第52回全日本吹奏楽コンクール
平成16年10月30日(土) /東京文化会館

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大学の部


今回、管理人は大学の部を全団体聞くことができなかったため、
友人の山ちゃん(打楽器奏者)、抹茶(Sax奏者)のお二人に協力いただきレポートを作成いたしました。

1
東京 東京都 中央大学学友会文化連盟音楽研究会吹奏楽部 (指揮/小塚類) ※2年連続29回目
銀賞

1/交響曲第1番 ニ短調 作品13より 第四楽章 (S.ラフマニノフ/築地 隆)

大変ひそやかなクラリネットでスムーズな出だしとなりました。Tuttiには若さと勢いを感じましたが、Trpソロ、Euphソロは緊張したでしょうか多少萎縮して硬さがあったのが惜しいですね。しかし集中力が途切れることなく、明確な表現の課題曲を披露したと思います。自由曲ではンフォニックなサウンドで素晴らしい演奏でしたが、ファンファーレのTrpにはもう少し華やかさが欲しいと思いました。ホルンのゲシュトップや柔らかい木管サウンド等バンドの強みがどんどん出てきており、作為的でない自然な音楽を奏でられていたのは流石だと思います。またTrpとTrbが良くブレンドされたサウンドも特筆ものでしょう。最後まで引き込まれた演奏になりました。


2
東海 三重県 三重大学吹奏楽団 (指揮/沖公智) ※2年連続29回目
銅賞

1/交響組曲「春」より 第2楽章 (C.ドビュッシー/沖公智)

比較的抑えた演奏でした。きっと荒くならないように配慮したのかもしれませんが、サウンドに色彩感が乏しい魅力のないものとなってしまったように思います。金管に比べて木管が若干弱い印象を受けました。全体を通してフレーズの処理の甘さ、ピッチの不安定さ、表情の乏しさなどが露呈してしまい、不完全燃焼の課題曲になってしまったのが残念でした。自由曲はお得意のフランス作品で期待していたのですが、やはり課題曲同様、サウンドに魅力がなく、「こう演奏したい」という主張も感じられなかったように思います。音に対するこだわりや主張が全く感じられない演奏になってしまったのは残念です。かつてはドビュッシーやラヴェルなどの作品を十八番にしていたバンドであるだけにファンとしては残念なところ。奮起を期待したいと思います。

3
東北 宮城県 東北福祉大学吹奏楽部 (指揮/松崎泰賢) ※2年連続3回目
銀賞

4/「スイート・エキセントリック」より (天野正道)

課題曲と自由曲共にとても練習をされているとは思いましたが、演奏にもう一つ説得力が欲しいところです。サウンドが爽やかで透明感があります。木管・金管ともにバランスの良いサウンドをしていました。音色と音程が良いので、ハーモニーも相乗効果となって非常に響いていました。打楽器がバランスを考えて控えめな演奏をしていましたが、もうちょっと出ていても問題なかったと思います。さて自由曲。各楽器とも非常に好演で、強奏になってもオルガンを思わせるような素晴らしいサウンドでした。ワルツのリズム、流れも秀逸。後半も場面展開もよくメリハリのある演奏でした。


4
東関東 茨城県 流通経済大学吹奏楽部 (指揮/喜多原和人) ※4年ぶり2回目
銀賞

2/交響曲第2番「キリストの受難」 (F.フェルラン)

本日最初の課題曲2の登場です。比較的速めのテンポかなと感じましたが、柔らかいサウンドとスムーズな音楽の流れが心地よい演奏でした。欲をいえば、音楽の中の重心というか、聞かせどころが不明確だったために全体的には単調な作りに終わってしまった感もありました。自由曲は打って変わってすばらしい演奏。各楽章の描写が素晴らしく感動的であり、フルートソロは秀逸。一つの物語としての音楽をどう表現していくのか、更なる踏み込みがあればもっと良かったのではないかと思います。東関東は普段は神奈川大学が王道を歩み続けていますが、こういった将来性のあるバンドを全国大会で聞けるのは3出制度のおかげですね。


5
九州 福岡県 福岡工業大学吹奏楽団 (指揮/柴田裕二) ※3年連続7回目
金賞

4/シンフォニックバンドのためのパッサカリア (兼田 敏)

Trpのユニゾンはスムーズな出だし。美しい発音と統制のとれた音色は素晴らしいものがあります。もう少しドラマティックな雰囲気も欲しいと思いましたが、非常に安定感のある課題曲になりました。さて自由曲のパッサカリアは往年の吹奏楽ファンには感激ものの選曲です。低音パートによる導入部も無事にクリア。フレーズの処理も非常にうまく、音楽の流れを妨げることなく演奏しているのは好感が持てました。全体的に丁寧すぎるかなとも思えるほどで、もう少し推進力があっても良いかなと思います。しかしバンドの集中力が素晴らしく、この名曲に恥じない名演だったと思います。1971年(福岡大)以来、実に実に33年ぶりに九州代表が金賞を受賞。02年、03年と着実に実力をつけ3年連続の今年を金賞で飾りました。関係者の方々もお喜びのことと思います。おめでとうございました。


6
北陸 石川県 金沢大学吹奏楽団 (指揮/新井田 悠) ※3年連続11回目
銀賞

1/ジェリコ (B.アッペルモント)

サウンドが濁り気味で、特に強奏時には顕著になってしまったのが残念。また、バスドラムのチューニングがうまくいっていなかったのか、音にしまりがなくバンドに溶け込んでいないように感じました。課題曲では全般的にもっと深いアナリーゼがほしいところ。またツメの甘さが目立ち、気合だけが空回りしている感が否めない。自由曲でも、あるレベルの技術を持っているのは分かるのですが、それを十分に活かしきれておらず、全体として雑然とした演奏になってしまったのが残念。


