小規模校の生活科実践をどうするか
K先生からの第1信
初めてメールを送ります。
私は今年採用になったいわゆる先生1年生です。その私がピッカピカの小学校1年生の担任になり悪戦苦闘の毎日です。
私の勤務する学校は海辺の学校で全校児童24名というこじんまりとした学校です。
その中でも1年生は6名、2年生は3名の計9名で生活科を行っています。合同の生活科ということで2年生の子供にとっては去年と重複してしまう活動も結構あります。
その中の1つに朝顔の観察があります。子供たちは朝顔を栽培することは楽しいらしく、毎日嬉々として水遣りをしたり、成長の報告をしてくれます。でもやはり、1年生の子どもに比べ2年生の子どもには1度育てているためもあると思いますが感動が薄いように思います。今回先生のホームページを拝見させて頂いたところ、朝顔のつるでリース作りを行った様子を写真で見ました。多分、朝顔のつるをリースに作り直して飾るということは2年生の子どもたちにも初めてのこととなると思います。創作活動が大好きな子どもたちなのでぜひ実践してみたいと思いました。
できれば指導計画書などがあれば教えていただきたいと思ってメールを書くことにしました。
どうぞよろしくお願いします。
横藤からの返信
K先生,こんにちは。
「共に育つ」の横藤です。このたびはホームページを見ていただき,またメールをくださり,ありがとうございました。
新採1年目で1,2年生の生活科を実践するのは,ご自分に生活科を受けた経験がないだけに,大変なこととお察しします。
でも,生活科はちょっと発想を変え,コツをつかむと,とても楽しく楽な教科なんですよ。そこをお伝えできればうれしいと思います。ちょっと長くなりますが,お話しさせてくださいね。
■> 合同の生活科ということで2年生の子供にとっては
> 去年と重複してしまう活動も結構あります。
> その中の1つに朝顔の観察があります。
> 子供たちは朝顔を栽培することは楽しいらしく、
> 毎日嬉々として水遣りをしたり、成長の報告をしてくれます。
> でもやはり、1年生の子供に比べ2年生の子どもには
> 1度育てているためもあると思いますが感動が薄いように思いま
す。
まず,新採1年目の先生が「2年生の感動が薄い」ということに気付かれて,悩んでいるということに私は感動しました。1年生は喜んで活動しているようですし,2年生は人数も少ないですし,目をつぶってしまおうとすれば簡単なことですが,そこを何とかしようと考える先生の姿勢とセンスの良さに感動させられました。きっと,子供たち一人一人に温かいまなざしを向けられるすばらしい先生なのでしょう。日本の教育の未来は明るい!
■さて,生活科は,身の回りの環境にひたり,そこから問題を見つけ,その子その子のペースで願いを実現していく教科です。具体的な活動には,その子その子の必然性があり,意志・意識がなくてはなりません。先生のお悩みは,2年生に「活動の必然性」,「意志・意識」をどう持たせるか,そして「具体的な活動」をいかに生き生きと展開させていけるかということでしょう。
■そう考えますと,まず2年生にも「朝顔」という素材が適切かという問題が生じます。
・朝顔より,食べられる野菜の方が適しているのではないか。
・朝顔より栽培が難しい花を種まき,苗づくりから始めて,学校や地域を飾る方が良いのではないか。
など,子供の経験に照らし合わせ,地域や学校の実態に合わせて素材を検討することが必要ですね。
とは,言うものの,今年度はすでに朝顔でスタートしているわけですから,素材については来年度の課題になるでしょう。
余談ですが,私は2年生担任の時に,給食に出た野菜や果物の種を発芽させるという実践をやったことがあります。ビニルポットに,5月下旬くらいから次々に種をまいて,発芽させ楽しみました。
「スイカ」「グレープフルーツ」「びわ」「いちご」「ミカン」「キウイ」…。種のあるものが出ると,子供たちは喜々として,種をまきました。そして,発芽し,ある程度大きくなると家に持ち帰りました。こんな活動もあるのです。
■次に「意志・意識」ですが,これは例えば,次のような活動を構成すると,ガラッと変わってくると思います。
・「1年生2人と2年生1人の栽培トリオ」で,「花咲かせ競争」「種の数競争」「背の高さ競争」等の活動をする。(競争に主眼があるのではないので,どのグループも1等賞が取れるような設定を工夫する。)
・液肥をやることができるのは2年生だけとし,液肥を一人に1本ずつ預ける。(ハイポネックスの1000倍液なら,やりすぎて枯らすこともまずないでしょう。)
・使い捨てカメラをトリオに1台ずつ預け,シャッターを押すことができるのは2年生とし,成長の様子や1年生のお世話の様子を年間に24枚で記録するようにさせる。最後の片付けまで,どのようなペースで撮影するか計画を立てさせる。
まだ,いくらでも考えられると思いますが,同じ素材を使う場合,2年生には「お兄ちゃん・お姉ちゃん意識」をくすぐり,「責任感」を持たせるような工夫が必要と思います。
■最後に,
> 今回先生のホームページを拝見させて頂いたところ、
> 朝顔のつるでリース作りを行った様子を写真で見ました。
> 多分、朝顔のつるをリースに作り直して飾るということは
> 2年生の子供たちにも初めてのこととなると思います。
> 創作活動が大好きな子供たちなのでぜひ実践してみたいと思い
ました。
