授業づくりネットワーク北海道2002・報告

 夏休み,旭川で開催されたネットワーク全国大会に参加してきました。3日間日程の,初日がパネルディスカッションでパネラー。最終日が模擬授業者という大役を2つも与えていただきました。その簡単な報告をいたします。

■大会概要
[日時]
 8月7日(水)午後1時〜8月9日(金) 受付:午後0時半
[会場]
旭川市勤労者福祉会館
     旭川市6条通4丁目 電話:0166-26-1304

■パネルディスカッション

◎第1日(8/7・水)
13:10〜14:40 学力問題に関するパネルディスカッション『学力問題を考える! 本当に読み書き計算でいいの?』

 学力問題に関する様々な視点を整理し、会場も巻き込んだパネルディスカッションを行います。司会は上條晴夫氏(授業づくりネットワーク代表)。
 パネリストは、次の4名の方々です。
八木正一氏(前授業づくりネットワーク代表、埼玉大学) 
森 寛氏(研究集団「ことのは」、北海道札幌市立栄町中学校)。
大内哲夫氏(「気仙沼・鍛える国語教室」代表、宮城県気仙沼市立気仙沼小学校)。
横藤雅人氏(kyositu.com編集長、北海道札幌市立北野平小学校)
 それぞれの立場から学力問題に関する考えを語ってもらいます。学力低下が声高に叫ばれていますが、21世紀に必要な学力とは何なのか。熱い議論が期待されます。
(以上 URL:http://www.jugyo.jp/yotei/natu2002.html より)

 ここで,私は次のような主張をした。
・「読み・書き・計算」は大切で徹底的に鍛える必要がある。しかし,それ以上に大事なのは,「つなぐこと」である。
・つなぐのは,「一人一人の内面の3つのH」,「子供と自然や社会,文化」「仲間と,男女の仲」。これらをつながないと,「学ぶことの意味」を感じることができない。
・学ぶことの意味を感じている子は伸びる。入学前にひらがなを書けなくても,1年後には作文用紙で何十枚も書く子も多い。3年前に受け持ったかなり低学力の子も平均以上になった。それは,学ぶ中で自分と学習とを自らつなげていくからである。
・分数のできない大学生が話題になっているが,はるか昔に言われた4本脚のニワトリを書いた大学生,あるいはモラトリアム人間やフリーター,高校中退者,そして自殺者の増加の方が問題だ。これらは,自然との乖離,社会との乖離の結果必然的に生まれてきたこと。
・今こそ学ぶこと=より良く生きることの意味を実感させるような教育をすべき。

■模擬授業

◎第3日(8/9・金)
10:20〜12:20 総合的な学習模擬授業提案

 北海道の生活科・総合的な学習の時間の授業実践の牽引者で、教室comの編集でもおなじみの横藤雅人氏の模擬授業提案です。60分の授業。そして、60分の検討。最後を飾る圧巻の2時間です。
 司会は、授業づくりネットワーク総合的な学習メールマガジンの編集長佐藤正寿氏です。 
(以上 URL:http://www.jugyo.jp/yotei/natu2002.html より)

以下,指導案を掲載する。おそらく,授業の概要は『授業づくりネットワーク』誌に掲載されることと思われる。


テーマ「目が不自由な方とのかかわりを考える」

本時の主張
 「対象とのつながりを深める授業の構築」を具体的に提案したいと考えています。
  1,3つのH(Heart,Hand,Head)のつながりを
  2.変化のある繰り返しの中で
  3.だんだん深め,ふくらませていく

ゲストティーチャー  
 佐々木紀夫氏  (北海道盲導犬協会会長) 〜盲導犬グリーン号と一緒です  
 矢内眞知子氏  (盲導犬とユーザーを支援する仲間たち 「ワンボイス」・主宰)  
 小野寺元子氏  (北海道札幌盲学校教育相談担当)

授業作りのスタンス 〜「つなぐこと」

・生活から学習へ,学習から生活へ(活動の発端は,生活の中〜日常会話,身近な人・自然・施設,新聞…から)。仲間と。教師と。地域の人と。社会と。自然と。そして出合いによって変わった新しい自分へとつなぐ。
・学習者にとって,そしてゲストティーチャーにとっても意味がわかる学習を。
・一人一人の中で,3つのHをつなぐ。

Heart(心情) 心が動かないところに学習は成立しない
Hand(具体的な活動) 心が動けば,学習者は自ら動き出す。ただし,ここで活動の枠組みがきちんとしていないと,活動は尻すぼみになったり,拡散しすぎて収拾がつかなくなったりする。適度なワクを示すべし。
(これを私は,フレームワークと呼んでいる。)
Head(認知) 主に言語活動によって,気づきを明確にする

