むごい教育
2011年2月28日発行 学校便り「ひつじがおか」巻頭言
前号およびホームページにも書きましたが、校長室前に「校長 直行便」というポストを置きました。
2週間で101通の投書をもらいました。投書をきっかけに、トイレに消臭剤を置きましたところ、56通もの消臭剤へのお礼の投書がありました。こんな風に取り組めることをとてもうれしく思っています。学校評価でこれを提案してくださった方に心から感謝です。
さて、投書には他にも様々なことが書かれています。「トイレにもっとたくさん消臭剤を置いてほしい」「トイレの便座を温かくしてほしい」「体育館をもっと温かくしてほしい」「車で学校に来られるようにしてほしい」などの声もありました。
これらを読み、私は4〜6年生に次のような手紙を書きました。
(前略) これらは、私は聞き入れない方がよいと思っています。私は羊丘小の皆さんに「快適すぎる生活」をさせたくありません。 徳川家康という江戸時代を築いた将軍が6歳の頃、今川義元という大名の人質になりました。家康は小さい頃から大変すぐれた子供でしたので、義元は家康がこのまま大人になったら大変だと思い、「家康には『むごい教育』をせよ」と家来に命じました。さて、皆さん、「むごい教育」とはどんなものだと思いますか? ちょっと考えてみてください。 義元の「むごい教育」とは、次のようなものでした。 朝から晩まで贅沢なご馳走を、好きなだけ与えてやれ。寝たいと言ったらいつでもいくらでも寝かせてやれ。夏は暑くないように、冬は寒くないようにしてやれ。学問が嫌だと言うならやらせるな。何事も、好き勝手にさせたらよい。 こんな教育をすれば、ダメな人間になるということを、義元はよく知っていたのですね。ところが、幼い家康はこの「むごい教育」を自分から断り、粗末な食事を選び、早起きをしては学問や武芸に一生懸命に取り組みました。そして、やがて天下を取ったのです。 羊丘小の皆さんに「快適すぎる生活」をさせたくないという私の気持ちを、理解してもらえるでしょうか? 人間らしい生き方には、「がまんと工夫」が必要です。トイレに消臭剤を置いたのは工夫の一つですが、あまり快適になりすぎることを、私は恐れてもいます。 |
この家康のエピソードは、先日開催された新1年生の保護者向け入学説明会でも紹介しました。
快適すぎる生活によって、人はますます自己中心的になり、「生きる力」を衰えさせていきます。「がまんと工夫」の大切さを、豊かな現代の日本だからこそ、しっかりと心していかなくてはと、思いを新たにしています。