連載 子供が育つ総合的な学習 第11回・2月


    「総合的な学習の評価」

■前回,「動き出したら,まず子供ウォッチング」「子供の側に腰を下ろす」「子供の活動をおもしろがる」等と書きました。実は,これがすでに評価となっています。支援=評価なのですね。
 しかし,まなざしや表情,自然な話し言葉による支援=評価と同じくらい重要なのが「言葉で伝える評価」です。子供の活動や作品に添える一言について考えてみましょう。

■6年生が,イギリスの2階建てバスのことを調べました。
 それに対して,A先生は次のように書きました。
『2階建てバスのことをねばり強く調べましたね。そして工夫してまとめ,みんなのためになりました。立派でしたよ。』
 かなりひいき目に見ても,こうした評価を「すばらしい」と思う人はいないでしょう。もらう子供もそんなにうれしくない魅力に乏しい評価言です。具体性が乏しいのが致命的です。どこか冷たい感じさえします。

■B先生は,次のように書きました。
『(イギリスの)2階建てバスの運転手の最終試験が,180°スピンターンだとは,先生も知らなかった。びっくりしたよ。よく調べたね。』
 この例からは,温かい教師のまなざしが伝わってきます。そして,内容が具体的です。受け取った子供や保護者は,きっとうれしい気持ちになることでしょう。
 しかし,温かくはあっても,どこか幼い感じがします。低学年向けの評価という感じがします。子供が調べた内容に比して評価言が幼すぎ,子供にへつらっているような感じさえ受けます。6年生対象ならばその時期の子供たちに即した評価言が欲しいところです。
 では,どこを改善すればよいのでしょうか。(ちょっと考えてみてください。)

■私は,総合の評価は,次の「3点セット」で考えることが,有効だと考えています。
(1)教師の願い,予想
(2)活動の具体例
(3)子供の変化への感動
の3つです。

■例えば,先の例をこの3点セットで表現してみます。文末に番号を振ってみます。

『2学期に,○○の活動で調べ学習をしたとき,あなたはどちらかというとクールに調べていた。分かったことをさっさとカードに写していたね。そんなあなたもなかなかいいと思ったけれど,もっと楽しんで,驚いて,時にはつまずきながら調べ学習をしてほしいとも思っていた。(1)
 そのあなたが,2階建てバスのことを調べたときは,カードに書くより早く「先生,2階建てバスの運転手はみんな180°スピンターンができるんだって!」と駆け寄ってきたね。(2)
 あの瞬間が先生は忘れられない。バスのことにもびっくりしたけれど,あなたの表情がとてもステキだったから。これからもたくさん驚いて学習できることを願っています。(3)』

■総合では,教師は「支援者」であることが大切であるとされ,勢い子供のすることを何でも受け入れ,何でもよく評価するというふやけた評価が多いように見受けます。
 大反対です。
 総合でも,いや子供の選択によって大きく活動の広がる総合だからこそ,教師の評価に毅然とした観点と豊かな感動を求めたいと思うのです。

(追伸)通知表等の総合の評価は,記述式が妥当です。そうなら,上の3点セットで記述できるくらいのスペース確保をすべきだと思います。「大変だから一言で済まそう」などという声があるようにも聞きます。論外です。


バック  連載一覧のページへ  生活科・総合のページへ

トップページへ  トップページへ