、アシカがすねたように帰っていった。
アシカとマンタがかわるがわる遊んでくれるなんて、凄い海だ。

エキジットして、スイカをほおばる。
オウッオウッ。
海に投げると、アジ系のサカナがスイカに群がる。
オウッオウッ。
カメラを水中に入れて、その様を撮影する。
オウッオウッ。
何をやっても聞こえてくるこの鳴き声。
オウッオウッ。
あのぅ・・シュノーケリングしてきてもいいですか?
オウッオウッ。
「ああ、どうぞ。でも、潮がちょっと流れてるんで気をつけてください。
それから、島は上陸禁止ですから。」
聞き終わるか終わらないかのうちに、みんなそれぞれビデオやカメラを持って海に飛び込む。



オウッオウッ!


シュノーケリングでアシカとのランデブー。
息が上がるまで、水中で一緒に泳いだり、クルクル横回転したり、前回りしたり…
アシカも息継ぎしたり、水中で鼻から空気出したりと、可愛らしい。
陸上で言えば、犬と遊んでいるようだ。
気が付くとみんな船に戻って、次の支度をしている。
ダッシュで戻る道すがら、マンタが横を通り過ぎる。
シュノーケリングでマンタだって。
凄すぎる…。

2本目、エントリーするといきなりさっきの大マンタが現れた。
私の真上をゆったりと通る。
真下からの見上げるアングルで撮影。
と、別の方向からイトマキの部分がドリル状にまかれた中型マンタが近づいてきた。
あまりにも近くにくるもんだから、仕方なく(?)タッチしてしまった。
ざらざらした、鮫肌だ。


イトマキエイ科オニイトマキエイのドリル君

遠ざかるドリル君を見送ってると左側に殺気を感じる。
さっき遊んだ若いオスよりも2回りほどでかく、おでこの突っ張ったオスアシカが威嚇してきた。
大人のオスには近寄らない方がいいらしい。

第4のマンタ様が現れた辺りから、流れが出てきた。
それも、かなり強い流れだ。
船の下へ戻り、アンカーロープにつかまって安全停止するが、鯉ノボリ状態。
脇では流れに逆らって泳いでいるが実際にはほとんど前に進んでいないマンタ様。

アシカに、マンタに、大満足のラ・レイーナであった。

帰りはメキシカンな昼食をほおばりながら、ビールを浴び(る程飲み)ながら2時間ほどのクルージングだ。
で、ここで終わらないのがバハ・カリフォルニアの凄いところ。

でました。
ゴンドウクジラの群れ!
ブシュゥ!と音がして背ビレがひとつ、ふたつと現れる。
彼等が潜るころ、また別のところで黒光りした背中がブシュゥ!
エンジンを止めて、惰性で近寄るのが賢い方法。
舳先に座って、ほぼ真上まで来ると、ホントにデカい。
十数頭の群れで、みんなで何回か潮吹きした後、深い海へと潜っていった。


ゴンドウクジラ




ログ・後編へ