じゃあ、やってごらん

2011年4月28日発行 学校便り「ひつじがおか」巻頭言

 登校途中に、靴ひもがほどけていた子に会いました。
 「ひもがほどけているよ。踏むと危ないから結びなさい」と声をかけますと、困った顔をしています。
 すると、そばにいた子がさっとしゃがみこんで、結んでやりました。なかなかほほえましい光景です。

 無事に結び終え、その子たちは学校に向かおうとしました。時計を見ると、まだかなり時間に余裕があります。そこで、私は2人を呼び止めました。
 さて、私はいったい何のために呼び止めたと思いますか?

 私は、まず結んであげた子に「ありがとうね。結んでくれて」とお礼を言い、続けて結んでもらった子に「今度からは自分で結べるようにしようね。まだ時間があるから、もう一度、○○ちゃんに結び方を教えてもらったら?」と問いかけました。
 本人たちの了解が得られましたので、もう一度ゆっくりと結ぶ動きを解説付きでしてもらいました。再び結び終えましたので、結んでもらった子に「どう、わかった?」と聞きますと、その子は「うん、わかった!」

 そこで、私は「そう、よかったねえ!」とにっこりして、「じゃあ、自分でやってごらん」と、せっかく結んだ靴ひもを再びほどいてしまいました。これには、2人とも少しびっくりした顔でした。
 さて、そこからはその子は靴ひも結びに一人で挑戦です。しかし、「わかった」からといってそう簡単に「できる」ものではありません。少し時間がかかりましたし、私も交通指導がありましたので、「少し修業しないといけないね。家でも挑戦してごらん」と、私が結んでやり、学校に向かわせました。

 このように、「じゃあ、やってごらん」と実際にさせてみることで、子供は初めてちゃんとした技術や知識を身につけていきます。これは、学習でも同じで、「学」んだことを実際にたくさん「習」って(練習して)こそ学力が向上するのです。

 今年の本校の重点目標「よし… やってみよう」には、こんな小さな場面でも、実際にどんどんやらせてみようという意思が込められています。そして、時間のかかる子供の挑戦を、じっと見守ることのできる大人が「子供にあこがれられる大人」の一つの条件なのではないかと思うのです。

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