7
西関東 埼玉県 文教大学吹奏楽部 (指揮/佐川聖二) ※お休み明け14回目
金賞

1/「交響曲第8番」より (M.アーノルド/瀬尾宗利)

課題曲では冒頭のテーマのフレーズ一つ一つに神経が行き届いている様子で、非常に一体感がありました。隅々まで行き届いたアナリーゼ、指揮者の音楽によく反応する奏者の質の高さには目を見張るものがあり、飽きさせない安心できる演奏でした。自由曲ではホルン主体の非常に柔らかく甘美なサウンドで曲を構成。ピッコロが心地よく響き、緩急の対比が面白くまるでオルゴールを思わせるような軽やかなタッチで魅了します。オーボエ、トランペット、クラリネット、ファゴットの各ソロも秀逸。終曲に向けての緻密なアンサンブル、盛り上がりはまさに「圧巻」であり、サウンドのシャワーが聴衆を包み込む名演です。お休み明けを8回目の金賞で飾りました。


8
関西 京都府 立命館大学応援団吹奏楽部 (指揮/篠原康浩) ※初出場
銀賞

2/三つの交響的素描「海」より 風と海との対話 (C.ドビュッシー/淀彰)

課題曲はまずは無難な出だし。歌心は十分にあるのですが、まだそれを十二分に活かせないまま、さらりと仕上げていたために平凡な演奏になってしまいました。また細かいミスが目立ったのも残念でした。自由曲はオーボエのソロが秀逸。その反面Trpの音が若干濁るのが残念。音のうねりが見事な「海」を作り上げていました。雰囲気はよく出ていましたが、過去にも数々の名演を残すこの曲を、まだ自分たちのものに仕切れていないもどかしさも感じます。しかし、初出場ながらも堂々としたその演奏には、将来性があり、今後も関西代表として戻ってきそうな予感を十分に感じ取れるバンドです。


9
東京 東京都 駒澤大学吹奏楽部 (指揮/上埜 孝) ※お休み明け17回目
金賞

3/組曲「惑星」より 木星 (G.ホルスト/建部知弘)

本日、最初の課題曲3はまとまりのある演奏。個々のパートの音が非常にクリアに聞こえ、Tuttiのサウンドは重厚であり、良い意味での「音圧」を感じます。若干大味かなとも思える演奏でしたが全体としては説得力のある課題曲でした。自由曲の「惑星」はスケールの大きい立体感のある演奏。管弦楽アレンジではありながらも、ブラスセクションが前面に出すぎたような演奏ではありましたが、十分に素晴らしい「木星」であったことは間違いありません。特にラストに向けての盛り上がりは感動的であり、終了後も客席から割れんばかりの拍手が鳴り止みませんでした。お休み明けを15回目の金賞で飾りました。おめでとうございます。


10関西 京都府 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部 (指揮/若林義人) ※3年連続11回目金賞

5/七五三 (酒井 格)

さて、大人の課題曲「サード」ですが、出だしは多少危うい感じで心配しましたが、すぐに調子を取り戻して龍谷サウンドが響いてきました。無理のない音というのは聴いていて心地良いものですね。各ソロも秀逸で、音楽の流れが素晴らしいと思います。ただ龍谷をもってしてもこの曲は完璧な出来とはいえなかったと思います。やはり難しい曲ですね。自由曲ではお得意の酒井ワールドを展開。この作曲者の音楽を十分に心得ているかのような風格すらあります。各ソロのつながりもスムーズであり、流れが非常に良いです。Saxのソロは本日一番の音色でビブラートも良く音に深みがあって素晴らしいですね。また、Trbソロを二人で受け渡すが、二人とも良い音で奏者のレベルに差が無かったのも「驚き」の一つです。3年連続5回目の金賞受賞、おめでとうございます。


11
北海道 函館地区 北海道教育大学函館校吹奏楽部 (指揮/渡部謙一) ※2年ぶり20回目
銅賞

3/南蛮回路 (伊左治 直)

時々音程が不安定になったり、細かいミスが気になったりしましたが、全体的にはまとまっていたと思います。 自由曲は伊佐治氏の「南蛮シリーズ」の第5作目にあたる曲。 典型的な現代曲で作曲の仕方も従来の吹奏楽の方法ではなく、弦楽器を使ったような作風で、特殊楽器や特殊奏法など視覚的にも楽しむことができました。ただ、合唱が曲に入る際はそれなりに発声とか必要だと思います。 最後に「語り」が入っていましたが、伴奏が大きくて、客席まで届いてこず何を言っているかわからないのが残念でした。


12
中国 岡山県 川崎医療福祉大学ハートフルウインズ (指揮/岩田俊哉) ※4年ぶり3回目
銅賞

5/エスカペイド (J.スパニョーラ)

落ち着いた安定感のある演奏でバランスを崩さないところにとても好感がもてました。しかしながら、この「大人の部専用の課題曲」を選曲するからには、アナリーゼをもっと追求してほしいと思います。バンドの素材としては良いものを持っているだけに、それを活かしきれていないのが残念です。自由曲はジャズテイスト満載の曲でした。TrpやSaxが舞台下手前方に出てきてのソロは楽しませてくれましたが、今ひとつ弾けていない印象があります。こういった演出を取り入れるのであれば、中途半端にやらずにトコトンステージパフォーマンスにこだわるくらいの姿勢が欲しいと思いました。しかしながら、昨年の広島大に続き、中国代表の実力アップが進んでいるなと感じる演奏でした。


※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


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