第52回全日本吹奏楽コンクール
平成16年10月31日(日) /東京文化会館

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一般の部

1
四国 愛媛県 松山市民吹奏楽団 (指揮/山橋史仁) ※16年ぶり9回目
銅賞

1/「ミス・サイゴン」より 序曲、我が心の夢、サイゴン陥落、今がこのとき  (C.M.シェーンベルク/宍倉晃)

課題曲はリズムの重い演奏でした。作為的ではなく正攻法の演奏ではあったのですが、表現が平坦でもう少し抑揚があってもいいですね。自由曲は心地よい緊張感をもった滑り出し。Tuttiでのサウンドは重厚でしたが、強奏になるとバランスを崩し濁る傾向にありました。またダイナミクスレンジが若干狭く、もう少しpp、pppサウンドの充実がほしいと感じます。楽曲の構成的にはよくまとまっていましたが、終曲の「今がこのとき」はあっさりしすぎという感。もっと歌いこみ、胸が熱くなるような雰囲気がほしいと思いました。


2
東北 秋田県 秋田吹奏楽団 (指揮/佐藤正人) ※2年ぶり6回目
銀賞

3/イントゥ・ジ・エアー (T.マー)

冒頭の木管は非常に美しい音色で素晴らしかったのですが、アンサンブルが若干乱れたのが惜しい。Euphソロはもう一つといった感でしたが、Saxの艶やかな音色は印象的でした。ダイナミクスレンジも広く、Tuttiでの重厚さ、力強さ、密やかさ等サウンドをうまく切り替えていて素晴らしいと思います。自由曲では「開放感」をうまく表現した熱演。テンポの緩やかな部分においても、音楽が脈々と流れサウンドが死んでいません。華やかな金管群がよく頑張っており、Trpはハイトーンもよく決まっていて見事でした。


3
北海道 札幌地区 ウインドアンサンブル・ドゥ・ノール (指揮/仲田守) ※3年連続3回目
銀賞

5/グラゴール・ミサ曲より (L.ヤナーチェク/仲田守)

課題曲ではリズムやアーティキュレーションが「なんとなく」合っているような感じで、正確さが感じられませんでした。全体を通して、この課題曲の洒落た雰囲気を表現するには至らずといった印象です。自由曲ではSax、ホルンの中音域群が充実。Tuttiでの音のうねりが醸し出す一体感は素晴らしいですね。終曲部ではTrp全員がスタンドプレイ。最後は疲れが見えましたが、よく頑張りました。息を呑むような緊張感・高揚感がよく伝わってくる快演だったと思います。


4
西関東 埼玉県 伊奈学園OB吹奏楽団 (指揮/宇畑知樹) ※8年ぶり2回目
銀賞

2/「スペイン狂詩曲」より IV. 祭り (M.ラヴェル/森田一浩)

柔軟性のある美しい木管セクションが印象的でした。Saxアンサンブルも見事で、Tuttiのサウンドが非常に柔らかく甘美。バンドに良くあった課題曲の選曲で好演だったと思いますが、アウフタクトで始まるフレーズで最初の音のピッチが定まるのが遅く不安になる箇所がいくつか見受けられました。自由曲も全体的にはよく演奏していますが、スペインの情熱的な雰囲気を醸し出すまでには至っていなかったように思います。イングリッシュホルンのソロは秀逸。クラリネットソロはA管に持ち替えていたでしょうか、若干ピッチが低めでバンドにはまっていなかったのが残念です。


5
東関東 千葉県 土気シビックウインドオーケストラ (指揮/加養浩幸) ※お休み明け7回目
金賞

3/ラザロの復活 (樽屋雅徳)

課題曲はしっとりとした艶のあるアンサンブルを聞かせました。加養氏の指揮に操られた演奏は変幻自在とでも言うべきか、他のバンドにはない空気を作り出しています。自由曲は更に本領発揮といった印象。Tuttiのサウンドはまるでパイプオルガンを思わせるような重厚な響きです。オーボエソロは非常に秀逸。この聖書を題材にした作品の物語が見えてくるようで、終曲に向かってバンドの集中力がどんどん高まっていき引き込まれました。ラストはまるで後方から光が差してくるかのような重厚な響きに魅了されました。指揮の加養氏は今回で15回目の全国出場で、長年出場指揮者表彰。お休み明けを6回目の金賞で飾りました。


