子供に聞かせる「こわい話」

子供たちから,「怖い話をしてぇ!」とせがまれることがあります。
その気になって話すと,次の日には保護者から「先生の話が強烈すぎたようで。」と苦情の電話が舞い込みます。
かといってにべもなく断るのも残念な話。また,手を抜いて話すのも,子どもたちをがっかりさせます。
そこで,けっこうドキドキしながら聴けて,あとから苦情が舞い込まない話を工夫しました。
よければ,お試しください。

(注意:怖い話は,トーンを落とし,少し小さめの声で。会話文は,なりきって。)

第1話 「花さかじいさん」

裏の畑でポチが鳴く。正直じいさんがそこを掘ったら,何と大判小判がザクザクと出てきました。
それを見ていた隣の欲張りじいさん。ポチを自分の畑に連れてきて,「さあ,鳴け!」 しかし,ポチは鳴きません。
頭にきたじいさんは,ポチを殴りました。しかし,ポチは鳴きません。じっとじいさんをうらめしそうな目で見ました。
そこで,じいさんはポチを蹴っ飛ばしました。
かわいそうにポチは吹っ飛ばされました。でも,それでもポチは鳴きません。また,じっとじいさんを見つめるだけです。
とうとう頭にきたじいさんは,「ええい,これでもかあっ!」とポチのしっぽをつかまえて,ポチをぶるんぶるんと振り回しました。
これにはさすがのポチもたまらず,叫びました。
「放さんか,じいさん!」 ハナサンカジイサン,ハナサカジイサンのお話でした。怖いですねえ。
えっ,怖くない? じゃあ,次のは本当に怖いよ。


第2話 「浦島太郎」

亀を助けた浦島太郎は,竜宮城に行きました。乙姫様がきれい。料理はおいしい。竜宮城は,すてきなところです。
あっという間に3日が過ぎ,太郎はふとお母さんのことを思い出しました。
そこで,乙姫様に「あのう,そろそろ家に帰りたいと思うのですが。」と言いました。
すると,乙姫様の顔が見る見るうちに変わりました。目がつり上がり,口は耳まで裂け,舌が蛇のようにチロチロと出たり入ったり…。
そして,ぞっとするような声で「何ですって?もう一度言ってご覧なさい。」と言うのです。太郎は,びっくりして「いえ,何でもありません。」
すると,乙姫様は元通りの顔になって,「そう,じゃあ,ゆっくりしていってくださいね。そして,うんと太ってくださいねえ。」とやさしく言うのです。
太郎は,「こりゃあ大変なことになった。殺されないうちに逃げよう。」と思いました。
次の日,太郎がふと乙姫様を見ると,何と乙姫様はうたたねをしています。
「しめた!乙姫様が眠っている間に逃げよう!」そう思った太郎は,そっと竜宮城の門のところまで来ました。
そおっと振り返ると,乙姫様は追ってきません。そこで,太郎はダッシュしました。
水の中ですから,なかなか前に進めない。太郎は,懸命に門のところまで走りました。もう少しで外に出られます。
と,そのとき門がスーッと閉まってしまいました。
「そ,そんなあ…。」愕然とする太郎が,振り返りますと,すぐ後ろに乙姫様が目をつり上げ,耳まで裂けた口で笑っていました。
そして,恐ろしい声でこう言ったのです。
「ウラ!閉まったろう!」 ウラ閉まったろう,ウラシマタロウのお話でした。怖いですねえ。
えっ?これも怖くない? やっぱり昔話のパロディーはダメか。じゃあ,今度は本当にあった話だよ…。


第3話 「幽霊船の怪」

ある港に,ぼろぼろの船が流れ着きました。マストは折れ,甲板にも穴があき,誰も乗っている気配がありません。
港の人たちは,幽霊船ではないかと噂し合いました。そして,誰かが中を調べにいかなくては,ということになったのです。
ある一人の若者が選ばれました。若者は,怖いのをがまんして船に乗り込んでいきました。
船の中を歩くと,ギシギシと音がします。割れたガラス窓から風が吹き込んで,カーテンが揺れ,紙屑が舞いました。
若者は,おそるおそる「あのう,誰かいませんか?」と呼びました。でも,誰も返事をしません。
「やっぱり,誰もいないんだ。」若者が少し安心して帰ろうとすると,その時です! 
突然,後ろのドアがギーと音をたてて開きました。そして,そこには大きな毛むくじゃらの男が立っていました。
男は青い目でじっと若者をにらんでいます。若者は金縛りにあって,動くことも声を出すこともできなくなってしまいました。
すると男が大きな声で言いました。
「ヘーイ! ユー,礼センノカイ!」
ユー,レイセンノカイ。幽霊船の怪でした。これは,本当の話です。怖いですねえ。


 いくらなんでもこの辺でやめるのがいいようです。(*^_^*)


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