第51回全日本吹奏楽コンクール
平成15年10月18日(土) /宇都宮市文化会館

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大学の部

1
東関東 神奈川県 神奈川大学吹奏楽部 (指揮/小澤俊朗) ※3年連続34回目
金賞

1/かわいい女 〜アントン・チェーホフの同名の小説による〜  (田村文生)

スムーズなTrpソロで始まり、艶やかなObソロが絡んで素晴らしい序奏部分となりました。音が厚くなるまで不安定な演奏が多い中、実に安定感たっぷりの演奏を聴かせてくれました。また各セクションが非常にクリアで整理された演奏でした。自由曲は超難曲ですが、普通に演奏してしまう技術力・表現力の高さに脱帽です。この曲の持つ「緊張感」までも一つの音楽として成功させていました。各ソロも好演。3年連続18回目の金賞受賞おめでとうございます。


2
関西 大阪府 近畿大学吹奏楽部 (指揮/竹森正二) ※お休み明け22回目
銅賞

1/組曲「馬あぶ」より (D.ショスタコーヴィチ/木村吉宏)

Trpソロは多少音程が危うい感じでしたが、なんとかまとめましたね。Obソロはもう少し主張がほしく思いました。バンド全体としては序奏部分の安定が今ひとつという印象です。自由曲ではTrpセクションが良い音で光っていましたし、木管のしなやかさも十分で、Tuttiも豊かに響いていました。低音群が充実していて心地よく、終曲部は見事な演奏だったと思います。しかし、かつての近畿大学から醸し出されていた「王者の風格」がなかったようにも感じました。同校としては全国大会での初めての銅賞という結果に終わりましたが奮起を期待したいですね。

3
東北 宮城県 東北福祉大学吹奏楽部 (指揮/松崎泰賢) ※3年ぶり2回目
銀賞

1/交響組曲第3番「GR」より I, II, IV (天野正道)

Trpソロは無難な滑り出しでしたがフレーズがブツ切れ気味なのが気になりました。(好みの問題でしょうが…) 序奏部分は安定感に欠けており残念です。自由曲GRは、第1楽章のファンファーレで充実したブラスセクションが鳴り響き期待したのですが、直後に大幅カットで第2楽章へ突入してしまい唐突な感じがしましたね。全体的にはサウンドは硬めで大味な印象です。第4楽章ではSaxが頑張りましたがグイグイ押し捲る演奏で、もう少し「ほっとする部分」がほしいと感じました。


4
東海 三重県 三重大学吹奏楽団 (指揮/沖公智) ※3年ぶり28回目
銅賞

4/歌劇「いやいやながらの王様」より スラヴの踊り、ポーランドの祭り (E.シャブリエ/沖公智)

オープニングは揃っているのですが、少しサウンドが硬めというか耳に痛い印象を受けました。トリオのメロディはもっと歌いこんでほしかったですね。全体的に雰囲気が暗く、マーチの躍動感やワクワク感に欠ける演奏だったような気がします。
自由曲では一転、音楽が生き生きしてきて洒落た雰囲気の演奏でした。課題曲が終わった後や、自由曲の曲間に全員で一斉にやる譜めくりの音が耳障りです。瞬間譜めくりしなくていいように、楽譜作成にも気を配ってほしいと思いました。せっかくの音楽に水をさされたような印象で残念です。


5
東京 東京都 創価大学パイオニア吹奏楽団 (指揮/磯貝富治男) ※2年ぶり3回目
銀賞

4/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り (M.ラヴェル/佐藤正人)

安定感抜群で大変ゴージャスな出だしでした。アインザッツ、アーティキュレーション等ピタリと合ってますし、トリオは美しく躍動感に溢れたマーチとなりました。自由曲も、確かな技術に支えられた素晴らしい演奏でしたが、「夜明け」と呼ぶにはあまりにも騒がしいというのが第一印象です。もっと朝のぼんやりした幻想的な雰囲気がほしいですね。2曲通してホールキャパを大幅に上回る大音量が仇となったかなという感じ。普門館ならば気にならなかったでしょうが、この宇都宮のホールでは鳴らしすぎです。惜しくも銀賞、同校にも磯貝氏にとっても「出れば金賞」記録は途絶えました。


6
西関東 埼玉県 埼玉大学吹奏楽部 (指揮/小峰章裕) ※4年ぶり3回目
銅賞

4/バレエ音楽「スウィーニー・トッド」セレクション (M.アーノルド/小峰章裕)

クリアなサウンドですっきりとしたオープニングでしたが、バンドとスネアドラムが合わず、聞いているほうがヒヤヒヤしましたね。またバスドラムがちょっと遅れて聞こえるのも気になりました。後半部分も個性的な表現をしていましたが、躍動感に乏しくマーチの要である打楽器群が今ひとつという印象が拭えません。自由曲になると一転。木管セクションが多少硬いかなと思いましたが、生き生きとした音楽を披露してくれました。


