第52回全日本吹奏楽コンクール
平成16年10月23日(土)/普門館

Back

Next



中学・後半の部


1
東関東 千葉県 柏市立柏中学校 (指揮/田嶋 勉) ※初出場
銀賞

2/「シンフォニア・タプカーラ」より 第1楽章 (伊福部昭/松木敏晃)

課題曲で作曲者自身による指揮という極めて稀なめぐり合わせをライブで聴けたことは嬉しいです。非常に美しく品のあるサウンドと、Saxソロの素晴らしさが際立った演奏でした。多少驚いたのは、他のエアーズを選曲した団体はピッコロをかなり前面に出した演奏をしていたのに対して、柏中はピッコロをかなり控えめにしていたところでしょうか。さて、自由曲のタプカーラ(アナウンスでは「タカプーラ」と紹介されてしまいましたが…)は非常に難しい曲ですが、木管の表情豊かなサウンドと力強い金管が見事に吹ききりました。しかし、上品すぎるサウンドが逆にこの土俗的な楽曲にはマッチしていませんでした。もっともっと土俗的な雰囲気や荒々しさが欲しかったです。


2
九州 福岡県 須恵町立須恵中学校 (指揮/南 光俊) ※お休み明け4回目
銅賞

3/トッカータとフーガ ニ短調 (J.S.バッハ/石川学)

32人(数え間違えがなければ)は本日の最小編成で、内訳はOb1、Fl3、Cl7、B.Cl2、Sax4、Hr2、Tp2、Tb2、Eu2、Tub2、Per5。小編成ならではのすっきりとしたサウンドで特に木管セクションの技量は高いと感じました。課題曲では全体のブレンドがもう一つといった印象で、若干の乱れなどもありました。しかし、自由曲では一転、32名とは思えないほどの重厚なサウンドを聞かせてくれました。今回の編曲は85年の今津中が演奏したときと同じものですが、少人数でもこれだけの深みのある音楽ができるという良いお手本になったと思います。課題曲の仕上がりが残念でしたが、銅賞ながらも感銘深い演奏であったことは間違いありません。

3
東海 三重県 鈴鹿市立千代崎中学校 (指揮/中山かほり) ※初出場
銀賞

4/「ミス・サイゴン」より 序曲、我が心の夢、サイゴン陥落、今がこのとき (C.M.シェーンベルグ/宍倉晃)

本日初の課題曲4の登場です。43名編成でしたが、Fl4、Cl4、A.Cl1、B.Cl1、Sax4、Tp7、Hr4、Tb4、Eu3、Tub3、Perc8という金管優位の編成。金管セクションが充実しているバンドらしい課題曲の選曲ですね。重厚なサウンドでこの曲を見事に仕上げていました。自由曲はミス・サイゴン。この物語のヒロイン「キム」をイメージしてか、指揮の中山先生の衣装はベトナムの民族衣装「アオザイ」でしたね。情景描写がよくできた熱演。特に終曲に向けての盛り上がりは見事で、ラストのコードも美しく響き渡りました。

4
北陸 福井県 鯖江市立鯖江中学校 (指揮/佐々木和史) ※2年連続4回目
銅賞

3/楽劇「サロメ」より 七つのヴェールの踊り (R.シュトラウス/M.ハインズレー)

ハープ2台、チェレスタを含む非常に豪華な打楽器群。北陸のバンドでハープを2台も使ったのは鯖江が初ではないでしょうかね。課題曲は丁寧なアンサンブルで始まりましたが、続く金管のピッチが不安定だったのが残念。比較的安定している木管セクションに比べて、金管セクションが若干弱いかなという印象です。自由曲は過去にもたくさんの名演が生まれているサロメ。オーボエソロは緊張したでしょうか、出す音によって響きの良し悪しがありました。フルートソロは非常に美しかったですね。しかし、やはりここでもピッチの悪さが露呈しサウンドに魅力が無かったように思います。

