第52回全日本吹奏楽コンクール
平成16年10月24日(日)/普門館

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高校・後半の部

1
中国 岡山県 明誠学院高等学校 (指揮/佐藤堯史) ※2年ぶり2回目
銀賞

1/喜歌劇「小鳥売り」セレクション (C.ツェラー/鈴木英史)

一昨年に初めて聞いた時と変わらず明るくて温かみのあるサウンドは健在でした。サウンドだけで安心感や安堵感が感じられるのは素晴らしいことです。各ソリストも質の高い演奏を聞かせてくれました。自由曲ではバンドのサウンドが曲にマッチしているために更に魅力が増していましたし、演奏する喜びや楽しさが本当に伝わってきます。2曲通して陶酔感のあるサウンドと躍動感みなぎる演奏は聴衆をひきつけました。私は金賞でも十分と感じましたが・・・。


2
西関東 埼玉県 春日部共栄高等学校 (指揮/都賀城太郎) ※4年ぶり2回目
銀賞

1/森の贈り物 (酒井格)

充実した低音群に支えられ安定感のあるバランスの良い演奏でした。音楽の流れも自然。ただあまりにも優等生的な演奏すぎて、面白みに欠けた感があります。自由曲ではコルネットが頑張りました。最初は若干緊張による硬さも見受けられましたが、そこは技術力でカバー。非常に流れのよい音楽的なソロを披露。きっと彼がいたからこの曲を選曲したのだろうと思います。昨今コンクールでは比較的シリアスな曲想の自由曲がならぶ中、どこかほっとさせてくれる一服の清涼剤のような曲ですね。この曲で激戦の西関東支部を突破してきたことは、そう簡単なことではありません。惜しくも金賞は逃しましたが、当日の中でも印象に残る団体の一つでした。(※演奏中に赤ちゃんが泣いていました。赤ちゃんや未就学児を客席に入れることは連盟側も禁止すべきだと思います。一番いけないのは他人の迷惑を考えない一部の保護者なのですが…)

3
東関東 千葉県 習志野市立習志野高等学校 (指揮/石津谷治法) ※お休み明け20回目
金賞

3/歌劇「トゥーランドット」より (G.プッチーニ/石津谷治法)

Tuttiでのサウンドが他のバンドは違いますね。習志野サウンドはほわっとした綿菓子のような不思議な響きをもっています。課題曲では、綿密にアナリーゼされ柔らかい木管セクションが好演。金管セクションも力強さと柔らかさを兼ね備えており、当日では随一の「祈りの旅」を表現してくれました。自由曲でも終始素晴らしい表現と音色で色彩感溢れる演奏に魅了されました。正直、吹奏楽で演奏するプッチーニ作品はあまり好きではないのですが、そんなことを忘れさせてくれるような至福の時だったと思います。ちょうど日本テレビの某番組取材クルーが密着していたようで、成績発表の時の彼らの喜びの瞬間も撮影されていました。休み明けを17回目の金賞で飾りました。おめでとうございます。

4
西関東 埼玉県 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 (指揮/宇畑知樹) ※2年連続8回目
金賞

2/「管弦楽のための協奏曲」より 終曲 (B.バルトーク/森田一浩)

高校の部唯一の「エアーズ」であり、聴衆の期待も大きかったと思います。品のある凛としたサウンドが課題曲に良く合っていました。Saxソロも魅力十分であり、音楽の全体の流れ、構成も秀逸なものとなりました。とにかく出てくる音の質の高さ、一糸乱れぬアンサンブル等超高校級のバンドです。自由曲のバルトークは本当に難しい曲でしたが、「難なく」演奏しているように聞こえるのです。木管の早いパッセージもピタリと揃っており、いったいどんな練習をしたらこんな演奏ができるのでしょう?と感心の連続。欲をいえば、バルトークの音楽としては綺麗にまとめすぎ?といった気もしましたが、2曲通してのバンドのもつ一体感、集中力の素晴らしさにただただ感動しました。2年連続7回目の金賞受賞、おめでとうございます。