7
北海道 札幌地区 札幌大学吹奏楽団 (指揮/今井敏勝) ※2年ぶり4回目
銀賞

3/大阪のわらべうたによる狂詩曲 (大栗 裕/木村吉宏)

速めのテンポで、落ち着きのないマーチでした。「虹色の風」はこのテンポでは曲の良さが死んでしまうような気がします。強奏でぐいぐい押し捲るだけで緩急がなく、メリハリに欠けていたと思います。自由曲は各楽器とも良く鳴っていましたが、ピッチの甘さや細かいキズなどが気になりました。好みの問題かもしれませんが、この曲の魅力が今ひとつ伝えきれていないようです。


8
北陸 石川県 金沢大学吹奏楽団 (指揮/新井田 悠)  ※2年連続10回目
銀賞

1/喜歌劇「モスクワのチェリョムーシカ」より (D.ショスタコーヴィチ/鈴木英史)

Trpソロはもっと艶がほしいと思いました。続くObソロは楽器トラブルでしょうか、オクターブ下がってしまいましたね。全体を通しても雑然とした印象を受けました。自由曲では躍動感溢れる演奏で好演。コミカルな表現も上手で、この曲の魅力を十分に引き出していたと思います。ショスタコーヴィチとはバンドとの相性が良いですね!


9
関西 京都府 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部 (指揮/若林義人) ※2年連続10回目
金賞

5/森の贈り物 (酒井 格)

予想よりも多少速いテンポで驚きましたが、各奏者はよく吹いています。各ソロも無難にこなしていましたが、正直、聞く側としては少々ハラハラ…。しかしこの難しい課題曲を見事に演奏しきったところは、今の龍谷大学の実力の成せる業でしょう。自由曲は表情豊かな木管セクションが好演。コルネットのソロも本当に素晴らしかった。曲のもつ大きな流れの中で、随所に見せる個人技が光ります。2年連続4回目の金賞受賞ですね。最後にもう一度、コルネットソロ、ブラボー!!! 


10東京 東京都 中央大学学友会文化連盟音楽研究会吹奏楽部 (指揮/小塚 類) ※4年ぶり28回目金賞

4/バレエ音楽「中国の不思議な役人」より (B.バルトーク/築地隆)

冒頭はブラスセクションがきっちり決まらず残念でした。比較的おとなしい表現で、木管、金管のブレンドもあと少しという感じでした。個々の技術力にはまだ幼い部分が見え隠れしていますが、指揮者の力による部分が非常に大きいと思います。
自由曲も指揮者の音楽性が高く評価されたという印象です。各ソロが消化不良な感じで、もっと主張があっても良いかなと思いましたが、バンド全体のシリアスで鬼気迫る雰囲気が良く出て尻上がりに良くなっていきました。4年ぶり14回目の金賞で、東京代表の連続金賞記録を19年に更新しました。


11
中国 広島県 広島大学吹奏楽団 (指揮/八木真也) ※2年ぶり10回目金賞

4/ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス (D.ギリングハム)

課題曲の出だしは非常にすっきりとしていて、ブラスセクションのアタックも明瞭であり良かったと思います。クリアなサウンドで、大学の部の「ベストフレンド」の中では最高の出来だったと思います。スネアドラム、バスドラム、シンバルのリズムセクションをひな壇の最上段にセットしたのは正解で、管楽器群との合奏にうまく溶け込んでいます。全体を通しても小細工無しの自然な流れの中、心地よいサウンドでした。自由曲は、各ソロも好演であり、Tuttiになっても非常に柔らかく豊かに響いています。過去の広島大の演奏では最高の出来でしょう。同大学としても、そして中国代表としても初の金賞受賞、おめでとうございます。


12
九州 福岡県 福岡工業大学吹奏楽団 (指揮/柴田裕二) ※2年連続6回目
銀賞

4/シンフォニックバンドのための幻想曲「山の物語」 (小長谷宗一)

12団体中、最少人数の33名(Fl.1、Ob.2、EbCl.1、BbCl.3、BsCl.1、ASax.3、TSax.1、BSax.1、Hr.3、Trp.4、Trb.3、Euph.1、Tub.3、Cb.1、Perc.5)の編成。すっきりとしたサウンドで爽やかなマーチでした。ゴテゴテした響きがない分、各声部がクリアに聞こえます。小編成では個人の力がもろに出ますが、各奏者の高い実力がそれを支えていましたね。自由曲は「癒し系」音楽。曲の持つ「大きな流れ」を大切にした演奏でした。小編成の利点を十分に生かした各奏者のアンサンブル力が冴えていました。個々の技術も確かなものを感じます。

金賞4、銀賞5、銅賞3。金賞は神奈川大(東関東)中央大(東京)龍谷大(関西)広島大(中国)の4つ。特に広島大は出場10回目にして初の金賞、おまけに中国代表としても初金賞という快挙です。今年はあきらかに銅賞といったようなバンドがなく、全体的に名演、好演揃いだったと思います。神奈川大は3年連続出場のため来年お休みになります。


※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。