 ・1回きりだと,体験学習で終わる可能性が大。繰り返すことで,学習方法が身に付き,気づきが深まる。フレームが適切ならば,次の活動へと自然につながる。そしてそこに学習者参画のものが生まれる。ゆえに,「活動は,最低3回繰り返せ。」
 ・体験学習ではなく,体験「的」な学習。体験は目的ではなく,手段である。教師は積極的に仕組むべし。(白紙単元は絵に描いたもち。)特に最初の一回りは教師が積極  的にリードする。次からは,学習者の選択を重視。
 ・支援とは,学習者を安易に認めることではない。低いレベルで認められてもうれしくない。「つながり」を見極め,必要なときにさりげなく行うのが支援である。
 

授業の流れ・意図とポイント

 以下,授業の流れの予想とそのポイントを簡単にまとめてみます。

ACTION1 授業者自己紹介&活動の概略を知らせる

・活動の概略を知らせることは,教師の大事な仕事である。
・さっと本題に入る。どんなに長くても3分以内で行いたい。
・「活動の発端は,生活の中から」が原則であるが…。(模擬授業というワクでは,ちょっと無理ですね)│

ACTION2 ゲストティーチャーの紹介〜教師のクイズ

・せっかくゲストティーチャー(以下,GT)をお招きしても,教師がやたら長く説明したり,逆にすべてをGTにお任せしてしまい,GTをとまどわせることもあると聞く。しかし,やはりそれではいけない。では,どうするべきか。ここでは,クイズによってGTと学習者を出合わせる方法を提案する。
・ここも長々しない。テンポ良く進める。
・基本パターンは,お一人ずつお名前程度の紹介,そして私からクイズ。簡単に予想を聞いて,ご本人から答えとメッセージをいただく。
・クイズのねらいは,
   @クイズによって3名の概略を知り,
   A興味や関心を喚起し,
   B教師のクイズをモデルとし,活動を見通す の3つ。
・3問のクイズは,以下の通り。(変更もあり得る)
 

 (1)第1ゲスト,盲導犬協会会長佐々木氏&グリーン号。
  「昨年から稼働している盲導犬グリーンは,それまで11年間連れ添ったアーサー号に比べて,歩くスピードはどうでしょうか。@速い A遅い B変わらない」
  (2)第2ゲスト,ボランティアグループ「ワンボイス」矢内氏。
  「矢内さんは,目が不自由な方の生活を豊かにするためにさまざまな活動をされています。では,どんな活動があるのでしょう。一つだけウソがあります。
     @ゲレンデでスキー  A海で水泳  B温泉で卓球」
  (3)第3ゲスト,北海道盲学校教諭小野寺氏。
  「盲学校では,一般の学校との交流を望んでいます。しかし,正直とても困ることもあります。それは,次のうちどれでしょう。
     @点字のお手紙を読んでください A一緒に体育や図工などをしましょう
     B学習発表会に来て,僕たちの劇を見てください」

 ・参観される方も,予想とその理由を書いてみて下さい。(書くことは大切です。)
 ・表紙にある「第1の活動」。教師は積極的に学習者をリードし,引き込み,フレームワーク(活動の枠組みを明解に示す)を行うべし。

ACTION3 インタビュー〜3択クイズを作ろう

・学習者を,教師側で3分してインタビュータイムを設ける。約10分。そして,そのインタビューから得たことを元に,画用紙にクイズを書かせる。
・これにより,
   @学習者が自らGTに働きかけ,ふれ合う
   A相手から未知のことを引き出そうとする
   Bクイズを作るためにチームで相談して,言葉を考えたり発表者を決めたりする
  などの学習活動が期待できる。
・教師は,全チームをまんべんなく回って,などとは考えず,
   @全体を見,
   A気になるところに適当にかかわる
   ようにする。
・「第2の活動」。基本的に学習者にまかす。フレームワークがしっかりしていれば,まかせても,3つのHはつながり,適切に動いていくはず。

ACTION4 クイズを出し合う

・自信のないチームからクイズを出題。教師は,演出者。
・会場全体に予想をしていただく。
・ま,ここは楽しくやりましょう。(^_^)

ACTION 5 今度は,任意のGTにインタビューしてクイズを

・ACTION3を,今度は任意のGTにインタビューして行う。変化のある「第3の活動」である。
・各自のこだわりを生かす選択は,フレームワークが確立してから。
・もうフレームが明確に見えているので,ますますの発展が期待できるはず。活動を自ら拡げる姿こそ,総合の醍醐味。
 (ただし,このACTIONは,時間の都合上中途でカットの可能性大です。)

ACTION 6 ふり返りを,川柳で

・活動させたら,必ずふり返りの表現(言語)活動を。
・本時では,書いてさらに簡単な交流を行う。時間の都合上,川柳を採用。川柳は,時間もかからず,リズムに乗って楽しく振り返ることができ,とても良い方法と思っている。(ただし,子供は,少し鍛えれば書けるが,さて,今日の参加者は…。)
・川柳を紹介する際には,簡単なウェッビングを行い,個々の思いや気付きを全体の中に価値付け,位置づける。
・活動のしっぱなしはやめよう。書かせっぱなしもやめよう。価値づけ,位置づけをしよう。

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