子供たちがあこがれる大人に

2009年4月6日発行 学校便り「ひつじがおか」巻頭言

 学力世界一で有名になったフィンランドでは、子供たちがなりたい職業の第一位は断然教師だそうです。これはフィンランドの教師たちが、高い力量をもっていることが一番の理由でしょうが、教師が「子供たちから、あこがれとして尊敬される大人」であることを、保護者や地域の方々といった教師以外の大人が自然に後押ししているという要素も大きいのではないかと思います。
 子供たちにとっての大人を考えるとき、いつも次の詩を思い出します。

   こどもたち
                    茨木のり子
 こどもたちの視るものはいつも断片
 それだけではなんの意味もなさない断片
 たとえ視られても
 おとなたちはあんしんしている
 なんにもわかりはしないさあれだけじゃ

 しかし
 それら一つ一つとの出会いは
 すばらしく新鮮なので
 こどもたちは永く記憶にとどめている
 よろこびであったもの 驚いたもの
 神秘なもの みにくいもの

 青春が嵐のようにどっとおそってくると
 こどもたちはなぎたおされながら
 ふいにすべての記憶をつむぎはじめる
 かれらはかれらのゴブラン織りを織りはじめる

 その時に
 父や母 教師や祖国などが
 うみへびやどくくさ こわれたかめ
 ゆがんだ顔の  イメージで
 ちいさくかたどられるとしたら
 それは やはり哀しいことではないのか

 おとなたちにとって
 ゆめゆめ油断ならないのは
 なによりもまず  まわりを走るこどもたち
 今は お菓子ばかりをねらいにかかっている
 このくりねずみどもなのである 

(※ゴブラン織り〜パリのゴブラン工場で織り出した壁掛け用の織物)
 さて、子供たちの目に、本校職員はどのように映るのでしょうか。もし「ちいさくかたどられる」としたら、その害は計り知れません。小学校時代の心の成長には、大人への信頼と集団への帰属が欠かせないからです。
 そこで、年度初めの会議で、全職員が「子供たちから、あこがれとして尊敬される大人」になろうと、意を新たにしました。この1年間、至らないところがたくさんあると思いますが、それへのご指摘も含め、本校職員が子供たちにとって価値ある大人になれるよう、まずは保護者や地域の皆様からの信頼を寄せ、後押しをしてくださいますよう、お願いします。それに甘えず、力量を高め、自分が大好きな子、友達や学校が大好きな子に育つよう努力いたします。また、保護者や地域の皆様も、私たちと共に子供たちからあこがれられる大人になりましょう。
自己紹介を噛みしめ、子供たちや職員と共に進んでいきます。

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