6
中国 岡山県 倉敷市民吹奏楽団グリーンハーモニー (指揮/佐藤道郎) ※3年連続8回目
銀賞

5/楽劇「サロメ」より 七つのヴェールの踊り (R.シュトラウス/M.ハインズレー)

課題曲は音楽の流れが秀逸。最初のコードがしっかり決まっています。「サード」をやった中では、冒頭の響きが一番よかったのはこのバンドでしょう。テクニカルな部分もしっかり吹けています。Tutti時の中音域がもっと充実すると良いと思いました。自由曲サロメでは、オーボエのソロが素晴らしい出来で大人のサロメを聞かせてくれました。全体的に木管セクションが好演でしたが、クラリネットの音色に更に深みがでるといいですね。ここ数年の同バンドの演奏の中では非常に仕上がりの良いものだったと思います。


7
九州 福岡県 大牟田奏友会 (指揮/小塚 類) ※2年連続10回目
銀賞

3/「シンフォニア・ハンガリカ」より (J.ヴァン・デル・ロースト)

課題曲冒頭の木管アンサンブルはちょっと安全運転気味。金管の和音が決まらなかったのが残念。各パートの歯車が少しずつ噛み合っていない印象で、全体のまとまりがいまひとつといった感がありました。後半からは尻上がりに調子を上げてきたようでしたが、前半のもたつきが残念です。自由曲は熱く若々しいエネルギッシュな演奏。声もふんだんに取り入れた奇抜な曲ではありましたが、メリハリがあって聴衆を飽きさせなかったと思います。終曲部におけるサウンドも重厚でよく響いており、最後のコードも圧巻でした。


8
北陸 福井県 ソノーレ・ウインドアンサンブル (指揮/広比知徳) ※7年ぶり5回目
銅賞

1/「放射と瞑想」より パート1、パート2 (天野正道)

課題曲ではアンサンブルのズレや不安定なピッチなど、マイナスイメージが先行してしまった印象です。バンドの音に戸惑いのようなものが感じられ、萎縮した演奏になってしまいました。Tuttiのサウンドも硬くて荒っぽく聞こえます。自由曲では緊張感は良く表現できていたと思いますが、強奏時のサウンドが痛く、速いテンポの部分もリズムの乗りがいまひとつでした。全体的に落ち着きがなく、吹き急いでいるような地に足がついていない印象でした。


9
東京 東京都 創価グロリア吹奏楽団 (指揮/佐川聖二) ※3年連続5回目
金賞

1/カントゥス・ソナーレ (鈴木英史)

80名全てが男性奏者で構成。パワーだけでなく柔軟でしなやかな部分も兼ね備えたバンドですね。課題曲では力強く豊かなサウンドで安定感抜群。TrpとEuphのソロが若干精彩を欠いたのが惜しかったですが、全体的には細かいミス等は気にならないほどまとまっていました。自由曲でもスケールの大きい豊かなサウンドと立体的な音楽はゆるぎなく、まさに横綱のような演奏。ホルンとオーボエが特に素晴らしい出来だったことを付け加えておきたいと思います。3年連続5回目の金賞受賞で同バンドの「出れば金賞」記録を更新。指揮の佐川氏は前日の文教大に続いてダブル金賞受賞です。


10
関西 大阪府 創価学会関西吹奏楽団 (指揮/伊勢敏之) ※3年ぶり10回目
金賞

1/四つの交響的印象「教会のステンドグラス」より 大天使ミカエル (O.レスピーギ/藤田玄播)

グロリア同様全員男性で構成。非常にクリアで輪郭のハッキリしたサウンドをしており、非常に洗練された音楽を聞かせてくれました。課題曲では木管の情感溢れる歌い込みが素晴らしく、安定感抜群の演奏。自由曲は第1楽章「エジプトへの逃亡」と第2楽章「大天使ミカエル」を演奏。緻密なアンサンブルは非常に素晴らしく、また今年も期待通りにホルンセクションが光っていました。ピッコロTrpのソロは舞台上手袖にて演奏。演奏は秀逸でしたが、ソロのフレーズが時間の都合でカットされていたのが残念。ノーカットで聞きたかったですね!ラストに向かってのバンドの一体感は息をのむほど素晴らしく圧巻でした。今年の一般の部において、管理人が最も印象に残っている演奏の一つです。9回目の金賞受賞、おめでとうございます。


11
東北 宮城県 名取交響吹奏楽団 (指揮/近藤久敦)  ※2年ぶり12回目
金賞

4/「三つのジャポニスム」より (真島俊夫)

