第51回全日本吹奏楽コンクール
平成15年11月2日(日)/普門館

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高校・前半の部

1
関西 奈良県 天理高等学校 (指揮/新子菊雄) ※2年連続31回目
金賞

4/3つの交響的素描「海」より III. 風と海との対話 (C.ドビュッシー/上埜孝)

大変よくまとまったオープニングでした。最初の音の飛び、Tuttiの素晴らしさは秀逸で、何よりも音楽の流れが良いですね。特にトリオのクラリネットは素晴らしいですし後半からの躍動感・ドライブ感の高まりは絶品。朝一番からこのようなマーチを演奏されては文句のつけようがないというのが正直な感想です。自由曲では、雄大で堂々たる低音群に始まり、大きな流れ、音のうねりを大切した素晴らしい「海」でしたし、強奏時も弱奏時も音楽に息吹を感じます。Trpソロも美しく安定しており立派!! 各セクションのブレンドが見事であり終曲も感動的でした。朝一番なんて関係なく、王者・天理の実力の高さがそのまま表れた名演で、2年連続20回目の金賞です。新子先生は「出れば金賞」を更新しました。


2
中国 広島県 鈴峯女子高等学校 (指揮/宇根岡俊二) ※お休み明け5回目
銅賞

1/歌劇「ミニヨン」序曲 (A.トマ/宇根岡俊二)

Trpソロは素朴な感じで上手でした。柔らかく透明感のあるサウンドでたっぷりと歌いこまれた序奏になりました。自由曲でもCl、Flのソロが美しく秀逸でした。課題曲同様、透明感のあるサウンドに加え、木管セクションの速いパッセージも見事に合っているし非常に良い演奏だったと思います。木管セクション、ブラボー!私が今までにきいた鈴峯女子の演奏の中では一番良い演奏だと思いました。銅賞というのはちょっと酷だなぁ…。

3
東関東 千葉県 銚子市立銚子高等学校 (指揮/佐藤 博) ※初出場
銀賞

1/「青い水平線」より II . リヴァイアサン アゲインスト クラーケン、 III . ブルーホエール (F.チェザリーニ)

堂々たるTrpソロ。良い音で響いていました! 良くアナリーゼされ構成のしっかりした演奏です。若干、音が直線的すぎる感もありますが爽やかなサウンドをしています。自由曲でも、おおらかで変化に富み、色彩豊かな好演だったと思います。独自の世界を表現していてとても初出場とは思えません。東関東支部の層の厚さを感じました。

4
東京 東京都 駒澤大学高等学校 (指揮/吉野信行) ※3年ぶり8回目
金賞

4/コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディー (P.ウィリアムズ)

明るい輪郭のはっきりしたサウンドで躍動感のあるマーチでした。課題曲ではスネアドラム、バスドラム、シンバルのリズムセクションが舞台上手後方(チューバ、コントラバスの後方)にセットされており驚きましたが、打楽器と低音群のアンサンブルが成功していたので、その結果行進曲としても成功につながったと思います。後半は打楽器がちょっとハリキリすぎでバランスを欠いていたのが惜しまれます。自由曲では更にパワーが弾けましたね!JAZZYな雰囲気も上手く表現できていたと思います。ビブラフォンのソロもなかなか聞かせてくれましたし、Sax5人が舞台前方に出てきて横並びで披露したクールなアンサンブルは秀逸でした。良く曲を研究され「演奏技術」に加えて「魅せる」ことを追求した良い演奏だったと思います。3年ぶりの復活を2回目の金賞で飾りました。

5
東海 長野県 長野県長野高等学校 (指揮/松井深之) ※初出場
銅賞

4/歌劇「トスカ」第3幕より (G.プッチーニ/飯島俊成)

明るくよく鳴っていました。中音域(Hr、Euph)の音がバンドの中に埋もれてしまい飛んでこなかったように思います。トリオの木管はまとまりが今ひとつ。曲が進むにつれバンド全体のもつリズムが重くなっていくようでした。トスカは冒頭のホルンが頑張りましたが、ピッチの甘さ、アインザッツのズレがあったのが残念。音が薄くなる部分は不安定で、音楽が停滞した感があります。逆にTuttiでの荒さも目立ちましたしサウンドのまとまりに欠け、全体としては大味な印象を受けました。

