アンケートにも記名を  2003年1月
 明けましておめでとうございます。皆様のこの一年が幸せと発展と活躍に彩られるように祈っています。私は,大変申し訳のないことですが,年賀状についての返信は失礼をさせて戴いております。なにしろ,拝受する数が多いことと,正月は正月で田舎の長男坊は,親戚,近所,檀那寺等々とのつき合いに追われ,机に向かう時間がとれないことがその理由です。事情ご賢察の上どうぞお許し下さい。

 さて,教室ドットコムの皆さんには三年前には毎月とにかく一回は発信をしていたのですが,ここのところすっかり怠けてしまいました。忙しかったといえば体裁がいいのですが,やはり体力の衰えでしょうか,筆無精になったようです。今年は,なんとか毎月一回は書かせて貰うように努めたいと思います。しかし,その内容は,その時々に私の考えたこと,思ったことを綴るということにさせて貰います。題して,

「想片拾遺折々の記」

とでもさせて戴くことにしましょう。
 さて,今月は「アンケートにも記名を」ということです。以下の文章は「常体」と致します。



 アンケートには記名をしないということが一般の常識となっている。新聞社や放送局などが全く不特定多数の人々を対象にして行うアンケートならばそれでいいと思う。記名をさせることでプライバシーが侵害されたり,秘密が漏れたり,あるいは本音が書けなかったりする恐れがあるからだろう。それはそれでよい。
 しかし,国語教育の立場からするとそれは必ずしもよいこととは言えないのではないか。一考を要するのではないか。
 アンケートと言えども一つの意見,意思の表明手段である。意見を述べ,意思を表明するには,その内容に責任を持つことが本来である。これが言葉を発する基本である。言語人格という教育を考える立場からはいっそうそういうことが言える。
 ただし,あくまでもこれは原則論,原理論であって,もともと発言者そのものを全く問題にしていない不特定多数の意見動向や傾向を把握するためのアンケートには該当しない。そこに名を書くことの意味はない。
 私が特に言いたいのは,教員を対象にした研究会,研修会などのアンケートについてである。これは量的な処理よりもむしろ質的な反応や意見を重視するアンケートだからである。例えば,催しの講師について不満があるという表明をした人にはさらにつっこんで,どんな点でそう思うかなどと問うてみることが今後の参考になるはずだ。反対に好評だった場合にも同じことが言える。教員仲間のアンケートは原則として記名制にしたらどうかと私は考えている。

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