5
北陸 石川県 金沢市立工業高等学校 (指揮/幸正勤也) ※3年ぶり7回目
銀賞

4/歌劇「蝶々夫人」より (G.プッチーニ/後藤洋)

後半の部で最初の「鳥たちの神話」の登場。きれいに揃ったオープニングではありましたが、音やフレーズの処理が甘く、耳につく箇所がいくつかあったのは残念でした。自由曲は「蝶々夫人」というよりも、『「蝶々夫人」の主題によるファンタジー』といった感じで、オペラに登場する楽曲やフレーズがメドレーというよりもコラージュされているような曲でしたが、楽曲としてのまとまりや説得力は十分にあり好演でした。Tutti時でのTrpがビブラートかけ過ぎでブレンド感が今ひとつと感じました。

6
九州 福岡県 精華女子高等学校 (指揮/藤重佳久) ※2年連続11回目
銀賞

1/交響曲第3番より I, III, IV (J.バーンズ)

女子高ながらよく鳴るバンドで、Tuttiサウンドには勢いと若さが漲っていますが、もうちょっとだけ力を抜いてもいいのではないかなと感じました。課題曲では輪郭のしっかりしたクリアな演奏。後半雑然としてしまうところがあったのですが、概ね好演だったと思います。自由曲では、持ち前の力強さを前面にパワフルにスタートしました。中間部の緩やかな部分では非常に美しく優美な表現ができていて素晴らしいですね。最終楽章では躍動感に満ち溢れ、ラストはブラスセクションが全員スタンドプレイをするなど圧巻でした。特にホルンセクションが光っていましたね。金賞は逃しましたが、銀賞の中でも心に残る名演だったと思います。

7
東北 秋田県 秋田県立秋田南高等学校 (指揮/阿部智博) ※3年ぶり22回目
銀賞

3/歌劇「ルル」より 5つの交響的小品 (A.ベルク/天野正道)

課題曲の冒頭は落ち着いたしっとりとしたアンサンブルでした。アーティキュレーションもよく揃っているし、こう表現したいというものが伝わってきます。Euphソロはピッチが悪く魅力が半減したのが残念。何か前半部分はバンド全体のノリが今ひとつといった感がありましたが後半持ち直し尻上りに良くなってきたと思います。自由曲は難しそうな曲ですね。非旋律系なフレーズが幾重にも重なりあっていくところでは、よく整理されていて面白く聞くことができました。ただ、全体的に雑然とした雰囲気が漂っていたように思います。私自身この曲を聞いたのはこの日が初めて。原曲がどういったものなのかの知識がないので、今ひとつこの曲の魅力を見出すことができなかったのが残念です。

8
中国 広島県 鈴峯女子高等学校 (指揮/宇根岡俊二) ※2年連続6回目
銅賞

1/エルサレム賛美 (A.リード)

サウンドがおとなしいかなと思いましたが、例年通り丁寧な音楽作りでした。若干、管楽器と打楽器が分離していたようにも思いますが良い演奏でした。自由曲では一転して、明るく輝きのあるサウンド。荘厳な雰囲気をよく醸し出していたと思います。オーボエ2本のアンサンブルも美しく決まっていました。ラストはTrpとTrb全員がスタンドプレイ。感銘度の高い出来だったと思います。銅賞ではありましたが、私は鈴峯の音楽はもうちょっと高く評価されてもいいと思うのですが…。

9
東京 東京都 東京都立杉並高等学校 (指揮/五十嵐 清) ※初出場
銅賞

3/「おほなゐ」〜1995.1.17阪神淡路大震災へのオマージュ〜より (天野正道)

全員暗譜での演奏。課題曲の冒頭はクリアで爽やかなアンサンブル。強奏時になるとバランスを崩し荒っぽくなる傾向がありますね。自由曲ではソプラノSaxがよく音楽をリードしていましたが、音色が硬めで際立ち過ぎてバンドとの一体感に欠けてしまったのが残念。しかしながら情景描写はよく出来ており、「復興そして祈り」の部分は感動的でした。余談ですが、打楽器の楽器の移動でマレットスタンドを倒してしまった生徒さんがいました。「やばい!」と思ったのですが、動じることなくシロフォンの速いパッセージをきちんと演奏し、すぐさまスタンドを起こして元に戻し、間一髪で他の楽器に移っていきました。「おー!ナイス」と心の中で叫んでしまいました。(^^)