6
北陸 富山県 富山県立富山商業高等学校 (指揮/鍛治伸也) ※2年連続27回目
銀賞

4/「翠風の光」より 第1・3・4楽章 (長生淳)

安全運転気味のオープニングではありましたが無難にまとめましたね。若々しいエネルギーに満ち溢れたマーチでしたが、ところどころにツメの甘さが見えます。自由曲は難しい邦人作品の構成を個々の奏者が理解し、よく演奏されていたと思います。バンドの持つパワーは十分にあるのですが、Tuttiでのバランスが悪く、更には繊細な部分での充実を望みたいと思いました。

7
東関東 神奈川県 横浜創英高等学校 (指揮/常光誠治) ※4年ぶり2回目
銀賞

4/バレエ音楽「青銅の騎士」より
元老院前広場にて、広場での踊り、踊りの風景、偉大なる都市への讃歌 (R.グリエール/仲田 守)

明るく柔らかで豊かなサウンドをもったバンドでした。オープニングもキレイに揃っていますし、マーチでの流れも良かったと思います。少々平坦な演奏になってしまい、メリハリ感に乏しい印象が残りました。自由曲では持ち前の明るく豊かなサウンドが「青銅の騎士」にはよく合っており、この曲をより魅力的にしていました。緩急の付け方が絶妙で、今となっては有名なこの曲を飽きさせずに聞かせていましたし、「偉大なる都市への讃歌」では非常に豊かなサウンドで感動的な仕上がりになっていました。金賞には届きませんでしたが、銀賞の中でも印象に残るバンドでした。

8
九州 福岡県 精華女子高等学校 (指揮/藤重佳久) ※2年ぶり10回目
銀賞

4/「ダンス・ムーヴメント」より (P.スパーク)

シャープで安定感のあるマーチです。かつての精華女子の「パワフルバンド」という印象は全く無く、適度に抑制された美しいサウンドを響かせていました。躍動感・ドライブ感もよく出ており、特にSax群が良い音で響いていたので、聞きなれた「ベストフレンド」が新鮮に聞こえました。自由曲では難しい曲をよく練習してあるなと素直に感じました。各ソロも大変良い音で響かせおり秀逸。各セクションの歯車がきっちりと合い、合奏体としては素晴らしい一体感があります。速い部分のテクニカルな部分だけでなく、緩やかな部分での歌いこみも十分でした。個人的には金賞でも十分と思いました。

9
北海道 札幌地区 北海道札幌白石高等学校 (指揮/渋川誠人) ※3年連続17回目
金賞

3/「ミス・サイゴン」より (C.M.シェーンベルク/A.ブーブリル)

温かみのある懐の深いサウンドとでも表現すべきでしょうか。課題曲では最初、低音がちょっと荒いかなと思いましたが徐々に良くなっていき安心しました。非常に良く鳴るバンドで強奏時が多少荒い気もしますが、ビート感のある爽やかなマーチになりました。ピッコロソロも秀逸。自由曲は昨年の埼玉栄高とはまったく違う部分の選曲(もちろん編曲も)です。ヘリコプターの音から劇的に始まりました。強奏でのTuttiが少々荒く(耳に痛く)聞こえたのが残念でしたが、mp〜mfあたりのサウンドは大変柔らかく豊かですね。木管セクションの表現力の高さ、フリューゲルホルンとフルートのデュエットも美しく素晴らしかったです。3年目を渋川先生としては初の金賞受賞で飾りました。

10
東北 福島県 福島県立平商業高等学校 (指揮/橋本葉司) ※初出場
銅賞

1/交響詩「ドン・ファン」より (R.シュトラウス/森田一浩)

安定した素晴らしいTrpソロでした。クリアでシャープなサウンドで、よく整理された序奏で音楽が停滞せずよく流れていましたが、ところどころにピッチの危うい部分があったのが残念。自由曲でも「音楽の流れ」がスムーズでした。立体感のある大らかなサウンドで好演でしたが、終始「押し捲る」演奏だったので聞き手としてはちょっと疲れました。メリハリに欠け大味なドンファンになってしまったように思います。

11
東海 長野県 長野県松本美須々ヶ丘高等学校 (指揮/山岸明) ※初出場
銀賞

4/「アルプス交響曲」より 日の出、嵐の前の静けさ、雷雨と嵐、下山、夜 (R.シュトラウス/山岸明)

