生活科・総合でも「ことば」を重視しよう
■体験的な学習が売りの生活科や総合である。確かに体験は重要だ。しかし,生活科や総合は,体験することを目標にする学習ではない。体験を目標にする学習を「体験学習」という。生活科や総合では,「体験的な学習」と「的」を付ける。これは,体験を,認識面の成長の手段としていることの表れである。
■生活科や総合においては,3つのHに着目する必要がある。
まずHand(具体的な活動)である。
次にHeat(心情面)である。
そして,Head(認識面)である。
どれが欠けても,生き生きとした実りある生活科・総合の活動にはならない。3つのHが,生き生きと結びついて,成長する姿になって表れるのである。
■特に,認識面,心情面を豊かにするには,言語活動を抜きにするわけにはいかない。小さな子が,一人で何かをするとき,ぶつぶつと何かをつぶやいているのを見るが,あれは言語活動によって自分の活動の意味づけをしていると考えられる(ビゴツキー〜外言)。小さな子に限らず,何か具体的な活動をすると,子供は(大人だって)いろいろなおしゃべりをしながらするものである。しゃべることで,活動を整理したり,発展させたりするのが人間の本性のようである。思考活動は,言語活動によって促されることが多い。「おや,待てよ。」「なあんだ,そうだったのか。」「と,すると…。」などの言葉から,認識活動は広がっていく。「はじめに言葉ありき」である。
■生活科や総合では,発表も重要な活動である。おしゃべりに比べて,発表となるとやや緊張を伴う。その緊張を通り越えて,みんなの前できちんと論旨の通った話をすることで,子供の認識は育つ。同様に,外部の人との折衝なども緊張を伴うので,子供は育つ。緊張を乗り越えてきちんと話せたこと(パブリックスピーキング)によって,育つのである。
99年2月に実施した「自己選択課題型の総合学習」では,自分たちで決めたところへの見学許可を,事前に子供たちから電話で確認するようにさせた。職員室から,「もしもし。私は北野平小学校5年生の○○と申します。今,私たちは総合的な学習で,身の回りの外国製品調べに取り組んでいるのですが,3月2日の10時ころ,そちらに伺わせていただき,商品を見せていただきたいと思うのですが,よろしいでしょうか。」などと言うのである。かなり緊張して,電話に向かって頭を下げ,受話器を置いたとたんに「はあぁ,緊張したぁ!」と一言。職員室中が爆笑という場面もあった。こうしたことを,どんどん体験させていきたいと思う。
■さらに,書くことはいっそう論理的な思考を要求される。構成力,レトリック,文体,引用等が求められるからである。書くことで,きちんと話すことも伸びる。だから,生活科や総合でも,うんと書かせたい。私は,生活科や総合では,たくさん書かせてきた(いる)。国語の時間に書く作文の題材は,ほとんどが生活科や総合の活動である。別ページで報告しているレポート作文などは,これからの総合にぴったりのものだと思う。
■生活科や総合で書く場合は,カードの方が良いように思う。その際は次のようなことに配慮するようにしたい。
(1)基本的に「白い紙」に
特に研究授業になると,単元名・氏名欄・はたまた教師のメッセージまでにぎやかに印刷されたカードが使われたりすることをよく見る。ほとんどの場合不要である。「白い紙」に,レイアウトから考えて書かせるので十分である。その方が,子供らしい生き生きとした表現が見られる。また,まっさらなところにすべて自分の表現をしていく心と技法を育てるのである。
(2)課題を書く
生活科も総合も,課題があっての活動である。書くことで,課題をはっきりと意識させる。授業のはじめの方のやりとりで,生き生きとした課題を子供と共有し,表現したい。
・「ぼくの車は,どこまで走る?」
・「あたらしいはっぱさん,こんにちは!」
などのように。
「あさがおのかんさつ」などといった漠然として,面白味に欠ける課題は,書いてもさほど意味がない。
(3)日付は大切
記録は,積み重ねてこそ意味がある。日付を欠かさずに書く。大きな画用紙に書かせた場合などは,往々にして忘れがちである。いろいろな学校を見に行くが,きちんと日付が書かれていない掲示が目立つ。
(4)矢印や吹き出しを
図をかく。そこから矢印や吹き出しで説明や気付きを書くと,分かりやすく,見栄えのするものができる。活動や考察の深まりなどは,矢印で表現させるようにする。
「おばあちゃんのようにお手玉ができない→おばあちゃん「手もとを見るんじゃない」→上を見た方がいいんだ!」のように表現するのと,「はじめはなかなかうまくいきませんでした。すると,おばあちゃんが〜」のように作文調に表現するのを,TPOに合わせて選択させる。
(5)自分のキャラクターを作らせる
カードには,自分のキャラクターをかき,驚きやちょっと得意な様子を表現するようにすると,心情面が伝わる。「びっくり」「あせあせ」「えへん!」くらいの表情を決めさせ,使わせると,生き生きとしたものになる。
(6)カラーペンは使わせすぎない
特に中学年以上の女子は,放っておくとカラーペンを際限なく使う。無駄である。せいぜい5色程度に抑えさせる。むしろ,ここぞというポイントにはアンダーラインを引くこと等を指導したい。
(7)結果と結論の区別を教える
実験や観察,データの引用等で,結果を書いて終わりというカードも多い。結果から結論を導き出すことを指導したい。例えば,「すいかの月別生産量を調べると,北海道は夏。沖縄は冬,長崎は春が多い。」という調査結果から「他の地域では作れず,高く売れる月に合わせて作っているのではないか」という結論を導き出すのである。
(8)並べて,まとめのカードを
同じ単元で7枚程度のカードを書いたとする。それを日付順に並べて,自分の思考が時間と共にどう変化してきたかを振り返る。すると,「自分もなかなかやるもんだ」「私って,いつも〜に着目する人なんだ」というような自分への気付きが得られやすい。それを,またカードや作文に書くのである。学期末には,学期分のカードに表紙を付ける。表紙に自分の学びを振り返らせる。
(9)簡便に評価する
はんこを押す。顔マークをかく。良いカードなら,はんこやマークを2個,3個と増やす(有田実践の追試である)。すばらしい発見には,アンダーラインを引いて,「これだ!」「見よ!」。この程度が,無理なく,そして教師の労力の割りに効果が大きい評価法である。どんなカードが良いかを示せば,学級全体のカードも良くなる。
(10)掲示する
カードは,掲示できるところがよい。書いて終わりなら,ノートの方が便利である。年間を通じて,カード掲示の場所を決める。小さな名札を貼っておくだけでよい。評価を受けたら,その子が自分で前のものと入れ替える。全員が掲示し終わったら,「ピカイチ!」「すごい伸び」「絵がいい」などと書いた色つきの小さなカードを,教師が子供たちのカードの近くに前のところから移動するのも楽しい。
まだまだ,あると思うが今のところは思いつくままに。
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