「今日は、いい天気ですね。」
2011年1月19日発行 学校便り「ひつじがおか」巻頭言
3学期が始まりました。今年も、子供たちの心・知力・身体を育てる学校づくりを全力で進めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
先日、電車に乗って座っておりましたら、若いお母さんと4、5歳くらいの男の子が乗り込んできました。男の子は、お母さんの服の裾を握って立っていました。私は、こういう場面では子供は立たせておく方が良いと思っているので、座ったままでした。
ところが、少し様子を見ていましたが、電車が揺れるたびに男の子がかなりよろけます。それでも、懸命に立っている姿を見て、いじらしく感じましたので、「ぼく、座るかい?」と席を譲りました。
すると、その子とお母さんの口から同時に「ありがとうございます。」という言葉が出て、そろって会釈をしてきたのです。これには、大変感激いたしました。お母さんだけがお礼を言って、子供はもじもじしている、ということはよくありますが、親子が揃ってお辞儀まで伴ったお礼を言うのには、なかなかお目にかかれません。
しかし、次の瞬間、私はもっと驚かされることになりました。
席に腰掛けた男の子が、私の方を見てにっこりして「今日は、いい天気ですね。」と言ったのです。
これは、かつての日本に当たり前にあった「世辞」です。世辞とは、心にもないことを言うお世辞ではなく、相手を思いやり、場を和ませる言葉のことです。
思わず、その子の頭をなで、お母さんに「いやあ、礼儀正しい。しっかりと世辞が言えるんですね。」と声をかけました。お母さんはまたもにっこりと「ありがとうございます。」本当に気持ちの良いひとときでした。
2学期の終業式で、テレビの話の他に、親戚の方などに挨拶をしっかりしましょう、という話もしました。例えば年末に人と別れる際には「今年はお世話になりました。どうぞよいお年をお迎えください。」と世辞を言うことを子供たちに教えたのです。
この男の子の世辞を聞いて、「羊っ子たちは、冬休みに出会った人に、世辞を言えているだろうか」と思いました。きっと、多くの子が、何気ないところで、自然に世辞を言っていたことと思います。しかし、中には、挨拶すらもきちんとできなかった子もいたのではないかと少し心配にもなりました。
人と、豊かにかかわることのできる子を育てたいと思います。ですから今日の始業式でも、この話をしました。
各家庭でも、新たな年の初めにあたって、子供たちの言葉を見直してみてください。そして、私たちも「子供にあこがれられる大人」として、世辞も含めて言葉を見直したいものです。