良く揃ったオープニングに始まり、軽快で艶のあるメロディが生きたマーチでした。小細工の無い正統派マーチで非常に気持ちよく聞くことができました。自由曲は非常に鮮やかな「日の出」で始まり期待が高まりましたね。難しい曲を細部までよく研究し、よく練習されていたと思います。場面転換(カットのつなぎ)に多少ぎこちなさを感じましたが、全体的には好演でした。

12
四国 徳島県 徳島県立徳島商業高等学校 (指揮/福崎由美) ※初出場
銅賞

4/「アメリカの騎士」より 選ばれし者 (S.メリロ)

若々しい爽やかなマーチですが、どこか一本調子でここぞという聞かせどころが無い印象を受けました。しかし個々の奏者が楽しく演奏している雰囲気はよく伝わってきます。自由曲ではスケール感のある演奏でなかなか好演でした。どのパートもよく吹けているし、合奏力も十分に備わっていると思いますが若干安定感に欠けていました。Tuttiでのサウンドにもっと魅力があるといいですね。

13
中国 岡山県 おかやま山陽高等学校 (指揮/松本壮史) ※3年連続3回目
銀賞

4/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より (M.ラヴェル/仲田守)

最初の音から大変ゴージャスなサウンド。個々の奏者の技量が非常に高いですね。課題曲では色々工夫をされていたのがよく分かり興味深く聞けました。トリオでのフルート群にピッコロを加え和声を入れ替えていましたね。(変えてはいなかったようです。) またマレットが柔らか過ぎてシロフォンの音は殆ど聞こえませんでした。個性といってしまえばそれまでですが、今まで聞いたベストフレンドには無い解釈でしたので違和感はありました。自由曲ダフニスでは美しい「夜明け」を披露。ハープが大変効果的でした。「全員の踊り」も一糸乱れぬ演奏で実に完成度・感銘度の高い演奏でした。惜しくも銀賞でしたが、十分金賞に迫る演奏だったと思います。

14
関西 大阪府 大阪府立淀川工業高等学校 (指揮/丸谷明夫) ※お休み明け26回目
金賞

4/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」より イントロダクション、夜明け、全員の踊り (M.ラヴェル/立田浩介)

まさに小細工の無い正統派マーチ。聞いていてこんなにも気持ちよく爽快なマーチは他には無かったです。作為的でない自然に歌うメロディ、正確なリズムと当たり前のことを普通に演奏するだけでこんなに素晴らしいマーチになることに感動すら覚えます。ダフニスでは珍しいイントロダクションで始まりましたが、まずこの曲で聴衆をぐいっと引き寄せた感があり、続く「夜明け」も寸分のスキもない演奏でした。音の密度が高く弱奏でも強奏でもサウンドに艶があり安定感抜群ですね。「全員の踊り」も圧巻で、ホールに大拍手と大歓声が響き渡りました。休み明けを18回目の金賞で飾りました。

15
西関東 埼玉県 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 (指揮/宇畑知樹) ※お休み明け7回目
金賞

4/「アルプス交響曲」より (R.シュトラウス/森田一浩)

程よく抑制されたオープニングでした。完成度が非常に高いですね。アナリーゼをしっかりされており、計算通りの演奏をしているなと感じます。決してバランスを崩さない一体感は超高校級のバンドであることを証明しています。自由曲も実に色彩豊かで立体的な演奏でした。木管セクションの美しさ・柔軟さ・繊細さに、金管セクションの力強さや雄大さが加わりTuttiサウンドに魅力があります。また強奏になってもデリカシーがある打楽器群がバンドをより引き立てていました。アルプスのカットについては賛否両論あるでしょうが、音楽の流れを損なわない非常によく考えられたカット(選曲)でした。一昨年の銀賞の雪辱を果たし、休み明け復活を見事6回目の金賞で飾りました。
     
金賞5、銀賞6、銅賞4という結果。金賞は札幌白石高(北海道)伊奈学園総合高(西関東)駒沢大学高(東京)天理高(関西)淀川工業高(関西)。やはり天理高の朝一番金賞が印象的でしたし、関西の2校が共に金賞で伝統校の力をまざまざと見せ付けた感があります。今回は初出場が5団体と多く、新鮮な雰囲気がありました。初出場バンドには厳しい結果になりましたが来年以降が楽しみだと思います。個人的には、金賞バンドの他にも、鈴峯女子高(中国)横浜創英高(東関東)精華女子高(九州)おかやま山陽高(中国)も印象に残るバンドでした。

※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。