10
四国 高知県 高知県立高知西高等学校 (指揮/中山直之) ※初出場
銅賞

3/歌劇「はかなき人生」より 間奏曲とスペイン舞曲 (M.ファリャ/仲田守)

すっきりと正攻法の音楽でした。トランペットはコルネットを持ち替えて音色の使い分けをするなどの工夫も見られました。全体的にはよくまとまっていたと思いますが、バンドのカラーを出すまでには至らず平凡な演奏だったのが残念。自由曲では情熱的な演奏。スペイン舞曲でのリズムの重さが気になりましたが、明るく輝くサウンドで好演だったと思います。

11
東関東 千葉県 柏市立柏高等学校 (指揮/石田修一) ※お休み明け17回目
金賞

1/アフリカの儀式と歌、宗教的典礼 (R.スミス)

安定した演奏でスキのない演奏です。しっかりアナリーゼされ奏者も忠実に演奏していたと思います。いつもは割りと課題曲にもオリジナリティを出すバンドですが、今年は比較的オーソドックスな作りだったのではないでしょうか。さて、お待ちかねの自由曲。まさに柏オリジナルの世界が繰り広げられました。楽器や声を駆使して様々な動物の鳴き声や、効果音を表現しています。こういった試みはパイオニアならではの特権ではありますが、聴衆もこのバンドに期待しているはずです。単なる奇をてらった演奏ではなく音楽を「表現する」ことに妥協しない姿勢には頭が下がります。参考までに冒頭のバリトンSaxと後半のアルトSaxソロはステージ前方に出てきてのスタンドプレイでしたね。お休み明けを9回目の金賞で飾りました。

12
北海道 北見地区 北海道遠軽高等学校 (指揮/今井成実) ※9年ぶり6回目
銅賞

4/交響曲第2番「キリストの受難」 (F.フェルラン)

整然としたオープニング。終始安定感があり9年ぶりの出場とは思えないほど堂々としていました。木管のソリストも魅力的。サウンドは安定していますが、もう少し彩りがほしい気もします。自由曲は壮大なテーマの曲。楽曲の派手さも手伝ってインパクトがありますね。課題曲に比べるとサウンドにも色彩感が出てきて良かったと思います。

13
東海 長野県 長野県松本美須々ヶ丘高等学校 (指揮/山岸明) ※2年連続2回目
銀賞

3/三つのジャポニスム (真島俊夫)

爽やかな課題曲でした。細部にまで気が配られていてソツのない仕上がりですし、軽快で躍動感に溢れメリハリもよくついています。優等生的な演奏ですね。自由曲では日本を題材にした作品で奏者もイメージを膨らませやすいのでしょうか、豊かな表現力です。個々の楽器の音色が洗練されており、非常に秀逸な演奏だったと思います。新旧交代が著しい東海支部において、着実に実力をつけてきたバンドらしく「勢い・安定感」が抜群と感じました。

14
関西 大阪府 大阪府立淀川工業高等学校 (指揮/丸谷明夫) ※2年連続27回目
金賞

1/「スペイン狂詩曲」より (M.ラヴェル/立田浩介)

本日の大トリ。盛大な拍手に導かれて演奏が始まりました。期待通りの明るく輝かしいサウンド。各パートが鮮明に聞こえ且つTuttiでのブレンドの良さは特筆もの。何か特別なことや小細工、ごまかしをするわけでもなく、常に楽譜に忠実な演奏を究極に詰めていくことが基本なのでしょう。その結果として非常に完成度の高い横綱級の課題曲であったと思います。自由曲も同様、各パートがしっかりと自分の役割を100%果たしているのが良くわかります。期待通りの色彩感と躍動感でいっぱいの演奏。イングリッシュホルン・ソロも秀逸。2年連続19回目の金賞受賞です。おめでとうございます。




※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


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