5
東関東 神奈川県 横浜市立万騎が原中学校 (指揮/原口正一) ※2年ぶり3回目
金賞

4/ハリソンの夢 (P.グラハム)

安定したオープニング。大変豊かなハーモニーで、Tuttiでのサウンドが実に魅力的でした。自由曲ではこの超E難度といわれる曲をよく演奏しきったなと感心。集中力が素晴らしく管楽器群は本当によくそろっていましたし、打楽器もそれにピタリと合っていました。オーボエソロは秀逸。中間部もよく歌いこみができており、何よりもピッチが良いので相乗効果となって素晴らしかったです。昨年は東関東代表の3校がすべて金賞でしたが、今年は唯一、万騎が原が金賞を死守しました。同バンドとしては初の金賞受賞、おめでとうございます。

6
東北 秋田県 秋田市立山王中学校 (指揮/細谷直) ※2年連続25回目
金賞

3/交響詩「ドン・ファン」より (R.シュトラウス/森田一浩)

個々の奏者がよく吹けているのですが、最初からどことなく歯車がきっちりと噛み合っていないような印象を受けました。ピッチの不安定さが露呈する部分があって心配しましたが、後半以降尻上がりに持ち直しました。自由曲は課題曲での不安も吹き飛ばした快演。音楽のうねりが見事で非常にまとまりのある演奏でした。木管・金管のバランスがよくバンド全体が美しく響いています。中学生による「ドン・ファン」での初の金賞。同バンドとしては13回目の金賞受賞、おめでとうございます。

7
四国 愛媛県 松山市立南中学校 (指揮/柿並陽子) ※3年ぶり4回目
金賞

1/喜びの島 (C.ドビュッシー/真島俊夫)

安定感抜群のサウンド。大変豊かで暖かい響きのするバンドです。課題曲はよく仕上がっていますが、細部においてフレーズの処理の甘さが目立ちました。自由曲、フルート、クラリネットのソロは秀逸。繊細で色彩鮮やかな演奏を披露してくれました。ドビュッシーの独特の雰囲気を表現するまでには至りませんでしたが、中学生としても充分素晴らしい演奏だったと思います。今後がよりいっそう楽しみなバンドですね。初の金賞受賞、おめでとうございます。

8
北海道 札幌地区 札幌市立厚別北中学校 (指揮/木田恵介) ※3年連続3回目 
銅賞

1/交響詩「英雄の生涯」より (R.シュトラウス/齋藤淳)

良い音のするクラリネットが印象的。各パートがクリアに聞こえるサウンドでしたが、クレッシェンドや強奏時になると荒っぽくなる傾向があり残念。自由曲では「英雄の戦い」からスタート。Trpのファンファーレはイイ感じで始まったのですが、最後がちょっと惜しかった!! 課題曲同様、強奏になるとバランスを崩して雑然となってしまうのが残念。よく鳴るバンドですが、全体的に大味な演奏に終始してしまったようです。

9
九州 福岡県 志摩町立志摩中学校 (指揮/水島麻恵) ※初出場
銀賞

1/朝鮮民謡の主題による変奏曲 (J.B.チャンス)

課題曲はクリアなサウンドで、よく整理されています。どのパートもソツが無く、とても初出場とは思えない堂々とした演奏でした。自由曲も非常に好演。アリランの素朴な雰囲気もよく表現できており、ソロも秀逸でした。特にTuttiでの安定感は素晴らしいものがありました。当日の九州代表の中では一番の出来だったと思います。

10
東海 三重県 四日市市立内部中学校 (指揮/西田徹) ※初出場
銅賞

2/写楽 (高橋伸哉)

