人とのかかわりを大事に
2010年3月25日発行 学校便り「ひつじがおか」巻頭言
本日、修了式で次のような話をしました。
「今日で1年も終わりです。いろいろなことがあった1年でしたね。みんな心も身体も大きく成長した1年でした。明日からは春休みです。楽しい、事故や病気のない休みにしてください。私がこうして皆さんにお話しするのも、今年度最後になりました。
最後に、赤ちゃんの話をしましょう。
昔イギリスの病院で、産まれたばかりの赤ちゃんが次々に死んでしまうということが起こりました。それも、何日かだけでなく続くのです。そこで、政府がその病院を調べてみました。赤ちゃんを寝かせておく部屋は、新しく大きくしたばかりでした。明るくて、最新式の設備が入っていました。空気も悪くありません。ミルクも前と同じです。おむつも前と同じです。原因が分かりません。その間にも、赤ちゃんは死んでいきます。
さて、皆さん、どうして赤ちゃんが死んでしまったか、分かりますか?
原因を調べていた人は、何日か目にふと気付きました。大きな部屋で、赤ちゃんのお世話をしている看護士さんの数が足りなくて、あちこちで泣いている赤ちゃんのお世話でとても忙しい。泣いている赤ちゃんのところにもすぐには行けない。ようやく行って、おむつを替えて、ミルクを飲ませる。しかし、そうしている間にも他のところで赤ちゃんが泣き始めるので、急いでそちらに行かなくてはならない。今お世話をされていた赤ちゃんは、すぐにまたベッドに置かれてしまうのです。ベッドに置かれた赤ちゃんの様子を見ると、とてもがっかりしたように見えたそうです。
そこで、赤ちゃんの部屋の看護士さんの数を増やしてみました。赤ちゃんが泣いたらすぐに看護士さんが赤ちゃんのところに行けるし、ミルクを飲んだあとにも看護士さんが赤ちゃんに話しかけたりもできます。すると、ぴたりと赤ちゃんが死んでしまうことはなくなったのです。
赤ちゃんは自分に言葉をかけてくれたり、泣いているときに抱き上げられたりすることで、生きていこうとする力が出ていたのです。部屋や設備がどんなに立派でも、ミルクがちゃんと与えられても、それだけではダメなのです。人とのつながりがなければ、人は生きていくことはできないのですね。
皆さんが、今こうしてここにいるということは、皆さんのご家族をはじめ、多くの人が皆さんに声をかけ、ふれ合ってくれるからなのです。
この1年、全校朝会や始業式などで、皆さんに挨拶など人と人が心をつなぐことの大切さについてお話ししてきました。挨拶は、とてもよくなったと保護者の方や地域の方からお聞きします。とてもうれしいです。これからも自分から人とのつながりをより強いものにして、周りの人を幸せにするようにかかわっていきましょう。」
この1年、保護者や地域の皆さんには、本当によく学校を応援していただきました。心より感謝いたします。今後も、子供たちが、家庭・地域・学校で、より豊かに伸びていけるよう心と力を合わせていきたいと願っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
※この記事の背景には、羊丘小の少し特殊な事情があります。本校の30〜40人くらいの子供たちが、校区にある養護園から通って来ているのです。彼らの多くは、「親に見捨てられた」と思い、しばしばそれを口にして荒れたり逃げたりすることがありました。養護園の職員の皆様が、献身的に世話をしていても、本校の職員が心を込めて相手をしても、そして私が懸命に語りかけても、なかなか彼らの心の闇は深く、荒れや逃げを収めることは難しいのでした。そこで、この修了式でも、春休みを前に「あなたたちは、本当に見捨てられているのではない」ということを伝えようとしました。