連載 子供が育つ総合的な学習 第10回・1月
「放した後のポイント」
■前回は「放す前のポイント」でした。今回は「放した後」です。
放した後のポイントは多いのですが,その中から「子供ウォッチング」と「子供のすることをおもしろがる」について述べます。
■生活科が始まった10年前頃,子供たちを放した後,何をすればよいのか分からず,とまどった教師がとても多かったようです。
初めから終わりまで,子供たちの外側をぶらぶらと散歩しているだけの教師もいました。活動が始まるのと同時に,教師もせかせかと動き出す授業も多く目にしました。いえ,今でもまだ見かけます。
どちらもポイントを外しています。「動き出したら,まず子供ウォッチング」です。
■子供たちが,それぞれの活動に散ったら,まず,説明していた場所からじっと子供達の後ろ姿を見ます。
あの子は勢いよく図書室に向かった。あの子は,まず友達と目でコンタクトをとってから,仲良く模造紙に向かっている。おや,あの子の背中には張りがないぞ。その隣の子は目線が定まっていない。自分のすることがまだ見えていないのか…。
このようにまず,「散らばりの状況,勢い,友達とのかかわり」等を把握するのがポイントです。
■活動には,節目があります。連続して活動して場合でも,実は多くの場合15分程度で,活動に変節点が訪れます。興味の対象,活動の方向,発想の転換などが,切りかわっていくのです。ですから,ちょっと子供たちから離れて,全体の景色を把握することを,適宜行っていく必要があります。
■なお,こうしたウォッチングをする際,バインダーなどを持ってせっせと記録しているのもよく見かけますが,私はそれには基本的には反対です。記録に気を取られて,活動が表面的にしか見えなくなる場合が多いからです。「記録に残すより,記憶に残す」ことが基本だと思います。授業が終わってから,覚えている分を記録するのでよいでしょう。1回の活動で全員分を書くことは難しいでしょうし,また全員分を書こうなどと思わない方がよいと思います。何日か分で,全員をカバーできればよいのです。
ただし,写真は後の振り返りに使ったりもできますので,有効に活用したいと思います。子供たちにカメラを向けると,ピースをしたりしますので,事前に「記念写真でなく,ドキュメント写真を撮りたいんだけれど。」などとやんわりと指導しておきましょう。
■子供にとって一番うれしい支援は,どのようなものでしょうか。それは,「自分の活動を教師がおもしろがってくれる」ことではないかと考えます。
おもしろがるというと,ちょっと誤解を招きそうなのですが,子供の活動に興味を引かれ,思わず側へしゃがみ込み,「へえ,こういう風に考えたの。おもしろいねえ。」などと,素直なつぶやきを出すようなイメージでとらえてください。
先に述べた「全体の景色の把握」と並行して,ある子供の側に立ち止まって一緒におもしろがる時間を持つこと,これが大切だと思います。別に声をかけて歩かなくてもいいのです。おもしろがっていれば,それは目に,身のこなしに出ます。そして,子供たちに伝わります。
■支援は「する」ものでなく「なる」ものだ,といいます。
子供の活動は,教師がおもしろがってくれたところから拡がっていくように感じています。おもしろがることが,支援に「なる」のです。
反対に,支援を「する」という姿勢,例えば「足りないところを補ってやろう」という姿勢でいますと,子供たちの活動はだんだんと義務的なものになっていくように思います。
次回は,評価について述べたいと思います。