> できれば指導計画書などがあれば教えていただきたいと思って
> メールを書くことにしました。
についてです。
くわしい指導計画書といったものは,私は持っておりませんが,私の所属する研究団体北海道生活科・総合的な学習教育連盟(HP
「北の大地・発」http://www.fan.hi-ho.ne.jp/douseiren/)発行の「生活科活動構成アイディア100」という小冊子に,紹介されています。私はこれを見て実践しました。
また,今後時期が近くなりましたら,朝顔の様子に合わせて具体的にお伝えすることもできるかもしれませんので,どうぞお気軽にメールをください。
■以下は蛇足です。
> 私の勤務する学校は海辺の学校で
> 全校児童24名というこじんまりとした学校です。
ということですが,先生の学校の「海辺」,しかも「全校24名」という特色を生かすことを考えたらいかがでしょう。すでにされているかもしれませんが,思いつくままに,楽しそうな活動を挙げてみます。
・学校の中に水族館を作る
・いかだを作って,レースをする(安全性の確保から,おうちの方の協力が必要になりますね)
・潮力発電に挑戦
・海風で凧揚げ
・砂の芸術(砂浜なら)
・山の小学校の1,2年と情報交換(お互い学校規模が小さければ,学校ぐるみで)
・磯の植物観察
・海水から塩を採る
・海水から真水を作る
・海岸の漂着物を使って芸術する
・海岸のゴミクリーン作戦(高学年と一緒に)
・海のプランクトン図鑑を作る
など,可能性に満ちた環境だと思います。そして,このように自然を生かして活動しようとすると,どうしても上の学年の力も借りなくてはならないことになりますね。2年生が1年生を,あるいは高学年が低学年をリードする必然性が生じます。
同じ活動をしていても,意識や具体的な活動が違うので,双方に学習が成立します。そういう活動を構成することが大切だと思います。
■長々,失礼いたしました。先生の熱意にいくらかでも応えたいと,長くなってしまいました。私でよければ,またお話をお聞かせください。お待ちしています。
では,また。
K先生からの第2信
早速お返事をいただいて本当にありがとうございました。
横藤先生の引出しの多さに驚きつつまた、自分の至らなさを感じました。これからの参考にさせていただきたいと思います。
私は○○県○○市立○○小学校というところに勤務しています。
生活科の活動として「磯遊び」「つり大会」「獅子風流(地域の伝統芸能です)」など高学年の総合学習とあわせて全校児童での活動が結構あります。
私自身、ずっと内陸部で育ってきた人間なので子供よりも私のほうが学ぶことの多い教科です。(子どもの方が私よりつりなどは断然うまいものですから)
朝顔の件、ありがとうございました。
早速、購入して参考にさせていただきたいと思います。また、この前のメールでは書きませんでしたが、朝顔のほかにイチゴとプチトマト、ピーマンの栽培も行っています。最近はイチゴの収穫時期なので子供たちはとてもうれしそうにイチゴをほおばっています。
プチトマトとピーマンもかわいい花をつけています。子供とともに私も発見することばかりです。(私がピーマンの花を初めて見ました。恥ずかしいのですが)
これからも何かとご指導をよろしくお願いします。
横藤からの返信
K先生,
私はどうもおっちょこちょいな性格でして,先生のご実践をよく知りもしないで,思ったことをベラベラと(バチバチと?)送ってしまいました。
先生の,
> 生活科の活動として
> 「磯遊び」「つり大会」「獅子風流(地域の伝統芸能です)」
> など高学年の総合学習とあわせて全校児童での活動が結構あります。
を読みまして,「しまったあ! K先生の学校は,しっかりと総合的な活動をされている学校だったんだあ!」と気付きました。釈迦に説法,ごめんなさい。
> 朝顔の件、ありがとうございました。
> 早速、購入して参考にさせていただきたいと思います。
> また、この前のメールでは書きませんでしたが、
> 朝顔のほかにイチゴとプチトマト、ピーマンの栽培も行っていま
す。
> 最近はイチゴの収穫時期なので
> 子供たちはとてもうれしそうにイチゴをほおばっています。
> プチトマトとピーマンもかわいい花をつけています。
> 子供とともに私も発見することばかりです。
私は,生活科というか教育でもっとも大切なのは,時を一緒にする者同士が,「共に育ち合う」という感覚を持ち続けることだと思っています。ルソーは,「教育は若い人でなくてはできない」と言いました。共に育つ感性が何よりも大切であることを言い当てているのだと思います。先生の,「子供とともに私も発見することばかりです」のすばらしさ,いつまでも持ち続けてくださいね。
> これからも何かとご指導をよろしくお願いします。
私も,こうしたいろいろな方とのやりとりの中で育ちたいと思います。今も,島根の先生に生活科の授業についてのメールを送ったばかりです。こうしたやりとりがうれしくてたまりません。私も年は先生の倍くらいはいっていますが,不完全な人間ですし,授業もまだまだです。先生と一緒に,育ちたいと思っています。これからもよろしくお願いします。
話は変わりますが,先生は○○にご在住だったんですね。私の親戚が○○におりまして,昨年の1月に我が家全員(5人です)で訪れました。途中通った○○は,冬でしたがやっぱりきれいでした。また,○○はお寿司のおいしい町ですよね。なつかしく思い出しました。