3歳児コース
「波多野ファミリースクールだより」より
 野 口 芳 宏


 波多野ファミリースクールの言語力UP教室の主張は、「おしゃべりは誰でもできるが、きちんと話せるようにするためにはそれにふさわしい教育を必要とする」というものである。このテーゼはかなり重い。
 きちんと話せる、という意味は広く、主語や述語がきまりに則って整っているという「形式」面もあれば話題や問われていることに即した話ができるという「内容」面もある。それらを別々に指導していくことは、発達上未分化の彼らには適切ではない。言語は、形式と内容をトータルなものとして身につけさせていかなければならないからだ。
 形式と内容とをトータルに身につけていくには、彼らがまず大人の言葉に「注意深く耳を傾ける」ということが大前提である。「話す」「行動する」という発現行為だけを自由に伸び伸びとさせているだけでは、「きちんと話せる」ようにはならない。幼児教育をめぐる主張の中には「自由に伸び伸びと」ということを金科玉条のようにしているものもあるが、それは違うと私は考えている。「自由に伸び伸び」という考え方は、「勝手気まま」のわがまま心を育てかねない。そういう子どもが増えすぎると「学級崩壊」になる。それは当然の成り行きだ。
 言語力をアップさせる大前提は、大人の言葉を静かに聞けるようにすることである。静かに、注意深く話を聞く態度を大いにほめてやることが大切だ。そして大人は、子どもに注意深く聞かれて恥じない言葉の使い手になるよう努めるべきだ。子どもは、大人の何気ない会話にも、意外に関心を高めて聞いているものであるからだ。先人は「聞く子はよい子」と語っているが、名言である。「聞く子は伸びる」のである。

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