大変美しく揃ったTrpでスタート。非常に安定感のある演奏で、アンサンブルが上手ですね。音色重視の非常に充実した金管セクションが印象的です。自由曲でも情景描写が非常に素晴らしく、特にフルートをはじめとするソリストが光っていました。陶酔感のあるサウンドで弱奏でも強奏でも音楽の流れが素晴らしいと思います。ラストの盛り上がりも圧巻。課題曲・自由曲ともに完成度の高い演奏でした。8年ぶり2回目の金賞受賞おめでとうございます。


12
関西 滋賀県 大津シンフォニックバンド (指揮/森島洋一) ※3年連続7回目
金賞

1/「鳳凰」〜仁愛鳥譜 (鈴木英史)

和を題材にした曲は流石に上手ですね。強奏でのサウンドも破綻することなくバランスが良いと思います。このバンドでいつも感心させられるのは一体感の見事さです。自由曲は初めて聞く楽曲ではありましたが、曲のもつ雰囲気・空気といったものが音を通して確実に聴衆に伝わってくる説得力のある演奏でした。ピッコロ大変素晴らしかったです! 昨年の雪辱を果たして2年ぶり6回目の金賞。さらには99年(OSB、尼崎)以来5年ぶりに関西代表アベック金賞をもたらしました。


13
九州 佐賀県 佐賀市民吹奏楽団 (指揮/南里隆弘) ※2年ぶり9回目
銅賞

3/歌劇「トスカ」第三幕より (G.プッチーニ/飯島俊成)

課題曲は丁寧な演奏でしたが、アンサンブルやピッチの乱れが目立ち、なかなかバンドのエンジンがかからないといった印象でした。特にこの「祈りの旅」は前半部分が勝負の曲なので残念ですね。中間部からは尻上がりにまとまってきたように思います。自由曲も同様、丁寧でオーソドックスな演奏でした。どのパートもちゃんと吹けているのですが合奏体としてのサウンドに華というか艶が無く、オペラの劇的な雰囲気を醸し出すには至っていなかったのが残念でした。


14
東海 静岡県 浜松交響吹奏楽団 (指揮/浅田 享) ※お休み明け7回目
銅賞

3/ライフ・ヴァリエーションズ 〜生命と愛の歌〜 (鈴木英史)

課題曲の冒頭の木管はまとまったアンサンブルを聞かせました。作為的でなく自然な音楽作りでしたが、Tuttiが例年のような奥行きのあるシンフォニックなサウンドではなく直線的で硬かったのが残念です。終曲部のコードは美しかったですが、最後の低音群の一発は精彩を欠いてしまいました。自由曲は音楽のもつ緊張感と開放感をうまく使い分けしていてメリハリはありましたが、サウンドの魅力や説得力に欠けていたように思います。浜響としては初の銅賞。東海代表としても2年連続の銅賞というのは初です。奮起を期待したいですね!


15
東関東 神奈川県 横浜ブラスオルケスター (指揮/中村睦郎) ※3年連続4回目
銀賞

4/コリアン・ダンス (高昌帥)

課題曲・冒頭のTrpはミスが惜しい。その後各楽器のソロも乱れが続いてしまいました。連鎖反応を起こしてしまったようで、いつもノーミスに近い演奏をする同バンドらしからぬ安定感に欠ける演奏でした。自由曲では課題曲での不安をかき消すような熱い演奏。個々の技術もさることながら合奏力の高さを見せ付けました。イングリッシュホルンのソロも秀逸で、打楽器セクションが非常に好演だったのが印象に残っています。全体的にはもう少し緩急の差がほしいと感じました。終わってみれば課題曲の不調が痛かったなという印象。「出れば金賞」記録の更新はなりませんでした。


16
西関東 山梨県 創価山梨リード吹奏楽団 (指揮/吉田孝司) ※4年ぶり2回目
銅賞

1/ディオニソスの祭 (F.シュミット)

ダイナミクスレンジが広くすっきりしたクリアなサウンドでした。課題曲ではスムーズな滑り出し。フルートが非常に伸びやかで音楽をリードしています。Trpソロも秀逸でしたが、全体的には一本調子という感じで平凡な演奏になってしまったように思います。これだけ個性的で素晴らしいバンドが続くと、多少なりともバンド独自のオリジナリティやカラーを出していかないと印象に残りにくいのでは?と感じます。ディオニソスはよくさらいこまれていて練習の成果が出ていたと思いますが、10分以上ある曲を半分近くカットすることで曲自体の魅力が半減していたのが残念。



※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。

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