大変落ち着いたスムーズな出だし。決して鳴らし過ぎず心地よいサウンドが素晴らしいです。表現も作為的ではなく、あくまでも「自然な」音楽作りに好感がもてました。自由曲は冒頭のTrpのデュオは頑張りましたね! 続くFgソロも非常に安定しており好演。中間部のObソロも明るい音色で素晴らしかったです。全体としては綺麗にこじんまりまとめ過ぎという印象で、特に後半の部分などはもっと弾けてもよかったと思います。

11
東京 東京都 羽村市立羽村第一中学校 (指揮/玉井長武) ※2年連続3回目
銀賞

4/「翠風の光」より I, III, IV (長生 淳)

まずは無難な出だしで、終始安定感のある課題曲。特にゴージャスなブラスサウンドが特筆ものです。自由曲も難しい長生作品をよく演奏していました。東京都大会よりも洗練された仕上がりになっていましたが、聞かせどころが明確でなく、終わった後にあまり印象に残らないというのが正直なところです。奏者はよく吹けているのに勿体無いなと思いました。

12
関西 奈良県 生駒市立生駒中学校 (指揮/牧野耕也) ※3年連続6回目
金賞

1/組曲「道化師」より プロローグ、ギャロップ、リトル・リリカルシーン、エピローグ (D.カバレフスキー/鈴木英史)

決してオーバーブロウせず自然な楽器の奏法が身についているようですね。音楽の流れが秀逸で、この日一番の「風之舞」だったと思います。さて自由曲は後半の部における「白眉」。この「道化師」を実に楽しそうに演奏しているのが印象的でした。しかも、恐ろしいほどにピッチが合っていて完璧といっていいほどの仕上がりでした。奏者の皆さんの表情にも大変余裕があり、聴いているほうもニコニコしてしまうほどです。生駒中による名演のおかげで「道化師」が流行しそうな予感すら感じました。2年連続5回目の金賞。これで今年の関西代表3校がすべて金賞、6年ぶりの快挙を達成しました。

13
西関東 埼玉県 久喜市立久喜東中学校 (指揮/吉里達哉) ※2年連続2回目
銀賞

4/バレエ音楽「エスタンシア」より 小麦の踊り、終曲の踊り:マランボ (A.ヒナステラ/仲田守)

美しくまとめられたオープニング。Tp群もピッチもそろっていて良かったです。全体的に良くバンドが鳴っていて気持ちよいですが、金管の音の処理に甘さがあったのが気になりました。自由曲「小麦の踊り」は合わせるのが難しそうな曲ですが、良く揃っていて好演。ただもっと余裕が感じられると更によかったですね。終曲は情熱的な雰囲気を出そうと頑張っていたと思いますが、もっともっと湧き上がるような何かが欲しかったです。しかし、2曲通して説得力のある仕上がりとなっており、さすが西関東代表と感じました。

14
中国 島根県 出雲市立第一中学校 (指揮/原田実) ※3年連続35回目
金賞

3/コンサートバンドとジャズアンサンブルの為のラプソディー (P.ウィリアムズ/S.ネスティコ)

セッティングを終えてさぁ始まるかな…という瞬間、新潟中越地方を中心に震度6の地震が発生。東京も震度4を記録し当然普門館も揺れました。危険回避のためにステージ上の奏者は全員一旦ステージ袖に退場。その後20分余り中断がありましたが、無事に再開しました。この間、地震の恐怖、チューニング時間から本番までの予定外の待ち時間など、出雲一中の皆さんは集中力を保つのが大変だったことでしょう。
しかし…、課題曲が始まるとそんな心配は吹き飛びました。艶のあるサウンドで落ち着いた重厚なアンサンブルは流石。また、後半からの音のうねり、盛り上がりなど非常に良くできています。自由曲ではジャジーな表現も充分で貫禄の演奏。ビブラフォンソロやSax4人がステージ前方でスタンドプレイでのアンサンブル等、「本当に中学生ですか?」と疑いたくなるほど見事。同バンドとしては3年連続金賞で、中国代表の連続金賞記録を「22年」に更新しました。おめでとうございます!



※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


Back

Next