極意合宿参加報告


 2000年6月24,25日。札幌でDS社の「極意合宿」(高岡英夫氏代表)が開催されました。高岡氏およびその主張と実践については,別ページの参考書紹介,DS社ホームページ等(http://www.directsystem.co.jp/top.html#top)の方をご覧いただくこととし,ここでは参加報告のみをまとめます。


■参加の動機
 太極拳をやっていて,自分の身体意識を改善することの必要性を痛切に感じていたことによる。例えば,剣を演武していながら脱力することができない。どうしても,「決め」の瞬間に剣をピシッと止めたくなってしまう。24式をしていても,胸をゆるめることができず,気が付くと肩が持ち上がっている。総合太極拳のゴンツィ(陳式の発勁動作)もかつてやっていた空手風になってしまう。こうした「肩肘張った」身体意識を改善し,究極の目標である「宇宙との一体化」への道を進めるためには,「ゆる」を中心とする高岡氏の理論と方法論に学ぶことが多いと考えた。

■日程,会場,講座内容,参加費用等
 日程〜平成12年6月24日(土)〜25日(日)
 会場〜札幌市中央区産業技術教育訓練センター
 内容〜ゆる修練会,特別企画(高岡氏による演武と講義),極意初級第1教程,お楽しみ企画(呼吸法)
 費用〜40500円(「ゆる」修練会,3食の食費,消費税を含む)
 参加者〜50名前後と見受けた

■徹底ゆる修練会
 講師は,川村幸子氏。(とっても美しい人でした。姿形も,表情も。)
 「ゆる」とは,「ゆする」「ゆれる」「ゆるむ」トレーニング。ヨガや呼吸法などの静的なリラクセーションに対して,自ら積極的に身体を動かしてゆるめようとする動的なリラクセーション(ダイナミックリラクセーション)である。骨をゆるめる「ほゆる」,筋肉をゆるめる「きゆる」,内蔵をゆるめる「ぞゆる」の3種類があり,身体意識を開発する際のもっとも基礎となるトレーニング方法。
 実は,合宿申し込みをした直後,「ゆる入門」というビデオが送られてきて,「合宿まで自習するように」という旨の手紙が添えられていた。私はそれを見ながら,ほぼ毎日ゆるをやってみた。これは,まず第一に気持ちが良かった。また,肩こりや腰痛にも効果が感じられた。しかし,ビデオに登場する指導員の方のようには,身体がゆるやかには動かない。特に背部と腰の動きがぎくしゃくしてしまうのには,びっくりした。
 合宿当日,「転子」と呼ばれる,股関節部分のゆるをしているとき,講師の川村さんが「股関節の奥に,二つの小さな玉がコロコロと遊んでいるような動きが分かればいいのですが。」とおっしゃったとき,身体のその部分が急になめらかに動きだし,同時に小さな玉が自覚できた。これまで,太極拳でも股関節の意識をもつことが大切なので,意識が届きやすかったのだろう。
 反対に,肩甲骨や鎖骨をバラバラにするという意識が,どうしてもできなかった。頭蓋骨を柔らかくするという意識もできなかった。

■「高岡氏による杖の演武と講義」
 開講講座として,高岡氏の講義と演武があった。ジョーク満載のトークの中に,「人間の身体はポルシェよりもすばらしい」「理想の動きができれば,心のメカニズムも理想的なものになる」「身体意識が変われば,世界が変わる」等のメッセージがちりばめられていた。
 杖の演武では,3種類の演武を披露してくれた。(しかし,あまりにも高度すぎたためと思われるが,途中からAとBの2種類の比較で示してくれた。)

 Aは,ふわりと立って,崩れるように移動して軽く杖を振るうもの。
 Bは,ビシッと構え,気合いもろとも杖を振るい,「決め」がはっきりとしているもの。

 これを何度か見せてくれた後,氏は問いかけた。「どちらが好きですか?」
 そして,「実はこの間,江戸時代の剣聖と呼ばれる人に電話でどういう風に動いたか聞いてみたんですよ。」と,笑いを誘いながら解説をしてくださった。(この解説を,私がここで述べるのは著作権の問題がありそうなので,DS社の確認を取ってからにします。)

■初級第1教程
 この後,「軸タンブリングと統一棒」による「センター」,「歩法」,「ベスト」,「ジンブレイド」,「レーザー」,そして「意識によって重みが変化する」ことを学習した。しかし,やはり著作権の問題がありそうなので,詳しい解説は著作等にゆずり,参加した私の意識についてのみ報告を進める。
 「センター」は,太極拳でも強調される。しかし,今回のように明快にセンター軸が身体のどこを通っているのかが示されたのは,初めてである。特に,会陰部の意識の重要性が分かったのは,大きな収穫であった。しかし私の場合,センターの意識は粘椿や独立歩をしたときの方がすっと通るような感じがある。慣れの問題だろう。
 「ベスト」は,上で述べた肩甲骨や腰骨のゆると関連して,もっとも動きの悪いところであった。しかし,これも30分以上取り組んでいるうちに少し,意識が通るようになり,とても肩が楽になった。太極拳でも,よく私の師匠である小寺先生に「身体の軸から分け開くように」「胸をそびやかす開き方ではなく,胸を含ませるように開くのです」と指導されるが,それがより一層明確になった。
 「ジンブレイド」は,イチロー選手が使っていると言われるディレクターである。「小股の切れ上がった」という表現の根拠がジンブレイドにあるという説明に納得がいった。私のジンブレイドの意識は,かなり低い。
 「重みの変化」は,私も自分の教室で「曲がらない腕」等と併用して取り入れていたもの。一緒にペアを作った方が驚くほど,よく意識が通った。


■呼吸法
 特別企画で,呼吸法を教わった。面白かったのは,胸式呼吸をしておいて,その息をお腹や胸に回す訓練法である。腹式呼吸等は,普段太極拳でやっていたものと同じ要領だった。

■まとめ
 総体的に言って,今回の教程内容は,かなりすぐれた方法であると改めて思った。「ゆる」「軸タンブリング」「センター」「ベスト」「ジンブレイド」「重み」は,太極拳にもぴったりの身体意識開発方法である。今後も,自己練習に取り入れていきたいと感じた。
 また,太極拳は,身体意識を開発するプログラムとして,かなり有効であるとも感じた。しかし,音楽に合わせて「流す」練習,号令に合わせて「そろえる」練習は,武術面,身体意識の開発面から考えると,問題がある。多用は避けたい。
 身体意識を高めることは,太極拳上達に欠かせない要素である。一緒に汗を流す仲間でも,なかなか上達しない人もいれば,順調に上達していく人もいる。それは,身体がゆるんで,意識が無理なく通るかどうかにかかっている。
 以前太極拳の講習で,川崎先生が「筆で線を引くように身体を運ぶ」という喩えで,太極拳の動きを解説されていたことを思い出す。迷いのない,無駄のない,ぶれのない身体の動きを求めて,また練習していこうと思う。粘椿や定式運用といった練習法に加え,「ゆる」や「軸タンブリング」,「ベスト」等が欠かせなくなった。

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